Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

カリスマの館

2009/02/15 08:33:15
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『カリスマ―charisma―

それは選ばれし者にのみ与えられし力。
このレポートはそのカリスマをめぐる紅魔館の恐怖の記録である』

 ***

魔理沙がいつものように紅魔館の図書館で本を漁っていたとき、一綴じのレポートを見つけた。
「…ん?なんだこれ、咲夜のレポート?でもボロボロだ…随分と昔の物だな」
魔理沙は好奇心からそれを開いてみた。
「あれ、ページが途中からしか無いな…まいっか」

***3日目***

3日目の夕方。私は扉を開いた。仕える主人の部屋の内部へと足を進めた。
主人の目前で止まり、私は努めてシニカルな笑みを浮かべてクールに言い放った。

「―――くくく、お嬢様、紅茶の準備ができてよ?」

言い終えるが早いか、主人がため息をついた。
「全然駄目よ咲夜。アマチュアカリスマクラスの域を出ない。次テイク8」
「…お嬢様、もういいかげん私…」
私は抗議の声を上げた。もうこれ以上は私の精神衛生に関わる。
「ほら、早くするのよ。『クールでカリスマな従者』の名に恥じぬように」
無視された。そしてそんな変な名を名乗った覚えは無い。

主人が突如発案した『カリスマ強化週間』も今日で3日目だ。
その「小学校を思わせるネーミング」(早苗談)に誰もが呆れつつ、
私を含む紅魔館のメンバーは全員その発案に従わなければならなかった。

ちなみに主人自身の新しい通り名は『永遠にカリスマなカリスマ』だ。
もはや原型を留めていなかった。釈然としない。

私はしぶしぶと廊下まで引き返した。また扉を開ける。力強く、盛大に。
「―――おーっほっほっ、この紅茶をお飲みっ!」
半ばやけくそ気味に高笑いをした。もうどうにでも叱ればいい。
しかし主人は目を輝かせ感嘆の声をあげた。
「ベリーカリスマフル!」
その台詞はあんまりだった。ここまで嬉しくない賞賛は生まれて初めてだった。

「…お嬢様…」
もはや3日目にして主人は私のツッコミ能力対応範囲を遥か振り切っていた。
「いいわ今のとっても!50カリスマポイント申請よ!」
「ではあと280…ポイントで今日のノルマは達成なんですね」
「そうね。その調子なら咲夜もカリスマプロフェッショナルになれるわ」
そう『永遠にカリスマなカリスマ』が誇らしげに言い切った。
なりたくない、という言葉を私は必死で飲み込んだ。

 ***

その日の夕食前の時のことだ。

「咲夜、今日のメニューは?」
「『カリスマ風トマトリゾット』と『鶏肉のカリスマ風トマト煮込み』です」
と言ってもごく普通の料理だが、そう銘打たないと主人は納得しない。
「して、そのカリスマ度は?」
「…は?」
カリスマ度?
「どのくらいカリスマカリスマしてるかってことよ!」

「…そりゃあもう…このくらい…」
両腕を大きく広げてみた。何やってんだろ私。
私はハンドジェスチャーでいかに今日の料理がカリスマなのかをアピールする。
…何やってんだろ私。もう瀟洒を名乗ることは二度と許されないかもしれない。
しかしそれを見た主人は納得気にうなずいた。
「そう、ならいいのよ」
むしろ今ので納得されてしまった自分が悲しい。泣きたくなってきた。


「そういえば、さっき見たあのカリスマ門番のことだけど…」
カリスマ門番って…。
「立ったまま寝る姿もイビキの豪快さもカリスマに溢れてたわ」
どうしよう…カリスマを目指す(ふりをする)のが本気で嫌になってきた。
「あれは将来性があるわね…ワイルド系カリスマの重鎮となりうる可能性が」
あの門番の将来性なんて全身をかけてどうでもいいことをなんとかこの主人に伝えたい。

主人はごくりと喉をならし、重要なことを口にするときのように顔を険しくして言った。
「その場合は…カリスマライセンスカードを授与する必要が生じる」
生じて欲しくなかった。
しかもなんだそのライセンスカードって。あったとしても見たくない。関わりたくない。

「咲夜…カリスマライセンスカードの実物を見たそうな顔してるわね」
してない。絶対してない。命を賭けてもいい。
「そんなに見たい?」
だから見たくないって…
しかし主人が子供のように輝く目で私を見つめる。

