蓬莱山輝夜は退屈している。
別にそれで何か問題がある訳ではない。だからこそ問題なのだけれども。
私がこうして縁側に座ってお茶と共にひねもす過ごすという、どこかの紅白に勝るとも劣らない生活をしていても、うちのことは永琳が全部やり繰りしてくれる。姫というのは上にいることが仕事だと言うけれど、千年も引き篭もっていると暇潰しにも困ってしまう。永夜異変の後に永遠亭を外に開いてみたけど、それで劇的に何かが変わるということもなく、今日も世は全て事もなし……つまり、この退屈は神様が決めたということ? おのれ、忌々しい海の向こうの神め。全てが貴方の思い通りになると思わないことね? この蓬莱山輝夜の大好きなことは当たり前のように与えられた運命って奴にNoと言ってやることなのよ! やり過ぎて蓬莱の薬なんて飲んだのは若気の至りだ。
最近では幻想郷全土を巻き込んだ面白い異変が起きたりしないかなーとか期待しているんだけど、なかなかそういう都合のいい異変も起きなくてがっかりしている。でも、自分でそんな異変を起こしたりはしない。だって、痛いのキライだし。異変の解決者役というポジションも密かに狙っているけど、あれはなかなか競争率が高い。あと一席くらいは空いてそうな気がするけど、メイドも吸血鬼も魔女も庭師も亡霊もスキマもブン屋もあの席をただ一つ狙っている。うちのイナバも多分ライバルだ。そもそもこの退屈を紛らわすだけなら異変じゃなくてもいいし。
せめて何か動き出す切欠でもあればいいのに。この怠惰な日常を吹き飛ばすようなハードかつハートフルでバイオレンスなアンビバレンスにスペクタクルでサスペンスな事件でも起きないかしら?
そう、たとえば目前を行くイナバが突然ばらばらになるとか――――
「あら、鈴仙。そんな支度をして、どこかに出かけるの?」
「ちょっと薬の材料が切れてきちゃったんで、湖の方に採取です」
「支度をしなさい」
「いや、支度はもうしてますけど……」
「貴方のじゃなくて、私の」
「姫様の?」
やりたいことが見つからなければ、それを見つけることをやりなさいってえーりんが言ってた。前にもそれでこの子達について行ったことがあるけど、あれはあれでなかなか退屈が紛れたように思う。
そういう訳で、今回も鈴仙にくっついて来た訳なのだけれども……。
だけど…………
「意外とイベントって起きないものね~……」
「そんなの期待していたんですか、姫様?」
「貴方と話すのなら、うちでも出来るじゃない」
「まあ、そうですけどね」
そう苦笑して、鈴仙はまた採取を再開してしまう。
この辺りがこの子の気の利かないところね。生真面目なのは結構なことだけど、こういう時にはウィットと諧謔と機知に富んだ無駄話をしてくれるのが優れた従者の在り方というものだ。永琳ならそこらの野花についての薀蓄だけでも優に一日二日は話してみせるだろう。……まあ、その前に多分私が飽きちゃうだろうけど。永琳の話は無駄に奥深くて難解で言葉の裏の裏の裏の裏の裏の裏にまで読み所があるものだから聞いていて疲れるのだ。天才というヤツはこれだからいけない。どうせ天才なら漫談とか落語とかその手のことにも精通してくれていればいいのに。
いや、暇潰しを従者任せにしているようではこれまでと変わらない。ここは一つ、自分の力で暇を潰してみるべきか。
まずは状況の確認。野原。花が咲いている。どこかで鳶が鳴いている。空が青い。……全き平和ね。なんだかうららかな陽気に眠くなりそう。暇潰しはどこからも現れそうにない。こんな時は教養人らしく短歌でも詠うと様になるかも知れない。でも、あれはもう飽きちゃったし……。
……少女らしく花冠でも作ろうかな?
「……おっかしいなぁ」
量はそこそこ見つかるけど、師匠の要求している品質を満たしている物がなかなか見つからない。この季節ならもっと見つかってもいいものなんだけど……やっぱりこれでは探索範囲が狭いんだろうか……?
