Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

頑張れ小さな女の子~6.ありがとう

2009/02/26 19:30:27
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 この作品は『頑張れ小さな女の子』シリーズの続きとなっております。










「霊夢~境内の掃き掃除終わったよ」
「お疲れ様。じゃあ休憩していいわよ」
「うん!」

 縁側にて茶を啜る霊夢。
 その横に、ちょこんとルーミアが座る。頭には陽射しを遮る麦藁帽子を被った状態で。

「あんたもお茶飲む?」
「う~ん、じゃあたまには貰おうかな」
「はいはい、ちょっと待っててね」

 霊夢が奥へと消える。
 ルーミアは一人、そよ風を浴びていた。
 柔らかい風、ぽかぽか太陽、木々の囁くような音、それらが生み出すハーモニーは、ルーミアを心地良くさせる。

「はい、どうぞ」
「ありがとー」

 霊夢が戻ってきて、ルーミアに湯飲みを渡す。
 受け取ったルーミアが、あっ、と小さく声をあげた。

「どうしたのルーミア? 熱かった?」
「見て見て! 茶柱が立ってるよ!」

 霊夢は、無邪気なルーミアを見て、思わず柔らかい笑みを浮かべてしまう。

「何か良いことがあるのかもね」
「えへ~」

 ルーミアは、にぱっと笑う。
 右手で湯飲みを持ち、左手は湯飲みの底にそっと添える。そして、ゆっくりと啜る。

「美味しい……」
「そ、良かったわ」

 今度は二人で一緒に啜る。
 湯飲みの持ち方や、啜る瞬間に目を瞑る仕草まで一緒だ。
 まるで姉妹のような二人だった。

「平和ねぇ」
「そうねぇ」

 お茶を啜る。そのとき、境内の方で何かが落ちたような、凄い音がした。

「何かが落ちたのかしら?」
「ま、どうでもいいじゃない」
「そうだね~」

 また、お茶を啜る。

「おーい霊夢。いないのか~?」

 呼ぶ声が響く。

「呼んでるよ霊夢?」
「幻聴よ」
「幻聴?」
「幻聴よ」
「そっかぁ……」

 霊夢はその声の主を分かっていたが、あえて幻聴だということにしといた。
 何故なら面倒だから。

「なんだよ、居るじゃないか」

 そんな二人の前に、箒を持った少女、魔法を扱う人間――霧雨魔理沙が現れた。

「ねぇ霊夢」
「んー?」
「魔理沙が居るよ」
「幻覚よ」
「そっかぁ」

 ルーミアが納得して、お茶を啜ろうとするが、

「痛い!」

 魔理沙に頭をはたかれた。

「お前らなぁ、露骨に私を無視するな。ていうか何でルーミアが居るんだ?」
「あぁ、それには色々浅い事情があるのよ」
「浅いのかよ!?」

 魔理沙と霊夢がそんなやりとりをしている間、ルーミアは関係無しにお茶を飲んでいた。

「ま、いいや。霊夢! 弾幕しようぜ!」
「えー……」

 魔理沙の用事は弾幕ごっこだった。
 霊夢は正直、今日はそんな気分ではなかった。まったりぬくぬくしたい気分だった。
 しかし、魔理沙は言い出したらきかない。
 霊夢は、どうしたものかと考えて、ふとルーミアが目についた。

「じゃあ代わりにルーミアとやりなさいよ」
「はぁ!?」

 魔理沙からすればルーミアは本気を出さなくても楽に勝てる相手。
 わざわざそんな相手とやるために来たわけではない。

「うん、いいよ」
「じゃあよろしくね、ルーミア」
「うん!」

 しかし、話は勝手に進んでいた。

「ちょ、ちょっと待てよ!」
「どうしたの?」
「何でルーミアとやらなくちゃならないんだよ!」
「あら、ルーミアをなめたら足元すくわれるわよ」

 魔理沙はルーミアを見る。
 ルーミアは相変わらず、にぱっとした笑顔を浮かべていた。
 魔理沙からすれば、自分が敗れるとは思わない。
 しかし、霊夢があまりにも自信満々に言ってきたから、何かがあるのかもしれない、と考える。

