夕暮れの博麗神社。
赤に染まる境内を、開け放たれた居間の障子越しに炬燵から暢気に眺める三人の女性。
静かな室内に響くのは、時折彼女らが茶を啜る音だけ。
コクリ…
ズズズ…
ゴクゴックン…
縁側に面した側の炬燵布団にうつ伏せに潜り込み、組んだ両腕を枕にボーッとしているのは霊夢。
霊夢からみて左に紫。炬燵の天板にやはり両腕を枕にしている。
この体制から霊夢をみると、まるで炬燵から巨大なリボンが生えているようにみえる。
それが妙に可笑しくて一人にやついている。
紫の対面には紫に連れられ、珍しく神社の居間にまで上がった藍。
主の前ではあるが、霊夢の暢気にあてられたのか、ことのほかくつろげていた。
普段だと、藍は夕飯の支度の為忙しくしている頃合である。
でも今日は橙は夕飯には顔を出さないと前もっていっていたし、紫もこうして共に神社にいるので、珍しく何もすることがない。
こうしてのんびり夕陽が沈み行くのを眺めるのはいつぶりだろう。
ふと、紫や霊夢の方へ視線を移す。
金と黒の対象的な、でも共に恐ろしく艶のある長髪が畳に、卓上に広がり陽を浴びて真っ赤に燃えている。
くせ毛気味の藍には二人のそれが羨ましく余りに美しく思えて。
いいなぁ…
じっと見とれている。
ただ、藍自身は気づいていないが、物思いにふける彼女のそんなアンニュイな佇まいが放つ色香は絶世のものであり。
確かに美しい紫、霊夢の両者をもってしても、及ばない程かもしれない。
それをチラと見た霊夢と紫は
「(畜生、次に弾幕勝負したら、徹底的に顔をねらってやるわ)」
「(私より美しいなんて反則だわ、あとで顔舐めたい)」
なーんて思っていたりしていた。
ガァーガァーガァー
烏が鳴くから帰りましょ
トップリどっぷり日は落ちて。
夕焼けの魅了から解き放たれた藍が障子と雨戸を締めて戻ってくると
ゴロンと寝返りを打ち、霊夢が仰向けになった。
「紫ぃ、お腹空いた」
「はいはい、じゃあ、今作るわね」
それを聞いてまた腰をあげる藍。
しかし紫はそれよりも早く腰を上げていて、
すでに何処からか取り出したのか、いつ着たのか、真っ白な割烹着に身を包んでいた。
頭には、いつもの”アレ”の代わりに、びしっと糊の効いた三角巾。
主の見慣れない姿をみて藍は訝しげに問いかける。
「紫さま?そのお姿は…」
何の仮装ですか、と言い切るより早く、
「なによ藍、夕食は私が作るから貴女はいいわ」
「へ?」
なんだって?何を作るって?
ポカンと立ちすくむ藍。
「さあて、何を作ろうかしらね霊夢」
「お肉がいい」
「そうね、じゃあお肉を主菜にしましょうね」
「うん」
紫の回答にとびきりの笑顔を返す霊夢。
それを見て紫もニッコリ。
二人とも、笑顔に全く棘がない。
ヒクヒクッ
二人の様子に藍の狐耳が、頬が、尻尾がビクつく
この画、何も知らないものがみたら、何て暖っかな理想的な美人母娘なんだろうなんて思うか知れない。
しかし、普段の彼女らを知る幻想郷の住人たちがみたら、かなり刺激的な光景だ。
危険だ。
泡吹いて倒れるものも出るかもしれない。
閻魔が判じれば、底なしの"黒"だろう。
「さてと、飛びきりいいお肉を用意しないとね、霊夢また痩せたでしょう?」
「ちょっとだけよ」
「駄目よ、お酒とその辺の菜っ葉ばかりじゃあ。酒代を減らして、お米を買いなさい。お酒なんて萃香にたかっちゃいなさいな」
「はーいはい」
「もう」
言って、隙間に片腕を突っ込みごそごそやりながら、そそくさ土間に降りていく紫。
ふんふーん♪
陽気に鼻歌まで聞こえる。
何コレ、あり得ない。
あの気高き大妖怪、八雲紫が。
怠惰の化身、八雲紫が。
平素一度寝転がったらてこでも、鬼の怪力でも動かない百貫ババァ八雲紫が。
コタツの魔力を打ち払ったばかりか自らおさんどんを買ってでるとな。
そもそも主が台所に立つ姿など、藍は一度も見たことが無い。
「えええええぇーっ!?」
「五月蝿い」
ビュッ
封魔針グサーッ
しかし動じず、驚愕の表情を崩さない藍。
眉間の封魔針を事も無げに抜く。
チッ
霊夢が舌打ちする。
藍の反応が気に入らないらしい。
仰向けのその体制から、躊躇なく正確に人体の急所に鉄針を投擲出来る腕を持ってるくせに。
