.
不肖私、宇佐見蓮子は
本日の呪われたイベント
ばれんたいんでーとやらが大嫌いである
「あああ・・・今年もこの日が来たのね・・・」
早朝5時
星も月もないので若干不確かだが
いつもあわせている時計がそう狂っている事もあるまい
なにはともあれ
私は憂鬱な気分で目を覚ましたのだった
いやしかし、今年こそ
そう今年こそ、この面倒な行事をうららかな気持ちで乗り切らねばなるまい
その固い決心のお陰で、今日はこの時間に起床することができた
「・・・そうだ、ぼーっとしてる場合じゃない!」
慌てて首を振り頭を覚ます
洗面もそこそこにさっさと着替えを済ませると
脱兎のごとくドアを開け自宅を飛び出した
そう、今年こそ
あの面倒な洗礼を回避しなければ・・・っ!
『宇佐見さんへ。これが私達の気持ちですっ!』
絶望した
ドアを開けて徒歩2歩で絶望した
鶏だって物を覚えている距離だと言うのに・・・っ!
そう、これは去年も受けてしまった洗礼の繰り返し
昨年の朝のこと
ああ、今日もバレンタインデーね
あげる相手もいないわね
でも泣かない、蓮子だものと家を出た刹那、目に飛び込んできたのは
ドアの前にうず高くつまれたチョコレートの山、山、山
すわ、何事。と目をこすっても山は鎮座したままで
全く、大学には靴箱が無いからって普通自宅にまで持ってくるか?
というかドアの前に置きっぱなしジャーマンとはどういう了見だ
シャイか? シャイガールなのか?
しかも私『達』て、端から一人で伝えようとする気概もないのか。おめでてーな
よーし私も愛の特盛送っちゃうぞー、とか。もう見てらんない。
仕方なしに泣く泣く玄関先の山を、冷蔵庫にぽいぽい放り込んだという悲しい過去
その反省を踏まえ、今年こそは仕掛けられる前に家を出ようとしたのに・・・
しかもなんだかパワーアップしてる気がしないでもない
誰だ婚姻届混ぜた奴
なにはともあれ、今年もまんまと作戦に嵌った私は
むせび泣きながら冷蔵庫にぽいぽい放り込み
不貞寝した後やはり遅刻するのだった
そして今、講義後のささやかな小休止であるが
私は既に今日一日分の体力を使い果たしてしまった
教室に着いてみれば、机の中にはチョコの山
いや、ちょっと待てよと
今日私が座る席をなぜ知っているのだと
疑問に思う私をあざ笑うようにどっさりと
おまけに講義中の周りからの視線が熱い事熱い事
まったく、なんだあんたらは
普段は男女だの、格好が男勝りだの、うーさみだの、宇佐見の蓮根だの好き勝手言っている癖に
こんなイベントがあるとすぐこれだ
汚いなさすが女達きたない
「なぁ宇佐見」
「んー・・・何?」
呼ばれて突っ伏していた顔を上げると
そこにいたのは同じ講義をとっていた男が一人
名前は・・・なんだっけ
「いや、今日ってさ、アレだろ?」
「ん?あ、あー・・・そうね」
はて、だからなんだというのか
というか一々女にチョコをねだるとはどうなんだお前
せめてそういうのは自分の彼女にでも
「だから・・・これ、やるよ」
ねだっとけと言いたぶへえぇぇ!!?!
いやいや、今日はバレンタインデーよ?
そりゃ他所の国では異性どちらからでも渡すそうだけど
ここは日本よ? ジャパンなのよ?
なんで私が男からチョコを貰わねばならないわけ?!
そしてよくみたら、同じような感じの男がちらちらとこちらを見ているし
畜生、私の女としての尊厳はとっくに0よ!
