「今日も寒いわねぇ…」
しかし、一人で手入れをするには、やや広い其処を、博麗霊夢はいつものように掃き掃除していた。
ざ……、ざ……と、ゆったりとしたペースで掃いて行く姿は、まるで一枚の絵。
時折、かじんだ指先に暖かな息を吐きながら、今日も彼女は閑散とした境内の掃き掃除をしていた。
「ふぅ…、これってやる意味あるのかしら?」
参拝客は来ないし……と、霊夢は溜息を吐く。
ざ……、ざ……と、手を休める事は無く、掃く。
動きを止めると、そのまま凍って動けなくなりそうだから。
「………ま、他にやる事無いしね」
それが彼女の出す、いつもの結論。
ざ……、ざ……と、寒風の通り抜ける其処を、彼女はゆったりと掃く。
急いだとして、特に良い事も起こらない。
「…あら?」
ふと、手に息を吐く以外で、彼女は手を止めた。
ふわり…、ふわり…と、彼女の視界を何かが横切った。
彼女は片手を伸ばし、ゆっくりと手を伸ばす。
「初雪、か」
掌に、落ちた感触は無かった。
ふわり…、ふわり…と、しかし、落ちた証だけが残った。
広げた指の隙間を擽って、掌に落ちて、溶けて、彼女の温もりを奪って。
「………」
彼女はそっと、その雫を拭った。
ふわり…、ふわり…と、しかし、落ちた証は再び残った。
彼女の髪に、瞼に、頬に、唇に、落ちて、溶けて、再び奪って。
「さむ…」
そう言って彼女は、静かに箒を横たわらせた。
しんしん、しんしんと、徐々に雪が量を増してゆく。
寝かせた箒に倣うように、彼女はその身を大地に預けた。
「………」
彼女はそのまま、瞳を閉じる。
しんしん、しんしんと、雪が彼女を覆ってゆく。
髪に、瞼に、頬に、唇に、落ちて、溶けて、奪ってゆく。
「………」
雪が全てを奪ってゆく。
しんしん、しんしんと、雪が全てを覆ってゆく。
空を、色を、熱を、音を、全て全て、平等に。
「……ぁ…」
小さく零した声さえも、雪は静かに吸い込んだ。
しんしん、しんしんと、雪が全てを染めてゆく。
白く、白く、真っ白に。
「素敵な世界…」
それは彼女の白い夢。
しんしん、しんしんと、全てが雪に覆われて、全てが雪に奪われて。
真っ白な、音すら消えた無垢の世界。
「………」
髪に抱かれた白い雪。
瞼に落ちた白い雪。
頬に積もった白い雪。
唇に溶けた白い雪。
瞳を開けば暗い空。
其れさえ白く染まったら、きっと其処へ行けるのに。
しんしん、しんしんと、静かに優しく雪が舞う。
世界の色を白く染めて。
しんしん、しんしんと、静かに冷たく雪が降る。
全ての音を飲み込んで。
しんしん、しんしんと、そんな雪が、静かに積もる。
彼女の紅も白く覆って。
「うおおっ!?ついに召されたのかっ!!?」
「台無し」
如何やら、其処へはまだ行けないらしい。
彼女は空に向けて、白い息を吐いた。
というかやるのならネタ位考えましょうよと。
(※雪国ではツルハシでも使わないと砕けないような「圧雪(あっせつ)」と言うものが存在しています。)
ここまで削ると伝わりませんか…。すいません、精進します!
名無し妖怪様、まっぴー様>霧雨魔理沙と云う人物は、ふとした空白、静寂から博麗霊夢を引き上げる為の人物じゃないかな…と表現したかったのですが、大敗でした。今度こそ…!
鱸様>それくらいになってしまうと、情緒と言うレベルじゃなくなってしまいそうですねぇ…。雪は2、3センチほど積もるくらいが丁度良い気がします。雪合戦出来ますしね。
レス有難う御座いました!…と入れ忘れです。たはー…。
全てを等しく見る霊夢にしてみれば、全てを等しく白の世界に変えれる雪は
不思議な羨望を覚えるのかも知れませんね・・・個人的にこう言う話は好きです。
でも、もう一声ほしかったなぁと思うんですが。
それでも、詩的風景は好きです。