だけど、姫様のことが見えない場所にまで行く訳にもいかないし……。
その姫様と言えば、さっきまで何かせっせとやっているようだったけど、もう飽きてしまったんだろうか? 私の方に向かってきている。『もう飽きたから帰るわよ』とか言い出したら波長を弄って寝かしつけてやる。
「どうしたんですか、姫様?」
「……耳が邪魔になりそうね。ちょっと取りなさい、イナバ」
「なかなか無茶苦茶言いますね……」
少なくとも私の耳は取れない。ボタンがついてる? それはただのデザインだ。大体ウサ耳のない月兎なんてただのウサギじゃないか。ウサウサ。ちなみに兎の鳴き声はウサウサじゃないっててゐが言ってた。
「暇潰しに花冠を作ってあげたのよ。だから、ありがたく頂戴しなさい」
「これはまた、随分と凝ってますね……」
「そうでもないわ」
いや、そうでもあると思う。パッと見ただけでも土台となるシロツメクサの編み込みは丁寧だし、色とりどりの花が悪趣味にならない程度に品良く織り交ぜられている。身内贔屓かも知れないけど、これはもはや芸術品と言っても過言じゃないと思う。基本的に輝夜様は器用なのだ。だからこそ飽き易いのかも知れないけど、細工物などをやらせれば職人顔負けの腕を見せたりする。そういうのは大抵暇に飽かせて覚えたと言うけど、どれだけ暇ならそこまでやり込めるんだろうか?
まあ、折角作っていただいたのだからありがたく頂戴しよう。ちょいちょいと手招きをする姫様の前で屈み込む。花冠を乗せるには確かに耳が邪魔になっちゃうだろうけど、そこは耳を通してやれば済む話だからね。だけど、もっと丁寧に扱って下さい。ウサ耳は敏感なのだ。そんな乱暴に扱われたら、悔しい、でも、ゾクゾクしちゃう……っ
「あんまり動くと耳を引っこ抜くわよ」
「う……っ」
姫様はもっと月兎への愛が必要だと思います。
ああ、でも、あんまり姫様に可愛がられると師匠に毒殺されそうな気がするから、出来れば適度な距離を取っていて欲しいです。これがハリネズミのジレンマか……。
しかし、この花冠。やけに頭の形にジャストフィットする辺り、さり気なく高度な技巧が使われている気がする。いや、花冠の技巧なんて知らないけど。
出来栄えを確認するように、姫様が何歩か下がって私の全体図を視界に収めて、じーっと見てくる。こんなのを乗せたのは初めてだから、ちょっと照れてしまう。
「えへへ、似合いますか?」
「……珍妙ね」
「言うに事欠いてそれですか……」
「やっぱりこの耳が邪魔よ」
「だから引っ張っても取れませんっ、痛い痛い痛い! ちぎれるっ! 耳がちぎれちゃいますからっ!」
これは意外と本気なのかも知れない。姫様はぐいぐいと両耳を引っ張ってくる。まるで私の耳を引っこ抜こうとしているような……ってそれが目的でしたよねー。放って置くのも地獄、引くのも地獄、だってどっちも耳が引っ張られる。だけどこのままだと私のアイデンティティが喪失してしまう。ウサ耳の取れた私なんてただの制服少女、そんな没個性少女が生き残っていけるほど幻想郷砂漠は甘くない。だから私は第三の道を切り開いてみせる!この黄金の右でっ!
「ぐふっ!」
「ああ、すみません輝夜様! うっかり振り回した手が偶然輝夜様へのリバーブローになってしまいましたっ!」
「や……やってくれるじゃない、イナバ……!」
いや、これは事故です事故。正当防衛のやむにやまれぬ偶発的な事故。だから、ウサギ、悪くない。だから師匠には告げ口しないで下さい。ここで守り抜いた尊厳が私の命ごとボッシュートされちゃいますから。そんな暗い顔をして睨みつけられても……暗い?
「姫様っ!」
咄嗟に姫様を抱き抱えて、影になっていない場所へと押し倒す。
「ど、どうしたの!? もしかしてついに鈴仙が反抗期に! いえ、ひょっとしてイナバが発情期っ!?
でもダメよ、こんな昼間の野外で行為に及べるほど私は退廃していないわ!」
「いや、違いますから!」
ドスンドスンと地面に何か重たい物が落ちてくる音がしているのにどうしてボケるんだろう、この姫様は。
「あら、晴れているのに雹が降って来たわ。こういう天気はお天気雹とでも言うのかしら?」
そんな凶悪な天気はゴメンこうむりたい。こんな大きさの雹が頭上にボロボロと降って来た日には死んでしまうではないか。いや、姫様は死なないだろうけど私が死んでしまう。よくよく考えるとまず守るべきは姫様じゃなくて自分の身だった気がする。私の命は一つしかないし。
そんな、師匠にイイ笑顔で殺られちゃいそうなことを考えていると、上からちょっと舌っ足らずな声が降って来た。
「やっぱりレーセンだったわね!」
「チルノ……。さっきの雹は貴方の仕業ね!」
「そのとーり! レーセンをびっくりさせてやろうかと思って」
「ああ、びっくりしたわよ! こんなの喰らったら死んじゃうわ!」
そう怒る私を見て、悪戯が成功した子供のようにチルノがケラケラと笑い出す。そんなチルノに怒気を挫かれてしまう辺り、私も甘い。くそぅ、見た目の役得をフルに活かしやがって……。これがあの巫女相手ならその日の夕食に氷精の活け造りが並んじゃうぞ……!
