Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アリスの研究

2009/03/04 01:27:33
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魔法の森―深い深いこの森の奥に、七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドの館はある。迷いやすい森の奥地にあるため、この館に客人が来ることは滅多にない。だが、今日は客間に明かりが灯っていた。

「へ~、お前って意外と料理上手いんだな。」
客は同じ魔法の森の住人、霧雨魔理沙である。
普段、彼女は何処と問わずに不法侵入しているが、
今日はれっきとした客人である。今日、彼女はアリスに「夕飯を御馳走してやるから来い。」と言われ、御相伴に与かっている訳である。
「意外って何よ、一人で暮らしてるんだから料理くらいできるわよ。」

アリスが新しい料理を運んできた、大分大きな鶏が皿の上にデン、と乗っかっている。
「うぉっ!すげえな、こんなデカイ鶏、高いんじゃないのか?」
「ううん、タダよ。だって自分で捕ってきたんだもの。」
「はぁ!? 自分でって、捕まえてきたのか。」
「うん、その辺にいたやつを一匹、拝借して。」
「こんだけデカけりゃ、相当の量だろ、他の部分どうしたんだよ。」
「殆ど捨てちゃった。」
「勿体ないな~、色々使えるのに。」
「いいのよ、別に中身に興味ないから。」
「?」

不思議な言い回しが少し引っかかったが、それほど気にもしなかった。
「その鶏、大きいからナイフで切って食べてね。」
そう言って、机にナイフを置く。ナイフと言っているが、意外と大きい。
「そのナイフ、良く切れる?」
「おお、すごく良く切れるぜ。」
「香霖堂で買ってきたのよ。料理に使うのだから、もっと小さいのが良かったのだけど。・・・あっ」
何かを思い出したのか、アリスが声を上げる。

「どうした?」
「そういえば、香霖堂に商品頼んであったの、取りに行くのすっかり忘れてたわ。」
「商品?あんな所に何頼んだんだ?」
「お酒よ、実験に使うのと、飲むのと。」
「酒か、いいな。私が取りに行ってくるぜ。」
「いいわよ、取りに行って何本か盗むつもりでしょ。」
「なんだよ、信用無いな。」
「私が行ってくるから、魔理沙はそれ食べてなさいよ。
「分かったぜ。」
「留守番お願いね。すぐ戻ってくるわ。」
そう言って、アリスは出かけて行った。

10分後―
料理を早々に食べ終わった魔理沙は、家の中を物色していた。
魔法使いの家だしな、なにか面白いものがあるかも。

だが、あるのは人形ばかりで、なかなか面白いものは見つからない。

「これが最後の部屋か・・・」
ほぼ全ての部屋を物色し、魔理沙は最後の部屋へ来ていた。中には机やベッドがあることから、アリスの私室なのだろう。

魔理沙はとりあえず、手近にあったノートを取る。中は研究のメモのようになっていた。

完全な自立人形作成に関する考察
完全な自立人形は、通常の人形と作り方では作れない。
人形に意志を持たせる為には、その人形自体が生命を宿す必要があるその為、実際に生きている生命体の部位を一部代用し、生命を宿す実験を行った。次にその内容を示す
1、 カエル・・・失敗
2、 ネズミ・・・失敗
3、 ウサギ・・・失敗
4、 ブタ・・・失敗
5、 トリ・・・失敗
・・・
・・・
魔理沙は少し気分が悪くなってきた。見てはいけないものを見た気がした。
「読むんじゃなかったぜ・・・」
すっかり物色する気も失せて、ノートを閉じようとした時、ノートのある項目が目に入った。


14、人間・・・


人間って・・・マジかよ!?
だが、その項目は何も記されていない。魔理沙は少し安心した。
「まぁ、思い立ってやめた。って所か、さすがに人間はまずいものな。」
魔理沙はノートを閉じ、客間へ戻って行った。

40分後―
「アリス、遅いな・・・」
あれから、けっこう時間が経った。もしかして、道にでも迷ったか?

さっき、変なものを読んでしまったからか、少し心細い気持ちになってしまった。ちょっとした物音も気になってしまう。
「アリス、早く帰ってこいよ~」
静けさに耐えかねて、部屋の中を歩きながら、声を出してみる。よく考えると、この館は一人でいるには、なんと不気味な所だろう、あちこちに飾られた人形がこっちを見ている気がする。

「お前のご主人さまはどこにいってんだろうな?」
静けさを紛らわすため、人形に話しかけてみる。
当然、返事はない。
・・・ふと、飾られた人形の奥に何かが置いてあるのが分かった。
「・・・・?」
何の気なしにそれを取り出すために、手を伸ばす。
それに触ると、仄かに温かい・・・なんだこれ?
と、明るい所に取り出してみる。

それは、鶏の姿をした、人形であった。だが他の人形とはちがい、布で作られていなかった。



その人形は、鶏の皮を布の変わりにして作られていた。
「っ・・・!!」
魔理沙はこみ上げる吐き気と、悲鳴を必死で堪える。
なんだこれ!?、なんなんだよ!

