Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

恋人の祟り神 全ての終わり

2009/02/11 17:46:20
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「…ふぅ」
 外の世界から幻想郷に戻ってきた霖之助がため息を着いた





 魅魔によって幻想郷に戻ってから数日…
 僕はしばらくの間、博麗神社で過ごしていた
 と言うのも、かなり強引に大結界を越えたらしく
 体の力がほとんど入らなかったのだ
 永遠亭から出張でやって来てくれた八意永琳曰く
『疲労が溜まっているようなものだから数日寝ていれば治るわ』
 だそうで、最後に栄養剤を手渡されたのだが
 香霖堂は外の世界にあるので寝る場所に困った
 幸い、霊夢と魔理沙が反省しているらしく
 数日間の寝床は神社を貸してくれた

 その間に、三人から状況を聞いた
 
 霊夢と魔理沙そして紫の三人がボムを放った後
 気がついたら、お店と僕の姿が完全に消えていて
 近くを探したが見つからず三人とも事の重大さ気がつくと
 大急ぎで僕を捜索を開始したらしいが
 幻想郷中を探し回っても何処にも見つからない
 閻魔に聞いてみたけど死んでも居ない
 天狗に新聞を配ってもらっても全く情報がこない
  
 そして、一番驚いた事だが幻想郷の中では
 僕がいなくなって3日間しか経っていなかったらしい
 後から八雲紫から聞いた考察なのだがどうやら
『三人のスペルカードが同時にぶつかった際に
 博麗の大結界に小さな亀裂が入ってその後すぐに閉じた
 その際、余剰の力が結界の外に漏れる等
 偶然が何個か重なり時間旅行を起したのではないか?』
 らしいが、実際の所良くわからない
 

   
 そして、僕がようやく動けるようになった頃
 八雲紫によってもう一度幻想郷の外の世界に向かう事にした
『香霖堂を幻想郷に運んでほしい』
 それが表向きの理由であったが本当の目的は
 もう一度魅魔に会って今度は一緒に幻想郷に戻る事だった

 …だが、外の世界に戻った僕を待っていたのは

 新地にされていた魅魔の居た神社の跡地と
 誰も居ない香霖堂の姿でった

 どうやら、元々工事が始まる予定だったらしいが
 少し前に起こった謎の落雷によって神社が壊れて
 その計画が前倒しされたらしい
 もう、あの場所で静かに月を見ながらお酒を飲む事は出来なくなった
  
 あの天丼を食べたお店もなくなっていた
 店主が倒れたらしくお店を畳む事にしたそうな
  
 映画館にも行ってみたが前に見ていた映画は既に終っていて
 なにやら良くわからない映画に変わっていた


(魅魔…君が居た証が…何処にも無いんだ)
 外の世界の何処にも魅魔がいた面影はなくなってしまっていた

 失意の内に幻想郷に戻ってから数日間
 霖之助はお店から出ることも無く
 沈んだままの生活を過ごしていた 

 香霖堂が幻想郷に戻ったが
 お店の看板は今だ『休業中』のままであった
 初日には魔理沙と霊夢が看板を無視して入ってきて
 僕の顔を見て色々と心配をしてくれた程だった
(…まあ、確かに情けない姿だからなあ) 
 
 昨日の夜にふと鏡でみた自分の顔を思い出す
 しばらくの間不摂生をしていたと思っていたが
 たかが数日でこれほどまでにやつれるとは思っていなかった
「まるで呪いか祟りだな…」
 そう呟いてから、思わず笑ってしまった
(…祟りか…得てして妙だな)
    
 魅魔が祟り神であった事を思い出して思わず笑ってしまった
 確かに祟りや呪いなのかもしれない
 ある程度知っている者との別れも
 今までの霖之助なら仕方の無い事だと思ってきた
 だが、今の自分の姿はどうだ?
(随分と…酷い祟りだ) 

 食事を取る事も、動く事も全てが億劫に感じられる
 外の世界に行くまで日課のように読んでいた本ですら
 既に机の上でうっすらと埃を被っていた
 ほんの少しの間一緒に暮らしていた魅魔がいなくなっただけで
 此処まで変わるとは思ってもいなかった

(…魅魔君が僕にかけたこの祟り…どうすれば解けてくれる?)
 霖之助のその言葉に誰も答えを教えてくれる者はいない
 そんな事を考えているうちに気が着けば表も暗くなり始めていた
「…さあ、部屋に戻るか」
 霖之助がため息をつきながら自分の部屋に戻ろうとした時

(カタン…)
「!?」
 不意にどこからか物音が聞こえて来た
 霖之助が驚きながらも音が聞こえた所に向かっていた
(もしかしたら…)
 ありえるはずの無い希望に縋るほど
 今の霖之助は憔悴していたのだ