「あの子は貴方の知り合いなの?」
「ああ、はい。氷精のチルノです。いつもは霧の湖あたりにいるんですけど……」
「大ちゃん達と遊んでたのよ。おーい、大ちゃーん!」
あのヤロウ、人を殺しかけておいてまったく反省してないな……。
まあ、電車に撥ねられても平気な人間が跋扈している幻想郷では、50cm級の雹が当たるくらい大したことじゃないかも知れないけど……よく考えてみたら、全然大したことじゃない気がしてきた。ここの常識って狂ってるし、このくらいなら可愛い悪戯で済むことかも知れない……。
「大ちゃん?」
「大妖精ですね。あの緑髪の妖精で、この辺りの妖精のまとめ役みたいな感じの子ですよ」
「ふうん、妖精にもコミュニティがあるのね~」
そう姫様が感心しているけど、そこまで立派なものではないと思う。単にあの子が他の妖精に比べて思慮深くて苦労性でチルノを始めとする他の勝手気ままな妖精達の抑え役に回っているだけだ。……そういうのをコミュニティと言うのかも知れない。永遠亭におけるてゐみたいなものなんだろうか?
「もう、チルノちゃんってば。あんなことをしちゃ危ないじゃない。大丈夫でしたか、鈴仙さん?」
「うん、大丈夫よ」
「そうですか……? あの、そちらの方は初めてお会いしますよね?」
「ええ」
それでようやく姫様の存在に気付いたらしく、チルノも姫様に訝しげな視線を向ける。
「あれ、あんた誰?」
「私は輝夜よ。初めまして、氷精さん。貴方の噂はどこかで聞いたことがあるわ」
「つまりカグヤはサイキョーのあたいに会いに来たってワケね!」
「こらっ、貴方はさっきから姫様になんて口を聞くのよ!」
『どんなワケだ』とどっちを突っ込むべきか迷ったけど、一応立場上こっちにしておく。うん、今の私って従者らしい。
チルノ達はその言葉にキョトンとした顔を浮かべ
「ひめさま?」
「もしかして、偉い人なんですか?」
「そう、姫様は偉い人なのよ。どこが偉いかはちょっと説明してあげられないけど……」
「ふふっ面白いことを言うのね、鈴仙?」
やばい、失言(しくじ)った!
目を細めて薄い微笑みを浮かべている姫様に己の失態を悟る。
慌てて取り繕おうと言い訳を考えるが、それよりも早く、姫様の指は須臾の間に私の頬をぐいーっと抓りあげて
「そういう面白いことを言うのはこの口かしら? それともこっちの口かしら?」
どっちも私の口です。
「もうひふぁけひゃひまひぇん~……」
「あははははっ! レーセン、ヘンな顔~」
うっさいわ。
「まったく、失礼しちゃうわ。うちに帰ったら私の偉大さを永琳からとくと聞いておきなさい」
「師匠にそんなことを聞いても姫様がいかに可愛らしいかをとくと聞かされるだけかと……」
多分写真と動画つきで。それに二日や三日、下手をすれば一週間の徹夜は覚悟しないといけないだろう。師匠の姫様への愛情は海より深く山より高く、太陽系を大きく逸脱して、宇宙の真理へと到達せんばかりの勢いである。ぶっちゃけ常人にはよくわからない。いや、姫様は確かに可愛いですけどね。
「それは、私にはカリスマがないということ?」
「いえ、姫様のカリスマは月のように穏やかなもので一言でこれ!と言えるようなものではなくてですね?」
「……精進が足りないわね。一言で言い表せないものでも端的に表現出来るように知性を磨いておきなさい」
「が、頑張ります……」
とりあえず追及をかわすことは出来たらしい。姫様の魅力について百枚程度のレポートを書けとか言われたらどうしようかと思った。私は師匠じゃないからそんな偏執的に姫様の魅力について書き散らすことは出来ない。きっと『姫様は可愛いです』だけで埋まる、書き方練習帳になるだろう。赤インクで書いた日にはある意味ホラーだ。それはそれで喜んでくれそうだと思ってしまう辺り、私は姫様のことを何だと思っているんだろう?