その時、魔理沙の脳内に先のノートの内容を思い出す。
自立人形・代用・実験・・・・まさか、これって・・・

これが、自立人形の失敗作・・・?
「は、はは・・・なんだ、失敗したなら捨てろよな。
まさか、こんなもの、他にも取ってあるのか?
カエルとウサギと・・・・」
そこまで言って、彼女は思い出した。14番目に書かれていた、実験台の項目を・・・・

「・・・はは、馬鹿馬鹿しい。そんなことある訳ないだろ。大体、人間なんて、一体だれを使うんだよ・・・」
彼女の背中に嫌な汗がジットリとでる。今アリスの一番近くにいる人間・・・・
「・・・私かよ。」
いや、そんなバカな、ありえないだろ!大体、人間を解剖するなんて、ブタやウサギを解剖するのとは、訳が違う。ちゃんとした道具が必要だ。まず解剖に使う刃物は・・・・さっき鶏を切ったナイフがある。
いや、でも人間を解剖するなんて、アリス一人じゃ何日もかかる。その間に、体が腐らないようにする綿が・・・ここは、人形が山のようにある、綿だって。
いやいや、でも消毒に使うアルコールが・・・

その時、アリスが出掛けた理由を
「お酒よ、実験に使うのと、飲むのと。」

「・・けんな、ふざけんなよ、なんだよ!それ、私嫌だからな、絶対嫌だからな!」

・・・いや、でもやっぱり考えすぎだ
「だって、アイツはこうやって私を一人にしたじゃないか。」
―でも、どこからか見張っているのかも知れない

「そうさ、それこそ、そんな事はあり得ないって証拠だ。」
―どこだ、どこから

「だって私を一人にしたら、にげられちゃうもんな!」
―どこから、私を見ている!!!

「どこから見てるんだよ!!! 出てこいよ、人形野郎!!」

魔理沙は叫びながら、箒を振りまわす。お皿や掛け時計が砕け散る。
はぁ・・・はぁ・・・!!
体が熱い、まさか、さっきの料理に、何か・・・!!
「畜生! お前の薬なんか効くもんか!私はお前の実験台になんかならない。ならないからな!!」
そして、また箒を振りまわす。

―その時、ギィと、いう扉を開く音が聞こえた。
帰ってきた、アリスが・・・!私を殺しに。
殺されてたまるた殺されてたまるかコロサレテタマルカ!!!!!!

魔理沙は、ゆっくりと扉に近づき、箒を構える。
そして、客間の扉が、ゆっくり開き、それに合わせて、箒を思い切り振りかざしー






「・・・・お前は一体、なにをしてるんだい?」
そこにいたのは、アリスでは無かった。
そこにいたのは、森近霖之助だった。

「香霖・・・どうしてここに?」
「ああ、アリスに、荷物を運ぶように頼まれたんだ。
たくさんあるからね、どうせだったらみんなで飲もう、と言うことになった訳さ・・・てっ、なんだこの部屋の状況は!? お前は何をしてたんだ。」
「香霖・・・・香霖!!」
魔理沙は香霖に飛びついた。そして、これまでの全てを話した。

「っぷ、あはははははは!そりゃ、傑作だ!」
「笑うんじゃない!私は本気で怖かったんだ。」
「なかなか、面白い発想だ。物書きでもやったらどうだい?」

「・・・馬鹿にして。」
緊張の糸が切れると急に情けないやら、恥ずかしいやらで、涙が出てきた。
「あ、ごめんごめん、悪かったよ。」
半泣きな魔理沙の頭を香霖が撫でながら抱きしめてくれる。








だが、緊張の糸を解くのがもう少し、遅ければ、魔理沙は気付けたかも知れない。香霖の、狂気に満ちた微笑に、そして、背後から、近付く少女の姿に・・・
ラーメンズさんのコント「採集」を見ていたら書きたくなってしまいました。
ラーメンズファンの皆さんはごめんなさい。
そして、ケネディ国立公園位広い心で読んでください。
umeban
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
誤字がありました。
> あんな所に名に頼んだんだ?
それと、「霖ノ助」ではなく「霖之助」です。

面白かったです。
魔理沙は家主の不在時に屋内を物色したり、錯乱して部屋をめちゃめちゃにしたりと素行が悪いので
あまり同情できませんしw
2.名前が無い程度の能力削除
魔理沙がどうなったのか気になる。
それに霖之助はアリスとグルだったのか…
知らぬが仏とはこのことか
3.名前が無い程度の能力削除
短く、読みやすく、怖い。
良質なホラーでした!
4.名前が無い程度の能力削除
ラーメンズ面白いですよね
彼らのコントは実に良く練られている
採集は・・・あの体育館かどっかのネタかな?

とりあえず楽しく読めました
ごちそうさま
5.名前が無い程度の能力削除
安心させた次の瞬間落す、ホラーの王道ながらやはりぞっとします
霖之助はアリスの手によって人形にされてしまっていたのか、それとも本意でアリスの『実験』に付き合う気になったのか・・・