Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

稗田阿求はここにいた

2009/02/15 23:17:24
最終更新
サイズ
2.23KB
ページ数
1

分類タグ

カタン。

主を失ってもなお、筆はそこに在り続ける。

ぽた、ぽた。

主が愛用していた机の上に、墨い涙の海をつくる。
その筆は主の死に、さも泣いているかのようだった。



9代目阿礼乙女、稗田阿求は、静かに息を引き取った。



「そう、もうそんな時期だったの」

阿求は死後、閻魔、四季映姫の元を訪れた。
ここにくるのは初めて、それと同時に10回目である。

「私ははじめまして、で、いいのかしら?」
「そうね、あなたとははじめまして、そして、久しぶり」

映姫はどこか懐かしむように言った。
阿求の中でも先祖代々からの記憶か、懐かしいという感情があふれてくる。

「また、お世話になります」
「分かりました、あなたにはこれから100年、ここで善行を積んでいただきます、よろしいですね」

映姫は問うていない、これは確認。
御阿礼の子が存在するには、在世でも黄泉でも許しをもらわなければならない。

「承知しております、それ故ここにやって参りました」



それも今は昔のこと、阿求が映姫の元で過ごし、今日がちょうど100年目。

「今日で貴女という存在は生まれ変わります、既に身体は用意しました」
「今までありがとうございます、そしてこれからも、稗田家がお世話になります」

阿求が深々と頭を下げると映姫が苦笑した。

「ふふ、その言葉を聞いたのもちょうど10回目ね」
「そのようですね、それでは映姫様、いって参ります」
「待って」

阿求はその場で振り向かずに立ち止まった。
そして映姫の次の言葉を待っていた。

「質問を、貴方方と貴女にしてもいいかしら」
「ええ」
「それでは、貴方方はなぜ、生きながら人の暮らしができぬまま死んでいく、という事を繰り返すのですか」
「それは……、間違っています」
「……」
「稗田は、とても幸せです、さまざまな世界を見て、聞いて、知って、記して、最後の一瞬まで筆を握っていられること、私は、私達は、それを幸せだと思います」
「そんな人生に、意味などあるのかしら、そこに、稗田阿求の、あなた自身の意思は存在していたのかしら」
「はい、これが私、稗田阿求の幸せです」
「貴女は、もう、行くのですね」
「はい」
「では、これで、稗田阿求という存在は消えてなくなります」
「消えるわけではありませんが、承知のうえです」
「最後に一つだけ言わせていただきます」
「なんでしょう」
「あなたは、稗田阿求は確かに存在しました。この素晴らしい幻想郷で、確かに生まれ、確かに幸せを感じ、確かに死んでいったこと、私は忘れません」
「映姫様……」
「これで話は終わりです」

そして映姫も阿求に背を向ける。

「いつの日も、別れというのはつらいものですね」
こちらでははじめましてかな。
自分にネタSSが合わないことを自覚、ちょいと練習がてらに書いたAQNでものせるとしましょう。

至らないところがあればアドバイス等お願いします。
宵月
http://eveninglunatick.blog81.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
阿燈(あとう)ちゃん誕生ですな