「……分かった。ルーミア、勝負だ!」
「うん! いくよ!」

 そこでふと、魔理沙は思う。

「ルーミア、日光出てるが大丈夫か?」
「麦藁帽子があるから大丈夫だよ」
「そっか。ならいくぜ!」

 互いに一定距離を作り、空中に飛ぶ。

「頑張れルーミア~」
「ルーミアの応援かよ!?」
「当たり前よ」

 友人の冷たさに微妙なショックを感じながら、魔理沙は弾幕を放つ。
 星型の弾幕は大きな隙間を決して作らず、ルーミアに迫る。
 ルーミアは冷静に隙間を探す。

「む!」

 魔理沙は少し驚く。
 今までのルーミアとは、違う。
 ルーミアは小さな隙間に己の弾幕を一発、放つ。
 それにより小さな隙間がこじあけられ、隙間が広がる。
 そして、そこをルーミア自身が通り抜け、魔理沙の弾幕を上手く避けた。

「へぇ……」
「今度はこっちの番だよ!」

 感心している魔理沙に対して、今度はルーミアが弾幕を放つ。
 さらに――

「うおっ!?」

 魔理沙の視界を闇が覆った。ルーミアの能力だ。

「夜符『ナイトバード』!」
「なっ!?」

 ここでさらにスペルカードを使用。
 視界が闇に覆われた魔理沙には、迫りくる弾幕が見えない。
 ミスティアのような鳥目にされる甘さじゃない。ルーミアのは『闇』そのものだ。
 大体の生き物が必ず恐れるのは『闇』である。
 魔理沙は今、その恐怖に加え、迫りくる弾幕という要素がさらに追加されているのだ。
 適当に動いたならナイトバードの餌食になるだろう。かといって動かなければ、ただ被弾するだけだ。
 そこで魔理沙が出した答えは――

「攻撃が最大の防御だ! 恋符『マスタースパーク』!」

 魔理沙が構え、見えない目の前に向けて放つ。
 マスタースパークは眼前に迫っていたルーミアの弾幕を全て飲み込み、進む。
 そして――

「あぅー!?」

 膨大な光はルーミアを包んだ。

「あっ……闇が消えた」

 魔理沙の視界に光が戻る。
 ルーミアが倒れているのが見えた。

「勝負あり、ね。やっぱり魔理沙にはまだ勝てないわよね」

 魔理沙がゆっくりと地に降りてくると、霊夢がそう言った。

「いやいや、驚いたぜ。能力の扱い方やスペルカードを使うタイミングやら判断力やら。以前のルーミアとは全く違ってたじゃないか」
「ていうかルーミア大丈夫?」
「う~一応。ただ、動けないけど……」
「はぁ……大丈夫じゃないじゃない」

 霊夢が立ち上がり、倒れたままのルーミアへ歩み寄る。そして優しくルーミアを背負う。

「よいしょっ、と」
「みゅ~」

 魔理沙はそれを見て、

「お前ら姉妹みたいだな」

 と笑いながら言った。
 霊夢は、はぁ? と顔をしかめる。

「どこがよ」
「なんか、よくわからんが……う~ん、雰囲気が」
「雰囲気?」
「そう。上手く言えないけどな」

 ふーんと呟いて、霊夢はルーミアを縁側にそっと降ろす。
 ルーミアはまだ動けないようだ。
 ちなみに麦藁帽子には、ルーミアの希望により、霊夢の護符が裏に貼ってある。それにより傷は付かない。

「で、何でこいつはこんな強くなったんだ? まさか霊夢が鍛えたのか?」
「私がそんな面倒なことするわけないでしょ?」
「そんなこと威張るな。じゃあ何でなんだ?」
「んー? 説明するのも面倒だわ」
「お前なぁ……」

