「藍、ちょっと来なさい」
「はい?」
洗い物をしていた手を止め、水滴をタオルで拭う。
私を呼ぶ紫様の声はいつになく真剣で、きっと何か大事な話があるのだろうと、私はそう思った。
「お待たせいたしました、紫様」
襖を開け、傅く私。紫様は炬燵に入りながらテレビジョンをご覧になられていて、テーブルの上には蜜柑の皮が数個転がっていた。
きちんとゴミ箱に捨ててください、と言いかけて私はその言葉を飲み込む。
今は注意をすべき時ではなく、紫様の話を拝聴すべき時なのだ。
また式として出すぎた真似をしてしまうところだった。危ない危ない。
「藍……私はとてつもないことに気づいたの。これは私の明日に関わる問題かもしれないわ」
「というと?」
紫様がこちらへと顔を向ける。その表情は硬く強張っていて、それが私の緊張を高めていく。
一体紫様がこれほどまでにお悩みになっている問題とは、果たして……。
「ちょっと藍、そこに立ってみてちょうだい」
「はい? わかりました」
「そうそう。ふぅむ」
紫様は目を細めて、品定めをするかのようくまなく目線を這わせておられる。
私の体が、どこかおかしいのだろうか。緊張で思わず、生唾を飲み込んでしまう。
「ちょっと、体を前にして腕をこー、くって! クッて! してもらえるかしら?」
「は、はぁ……?」
手首と手首をくっつけたまま、腕を下ろすポーズ。一体それに何の意味があるのだろうか。
しかし、主の考えに理解が至らないのは式の不徳の成すところ。
「えっと、はい。ど、どうですか?」
言われた通りの体勢を取ると、その、なんていうんだろう。
胸が、強調されるような気がしてならない。
「やったあああああああ! これが本当の藍さまんじゅうね! 橙がずっと藍さま藍さま言うから急に思いついたのよ!
いやーもう、胸がお饅頭みたいになっててすごいすごい! いやーテレビがつまらないからやらせてみたけど大成功だったわ!
あーっはっはっはっ!」
紫様は破顔なされた。
そしてひとしきり笑ったかと思うと、先ほどまでと同じ、小難しいことを考える表情へと戻った。
「いいわ藍。ご苦労だったわね」
テレビのチャンネルが、リモコン操作でクルクル変わっていく。
「はい?」
洗い物をしていた手を止め、水滴をタオルで拭う。
私を呼ぶ紫様の声はいつになく真剣で、きっと何か大事な話があるのだろうと、私はそう思った。
「お待たせいたしました、紫様」
襖を開け、傅く私。紫様は炬燵に入りながらテレビジョンをご覧になられていて、テーブルの上には蜜柑の皮が数個転がっていた。
きちんとゴミ箱に捨ててください、と言いかけて私はその言葉を飲み込む。
今は注意をすべき時ではなく、紫様の話を拝聴すべき時なのだ。
また式として出すぎた真似をしてしまうところだった。危ない危ない。
「藍……私はとてつもないことに気づいたの。これは私の明日に関わる問題かもしれないわ」
「というと?」
紫様がこちらへと顔を向ける。その表情は硬く強張っていて、それが私の緊張を高めていく。
一体紫様がこれほどまでにお悩みになっている問題とは、果たして……。
「ちょっと藍、そこに立ってみてちょうだい」
「はい? わかりました」
「そうそう。ふぅむ」
紫様は目を細めて、品定めをするかのようくまなく目線を這わせておられる。
私の体が、どこかおかしいのだろうか。緊張で思わず、生唾を飲み込んでしまう。
「ちょっと、体を前にして腕をこー、くって! クッて! してもらえるかしら?」
「は、はぁ……?」
手首と手首をくっつけたまま、腕を下ろすポーズ。一体それに何の意味があるのだろうか。
しかし、主の考えに理解が至らないのは式の不徳の成すところ。
「えっと、はい。ど、どうですか?」
言われた通りの体勢を取ると、その、なんていうんだろう。
胸が、強調されるような気がしてならない。
「やったあああああああ! これが本当の藍さまんじゅうね! 橙がずっと藍さま藍さま言うから急に思いついたのよ!
いやーもう、胸がお饅頭みたいになっててすごいすごい! いやーテレビがつまらないからやらせてみたけど大成功だったわ!
あーっはっはっはっ!」
紫様は破顔なされた。
そしてひとしきり笑ったかと思うと、先ほどまでと同じ、小難しいことを考える表情へと戻った。
「いいわ藍。ご苦労だったわね」
テレビのチャンネルが、リモコン操作でクルクル変わっていく。
と言う訳でお饅頭2個下さいな
お饅頭はあんこが食べられないから私に注文する資格はナッスィン!
スキマ通販も使えないしなぁ……。