「おはよう」
八雲 紫は寝床から這い出て、最近主人に対する敬意が不足しているように思える式へといった。
「おはようございます。今年は早いですね」
藍にそういわれ、障子の外を見やると、夕日が差し込んでいた。
「あら、本当ね」
日の光をみるのは久方ぶりだ。前に見たのは春ごろの花見か宴会のときだったか。
そのまま風景を見やると、雪が降り積もっている。
「ねえ藍」
ああ、やっぱり寒いから冬眠するときはちゃんと暖かくして寝なきゃダメね。
「ところで、今何月かしら?」
「二月です。餅も食べ終わりましたし、汁粉も終わりましたし、豆も撒き終わりました」
「そう。私は大食いじゃないからそんなものはどうでもいいけど。何か変わったことはあったかしら?」
「全く。強いて言えば橙が雪遊びで、しもやけになったぐらいで」
「そう」 それはつまり、私が今起きる必要は皆無という事だ。
「じゃあ、私は寝るわ。春までよろしくね」
ため息を一つ付いた藍は頷いて静かに部屋を出た。
紫は直ぐに寒い部屋から暖かい布団へと帰還し、瞼を閉じた。
さて、予想外に早く起きてしまったけれど、二度寝して眼が覚める頃はもう、桜も咲いているかしら?
そうしたらまた白玉楼に花見に行って、神社の宴会を冷やかして。寝ておきて寝ておきて寝てを繰り返したらまた冬が来る。
しかし、冬に目を覚ますなんて、どれ程ぶりだろうか? 少なくとも藍が使いものになるようになってからは春まで寝ていたはずなのに。
八雲紫はそう考え、その瞬間一つの結論を導いた。
その答えを持って彼女は考えるのをやめて眠ることにした。
直ぐに霊夢がかぎつけてマヨイガに乗り込んでくるかもしれないけれど、それは藍のお仕事だからがんばってもらうほか無い。家財道具が2、3減る事はあきらめるしかないだろう。
つまるところ、この冬におこる最も大きな事件とは、この私、八雲紫が何千年かぶりに早起きをする。という下らないことなのだ。
そして眠りに落ちる寸前、巫女の声がした。
ああ、春になって眼が覚めたら、霊夢に髪飾りをあげよう。昔、巫女に私がそうしてもらったように。
何はともあれ全ては春になったらね。
それでは、冬にさよならを告げよう。
そして、春になったらおはようと言おう。
おやすみなさい。
こうして八雲紫の冬の一日は終わりを告げた。
八雲 紫は寝床から這い出て、最近主人に対する敬意が不足しているように思える式へといった。
「おはようございます。今年は早いですね」
藍にそういわれ、障子の外を見やると、夕日が差し込んでいた。
「あら、本当ね」
日の光をみるのは久方ぶりだ。前に見たのは春ごろの花見か宴会のときだったか。
そのまま風景を見やると、雪が降り積もっている。
「ねえ藍」
ああ、やっぱり寒いから冬眠するときはちゃんと暖かくして寝なきゃダメね。
「ところで、今何月かしら?」
「二月です。餅も食べ終わりましたし、汁粉も終わりましたし、豆も撒き終わりました」
「そう。私は大食いじゃないからそんなものはどうでもいいけど。何か変わったことはあったかしら?」
「全く。強いて言えば橙が雪遊びで、しもやけになったぐらいで」
「そう」 それはつまり、私が今起きる必要は皆無という事だ。
「じゃあ、私は寝るわ。春までよろしくね」
ため息を一つ付いた藍は頷いて静かに部屋を出た。
紫は直ぐに寒い部屋から暖かい布団へと帰還し、瞼を閉じた。
さて、予想外に早く起きてしまったけれど、二度寝して眼が覚める頃はもう、桜も咲いているかしら?
そうしたらまた白玉楼に花見に行って、神社の宴会を冷やかして。寝ておきて寝ておきて寝てを繰り返したらまた冬が来る。
しかし、冬に目を覚ますなんて、どれ程ぶりだろうか? 少なくとも藍が使いものになるようになってからは春まで寝ていたはずなのに。
八雲紫はそう考え、その瞬間一つの結論を導いた。
その答えを持って彼女は考えるのをやめて眠ることにした。
直ぐに霊夢がかぎつけてマヨイガに乗り込んでくるかもしれないけれど、それは藍のお仕事だからがんばってもらうほか無い。家財道具が2、3減る事はあきらめるしかないだろう。
つまるところ、この冬におこる最も大きな事件とは、この私、八雲紫が何千年かぶりに早起きをする。という下らないことなのだ。
そして眠りに落ちる寸前、巫女の声がした。
ああ、春になって眼が覚めたら、霊夢に髪飾りをあげよう。昔、巫女に私がそうしてもらったように。
何はともあれ全ては春になったらね。
それでは、冬にさよならを告げよう。
そして、春になったらおはようと言おう。
おやすみなさい。
こうして八雲紫の冬の一日は終わりを告げた。
雰囲気がいいですね。
だがそれがいい。