この物語は『頑張れ小さな女の子』シリーズとなっております。
「んっ……」
「あら、目が覚めた?」
ルーミアが目を覚ました直後、視界に入ってきたものは見たことの無い天井だった。周りを見ると、ルーミアには理解出来ないような物が大量にある。
そして部屋中に何か独特な匂いが漂っていた。その匂いに慣れていないルーミアは顔を少ししかめる。
「あぁ、薬品の匂いよ。慣れてない子にはちょっとキツいかしらね」
「……お姉さん、誰?」
先程からルーミアに話し掛けてくる人物は、ルーミアに対してクスッと柔らかい笑みを浮かべる。
銀色の長髪に、特徴的な帽子、綺麗という言葉が当て嵌まるタイプの女性だ。
「私の名前は八意永琳。うちのお姫様が迷惑をかけたようでごめんなさいね」
八意永琳、ルーミアが傷薬を貰いに行く相手だ。
ルーミアは今までの経緯を思い出した。
突然輝夜の弾幕に巻き込まれ、頭部に被弾して気絶したことを。
「そうだ! 麦藁帽子は!?」
頭部ということは、被っていた麦藁帽子に被弾したということだ。
ルーミアはそれに気付き、周りを見渡す。
「はい、これね。少し傷は付いてるけれど、壊れては無いわ」
永琳がルーミアに麦藁帽子を渡す。
麦藁帽子は、少しだけ傷付いてはいたが、被るのに問題は無い程度だ。
ルーミアはそれを受け取り、被る。
ちょっと傷が付いたのは悲しいけれど、壊れてないだけ良かったとルーミアは思った。
「妹紅から話は聞いたわ。お使いで傷薬を貰いに来たそうね?」
「うん!」
「はいこれ。姫が迷惑をかけたからお代はいらないわ」
眼を細めて柔らかい笑みを浮かべながら、ルーミアに傷薬を渡す永琳。
ルーミアはそれを受け取る。
「それと帰る前にちょっと来て欲しいのだけれどいいかしら?」
「んー? 何処へ?」
「お姫様のお部屋よ」
◇◇◇
畳の上品な匂いが漂う。障子や掛軸などが目に入る。まさに和という言葉が似合う部屋だった。
「えと、ルーミアだっけ?」
輝夜が部屋の真ん中に座っていた。そしてルーミアに話し掛ける。
「うん。そうよ」
ルーミアはそれに答えた。
「私は蓬莱山輝夜。ルーミア、ごめんなさいね。巻き込んでしまって」
永琳がルーミアを輝夜の部屋に連れてきたのは、輝夜自身が謝罪をしたいと申し出たからだ。
いつの間にやら永琳は消えていた。気をきかせて二人きりにさせたのだろう。
「お、ルーミア目を覚ましてたのか」
障子を開いて妹紅が入ってきた。妹紅はルーミアが目覚めるまで待っていたのだ。
「ちゃんと謝ったのか輝夜?」
「失礼ね。今謝ったわよ」
「許してくれたか?」
「まだ……だけど」
妹紅は、ついっとそっぽを向く輝夜の頬を引っ張る。
「ちょっと! 痛い痛い!?」
「ルーミア、こんなやつ許す必要は無いぞ」
「な!?」
柔らかい輝夜の頬を引っ張るのを止めないで続ける。妹紅は意地悪な笑みを浮かべていた。
「むしろルーミアも一発当ててやれ」
「離しなさい妹紅!」
「ルーミアが許したらな」
「ルーミアが許すのとあなたが引っ張ってる関連性は?」
「特に無い」
「なら離しなさい!」
輝夜と妹紅のやりとりを見ていたルーミアは、
「っく、あはははは!」
笑った。無邪気に声を上げながら。
突然ルーミアが笑い出したことに妹紅と輝夜は驚いた表情を浮かべている。妹紅か輝夜の頬を引っ張る手を思わず止めていた程だ。
「ははっ。いいよ、別にそんなに怒ってないから」
しばらくぽかんとしていた輝夜が妹紅の手を払う。
「ほら見なさい! ルーミアは許すって」
「くっ! ルーミア、素直すぎるのは損するぞ!」
「あはは、二人とも仲良いね」
ルーミアの何気無いその一言に、
「は?」
「え?」
輝夜と妹紅は、ぴたりと止まった。そして、
「ルーミア、永琳に眼を見てもらうと良いわ。無料にしとくから」
「あぁ、私もそう思うよ」
と真剣な表情で言ってきた。
それがルーミアにはおかしくて、小さく笑う。
「おかしいね。私、眼は凄く良いんだけど」
ルーミアは笑顔で言った。
ルーミアには純粋に二人のやりとりが楽しそうに見えたのだ。
少しだけ、羨ましく感じるくらいに。
「ちょっと……妹紅、なんなのよこの色々な意味で厄介な子。純粋すぎて扱い難いわ」
「知るか……」
輝夜と妹紅は小さな声でぶつぶつ言っている。
ルーミアには聞こえないため、ルーミアは首を傾げて疑問符を浮かべていた。
その仕草は幼い外見と相俟って可愛らしい。
「まぁ良いわ。ルーミア、晩ご飯食べてく? お詫びの意味も込めてご馳走するわ」
「え?」
ルーミアが障子を開け、外を見ると、陽が沈みかかっていた。
「妹紅も食べてく? 人参だけ」