 呆れた表情の魔理沙。

「妹紅や輝夜に教えてもらったんだよ」
「へ? あいつらに?」

 魔理沙がルーミアの言葉に驚く。
 一体どんな接点があるのかが、魔理沙には全く分からなかった。

「うん。たまに遊びに行くんだよ! その時に教えてもらってるのよ!」
「へぇ……どんな接点があったのか知らないが、そういうことか」

 輝夜も妹紅も強い。
 それに教えられたのだから、以前より強くなるのは当然だ。

「で、魔理沙」
「んぁ?」
「お昼食べてく?」
「あー……今日はいい。別にアリスの家にたかりに行くとか考えて無いぜ?」
「はいはい、分かったからさっさと行きなさい」
「家に帰るだけだぜ?」
「もう分かったから」

 魔理沙は箒にまたがり、凄い速さで飛んで行った。
 それを見送ったあと、

「ルーミア、お昼食べよっか」
「うん!」

 お昼にすることにした。



◇◇◇



「霊夢~」
「ん?」

 もうすっかり夜だ。
 お風呂から上がったルーミアが、霊夢に話かけてきた。

「どうしたの?」
「足が痛い」
「え?」

 霊夢はルーミアの足を見る。
 そこで、右足首が赤く腫れているのが分かった。

「ちょっと、何で今まで言わなかったのよ?」
「お風呂入って気付いたんだよー」

 結構酷い腫れだ。
 恐らくは、魔理沙と弾幕ごっこをした時だ。マスタースパークを浴びた後、着地が上手く出来ないで足首を痛めたのだろう。

「あんた、今日帰れるの?」
「大丈夫だよ、多分ね」

 ルーミアはそう言うが、明らかに痛いだろう。
 多分、歩かないで浮いていても、ズキズキと痛むのが容易に想像出来る。

「泊まっていきなさいよ」
「え、でも……」
「大体あんた、夜は何してんのよ?」
「しばらくぷらぷらして、疲れたら寝るくらいかな」
「じゃあ別に良いじゃない」

 ルーミアは戸惑う。
 人の家に泊まるなんて初めてだ。

「私が霊夢を食べちゃうかもしれないよ?」
「食べれるもんなら食べてみなさい。まぁあんたはそんなことしないでしょうがね」
「何で言い切れるの?」
「あんたはそんなやつじゃないって信じてるから」

 霊夢の言葉に、ルーミアは胸が熱くなるのを感じた。
 何故かは分からないけれど、嬉しかったのだ。

「えと、じゃあ……その」
「ん?」
「よ、よろしくお願いします!」

 凄い勢いで一礼をするルーミアに対して、霊夢は苦笑いを浮かべた。



◇◇◇



「ごめんねルーミア」
「いいよ、別に」

 あの後、布団を敷いたのだが、客人用の布団はしばらく使っていなかったため、ほこりを被っていた。
 そのため、霊夢と同じ布団で眠ることになった。
 布団の中で、互いに肩と肩が触れ合う距離くらいに近付く。
 暗闇の中、静寂が続く。

「ねえ霊夢」

 静寂を破ったのはルーミアだった。
 霊夢からは反応が無い。眠ってしまったのだろうか。

「ありがとう。本当に」

 それでもルーミアは続けた。
 相変わらず霊夢からは反応は無いが。

「私、すっごく感謝してるんだよ」

 ポツリポツリと言葉を紡ぐ。

「上手く言えないけど、だから、えっと、ありがとう」

 再び静寂が戻る。
 触れ合う肩から感じる微かな体温が、温かい。
 ルーミアはなんとなく、自分の手をそっと、霊夢の手に重ねた。
 ハッキリと感じる、伝わる、温かさ。
 それに安心して、ルーミアも眠りについた。
 微かに差し込むまんまるお月様の光が、二人を優しく包んでいた。
喉飴です。6話目でぃす。
私の中でほんわかとほのぼのは全くの別物。ですが、最近私の中での線引きが難しいです。
そんなこんなですが、一人でもほんわかぬくぬく楽しんで下さったなら幸いです。
喉飴
コメント



1.欠片の屑削除
ちょっとずつルーミアの世界が広がってきてますね。
併せて霊夢も姉らしく(?)なってきて可愛いです。
しかしルーミアよ、妖怪が夜寝ててもいいのか?w
2.名前が無い程度の能力削除
あぁ……だめだ……。
あなたの作品のせいで完全にルーミア信者になってしまったww

ルーミアかわいいよ!!
3.名前が無い程度の能力削除
ヤバイ…かなりイイ!

