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頑張れ小さな女の子~5.初めてのお使い。後編

2009/02/22 08:25:13
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この物語は『頑張れ小さな女の子』シリーズとなっております。







「んっ……」
「あら、目が覚めた?」

 ルーミアが目を覚ました直後、視界に入ってきたものは見たことの無い天井だった。周りを見ると、ルーミアには理解出来ないような物が大量にある。
 そして部屋中に何か独特な匂いが漂っていた。その匂いに慣れていないルーミアは顔を少ししかめる。

「あぁ、薬品の匂いよ。慣れてない子にはちょっとキツいかしらね」
「……お姉さん、誰?」

 先程からルーミアに話し掛けてくる人物は、ルーミアに対してクスッと柔らかい笑みを浮かべる。
 銀色の長髪に、特徴的な帽子、綺麗という言葉が当て嵌まるタイプの女性だ。

「私の名前は八意永琳。うちのお姫様が迷惑をかけたようでごめんなさいね」

 八意永琳、ルーミアが傷薬を貰いに行く相手だ。
 ルーミアは今までの経緯を思い出した。
 突然輝夜の弾幕に巻き込まれ、頭部に被弾して気絶したことを。

「そうだ! 麦藁帽子は!?」

 頭部ということは、被っていた麦藁帽子に被弾したということだ。
 ルーミアはそれに気付き、周りを見渡す。

「はい、これね。少し傷は付いてるけれど、壊れては無いわ」

 永琳がルーミアに麦藁帽子を渡す。
 麦藁帽子は、少しだけ傷付いてはいたが、被るのに問題は無い程度だ。
 ルーミアはそれを受け取り、被る。
 ちょっと傷が付いたのは悲しいけれど、壊れてないだけ良かったとルーミアは思った。

「妹紅から話は聞いたわ。お使いで傷薬を貰いに来たそうね?」
「うん!」
「はいこれ。姫が迷惑をかけたからお代はいらないわ」

 眼を細めて柔らかい笑みを浮かべながら、ルーミアに傷薬を渡す永琳。
 ルーミアはそれを受け取る。

「それと帰る前にちょっと来て欲しいのだけれどいいかしら?」
「んー? 何処へ?」
「お姫様のお部屋よ」



◇◇◇



 畳の上品な匂いが漂う。障子や掛軸などが目に入る。まさに和という言葉が似合う部屋だった。

「えと、ルーミアだっけ?」

 輝夜が部屋の真ん中に座っていた。そしてルーミアに話し掛ける。

「うん。そうよ」

 ルーミアはそれに答えた。

「私は蓬莱山輝夜。ルーミア、ごめんなさいね。巻き込んでしまって」

 永琳がルーミアを輝夜の部屋に連れてきたのは、輝夜自身が謝罪をしたいと申し出たからだ。
 いつの間にやら永琳は消えていた。気をきかせて二人きりにさせたのだろう。

「お、ルーミア目を覚ましてたのか」

 障子を開いて妹紅が入ってきた。妹紅はルーミアが目覚めるまで待っていたのだ。

「ちゃんと謝ったのか輝夜?」
「失礼ね。今謝ったわよ」
「許してくれたか?」
「まだ……だけど」

 妹紅は、ついっとそっぽを向く輝夜の頬を引っ張る。

「ちょっと! 痛い痛い!?」
「ルーミア、こんなやつ許す必要は無いぞ」
「な!?」

 柔らかい輝夜の頬を引っ張るのを止めないで続ける。妹紅は意地悪な笑みを浮かべていた。

「むしろルーミアも一発当ててやれ」
「離しなさい妹紅!」
「ルーミアが許したらな」
「ルーミアが許すのとあなたが引っ張ってる関連性は?」
「特に無い」
「なら離しなさい!」