「いるかっ!」
「そう。ならルーミアだけね。妹紅はさっさと帰りなさいな」
「言われなくてももう帰る」
妹紅が輝夜に背を向けて去ろうとする。
「あ、私も帰る! 妹紅、帰り案内して」
ルーミアがそれに続いて背を向けた。
「あら、食べていかないの?」
「うん、待ってくれてる……かもしれない人がいるから」
ルーミアのへらっとした笑顔に輝夜は柔らかい笑みを浮かべる。
「そう……分かったわ。妹紅案内してやりなさい」
「ふん、言われなくてもするさ」
「ルーミア、いつでも来なさい。まだお詫びをしていないしね」
「うん! 分かった!」
輝夜の言葉に、振り返り笑顔を浮かべて返事をしたルーミアは、本当に、純粋だった。
そして妹紅もルーミアも居なくなった部屋で、輝夜は考えていた。
あんな純粋さを見たのは久し振りだった、自分が永い時を過ごしている中で忘れ去っていた何かを、思い出した気がした、と。
「はぁ……」
輝夜は深い溜め息を吐いた。
輝夜自身、溜め息を吐いた理由は分からない。
ただ、そんな気分になったからだ。
そして輝夜は、部屋を出た。
◇◇◇
「忘れ物は無いな?」
「当たり前よ!」
「よし、なら行くか」
永遠亭からルーミアと妹紅が出発しようとするその瞬間、
「ルーミア!」
輝夜が走って来た。急いで来たため、息は絶え絶えで、美しい黒の長髪は乱れていた。
妹紅もルーミアも驚いた様子だ。
「どうしたんだ輝夜?」
「えと、その……絶対にまた来なさい!」
「え、うん」
「それと妹紅! その、次は客人としてちゃんと迎えるわ……」
「は?」
「話は終わり! さぁ帰りなさい!」
一方的に話し始めたと思ったら、突然真っ赤になって必死に帰れと言う輝夜に対して、ルーミアも妹紅もついていけてない。
「痛っ! 叩くな叩くな! 帰るから!」
妹紅がルーミアの手を引き、永遠亭から出て行った。
ルーミアがきっかけで、輝夜は何かが変わったかもしれない。
ほんの少しの変化かもしれないけれど、それは多分良い変化。
◇◇◇
またな、と言われ無事案内してくれた妹紅と別れた。
ルーミアも、またね、と言った。
空は黒に染まり、星だけが灯の役割を果たす時刻になっている。
闇を纏わなくても、麦藁帽子を被らなくてもいい空だが、ルーミアは麦藁帽子を被ったままでいた。
「あ、霊夢!」
境内に入ると、賽銭箱の前に霊夢が立って居た。ルーミアを待っていたのだろう。
「あ、やっと帰って来たわね」
「うん、ただいま!」
「おかえりなさい。で、お使いは?」
「ん!」
傷薬を誇らしげに差し出すルーミア。
「よくできました」
「えへ~」
霊夢は、麦藁帽子を取り、おどけた口調でルーミアの頭を撫でる。
ルーミアも、おどけた霊夢に合わせた。
しばらくして、二人同時に笑う。
「よし! ルーミア、お疲れ様。それじゃあ」
「ご飯!」
「食べましょう!」
二人ともお腹を可愛らしく鳴らして、それをまた笑う。
そんな二人を、満天の空が照らしている。
星の光は優しさを帯びて、二人を包んでいた。
>「うん、待ってくれてる……かもしれない人がいるから」
そこは自信持とうよw
るみゃの純粋さが輝夜様に伝染した…
しかしピュアな闇使いとはこれいかに
そこがいいけど
頑張れ小さな女の子!
誰よりも光を知っているが故に、
闇が使えるw
良いですね、家族ってw
今回も面白かったです!
残り半分も頑張っちゃって下さい!
喉飴さんのおかげか、最近ルーミア熱が上昇中です。
これが喉飴さんの真の糖分罠(スウィートトラップ)……!
ルーミアは頑張りました。
まだルーミアは不安なのですよw
>>2様
ほんわかぬくぬくは素晴らしいことだと思います。
>>3様
私はなんとなくルーミアのイメージがピュアなんでこうなってしまいます。
ほんわかぬくぬく次回も頑張る小さな女の子!
>>4様
家族の温もりはほんわかぬくぬくですよね。
>>5様
遅筆なのに待って下さって嬉しいです。
残り半分、全力で書きます!
>>6様
今回はよりほのぼの要素を増やしました。
それは嬉しい限りです。ルーミア熱が上昇は素晴らしいこと!
>>謳魚様
輝夜も少しだけルーミアの純粋に感化されました。
もう半分終わってしまったんですか…
いや、まだ半分残っているんですね?
楽しみ待ってます
そして>>6氏と同意でルーミア熱が急上昇中です。
もうどうにも(ニヤニヤが)止まらないwww
あと半分、より良い作品を書き上げたいと思います!
>>名前を表示しない程度の能力様
ぬくぬくして下さって嬉しいです!
それは非常に良いことです! ルーミアは正義です!