それにしても……うぅ、ほっぺた痛い……。
「お話すんだー?」
「ええ、済んだわ」
「じゃあ、サイキョーのあたしがいっちょ遊んであげるわ!」
「残念、私は仕事中なの」
「じゃあ、ひめさまと遊ぶ!」
「姫様に馴れ馴れしくしない!」
「そう目くじらを立てなくてもいいわ、鈴仙」
「ですが……」
「折角だから、私はこの子達と遊んでいるわ。仕事が終わったら声を掛けてちょうだい」
言うだけ言って、姫様はさっさと妖精達の輪の中に入りに行ってしまった。……まあ、チルノ達とだったら大丈夫かな? 弾幕ごっこになっても姫様なら軽くあしらえるだろうし。私としても姫様のことを気にしなくてよければ探索範囲も広げられるし、採取もサクサク進むことだろう……やっぱり、ほっぺたが痛い……。
遊ぶと言ったチルノは、だけど、湖の周りをさっきからずっとうろうろしているだけ。何をするつもりなのかと訊いても『見てのお楽しみ』とはぐらかして教えてくれないし……。あのまま鈴仙の所でボンヤリしているよりはマシかと思ったけど、これは外れだったかしら?
「うーん、見つからないなー」
「あら、何か必要なものがあるの?」
「そーゆーこと!」
「ふうん。それなら、それが見つかるまで待ちましょうか」
しばらく手持ち無沙汰になりそうなので手頃な葉を摘み取り、口元に当てて吹いてみる。草笛なんて久しぶりにやったけど、それなりに体が覚えていたようね。我ながらなかなかいい音が出たわ。今度の暇潰しにイナバにでも教えてみましょうか? てゐはあっさりと吹いてみせたのに自分はなかなか吹けなくて悔しがる鈴仙の姿が目に浮かぶわね。そんな想像から立ち返ると、なんだかキラキラした目で妖精達に見られていた。
「スゴイスゴイ!何それ!それ何!?どうやったの!?魔法ね!?」
「そう一度に質問されても答えてあげられないわね~」
「今の、草笛ですよね?」
「あら、貴方は知っているのね」
「はい」
さすがまとめ役の大妖精。こんな所でも他の妖精とは一線を画すようだ。いや、そういう訳でもないんでしょうけど……。
「でも、そんな綺麗な音は……」
「これくらいなら、コツさえ掴んでいれば誰にでも出来るわ」
それを示すようにもう一度吹いてやると、どうやら上手く興味を引けたらしい。妖精達は我先にと草の葉を千切って、私の真似をし始めた。草笛に向いている葉と向いていない葉があるのだけど……まあ、それはおいおい教えていけばいいか。
「……鳴らない」
「そんな思い切り吹いても鳴らないわよ」
「むぅ……じゃあ、どうしろって言うのさ!」
「口頭で説明するのもなかなか難しいのよねぇ……」
「こうだよ、チルノちゃん。口の中で舌を丸めて――――」
輝夜証券場大妖精株はただいま右肩上がり。
音色こそ私のものに比べれば拙いけど、他の妖精の有様からすればまさに次元が違うと言っても過言ではない。どうやら一概に妖精と括れてしまうほど、妖精も単純ではないようね。そう言えばイナバ達も花の異変の時に氷精が意外と強かったとか言っていたような……。
「うー……サイキョーのあたしはこんなこと出来なくてもいいの!」
それでもやっぱり妖精は妖精だったらしい。私と大妖精とで指導していたけど、次から次へと放り出して勝手なことを始めてしまう。この集団の中で特に力を持っているらしいチルノが放り出したことで、完全に諦められてしまった。なるべく親切に教えていたのに輝夜ショック。まあ、飽きっぽい妖精ならこれでも持った方なんでしょうけど……。
「す、すみません。折角教えて頂いていたのに、みんな飽きっぽくて……」
「いいえ、気にしなくていいわ。元々時間潰しの戯れとして教えていたのだし……」
むしろその気遣いが逆に心に痛いわ……。
よくこんな子が妖精の集団の中で生きていけるものだ。胃が痛くならないんだろうか?