まだ目指す高みがあるとは恐れいる。
「紫さまが料理だと…」
「それがどうしたのよ」
「お前のところにくると毎回紫さまが?」
「頼めば大体はね」
「あの方、料理出来たのか…」
「美味しい?」
「ふぇいひいー」
「口に物をいれて喋らない」
しかしその様子をみて穏やかに微笑む紫。
ニコニコ
そこに普段の胡散臭さは微塵もない。
「…(完璧じゃないか)」
和洋折衷、豪華絢爛。
づらっとならんだ色とりどりの料理が盛られた皿たちを前に唖然とする藍。
藍も紫のもとでおさんどん歴数百年。料理の腕は三ツ星料理人並という自負がある。
そんな彼女からみても主の料理の完成度はズバ抜けていた。
「何よ藍、早く食べないとそこの紅白食いしん坊に全部食べられちゃうわよ」
「わひゃひゃわふいひぃんほうひゃひゃい」
「口に物をいれて喋らない」
「え、私も食べていいのですか?」
「何で食べさせないと思うの?何で私がそんなつまらない仲間外れみたいなことするのよ。目の前のそのお箸とお膳が見えないの?」
「あ、コレ私の分だったのですね」
「あのねぇ~」
「で、紫さま」
「なあに?早く食べなさいな。本当に霊夢に全部食べられちゃうわよ」
ガツガツ
むしゃむしゃ
ごくんごくん
「ひゃからわたひは、んっ、ぶっ」
米粒ボロボロ
「口に物をいれて喋らない」
「で?なにかしら藍?」
「これは外界の何処の料亭から頂戴してきたのですか?」
「御代はちゃんと払っ
キック、チョップ、ドロップキーック!!
バキ、ドカ、ドッカーン!!!!
そしてラストは
ゆかりん☆パーンチ!!
バビューン
藍は星になった。
「ふぁっ!、ふちほこわふなっ!」
「口に物をいれて喋らない」
赤に染まる境内を、開け放たれた居間の障子越しに炬燵から暢気に眺める三人の女性。
静かな室内に響くのは、時折彼女らが茶を啜る音だけ。
コクリ…
ズズズ…
ゴクゴックン…
縁側に面した側の炬燵布団にうつ伏せに潜り込み、組んだ両腕を枕にボーッとしているのは霊夢。
霊夢からみて左に紫。炬燵の天板にやはり両腕を枕にしている。
この体制から霊夢をみると、まるで炬燵から巨大なリボンが生えているようにみえる。
それが妙に可笑しくて一人にやついている。
紫の対面には紫に連れられ、珍しく神社の居間にまで上がった藍。
主の前ではあるが、霊夢の暢気にあてられたのか、ことのほかくつろげていた。
普段だと、藍は夕飯の支度の為忙しくしている頃合である。
でも今日は橙は夕飯には顔を出さないと前もっていっていたし、紫もこうして共に神社にいるので、珍しく何もすることがない。
こうしてのんびり夕陽が沈み行くのを眺めるのはいつぶりだろう。
ふと、紫や霊夢の方へ視線を移す。
金と黒の対象的な、でも共に恐ろしく艶のある長髪が畳に、卓上に広がり陽を浴びて真っ赤に燃えている。
くせ毛気味の藍には二人のそれが羨ましく余りに美しく思えて。
いいなぁ…
じっと見とれている。
ただ、藍自身は気づいていないが、物思いにふける彼女のそんなアンニュイな佇まいが放つ色香は絶世のものであり。
確かに美しい紫、霊夢の両者をもってしても、及ばない程かもしれない。
それをチラと見た霊夢と紫は
「(畜生、次に弾幕勝負したら、徹底的に顔をねらってやるわ)」
「(私より美しいなんて反則だわ、あとで顔舐めたい)」
なーんて思っていたりしていた。
ガァーガァーガァー
烏が鳴くから帰りましょ
トップリどっぷり日は落ちて。
夕焼けの魅了から解き放たれた藍が障子と雨戸を締めて戻ってくると
ゴロンと寝返りを打ち、霊夢が仰向けになった。
「紫ぃ、お腹空いた」
「はいはい、じゃあ、今作るわね」
それを聞いてまた腰をあげる藍。
しかし紫はそれよりも早く腰を上げていて、
すでに何処からか取り出したのか、いつ着たのか、真っ白な割烹着に身を包んでいた。
頭には、いつもの”アレ”の代わりに、びしっと糊の効いた三角巾。
主の見慣れない姿をみて藍は訝しげに問いかける。
「紫さま?そのお姿は…」
何の仮装ですか、と言い切るより早く、
「なによ藍、夕食は私が作るから貴女はいいわ」
「へ?」
なんだって?何を作るって?