「・・・あ、ありがとう」
それでも、そこそこ社会性をやや重んじた結果
口端をひくつかせながらも、礼を言って受け取ってしまう自分が情けない
そんな私、宇佐見蓮子の冬だった
「動くと死ぬ。間違えた、死ぬと動くわ。私が死ぬ」
「ご乱心ね蓮子」
ごろごろぐだっている私に、ため息と共に就寝前の紅茶を啜るメリー
結局、このまま家に帰ると何があるかたまったもんじゃないので
一晩だけの現実逃避として、私はメリーの家に転がり込んだのだった
「大体、お菓子会社の陰謀に乗せられる輩が多過ぎるのよ
こんなことに手間をかけるんだったら、その分異変でも起きてればいいんだわ」
「言ってる事が滅茶苦茶ね」
「メリー、おかわり」
「はいはい」
とりあえず、メリーの淹れる紅茶は美味しい
自分もずずずと啜りながら、今日を恨めしく思うもう一つの原因を
半目で気づかれないように睨み付けた
そう、私がこの日を忌み嫌う理由
というか、大して好きになれないのは
目の前の女の子が、私にチョコをくれない所為でも有る
まぁまてそう怒るな
私だってこんな子どもっぽい愚痴をこぼしたいわけじゃあない
しかし、メリーは私の心中を察しているくせに
チョコをくれないどころかやきもちすらやいてくれない
それどころかたくさんもらって良かったわね、などといってくる始末
まったくそのほわほわした気遣いが羨ましいやら妬ましいやら
ぱるぱるぱるぱる・・・
「どうしたの?」
「んー、なんでもない」
クッションをベッドに放り投げて、自分もベッドにダイブ
こんな日はもうさっさと寝てしまうに限る
・・・あ、歯磨くの忘れた
「メリー、歯ブラシ借りるわよー」
「自分の使いなさいよ」
「持ってくるの忘れたんで」
「どうかと思うわそれは」
ごもっともだが致し方ない
そんな急に転がり込んだのに、お泊りセットを常備しているわけもなく
それじゃあ借りますわ、なんて洗面に向かおうとすると
「あー、蓮子。ちょっと待ちなさい」
「何よ。あなた、私の歯が虫歯建設株式会社の開発予定地にされてもいいの?」
振り向いた私
ぽすっと額のあたりを打ったのは
綺麗にラッピングされた、ちょっと大き目の箱
「その・・・歯を磨く前に、ちょっとぐらい食べときなさいな」
「え・・・メリー?」
ぽかんと口を開けたままの私に、少し赤くなりながら
「ほら・・・去年、蓮子がたくさんもらってみるみたいだったから
迷惑かなって、渡しそびれちゃって・・・」
メリーは、あははと頬をかき
「その、今年は抹茶のクッキーにしてみたから、食べやすいと思うんだけど・・・」
やっぱり迷惑だったかしら、と小首をかしげる目の前の女の子
私はといえば、頂いた箱とメリーの顔を何度か見比べるばかりで
ようやく、今日最後に、このイベントの楽しみと言うものをみつけたのだと実感すると
思わずメリーにそのまま抱きついていた
「ちょっ、蓮子?!」
「メリーの馬鹿! 去年なんでくれなかったのよ!」
「え、だからそれは渡しそびれて・・・」
「返せ! メリーからのお返しであげようとしたチョコを一人で寂しく食べた
私のあの一夜を返せ!」
「ええぇぇ」
メリーが心底呆れているのが手に取るように判るが
私は構わずプレゼントを潰さないよう気を付けながら
メリーのふくよかな胸に思う存分顔をすりつけた
まったく、これぐらいのことをしてもバチはあたるまい!
とにかく、思う存分胸のやわらかさを堪能した後
「ねぇメリー」
「なに?」
「キスするわよ」
「お好きなように」
よしよし、素直でよろしい
とりあえずクッキーを大事に机において
強く抱きしめた後、思う存分口内を蹂躙
いや、別に無理やりしているわけではないけども
やっぱりメリーの中は甘くておいしかった
「ねぇメリー」
「なに?」
「電気消すわよ」
「クッキーは食べないの?」
「点けてから食べるわ」
「・・・お好きなように」
よしよし、うちのメリーはよくできた子
とりあえず私は電気を消すと
軽く身だしなみを整えてから
メリーをベッドに引っ張り込んだのだった
不肖私、宇佐見蓮子は
本日の祝うべきイベント
ばれんたいんでーとやらが多少好きである
.
不肖私、宇佐見蓮子は
本日の呪われたイベント
ばれんたいんでーとやらが大嫌いである
「あああ・・・今年もこの日が来たのね・・・」
早朝5時
星も月もないので若干不確かだが
いつもあわせている時計がそう狂っている事もあるまい
なにはともあれ
私は憂鬱な気分で目を覚ましたのだった
いやしかし、今年こそ
そう今年こそ、この面倒な行事をうららかな気持ちで乗り切らねばなるまい
その固い決心のお陰で、今日はこの時間に起床することができた
「・・・そうだ、ぼーっとしてる場合じゃない!」
慌てて首を振り頭を覚ます
洗面もそこそこにさっさと着替えを済ませると
脱兎のごとくドアを開け自宅を飛び出した
そう、今年こそ
あの面倒な洗礼を回避しなければ・・・っ!