「…ここか?」
 霖之助がたどり着いた場所は倉庫だった
 外の世界から戻ってきて以来一度も入っていなかった
 倉庫の中に入って数分もしないうちの、音の正体がわかった
「なんだ…物が棚から落ちただけか」
 少しの失望とそれが当然と思う気持ちで
 落ちていた物を拾い上げようとして手にとって
 霖之助が目を見開いた
「ははっ…」
 魅魔と別れてからしばらくぶりに
 霖之助は笑みを浮かべていた
「…すっかり忘れていたよ」
 手にしたのは今まですっかり存在を忘れていた
 魅魔がいたという確かな証…
「こんな変なヌイグルミは幻想郷には無いからね」
 魅魔が手にして喜んでいたエビフライを模したヌイグルミであった
 思わず手にしたそのヌイグルミを抱きしめようとして
(クシャ…)
 ヌイグルミを持ったその手に変な感触があった
 何かと思って、ヌイグルミの中からそれを取り出すと
「……!?」
 大急ぎで部屋に向かっていった
(御人好しの半人半妖へ…)
 と書かれた手紙を持って



 部屋の中に戻った霖之助が大急ぎで手紙を開いた 
『やあ御人好し…この手紙を読む頃には私は隣に居ないはずだと思う』
「魅魔…」
 始めの一文はそうか書かれていた



『多分、最後まで話せないから此処に手紙を残す事にする。
 昔の話になるけど、私が魔理沙や霊夢と一番最後の異変を解決した後
 神主から次からはスペルカードを採用するとして
 今までの戦ってかって来た一部の者達を無かった事にすると仰った…
 そしてその際に、魔理沙も出番は無いと言われた』

 その話は、魅魔から聞かされていた話の通りであった 

『私は魔理沙に消えて欲しくなかった…
 可愛がってきた弟子が師匠よりも先に居なくなるなんて
 そんな酷い仕打ちはないだろう…』

(…魅魔…君は本当に魔理沙の事を大切に思っていたんだな)

『そして、考え抜いた挙句に一つの方法を思いついた
 自分の出番を魔理沙に渡せば良い。
 本来なら、転生して次の異変からでる為に使うはずの魔力を使って
 私は魔理沙を今の幻想郷に残す事にした。』
 
 神主から与えられたはずの出番を蹴ってまで
 魔理沙を幻想郷に残したのだ

『…だが、それが成功したかを確かめる事は出来なかった。
 魔理沙を幻想郷に残すために使った大魔術の代償として
 私は幻想郷には居ない存在となってしまったからだ。
 そして気がつけば魔力がほとんど無い状態であの神社の中に居た。』

 その思いは既に弟子と師匠ではない
 魅魔にとっては魔理沙は娘同然だったのだろう

『外の世界に飛ばされたことは別に何も思って居なかった
 ただ、魔理沙が無事にしているかだけが心配だった
 だから…霖之助、お前に魔理沙の話を聞けた時は本当に嬉しかった』

 だから、魔理沙の名前に動揺して
 幻想郷で元気にしていると聞いて涙を流したのだろう
 
『魔理沙が元気にしていると聞いて満足していたんだ…
 後はこの神社が無くなり消えるのを待とうと思っていた。
 でも、思わぬ事から魔力を回復してお前との生活が始まった』

 そこからは霖之助も知っている通りだった

『…魔理沙を幻想郷に残してから
 後は消えるだけと思っていた私にとって
 お前さんとの生活は実に楽しかったよ…』

「…僕も楽しかったよ…」
(だから今とても苦しんでいる…君の掛けた祟りによって)
 
『だから、この手紙を読んでいるのなら一つ言っておきたい』

 魅魔の手紙の表がそこで終っているので
 続きの言葉をよもうと裏返す

『落ち込むなこの御人好し!』
 
 そこには大きな文字でそう書かれていた

『多分、自分の所為でとかそう思って凹んでいると思うが
 お前を幻想郷に送ろうとしたのは私の独断だから気にする事はない
 それに、まだ報酬を払っていないし報酬を貰ってないからね』
 
 それは薬を作る代金の代わりと
 戻った時に、このお店を魅魔に譲る事

『縁があればまた会える、だから私が香霖堂に戻った時に
 まだ凹んでいたり、めそめそしている様ならぶん殴るよ?』

 実に魅魔らしい言葉であった
(これじゃあ…もう凹んでられないな)
 香霖堂に戻ると書いてあるのだ… 
 何時までもうじうじして居るわけにはいかない

『追伸…魔理沙にはこの話はしないでくれるかい?
 思っている以上にあの子は繊細なんだ、
 気に病むことになると困るからね。
 そして、最後に…次に会うことになった時に…
 私の転生するはずだった名前をお前に教えるから
 次に会うときはその名前を合言葉にしようじゃないか。』