そして、ちょっとだけ反省する。私もよく飽きっぽい娘だと言われてきたのよね……。
ごめんなさい、えーりん。私が投げ出すたび、貴方はこんな気分だったのね……。
「あ、いた!」
チルノの鋭い声に回顧を打ち切る。
ごめんなさい、えーりん。反省はしても改めないわ、私は過去を振り返らない主義だから!
「ひめさま! ひめさま! こっちこっち!」
「何を見つけたの、チルノ?」
「そいつ!」
そう告げたチルノの示す先にいたのは――
「……蛙?」
紛うことなく蛙です、本当にありがとうございました。でも、そんなに喜色満面の顔をされても私はあんまり蛙は好きじゃないのよねぇ。梅雨時にゲコゲコ鳴くアマガエルに風情を覚えても、目の前のトノサマガエルに喜べるほど私は永琳じゃないし。さて、どうしたものかしら……。
「見てなさいよ、ひめさま!」
チルノがえいやっと突き出した手から、冷気が噴き出す。そういえば氷精だったわね。
冷気を向けられた先にいた蛙の身体が凍りついていき――――ついには砕け散る。
命の煌きが封じられた、赤い氷片が宙を舞う。それはもしかしたら、綺麗な光景なのかも知れない。
「あれ、失敗しちゃった」
そうキョトンとしたチルノの顔に悪びれた様子は見受けられない。きっと彼女は自分が罪を犯したという認識も持っていないに違いない。
「あ、あの……怒ってますか?」
「え? どうしてそう思うの?」
「いえ、なんだか……その……輝夜さんが、怖い顔をしていたから……」
……表情を変えたつもりはなかったのだけど、なかなか鋭い子ね。こんな子だから気ままな妖精達のまとめ役をしていられるのかも知れない。怖い顔、なんて言われるのはちょっと心外ではあるけど……。
「怒るようなことじゃないわ。生ある者はやがて滅ぶことが必定。ならば、それを戯れに散らすこともまた生の在り方よ」
蛙を凍らせて遊ぶこともさっきまで私がやっていた花冠作りも、大差がない。対象が動くか動かないか、それだけの差でしかない。それに事の善悪など文句をつけられた時にでも考えればいいのだ。どうせ私達は穢れを犯さなければ生きていけないのだから。
「でも、私が戯れにそういうことをすると鈴仙達に怒られちゃうのよ。だから、別の遊びをしましょうね」
「別の遊び?」
「そうねぇ。謎掛けなんて、いかがかしら?」
「ナゾナゾ? そんなのやっても面白くないわ」
「あら、自信がないのかしら?」
「サイキョーのあたいに解けないナゾなんてないわ!」
「ふふ、自信家ね」
こういう子に謎を掛けると思いもよらない答えが返って来て面白いかも知れない。杓子定規に答えを導くことだけが常に正しいとは限らない、この辺りを鈴仙にはちゃんと学んで欲しいものね。
「さて――――この輝夜姫の難題、貴方達にいくつ解けるかしら?」
ようやく採集作業が終わった頃にはもう日が傾き始めていた。想像していた以上に時間が掛かってしまった。
どうもこの辺りで薬草をダメにしていった奴がいるらしく、いつもよりも捗らなかったのだ。
希少な薬草も雑草も一緒くたに凍らせて砕いて遊ぶ、チルノとかチルノとかチルノとか。
いや、チルノだけの所為にするのはよくない。
薬草の価値を知っていて確信犯的に採集していく競合相手の魔理沙とかアリスとか魔理沙とかアリスとかマリスとか。
ここら辺はあいつらのテリトリーに近いからなぁ。今度時間が出来た時にでも別の採取地を探してみようか?
とりあえず、それは後で師匠に相談してみるとして……仕事が終わったから姫様と合流しなくちゃ。
ウサ耳レーダーによると姫様は妖精達と湖上空で戯れているようだ。見上げれば確かにその姿が確認できる。元気よく飛び回る妖精達に姫様が翻弄されていて……。……何をしているんだろうか? 弾幕ごっこにしては、弾幕が飛び交っているようにも見えないし……。まあ、別にそれはいいか。
「姫様ー!」
もちろん湖岸からそこまで声が届く訳がないから、波長を弄って、姫様の所にまで声を飛ばす。我ながら便利な能力だ。
私の存在に気付き、姫様はよろよろとこちらに飛んで来て……よろよろと?