 輝夜と妹紅のやりとりを見ていたルーミアは、

「っく、あはははは!」

 笑った。無邪気に声を上げながら。
 突然ルーミアが笑い出したことに妹紅と輝夜は驚いた表情を浮かべている。妹紅か輝夜の頬を引っ張る手を思わず止めていた程だ。

「ははっ。いいよ、別にそんなに怒ってないから」

 しばらくぽかんとしていた輝夜が妹紅の手を払う。

「ほら見なさい! ルーミアは許すって」
「くっ! ルーミア、素直すぎるのは損するぞ!」
「あはは、二人とも仲良いね」

 ルーミアの何気無いその一言に、

「は?」
「え?」

 輝夜と妹紅は、ぴたりと止まった。そして、

「ルーミア、永琳に眼を見てもらうと良いわ。無料にしとくから」
「あぁ、私もそう思うよ」

 と真剣な表情で言ってきた。
 それがルーミアにはおかしくて、小さく笑う。

「おかしいね。私、眼は凄く良いんだけど」

 ルーミアは笑顔で言った。
 ルーミアには純粋に二人のやりとりが楽しそうに見えたのだ。
 少しだけ、羨ましく感じるくらいに。

「ちょっと……妹紅、なんなのよこの色々な意味で厄介な子。純粋すぎて扱い難いわ」
「知るか……」

 輝夜と妹紅は小さな声でぶつぶつ言っている。
 ルーミアには聞こえないため、ルーミアは首を傾げて疑問符を浮かべていた。
 その仕草は幼い外見と相俟って可愛らしい。

「まぁ良いわ。ルーミア、晩ご飯食べてく? お詫びの意味も込めてご馳走するわ」
「え?」

 ルーミアが障子を開け、外を見ると、陽が沈みかかっていた。

「妹紅も食べてく? 人参だけ」
「いるかっ!」
「そう。ならルーミアだけね。妹紅はさっさと帰りなさいな」
「言われなくてももう帰る」

 妹紅が輝夜に背を向けて去ろうとする。

「あ、私も帰る! 妹紅、帰り案内して」

 ルーミアがそれに続いて背を向けた。

「あら、食べていかないの?」
「うん、待ってくれてる……かもしれない人がいるから」

 ルーミアのへらっとした笑顔に輝夜は柔らかい笑みを浮かべる。

「そう……分かったわ。妹紅案内してやりなさい」
「ふん、言われなくてもするさ」
「ルーミア、いつでも来なさい。まだお詫びをしていないしね」
「うん! 分かった!」

 輝夜の言葉に、振り返り笑顔を浮かべて返事をしたルーミアは、本当に、純粋だった。
 そして妹紅もルーミアも居なくなった部屋で、輝夜は考えていた。
 あんな純粋さを見たのは久し振りだった、自分が永い時を過ごしている中で忘れ去っていた何かを、思い出した気がした、と。

「はぁ……」

 輝夜は深い溜め息を吐いた。
 輝夜自身、溜め息を吐いた理由は分からない。
 ただ、そんな気分になったからだ。
 そして輝夜は、部屋を出た。



◇◇◇



「忘れ物は無いな?」
「当たり前よ!」
「よし、なら行くか」

 永遠亭からルーミアと妹紅が出発しようとするその瞬間、

「ルーミア!」

 輝夜が走って来た。急いで来たため、息は絶え絶えで、美しい黒の長髪は乱れていた。
 妹紅もルーミアも驚いた様子だ。

「どうしたんだ輝夜?」
「えと、その……絶対にまた来なさい!」
「え、うん」
「それと妹紅! その、次は客人としてちゃんと迎えるわ……」
「は?」
「話は終わり! さぁ帰りなさい!」

 一方的に話し始めたと思ったら、突然真っ赤になって必死に帰れと言う輝夜に対して、ルーミアも妹紅もついていけてない。

「痛っ! 叩くな叩くな! 帰るから!」

 妹紅がルーミアの手を引き、永遠亭から出て行った。
 ルーミアがきっかけで、輝夜は何かが変わったかもしれない。
 ほんの少しの変化かもしれないけれど、それは多分良い変化。



