Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

バレンタイン パルパル

2009/02/14 12:52:45
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 幻想郷を明るい太陽がゆっくり染めていく時間、私は自分の住処をそっと抜け出すと旧都の方へと向かっていく。

 今日はバレンタイン。

 外の世界は勿論の事、幻想郷でもチョコレートを配る習慣が年中行事として日常化した昨今。

 チョコレートを貰えるかどうかが人気の証と言われ、慕っている物からチョコレートを貰えるかどうかが問われて、貰えるチョコレートの量や貰える数によって嫉妬の念が生まれ。

 また、チョコレートの一個すら貰えない者達はより貰える者達に嫉妬の念を抱く。

 そうして溜まった嫉妬を集めていくのが今日の私の役目。

 まずは……旧都がいいだろう。

 旧都のあたりには地底付近では特に嫉妬が集まりやすい。

 やはり勇儀や多くの妖怪たちが多く集まっている場所だからだろうか?

 自分の心と周りの空気を同調させるように心を沈めて、人を羨ましがる心やねたみと言った物を自分の中に吸い込んでいく。

 そうしている事数分。

 集めた嫉妬を力に変えて自分の身に蓄えていくと、徐々に妖力が強まっていくのを感じる。

 ひととおり、旧都の嫉妬の力を妖力に変えると、その場を離れる。

 ここ旧都は私が普段住んでいる場所だけあって、特に私を嫌う者は多い。

 だから、誰にも声をかけられる事はないし、誰も私を気にしない。

 さて……次は人間たちの住む地上の里がいいだろう。

 あそこにも多くの嫉妬が渦巻いていて、私にとって居心地の良い場所だろうから。

「ふふ、やっぱり恋愛沙汰を考えるこんな日は私にとっての妖力を蓄えるのには最高よね」

 私は嫌われ者、どうせ、何をやっていた所で気にする者もいないし、ましてやかかわれば嫉妬の力が降りかかるかもしれないと、関わろうという者も居ない。

……だから、こんな街中でくるくると踊っていた所で気にする者なんて居ない。

 人里の中でくるくるとまるで雛のようにひとしきり嫉妬の力を回収して、妖力を存分に蓄えた私は、一度地底に戻る。

「さて、折角溜まった嫉妬の力……誰かに使ってみようかしら」

 一人、なんとなくそう呟く。

 勿論周りに聞いている物はいない。

 基本的に地獄に住む妖怪は人に忌み嫌われたものたちが多いが、その中でも私はトップクラスに嫌われている。

 だから、こんな所で呟いた所で気にする者なんていない。

 くるくると踊るように地底を回っていると、ふと目の前にいつかの化け猫が現れた。

「あれ?住処に居ないからどうしようかなーーとか思ってたんだけど、こんな所で会うなんて奇遇だねぇ」

「え?ひょっとして私を探してたとか??」

 目の前に突然現れた化け猫は、そんな風に当たり前のように私を探していた事を告げた。

「あんたの住処に行って探す相手なんてあんたしか居ないだろ。さとり様とかお空たちも待っているし、あんたがこないとバレンタインの交換会が始まらないからとっとときなよ」

「え……?地底の中でも一番嫌われ者の私をさそう?なかなか素敵な冗談ね」

「全く、クリスマスの時もそんな事言ってたけど別にあんたを嫌う理由なんて特にないよ」

「お空とかさとり様と喧嘩する原因を作って遊んだりしているのに、そういうのとか怒ってないの?」

「まぁ、嫉妬があんたの力ってのは確かだからね。地底には困った症癖を持つ奴らならたくさん居るし、そんな細かい事このお燐さんは勿論のこと、お空やさとり様たちだって気にしちゃ居ないさ」

「でも、交換会に行って私が居たら、嫉妬の力で大喧嘩ーーとかになったりするかもしれないし、私なんて呼ばない方がきっと幸せになれるわ。だから私は呼ばない方が平和だと思うけれど」

 私は嫉妬を力にする妖怪。だから私を呼べば周りに被害が及ぶし、何よりもきっとつまらない会場になる。だから、私なんて居ない方がいいし、私が居る事で得られるメリットなんて何一つないはず。



……なのに、なぜだろう?

 この化け猫のみならず、勇儀やお空、さとり達も私が来るのを待っているという。

「あーーー……もう、良いから。猫車に乗っとくれ」

 お燐はそういうと、私の手を無理矢理つかんで猫車に乗せると、パーティー会場まで連れて行く。

「どうして……私ひとり居なくたって何も困らない。それに、会場だってつまらない物になるはずなのに」

「あんたの能力は私もみんなも知っているさ。けどね、前回の地上から霊夢たちが攻めてきた時に一緒に戦ったろう?」

「確かに戦ったけれど、でもあれはあんたたちとは関係ない話じゃない」

「まぁ、そうかもしれないけどさ。さとり様もお空も勇儀も、ヤマメも……こいしや勿論私だって案時に一緒に戦ったわけで……」

「あ~~~~、まぁ戦友だから一緒に祝い事はやりたいじゃないさ。それじゃ駄目かい?」

 なんだか強引な展開で、私としても……とてもとても……。

 なんかいろいろとあるようなないような。

 そんな気分だけど、なんか悪くない。

 私も無理矢理連れ出したお燐の猫車に連れられて数分。

 猫車から降りてみたら本当に私を待っていたらしく、地霊殿の主な面々が私が会場に付くなり出迎えてくれた。

 今日はバレンタインデー。

 嫉妬の力がたくさん溜まるから確かに外に出た方が妖力的には美味しいけれど、お燐やお空たちが仲間に入れてくれるなら、待ってて家でじっとしているのも悪くないのかもしれない。

 なんか……そんな風に思った一日。








 ハッピーーーーバレンタイン。
今回の主役はパルスィ。

憎まれっ子でもバレンタインみたいな日にはささやかな幸せがあってもいいよね。

とかそんな感じで。
策謀琥珀
[email protected]
http://homepage2.nifty.com/sabokoha/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
嫉妬神様誕生ですね。
楽しくすごせてよかったねパルスィ
ところでヤマメとキスメは?
2.策謀琥珀削除
1>ちゃんと一緒にお祝いしてますよー。

お燐視点だとこんな感じなのです。
3.名前が無い程度の能力削除
いやぁ、パルスィが幸せで良かった良かった。

あと、序盤に誤字があった気がします。
4.名前が無い程度の能力削除
3>ありがとうございます。