「も…もちろんですわ」
これを断ったらどうなることか知れたものではない。
「ふぅ…しょうがないわね……先に言っとくけど指紋つけないでね」
……指紋?
うやうやしく主人の懐から取り出されたそれを見る。

「うわぁ…」
おもわず声が出てしまった。想像以上にひどかった。
名刺サイズの画用紙にクレヨンの拙い字で「カリスマ」と書かれていた。
「ふふふ…欲しい?でも残念、まだ咲夜には早いわ」
主人が残念でしかたない、といった顔で私に宣告する。患者に癌を伝える医者のように。

「……残念でなりませんね……精進します」
その台詞を言うのにかなりの精神力を消費した。

 ***

その日結局私は朝までかかって点数ノルマを達成し、やっとのことで床に就いた。
眠りが浅かったのか夢をみた。夢にまで主人が出てきた。
『咲夜、カリスマを目指すのよ!あなたならなれる!真のカリスマに!』
言うまでもなく最悪の夢だった。
身を震わせながら跳ね起きて、夢だったと分かりほっと胸を撫で下ろした。

…しかしよく考えてみたら、現実もさっきの悪夢と大差なかったことに気づいた。
私は再び身震いをする。寝不足の日が続く。


***4日目***

4日目の夕方。主人を起こす時間である。
主人の部屋に入った私はあっけにとられた。

「お嬢様…一体何をなされて…」
しばしの絶句から何とか立ち直って問いかける。

『見れば分かるでしょう――カリスマによる寝起きのカリスマ体操よ』
逆立ちのまま主人がニヤリ、とニヒルに唇を歪めた。
シュールレアリズムの極致が今この場において体現されていた。
どんな光景かは想像にお任せしたい。
もうこれ以上の描写は私の本能が拒否をするのだ。

しばらくして体操を終え、主人は息を整えてからいった。
「ふぅ…汗かいたわね。咲夜、カリスマタオルを」

…ついに名詞にまでカリスマをつけるようになったか、と私は嘆息した。
日増しにどんどん酷くなっていく。地獄のカリスマ強化週間である。
今日の食事のメニューを伝えるときだって、きっと料理名を
『カリスマ風グラタン』ではなく『カリスマグラタン』と改める必要がある。
そうでないと主人は怒り出すのだ。おそらく。

もうやめたい。

***5日目***

5日目の夕方。私はもうこれ以上の悪化はありえないと高を括っていた。
しかし主人の部屋に足を踏み入れた私には更なる悪夢が待ち受けていた…


 ***

―――パタン、と魔理沙はそのレポートを閉じた。
「もう…読みたくないぜ…」
正常な判断だった。

「紅魔館…恐ろしい場所…っ!!」

そばにいるパチュリーが心配して魔理沙に声をかけた。
「どうしたの魔理沙?顔が真っ青よ…?」

「なぁパチュリー、『カリスマ強化週間』のことだが…」

一瞬でパチュリーの血の気が引き、読書机に倒れこんだ。
「!?おいパチュリー!大丈夫か!しっかりしろ!」
「う…うふふふ…怖い…私、怖いの……っやめてレミィ!それは私の尊厳がっ…!」
白目を剥いてうわごとを繰り返すパチュリー。
「…尊厳がっ!尊厳がぁああっ!!いやあっ!そんな目で見ないで小悪魔っ!」

どうやら『カリスマ強化週間』による犠牲者は少なくないらしい。

 *
・思い余ってギャグに試作的に挑戦してみた…これでいいのか…?
潔白
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
まさにカリスマ(笑)。だがそれがいい、これはいいギャグ作品でした。

ただ、面白かっただけにちょっと物足りなさも感じました。オチのパチュリーもカリスマ強化週間でなにがあったのか知りたかったりします。まあ、ギャグとしての勢いを考えるとこれぐらいの短さがちょうどいいのかもしれませんが。
2.名前が無い程度の能力削除
なかなかぶっとんでやがるぜ……
3.名前が無い程度の能力削除
ぶっとびすぎだろこの紅魔館www
4.名前が無い程度の能力削除
5日目の夕方に何が起こったのか気になるな~
5.名前が無い程度の能力削除
かり すま
6.名前が無い程度の能力削除
またカリスマネタか。もっと別なネタでやれ
7.名前が無い程度の能力削除
黒歴史www
このレポートをレミリアに見せたいwww
8.名前が無い程度の能力削除
続きみたいなwwww
おもしろいww