ポカンと立ちすくむ藍。
「さあて、何を作ろうかしらね霊夢」
「お肉がいい」
「そうね、じゃあお肉を主菜にしましょうね」
「うん」
紫の回答にとびきりの笑顔を返す霊夢。
それを見て紫もニッコリ。
二人とも、笑顔に全く棘がない。
ヒクヒクッ
二人の様子に藍の狐耳が、頬が、尻尾がビクつく
この画、何も知らないものがみたら、何て暖っかな理想的な美人母娘なんだろうなんて思うか知れない。
しかし、普段の彼女らを知る幻想郷の住人たちがみたら、かなり刺激的な光景だ。
危険だ。
泡吹いて倒れるものも出るかもしれない。
閻魔が判じれば、底なしの"黒"だろう。
「さてと、飛びきりいいお肉を用意しないとね、霊夢また痩せたでしょう?」
「ちょっとだけよ」
「駄目よ、お酒とその辺の菜っ葉ばかりじゃあ。酒代を減らして、お米を買いなさい。お酒なんて萃香にたかっちゃいなさいな」
「はーいはい」
「もう」
言って、隙間に片腕を突っ込みごそごそやりながら、そそくさ土間に降りていく紫。
ふんふーん♪
陽気に鼻歌まで聞こえる。
何コレ、あり得ない。
あの気高き大妖怪、八雲紫が。
怠惰の化身、八雲紫が。
平素一度寝転がったらてこでも、鬼の怪力でも動かない百貫ババァ八雲紫が。
コタツの魔力を打ち払ったばかりか自らおさんどんを買ってでるとな。
そもそも主が台所に立つ姿など、藍は一度も見たことが無い。
「えええええぇーっ!?」
「五月蝿い」
ビュッ
封魔針グサーッ
しかし動じず、驚愕の表情を崩さない藍。
眉間の封魔針を事も無げに抜く。
チッ
霊夢が舌打ちする。
藍の反応が気に入らないらしい。
仰向けのその体制から、躊躇なく正確に人体の急所に鉄針を投擲出来る腕を持ってるくせに。
まだ目指す高みがあるとは恐れいる。
「紫さまが料理だと…」
「それがどうしたのよ」
「お前のところにくると毎回紫さまが?」
「頼めば大体はね」
「あの方、料理出来たのか…」
「美味しい?」
「ふぇいひいー」
「口に物をいれて喋らない」
しかしその様子をみて穏やかに微笑む紫。
ニコニコ
そこに普段の胡散臭さは微塵もない。
「…(完璧じゃないか)」
和洋折衷、豪華絢爛。
づらっとならんだ色とりどりの料理が盛られた皿たちを前に唖然とする藍。
藍も紫のもとでおさんどん歴数百年。料理の腕は三ツ星料理人並という自負がある。
そんな彼女からみても主の料理の完成度はズバ抜けていた。
「何よ藍、早く食べないとそこの紅白食いしん坊に全部食べられちゃうわよ」
「わひゃひゃわふいひぃんほうひゃひゃい」
「口に物をいれて喋らない」
「え、私も食べていいのですか?」
「何で食べさせないと思うの?何で私がそんなつまらない仲間外れみたいなことするのよ。目の前のそのお箸とお膳が見えないの?」
「あ、コレ私の分だったのですね」
「あのねぇ~」
「で、紫さま」
「なあに?早く食べなさいな。本当に霊夢に全部食べられちゃうわよ」
ガツガツ
むしゃむしゃ
ごくんごくん
「ひゃからわたひは、んっ、ぶっ」
米粒ボロボロ
「口に物をいれて喋らない」
「で?なにかしら藍?」
「これは外界の何処の料亭から頂戴してきたのですか?」
「御代はちゃんと払っ
キック、チョップ、ドロップキーック!!
バキ、ドカ、ドッカーン!!!!
そしてラストは
ゆかりん☆パーンチ!!
バビューン
藍は星になった。
「ふぁっ!、ふちほこわふなっ!」
「口に物をいれて喋らない」
個人的には序盤の方向性で色々見てみたかったかも。
前半の雰囲気のまま締めてみてほしかったです
霊夢の為ならばの話だが