里の片隅にある小さな食堂
『休伽羅亭食堂』
普段は殆ど閉まっているが
極々稀にお店が開いている事がある
そういう時は、ぜひ中に入ることをお勧めする
四人居るとされている職人の内の誰かが貴方を優しく迎えてくれる
もっとも、中々お店が開いている事が無いのだが
『大量に手に入れてきたなの~』
「…これは…」
「ほんとに凄い量ね…」
「これが苺なら…」
そして、今日は珍しい事に四人居るとされている職人が
全員お店の中に集まっていた
異界から船でやってきた教授…『岡崎夢美』
偉大なる魔界の神にしてアリスの母…『神綺』
博麗神社の祟り神であり魔理沙の師匠…『魅魔』
そして、死の天使だけどスケブーで話す…『サリエル』
一人でも幻想郷のパワーバランスを
在る程度変えれる存在がこの場にそろっていた
その理由が、サリエルが担いできた大量のそれであった
「しかし、良くぞこんなに大量に…」
魅魔が呆れながらテーブルの上に置かれた物を見つめる
そこに在るのはチョコ…いわば板チョコと呼ばれる代物であった
『お店のおじさんに訳話したら、感動しておまけしてくれたの』
「なるほど…それじゃあ後でプレゼントしに行かないと」
サリエルの言葉に神綺が頬に手を当てて呟いた
「とりあえず、材料は大量に手に入ったんだから…」
夢美がそう伝えて椅子から起き上がり
テーブルの上にある板チョコを見つめて額にバンダナを巻く
「此処からが真の勝負ってわけだ」
その言葉に、三人とも真剣な顔で頷くと
戦装束であるエプロンを身にまとう
「サリエル、チョコの量は!?」
『四人分に分けてあるの、予備も準備してあるの!』
「神綺、そのほかに必要な物の準備は!?」
「任せて、ナッツからウィスキーまで全てそろえてあるわ」
「魅魔、台所の準備は如何に!?」
「全て整えてある、いつでもやれるよ」
一人一人が夢美の言葉に頷きながらバンダナを頭に巻いていく
それは料理を作る際に髪が落ちないようにする為
それが2月14日の事であった
「ストロベリーチョコの事なら私が請け負う!」
マスター・オブ・ストロベリーの教授が
ストロベリーチョコに関した物を片っ端から作り上げていく
「うふふっ…ウィスキーとかお酒が入っているのは任せてね」
既に料理のスキルが化け物な魔界神が
ウィスキーボンボンやビター等の
少し大人な感じのチョコを作り上げていく
「やれやれ…細かな装飾ってのはやはり大変だねぇ…」
魅魔が額に着く汗をバンダナやタオルで拭きながら
細かな装飾を施されたチョコレートを作り上げていく
『シンプルが一番!これが子供に一番受けるの』
サリエルがまるで基本のようなハート型のチョコレートを
大量に作り上げていく
「できた…」
「ふぅ…こっちもノルマ分終ったわ」
「くぅ…久しぶりに細かい作業したから疲れた…」
『皆、お疲れ様なの』
2月14日の夜に、四人の作業は終了した
既に、用意してあるチョコレートをラップに包む作業まで終っている
その様子を四人ともホッとした表情で見つめていると
夢美が静かな声で話しかけてきた
「明日が決戦だね…」
「ええ、そうね…」
神綺が静かな闘志を籠めた目で答える
「ああ…悲しむ者は余り見たくないからね」
魅魔も神綺と同様に頷く
『…皆が幸せなら、きっとそれが良いと思うの』
サリエルの言葉が今の四人全てが思っている事だった
そして、次の日…
「…良い?私達が戦うのは負の怨念の塊…皆覚悟は出来てる?」
「「『お~!』」」
夢美の言葉にサリエル、魅魔、神綺の三人が片腕を上げて声を上げる
そして、そのかけ声と共に休伽羅亭の入り口の看板が『営業中』に変わり
(どどどどどどっ!)
それと共に、何処からとも無く地響きが聞こえて来る
「皆!来るよ!」
「ええ、準備は整えてあるわ」
「ああ、この悲しみは私達が受け止めてやろうじゃないか」
『大丈夫!きっと皆受け止めて上げれるの!』
四人がこの地響きに負けないようにお店の中で待ち構える
「よし!それじゃあ皆!今から我々の計画である
『チョコを貰えなかった人にチョコをプレゼント作戦』を発動する!」
夢美の言葉と共に、チョコが貰えなかった男達が
涙を流しながらお店の中になだれ込んで来た
「いらっしゃい皆!おばさんから義理だけどチョコをプレゼント」
「ほい、一日遅れの義理チョコだ…ああ、泣くな泣くな、次は貰える様にな」
「来年は負けないように、ほら特大アポロチョコあげるから」
『はい!手作りで一杯用意してあるから、皆安心して待つの!』
彼女達が戦うのは、昨日の言う日に作られた
大量の負の怨念…それは、チョコによってのみ昇華される
幻想郷の平和は、彼女達によって守られているのだ
「皆、頑張ってね~」
「負けるなよ~」
「来年は来るんじゃないよ~」
『御代わりあるよ~』
この休伽羅亭の皆に優しさによって
休伽羅亭は何所だ!義理チョコは貰ったけどナイショにしてれば分からn(グチャ
海老フライチョコはもらったぁぁぁぁ!
資格は十分。いざ。
エビフライチョコ…見たい……。
さて、一日遅れでも、もらいに行こうwww
欲しい…