◇◇◇



 またな、と言われ無事案内してくれた妹紅と別れた。
 ルーミアも、またね、と言った。
 空は黒に染まり、星だけが灯の役割を果たす時刻になっている。
 闇を纏わなくても、麦藁帽子を被らなくてもいい空だが、ルーミアは麦藁帽子を被ったままでいた。

「あ、霊夢!」

 境内に入ると、賽銭箱の前に霊夢が立って居た。ルーミアを待っていたのだろう。

「あ、やっと帰って来たわね」
「うん、ただいま!」
「おかえりなさい。で、お使いは?」
「ん!」

 傷薬を誇らしげに差し出すルーミア。

「よくできました」
「えへ~」

 霊夢は、麦藁帽子を取り、おどけた口調でルーミアの頭を撫でる。
 ルーミアも、おどけた霊夢に合わせた。
 しばらくして、二人同時に笑う。

「よし! ルーミア、お疲れ様。それじゃあ」
「ご飯!」
「食べましょう!」

 二人ともお腹を可愛らしく鳴らして、それをまた笑う。
 そんな二人を、満天の空が照らしている。
 星の光は優しさを帯びて、二人を包んでいた。
というわけで、無事お使い終了です。
そしてこのシリーズもやっと半分が終了。
あと半分、付き合って下さると幸いです。
そして、これを読んでほんわかぬくぬくな気分になって下さると嬉しいです。
わふっ!
喉飴
コメント



1.欠片の屑削除
よく出来ました!
>「うん、待ってくれてる……かもしれない人がいるから」
そこは自信持とうよw
2.名前が無い程度の能力削除
ぬくぬく(フユノ フトンテキニ)
3.名前が無い程度の能力削除
ほんわかぬくぬく~

るみゃの純粋さが輝夜様に伝染した…
しかしピュアな闇使いとはこれいかに
そこがいいけど

頑張れ小さな女の子!
4.名前が無い程度の能力削除
今年は春の訪れが早いですねwwwぬくぬく~

誰よりも光を知っているが故に、
闇が使えるw

良いですね、家族ってw
5.名前が無い程度の能力削除
待ってましたぁぁ!!

今回も面白かったです!

残り半分も頑張っちゃって下さい!
6.名前が無い程度の能力削除
ほのぼの幻想郷……行ってみたい。
喉飴さんのおかげか、最近ルーミア熱が上昇中です。
7.謳魚削除
ルーミアにまた来る様に告げる姫さまが可愛過ぎて脳内に「るみゃ輝」爆誕。
これが喉飴さんの真の糖分罠(スウィートトラップ)……!
8.喉飴削除
>>欠片の屑様
ルーミアは頑張りました。
まだルーミアは不安なのですよw

>>2様
ほんわかぬくぬくは素晴らしいことだと思います。

>>3様
私はなんとなくルーミアのイメージがピュアなんでこうなってしまいます。
ほんわかぬくぬく次回も頑張る小さな女の子!

>>4様
家族の温もりはほんわかぬくぬくですよね。

>>5様
遅筆なのに待って下さって嬉しいです。
残り半分、全力で書きます!

>>6様
今回はよりほのぼの要素を増やしました。
それは嬉しい限りです。ルーミア熱が上昇は素晴らしいこと!

>>謳魚様
輝夜も少しだけルーミアの純粋に感化されました。
9.ふぶき削除
純粋なルーミアは可愛い
もう半分終わってしまったんですか…
いや、まだ半分残っているんですね?

楽しみ待ってます
10.名前を表示しない程度の能力削除
喉飴氏のぬくぬく加減はまさにコタツ要らずだぜ!

そして>>6氏と同意でルーミア熱が急上昇中です。
もうどうにも(ニヤニヤが)止まらないwww
11.喉飴削除
>>ふぶき様
あと半分、より良い作品を書き上げたいと思います!

>>名前を表示しない程度の能力様
ぬくぬくして下さって嬉しいです!
それは非常に良いことです! ルーミアは正義です!