『宇佐見さんへ。これが私達の気持ちですっ!』
絶望した
ドアを開けて徒歩2歩で絶望した
鶏だって物を覚えている距離だと言うのに・・・っ!
そう、これは去年も受けてしまった洗礼の繰り返し
昨年の朝のこと
ああ、今日もバレンタインデーね
あげる相手もいないわね
でも泣かない、蓮子だものと家を出た刹那、目に飛び込んできたのは
ドアの前にうず高くつまれたチョコレートの山、山、山
すわ、何事。と目をこすっても山は鎮座したままで
全く、大学には靴箱が無いからって普通自宅にまで持ってくるか?
というかドアの前に置きっぱなしジャーマンとはどういう了見だ
シャイか? シャイガールなのか?
しかも私『達』て、端から一人で伝えようとする気概もないのか。おめでてーな
よーし私も愛の特盛送っちゃうぞー、とか。もう見てらんない。
仕方なしに泣く泣く玄関先の山を、冷蔵庫にぽいぽい放り込んだという悲しい過去
その反省を踏まえ、今年こそは仕掛けられる前に家を出ようとしたのに・・・
しかもなんだかパワーアップしてる気がしないでもない
誰だ婚姻届混ぜた奴
なにはともあれ、今年もまんまと作戦に嵌った私は
むせび泣きながら冷蔵庫にぽいぽい放り込み
不貞寝した後やはり遅刻するのだった
そして今、講義後のささやかな小休止であるが
私は既に今日一日分の体力を使い果たしてしまった
教室に着いてみれば、机の中にはチョコの山
いや、ちょっと待てよと
今日私が座る席をなぜ知っているのだと
疑問に思う私をあざ笑うようにどっさりと
おまけに講義中の周りからの視線が熱い事熱い事
まったく、なんだあんたらは
普段は男女だの、格好が男勝りだの、うーさみだの、宇佐見の蓮根だの好き勝手言っている癖に
こんなイベントがあるとすぐこれだ
汚いなさすが女達きたない
「なぁ宇佐見」
「んー・・・何?」
呼ばれて突っ伏していた顔を上げると
そこにいたのは同じ講義をとっていた男が一人
名前は・・・なんだっけ
「いや、今日ってさ、アレだろ?」
「ん?あ、あー・・・そうね」
はて、だからなんだというのか
というか一々女にチョコをねだるとはどうなんだお前
せめてそういうのは自分の彼女にでも
「だから・・・これ、やるよ」
ねだっとけと言いたぶへえぇぇ!!?!
いやいや、今日はバレンタインデーよ?
そりゃ他所の国では異性どちらからでも渡すそうだけど
ここは日本よ? ジャパンなのよ?
なんで私が男からチョコを貰わねばならないわけ?!
そしてよくみたら、同じような感じの男がちらちらとこちらを見ているし
畜生、私の女としての尊厳はとっくに0よ!