 最後の行に転生するはずの名前が書かれていて
 魅魔からの手紙はそこで終っていた
 
「そうか…また会えるか…」
 手紙を読み終えた霖之助が口元を
 笑みを見せて椅子から起き上がった
(さあ、明日からお店を開かないとな)

 




「なあ、霊夢…香霖さ…大丈夫かな?」
「そうね…正直に言うとしたらかなりやばいと思うわ」
 次の日、魔理沙と霊夢は香霖堂に向かって飛んでいた
「幻想郷に戻ってから、見るだけでも気配が希薄な感じがわかるもの」
「霊夢もそう思うか?」
 魔理沙の言葉に霊夢も頷くと、無言のまま空を飛び続けた
 二人とも、霖之助の事を心配しているのだ
 
 そして、二人がお店の前に出て驚いた
「営業中の看板が上がってるわね…」 
「おっす香霖!死んでないだろうな!?」
 霊夢の言葉を聞かずに、魔理沙が空元気でもいいから
 沈んでいる霖之助を励まそうとお店のドアを開ける
  
「やあ、おはよう二人とも」 
 そこに居たのはお店の中を掃除している霖之助の姿
 昨日とは全く別人のような姿に霊夢と魔理沙が驚いて居ると
「二人とも良いときに来た、お店を片付けるから手伝ってくれ」
 霖之助が声をかけてきた
 霊夢と魔理沙はお互いの顔を見合わせてから 
「しょうがないなあ!たまには手伝ってやるぜ」
「報酬は羊羹とお茶を所望するわね」
 ホッとした表情で霖之助の後に続いた


 
 


 近くに変なお店が在った
 何時其処にあったのかも思い出せないが
 何時其処から消えたのかも分からない
 古い神社が謎の落雷で消えた後すぐに
 そのお店は無くなっていた
 誰も、その事を不思議に思わない

 もとある場所に戻っていっただけだから 
 お店も人も…もとあるべき場所に


「もう行くの?」
「ああ…感謝するよ」
「あら?気にしないで良いわ、それよりも…」
「わかってるよ…約束は守るから」
「うふふ…お願いね」
「お前さんも、随分と子煩悩だね」
「ええ~?これが普通じゃないの?」
「流石に…いや、私が言えた義理じゃないね」
「でしょ?」
「…とりあえず色々とやらないといけない事があるからね」
「なにかしら?」

「馬鹿弟子と馬鹿巫女に拳骨食らわせてから
 大切な御人好しにツケを払いにいかないといけない」
「それは大変ね…」
「全くだよ…また今度…お酒でも飲もう」

 ええ、また会いましょう…神社の祟り神…魅魔
 今度来るときはお土産ぐらいは持ってくるよ…威厳の無い魔界神…神綺


 全ては、元の場所に帰るだけ…
 自分が居るべきだと思える場所に


「さて…久しぶりに表に出たからなぁ」
 霖之助が幻想郷の中戻ってから、少しだけ変わった事があった
 一ヶ月に数日の間、行商に出かけるようになった
 まるで、誰かを探しているかのようにも見えたが
 それは別として、幻想郷中を歩く事が増えたのだ 
(やれやれ…一週間程お店を開けてしまったか)
 そして、地下の都に足を伸ばして
 色々と交換して居たら、一週間もお店を空けてしまっていた
(しばらくお店を空けたからな…今度帰ったら掃除でもするか)
 そう思いながら、香霖堂の前まで来て大変な事に気が着いた
(鍵開きっぱなし!?)
 お店のドアが開いたままだった
 流石に一週間もお店のドアが開いていたというのはマズイ
 大急ぎでお店のドアを開けると霖之助の動きが固まった
「…遅かったねぇ」

 自分が何時も座っている椅子に座っているのは
 緑の髪をした祟り神… 

「…ただいまとお帰り…僕はどっちを言えば良いんだい?」
「どっちでも良いさ…」
 魅魔が帰ってきた霖之助に真正面から抱きつく
 そんな魅魔を霖之助も抱きしめる
「合言葉をまだ言ってないよ?」
「……手紙を見たんだね」
 霖之助が魅魔の言葉に頷くと
「冴月麟と魅魔…どっちで呼べば良い」
 その言葉に魅魔が霖之助の額に自分の額をぶつける
「どうやら、まだ転生には早すぎたみたいだ…だから魅魔のままさ」
 笑い泣きをしながらもう一度霖之助に抱きついて
「…ただいま…森近霖之助」
「おかえりなさい…魅魔」

 二人は幻想郷に戻って初めての挨拶をかわした
 や、やあ!…強い者の味方の脇役さ…
 な、なんというかその…僕は一旦逃げようと思う
 そして力を蓄えてから再び戦いを挑む

 さらばだ!今度会うときはもしかしたらイカロかも!
 本当にかっこいいのはどっちかな!?