冗談抜きに感動しました!
いつも面白い作品を書いて(?)いただいて有難うございます。
これからも頑張って下さい!
4.無在削除
サブタイトルで、「まさかの鬱展開か!?」と戦慄しましたが……そうならなくてよかった、ふぅ。
(というか、私がSなだけですね、すいません)
このままルーミアが霊夢とくっつくお話になるんですかね。たぶん、この後、もう一山、大きい難題がくるんでしょうね。とても楽しみにしております。
最後の終わり方がなんとなく切なさを感じて良かったです。「まんまるお月様」の表現に優しさを感じました。
5.名前が無い程度の能力削除
次第に仲良くなる二人w
ぬくぬく~www

前回と同じように夜空も二人を温かく見守っている感じが良いですねwww
6.名前が無い程度の能力削除
毎回思うけど喉飴さんは優しい人ですねぇ(しみじみ)。絵本の様です。オブラートに包んだみたいというか色だったらパステルというか。
自分は何言ってるんだか…。阿保な感想でスマン
7.謳魚削除
>>ほんわかとほのぼのは別物
なるほど、『ほのわか』ですね分かります(誰がFusionさせろと
良しっ!このまま霊×るみゃトゥルーエンドまっしぐら……ってな訳は無いと思いますので二波乱を心待ちにしておりますわ。
むしろ霊×るみゃ×輝でm(闇符「夢想の樹海」
8.名前を表示しない程度の能力削除
ああ……これは確かに「ほのぼの」でなく「ほんわか」ですね。
読んでると言葉にできない何か柔らかいものが感じられてもう最高に……ルーミア可愛いよルーミア(コメぶち壊し
ただ相変わらずニヤニヤが止まりません、どうしてくれる!
9.名前が無い程度の能力削除
ルーミアの株がどんどん上がってく。
霊るみゃ姉妹はいいですねぇ。
10.ふぶき削除
魔理沙「お前ら姉妹みたいだな」

え?姉妹じゃないの?(笑)
こんなに良い姉妹が居る神社なら毎日参拝に行っても良いな

それにしても回を重ねる事にルーミアの可愛さがUPしていますな
11.喉飴削除
>>欠片の屑様
世界が広まって、ルーミアはより一層頑張ってます。ルーミアはいつ寝るのでしょうねw

>>2様
ルーミアの可愛さは正義です!

>>3様
楽しんで下さってなによりです。
私はコメントを下さってるみなさんのお陰でここまで頑張れています。(まだまだ未熟ですが)

>>無在様
難題を出すか出さないかは思考中です。
現段階で二通りの展開を考えていますので。

>>5様
ほんわかぬくぬくを心掛けています。

>>6様
なんと嬉しいお言葉!
私の文章は絵本のような温かさ、柔らかさを目指して書いているため、本当にありがたいお言葉です!
実は人生最初に書いた一次創作が絵本の物語だったりします。

>>謳魚様
二波乱もですかww案外そのままほんわか終わらせるかもしれませんw

>>名前を表示しない程度の能力様
私の伝えたいものを感じて下さって嬉しい限りです。
ルーミアの可愛さは正義です!

>>9様
ルーミアをどんどん好きになりましょう!
ルーミアメインの話はもっと増えるべきだと考えてます。

>>ふぶき様
ルーミアの可愛さを私の技量で伝えられるか心配なので、そう言って下さると嬉しいです。
12.名前が無い程度の能力削除
今回もほんわかぬくぬくさせてもらいました
ほんとこの二人はいい姉妹してますねぇ
幻想郷姉妹選手権でスカーレット姉妹や古明地姉妹、プリズムリバー姉妹を余裕で抜き去って優勝できますぜ
弾幕の腕前も着々と上がっているようで
魔理沙に勝つとまではいかなくても一矢報いることができるとは
そのうち霊夢と二人で魔理沙をぼこれる日がくるのでしょうか?www
そんな日を目指して、頑張れ小さな女の子!
13.喉飴削除
>>12様
ほんわかぬくぬくして下さって幸いです。
むしろ霊夢は1人で十分な気がしますw
次回も頑張ります小さな女の子!