「・・・あ、ありがとう」
それでも、そこそこ社会性をやや重んじた結果
口端をひくつかせながらも、礼を言って受け取ってしまう自分が情けない
そんな私、宇佐見蓮子の冬だった
「動くと死ぬ。間違えた、死ぬと動くわ。私が死ぬ」
「ご乱心ね蓮子」
ごろごろぐだっている私に、ため息と共に就寝前の紅茶を啜るメリー
結局、このまま家に帰ると何があるかたまったもんじゃないので
一晩だけの現実逃避として、私はメリーの家に転がり込んだのだった
「大体、お菓子会社の陰謀に乗せられる輩が多過ぎるのよ
こんなことに手間をかけるんだったら、その分異変でも起きてればいいんだわ」
「言ってる事が滅茶苦茶ね」
「メリー、おかわり」
「はいはい」
とりあえず、メリーの淹れる紅茶は美味しい
自分もずずずと啜りながら、今日を恨めしく思うもう一つの原因を
半目で気づかれないように睨み付けた
そう、私がこの日を忌み嫌う理由
というか、大して好きになれないのは
目の前の女の子が、私にチョコをくれない所為でも有る
まぁまてそう怒るな
私だってこんな子どもっぽい愚痴をこぼしたいわけじゃあない
しかし、メリーは私の心中を察しているくせに
チョコをくれないどころかやきもちすらやいてくれない
それどころかたくさんもらって良かったわね、などといってくる始末
まったくそのほわほわした気遣いが羨ましいやら妬ましいやら
ぱるぱるぱるぱる・・・
「どうしたの?」
「んー、なんでもない」
クッションをベッドに放り投げて、自分もベッドにダイブ
こんな日はもうさっさと寝てしまうに限る
・・・あ、歯磨くの忘れた
「メリー、歯ブラシ借りるわよー」
「自分の使いなさいよ」
「持ってくるの忘れたんで」
「どうかと思うわそれは」
ごもっともだが致し方ない
そんな急に転がり込んだのに、お泊りセットを常備しているわけもなく
それじゃあ借りますわ、なんて洗面に向かおうとすると
「あー、蓮子。ちょっと待ちなさい」
「何よ。あなた、私の歯が虫歯建設株式会社の開発予定地にされてもいいの?」
振り向いた私
ぽすっと額のあたりを打ったのは
綺麗にラッピングされた、ちょっと大き目の箱
「その・・・歯を磨く前に、ちょっとぐらい食べときなさいな」
「え・・・メリー?」
ぽかんと口を開けたままの私に、少し赤くなりながら
「ほら・・・去年、蓮子がたくさんもらってみるみたいだったから
迷惑かなって、渡しそびれちゃって・・・」
メリーは、あははと頬をかき
「その、今年は抹茶のクッキーにしてみたから、食べやすいと思うんだけど・・・」
やっぱり迷惑だったかしら、と小首をかしげる目の前の女の子
私はといえば、頂いた箱とメリーの顔を何度か見比べるばかりで
ようやく、今日最後に、このイベントの楽しみと言うものをみつけたのだと実感すると
思わずメリーにそのまま抱きついていた
「ちょっ、蓮子?!」
「メリーの馬鹿! 去年なんでくれなかったのよ!」
「え、だからそれは渡しそびれて・・・」
「返せ! メリーからのお返しであげようとしたチョコを一人で寂しく食べた
私のあの一夜を返せ!」
「ええぇぇ」
メリーが心底呆れているのが手に取るように判るが
私は構わずプレゼントを潰さないよう気を付けながら
メリーのふくよかな胸に思う存分顔をすりつけた
まったく、これぐらいのことをしてもバチはあたるまい!
とにかく、思う存分胸のやわらかさを堪能した後
「ねぇメリー」
「なに?」
「キスするわよ」
「お好きなように」
よしよし、素直でよろしい
とりあえずクッキーを大事に机において
強く抱きしめた後、思う存分口内を蹂躙
いや、別に無理やりしているわけではないけども
やっぱりメリーの中は甘くておいしかった
「ねぇメリー」
「なに?」
「電気消すわよ」
「クッキーは食べないの?」
「点けてから食べるわ」
「・・・お好きなように」
よしよし、うちのメリーはよくできた子
とりあえず私は電気を消すと
軽く身だしなみを整えてから
メリーをベッドに引っ張り込んだのだった
不肖私、宇佐見蓮子は
本日の祝うべきイベント
ばれんたいんでーとやらが多少好きである
.
ちゅっちゅっ!
近頃あげチョコとかなんとかが流行ってるっていうからそれだ。
だからちゅっちゅだ。
ちゅっちゅっちゅっ!
しかし虫歯建設株式会社でミートソース吹いたw
あの歌が頭の中によみがえってきたw
何が言いたいかというと、もっとあなたの作品をちゅっちゅ。
もっと増えて欲しいな!
お前らおかしうわなにをするやめ
ちゅっちゅちゅっちゅ!
これがちゅっちゅ祭りか……!
ちゅっちゅ!ちゅっちゅ!ちゅっちゅちゅっちゅ!
ちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅ
とりあえず、素敵なちゅっちゅをありがとう
ちゅっちゅっちゅちゅちゅ!
ちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅー!!!!
ちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅ!
と同時に妬ましい……ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる……!
ちゅっちゅしましょうか
ちゅっちゅ!
蓮メリちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