(どうも、脇役です…相変わらずサブCPUが
 変な豚にやられていたので切り離しました
 
 さて…まず皆様に謝罪をOTL
 私では広げた風呂敷を回収し切れませんでした
 1何故、外の世界に行ったのに紫が気がつかなかったのか?
 →時間移動をしたためと、元々在る程度霊脈が通っている場所なので
  気がつきにくい場所にお店が移動していた
 
 2魅魔様が使った大魔術って何さ!?
 →曲である『リーインカーネーション』で、脇役の妄想ですが
 『自らの肉体を代償に奇跡を起す』という物で
 幻想郷に魔理沙を主人公にさせると言う奇跡の代わりに
 自分は主人公の座から放たれて、代わりに消えた(出番的に)
 と言う妄想で、本来なら転生して主人公キャラになるはずだったという事で
 転生した先の名前=冴月麟と言う新説を提案させてもらいました

 3魅魔様、霖之助を幻想郷に送ってからどうなっていたの?
 →霖之助を幻想郷に飛ばす代わりに、自分も何処かに飛ばされて
 たどり着いたのが、魔界神の居る魔界だった
 そこで偶然神綺に見つかり、保護を受けていたとの事
 …誰かいろんな人が祈ってくれたお陰かもしれませんね

 とりあえず、これぐらいで…また何か疑問があれば
 書いてくれると出来たら答えようと思います
 とりあえず言える事は…)

『魅魔様、幸せになりますように』
脇役
コメント



1.名前を表示しない程度の能力削除
やっぱり魅魔様はハッピーエンドじゃなくっちゃね!!
神綺様も魔界神らしくニクいことをしていらっしゃる。だがそれがいい。
ただ「冴月麟」という名前をが出るとは思わなかったww


『魅魔様がこれからも幸せになりますように』
2.ツイン削除
続きキター!!

この話をみてから魅魔様が好きになったんだ(霖之助は前から好きだけどなネタとしてもw

脇役さんの話、これからも期待して待っています
3.名前が無い程度の能力削除
そこで冴月麟とは・・・
なんとなく知っている名前なのではないかと思っていたのですが、
その名前は完全に予想外でした。

うむうむ、やはり脇役様の物語はハッピーエンドでないと。
これからも楽しみにしています。

『魅魔様がこれからも幸せであり続けますように』
4.名前が無い程度の能力削除
「おぉ、何という労りと友愛じゃ。
 霖之助が、霖之助が、心を開いておる……
 
 ……そのもの青き衣をまといて幻想の野に降りたつべし。
 失われた旧作との絆を結び、ついに人々を清浄の地に導かん。」

 古き言い伝えは誠であった……
 同士たちよ、私の涙で盲いた目の代わりに よぅく見ておくれ~~;;
5.万葉削除
魅魔様の優しさは全てを超える!
脇役様の魅魔様は最高です! わたくしすっかりまいっております。霖之助氏が妬ましい……
これからも素敵な作品をお待ちしております。

『魅魔様がこれからも幸せであり続けますように』
6.イスピン削除
奇跡や!俺たちの願いが奇跡を起こしたんや!

『この二人の歩む道に、天下無上の幸運を』
7.名前が無い程度の能力削除
冴月麟を絡めてくるとは!?
とにかくハッピーエンドでえがったのう…
8.名前が無い程度の能力削除
苦楽を供に…そして文字通り互いに命懸けで助け合った仲なだけにハッピーエンドでえがったー(;ω;*)
これからもこの二人の間に幸せが続きますようにッ!!
9.名前が無い程度の能力削除
良かった…二人がハッピーエンドを迎えられて本当に良かったよ……。(;ω;)ウッ
10.名前が無い程度の能力削除
イヤッホォォォォウ! さすが脇役氏! 俺たちにはできないハッピーエンドを(ry
で、まぁこの後に魔理沙と霊夢と紫がやってきて争奪戦勃発なわけですね
11.名前が無い程度の能力削除
さて…夜のほうで待ってますよ…。

続き来てるの気づかなかった。よかったー。二人ともお幸せに。
12.名前が無い程度の能力削除
マジで感動した。創想話でここまで感動したのは初めてです。脇役氏、あなたは最高だ。本当にありがとうございました。