薄々わかっていた…最早この身が組織に無くても良いという事を
自分が必要とされたのは、戦や争いがあり
この幻想郷が混沌としていた時の頃である
自分は自らの力を振るい組織を守ってきた
血気盛んで強敵と呼ばれる物と一騎打ちで戦っていた頃もあった
だが、今の幻想郷では最早武力は必要ない
血肉を分ける戦いなどは起こるべくも無い
故に、平和なのだ…それ故に今の私は居場所が無かった
元来、武勇の方は好きだったが学には無縁であった
周りに有能な者がいたのでそれを任せ
自分が攻めるのが好きだった…
そのツケが回ってきたのやも知れない…
都度のつまり…今の自分には活躍の場が無くなり
自らの中で勝手に形見が狭い思いをし始めてきたのだ
(…潮時か…)
幸い、自分が居なくなっても後を任せれる者が居る
自らの思いを胸に秘めながら、誰にも気がつかれないように振舞う
そして計画を練ることにした…
生きていくのに必要と思われる知識の調達
武力以外の未熟な己に最低限できる事を人知れず練習する
これだけで随分時間がかかった…
だが、もうこれで十分…後に残った者も役目を果たす事は出来る
いざとなれば、他の者が手助けをしてくれるだろう
そして私は人知れず組織を離れる事にした
(…大丈夫…後は全て何とかしてくれる)
多少の心配が残っているが、それよりも今は自分の心配であった
幸い、人の良い人物に詳しい話を聞かせると
条件付では在るが一軒の空き家を紹介してもらった
元々居た組織から見ると、自分には随分小さな物であったが
かつての組織の身分ではないのだ
今の自分にはこの位の住処が丁度良い
これからが苦しい生活の始まりなのだ
これからは、自らの行ないを振り返り日記を残して行こうと思う
一日目…
初日は貸して貰った家の中を掃除する
思っているよりは綺麗な物である
だが、勝手が色々と違う為に疲れてしまった
武器を持って居る時の方がまだ楽である
夕方になり、疲れた体を押して料理を作ってみる
…出来上がったのは料理ですらなかった
(…全てを人に任せてきた報いか)
正直、泣きたくなったがそうも言ってられない
今日の晩御飯…
焦げたご飯に、切り損ねて連なった大根が入った味噌汁
…泣く気力もない
二日目
雨が降ってきた…仕方が無いので今日は借家の中で過ごす
昨日の失敗も含めて持って来た本を読む
『素人でも出来る料理の作り方』なるものを
…そうか、手は猫のように丸めると良いのか
本を読み終えたが時間は余っている
そんな時、ふと一軒家を貸してくれた人が
置いていった物があったのを思い出す
何でも『内職』と言うものだ
生きていくにはお金が居る…そのためには働くしかない
自らは不器用だが、まずはやってみる事にする
今日の内職の結果…
何とかうまくいった代物25、失敗作75…
正直泣きそうである…
三日目
何とか生活が出来るように頑張っていたが
三日目には一軒家を貸してくれた人物とその知り合いが来た
どうやら、私は本当に戦う以外の事は駄目のようだ…
しばらくの間は自分に対してその二人が色々教えてくれるそうな
…正直に言うとありがたい
この二日間だけで、自分一人である事がどれだけ大変かを思い知った
今日の晩御飯
ふっくらしたご飯に野菜を入れた鍋
…この三日目で初めてまともな食事を取った気がする
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七日目
どうやら、自分が置いてきた組織が慌てているらしい
だが、所詮は一時の物であるだろう
じきに納まる…自分の代わりになる者は居るのだ
最初は慌てるかもしれないが、そのうち周りも慣れてくる
さあ、頼まれていた薪を割る仕事を始めよう
自分には存外このような仕事が似合っている
余った分は家の借主に頼んで僅かながらのお金に換えよう
今日の薪割り…
ノルマの三倍量…いけない、楽しいから少々やりすぎた
乾燥させる間、少々置く場所に困った
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十日目
今日は良い天気なので釣りをしてみる
幸い、借主の親友も釣りをしに行くそうなので
同行させてもらう事にする
…中々釣れないものだ…
いけないいけない、気が短いのも自分の悪い癖である
こういうときこそ気を落ち着ける事が大切だと聞いている
借りた竿を構えてゆっくりと待つことにする
今日の釣果…
一匹も釣れなかった…借主の親友は大量だった
やれやれ、自らが情けない…
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二十一日目
この生活にも随分慣れてきた
そして、それと同時に組織に居た頃の自分の
なんと情けなかった事か…
今では恥ずかしくて仕方がない
これからは余り人目に触れないようにそっと過ごしていこう
かつての自分を知っている人に見つからないように…
「ふぅ…」
日記が書き終わったと共に、すっかり慣れてしまった
白湯を飲みながら、かなり硬い煎餅布団の上に横になる
着ている物も、昔のような上等な物でなく
二束三文で買える様な代物である
(明日は曇りか…)
曇りならやるべき選択肢が色々と増える
「…さあ、明日はなにをしようかしら?」
レミリア・スカーレットは今の生活にそれなりに満足しているようだった
でも、読み返すと納得できました。
このまま咲夜に見つからなかったら的なストーリーも見てみたいぜ・・・
何気に今回お嬢様かなりスキルアップ。こういう話大好きです。
なるほど、読み直して納得した。
紅魔館サイドの話も読みたくなりました。
一ヶ月続いたならその後もなんとかやっていけそうな感じですね
なんかこのまま人里に慣れて行くおぜうさまを見たかったかも。
まぁ一年に一ヶ月くらいは「隠居期」として姿をくらますのもアリじゃないでしょうか。
このお嬢様なら紅魔館も安心だ。
「わび・さび」がwww
わび・さび上昇中のお嬢様w
後日、紅魔館の台所に立つレミリア嬢を幻視いたした!
あ、ホームレスじゃないや……
う~む、やられましたね。面白かったです。
やられました。
最初から読み直すとなるほど~
2度おいしい物語でした。
そしてやはり紅魔館はレミリアあってこその紅魔館なんですね。
きっとこのレミリアは「目に見える威厳」でなく「惹きつける」部分のカリスマを持っているのだと予想。
脇役さんにまんまとだまされてしまったぜちくしょうw
もしかして「運命を操る程度の能力」で見たってことですか!?
何その的中率100%の天気予報www
贅沢な能力の使い方だなぁ、生活は質素なのにww
レミリアだとは思わなかった。
お嬢様、その思考はまた違う意味でカリスマが低下しておられますw
武力やら血肉の戦いやら割と好戦的な表現してるから妖忌ではなさそうだと思っていたらまさかレミリアだとは
最近の紅魔館組はほのぼのネタ多くて、お兄さん悶えちゃう!
・・・って、手切ったのか!?