「パチェの料理なんて随分久しぶりね、十年以上は食べてない気がするわ」
「…まぁ、たまにはね」
レミリアの前に料理の盛り付けられた皿を並べながら、パチュリーはそう返す。
これでも一人でいた頃は自炊が中心だったのである。
本を読む時間をより多く確保するためにどれだけ早く出来るかを研究したものだ。
何もしなくても料理が出てくるのに、何故急に料理をしようと思ったかと言えば単純な話で蔵書の整理をしていたら、昔書きためていたレシピが出てきたので急に作りたくなっただけのことである。
ちょうとそこに暇そうにしていたレミリアに出くわしたので料理の被験者になってもらうことになったわけである。
「一応味見はしたけれど、口に合うかは保証しないわよ?」
「ふふ、私達の仲じゃない?その程度で文句は言わないわよ」
「…ええ、そうね。昔も文句は言わなかったわね」
その代りに美味しくないと思ったものはとことん口にしないという徹底振りだったけれど。
そして、まずはシチューから口につけるレミリア。
内心ひやひやしていたが、すぐに満足げな表情になるのを見て安心する。
どうやら、腕の方は落ちていなかったらしい。
「んー、咲夜の料理も美味しいけれど、パチュリーのも美味しいわー」
「それはどうも」
「…あら?」
「…?」
二杯目にかかろうとしていたレミリアの動きが止まる。
やはり何かまずいところでもあったのだろうか、と不安になる。
「髪の毛入ってるわよ。この長い髪はきっとパチェのね」
シチューの中から摘まみだしたのは一本の髪の毛。
作っている途中でまぎれたのか、それとも配膳中にまぎれたのか。
いずれにしても不覚には違いない。
「ごめんなさい、すぐに新しいものと入れ替えるわ」
「……」
が、当のレミリアはその髪の毛をじっと見つめている。
「――えい」
そして、ぱくりと口の中に入れた。
何とも言えないような沈黙。
「…レミィはそんな特殊な趣味があったかしら?」
「あら、まるで変態のような扱いみたいね」
「まるでというよりはそれそのものの扱いのつもりよ」
少し壁が出来てしまった感じである。
二人の友情の間に万里の長城より長い壁が出来上がった。
「何を言ってるの。これだって立派な吸血活動。私からすれば食事の様なものよ」
「…はい?」
「あら、その様子だと本当に知らないのね。髪の毛は血液の一種なのよ?余血とも呼ばれるくらいで、吸血鬼の間では髪の毛で吸う人間の血の味を判断してるくらいなんだから」
「…そうなんだ」
そうパチュリーには相槌をうつしかできない。
吸血鬼に関する文献は一通り見たはずだがそのような描写はなかったし、吸血鬼本人にそう言われてはそうなんだと頷くしかできない。
髪の毛を口に含んで悦に入っている吸血鬼を想像してみる。とてもシュールだった。
「…それでどうだったのかしら?」
「勿論美味しかったわよ♪」
満面の笑みでそう言われては結局そう納得するしかなかったのであった。
吸血鬼の奥は深すぎた。
一気にここまで妄想した俺は末期ですか
俺も同じだ。君は至って正常だよ・・・
この後レミリアによるパッチェさん吸血フラグが立ったわけですね
あれ、俺がいる
しかし…そう言われると…書きたくなて…