よく見ると御髪は乱れ、着衣も乱れて、その汗だくの姿には先刻までの気品が欠片も残っていない。よくよく見ると姫の目からハイライトが消えている。俗に言うレイプ目だ。私も師匠にお仕置きをされた後こういう目になっているらしい。
私が目を離している間に何があったんだろう? 厄介なことになっていて、管理責任を問われたらやだなぁ……。
「な、何があったんですか姫様?」
「タ、タッチ……」
「姫様?」
「もうギブよ……もう無理なの……」
「いや、今一よく分からないんですが……」
ぜーはー息を荒げている姫様の言葉は要領を得る以前によく聴こえない。師匠ならこの状況からでも的確に姫様の意図を悟るかも知れないけど、私には無理。姫様もそれを悟ったのか、深呼吸を一回……二回……三回……あ、咽た。
咳き込む姫様の背を擦る。とりあえず外傷はないらしい。うん、よかった。
「大丈夫ですか、姫様?」
「わたしのことはいいから……あなたは他の子にタッチしてきて……」
ふと見れば、妖精達が遠巻きにこちらの様子を伺っている。と言うか、姫様の様子を伺っているんだろう。そして、妖精に翻弄されていた姫様、タッチという行為から考えて連想されるものは……。
「……鬼ごっこですか?」
「ええ、そうよ……」
「あら、もう降参なの? ひめさまってばトロいわね!」
「チ、チルノちゃん!」
「うぅ……わたし、インドア派だもん……」
まあ、確かに姫様はインドア派だなぁ……。
最近は外に出掛けるようになったけど、それでも基本的にあまり運動しないから、そんなに体力もないだろうし。
……仕方ない。永遠亭の荒事担当を自任する身として、姫様の代役くらい見事に勤め上げてみせよう。ただあまり遅くなると師匠に怒られちゃうから、手っ取り早く片付けさせてもらうけど。
「とりあえず私が鬼ってことになったみたいだけど、それでいいの?」
「レーセンがオニね! あたいを捕まえられるもんなら、どっからでも来るといいわ!」
「じゃあ、タッチ」
「……え?」
チルノが狐に摘まれたような顔をしている。まあ、チルノには姫様の隣にいた筈の私がいきなり後ろに現れたように見えただろうから、それも当然だろう。あっけに取られていたチルノの表情が見る見るうちに驚愕に彩られて
「レーセンがメイドみたいなことした!?」
「いや、あいつとはまた全然違うけどね」
私のしたことはその場に分身を残して本体は波長を隠して行動しただけだ。あんな時を止めて動くメイドと一緒にしてもらっては困る。
「鈴仙は大人気ないわ。そんな能力まで使っちゃって……」
「そうだそうだ! レーセンのズルっこ!」
「ズルって……」
まあ、確かにズルかも知れないけど。でも、妖精は小回りが利くから、鬼ごっこで捕まえるとなるとちょっと面倒だ。姫様、捕まえられなかったみたいだし……。だから、そのくらいのハンデはもらったっていい筈だ。
「そろそろ帰りますよ、姫様」
「あら、もうそんな時間なの? じゃあ、そろそろお暇しましょうか」
「もう帰っちゃうんですか?」
「ええ。そろそろ鴉が鳴くから」
「勝ち逃げズルイ!」
「続きはまた今度ね」
「今度っていつさ!」
「今度この辺りに来た時よ」
「そっか! じゃあ、その時にはまたレーセンたちと遊んであげるよ!」
「ええ、期待しているわ」
「またね、ひめさまー!」
「ええ、またね」
勢いよく手を振るチルノに姫様も手を振り返す。どうなることやらとちょっと思っていたけど、意外と仲良くなったらしい。まあ、姫様は子イナバの世話とかも時々してるし子供の扱いには慣れているんだろう……多分。まさか自分のご主人様がチルノ相手にいい玩具だと思われたとは思いたくない。
時刻はもう逢魔ヶ刻に近いから永遠亭に着くまではまだまだ気を抜けないけど、とりあえず後はもう帰るだけ。私の仕事も無事完遂しているし、姫様もご満足しているようだから、だからこんなに時間が掛かったことは師匠も大目に見て……もらえるかなぁ……?
牛車が揺れる、ガタゴトと。疲れた身体にはこの振動がまるで子守唄のように思える。
あふぅ、と一つ欠伸をして。目蓋を落として思い返すのは今日のこと。意義があったような、なかったような……。
「無邪気よねぇ……」
「妖精のことですか?」
誰にともなく呟いた言葉だったが、鈴仙は食いついてきた。さすがウサ耳がついてるだけあって耳がいいわ。
まあ、この子とお喋りをしながら帰路を辿るのも一興かも知れない。
「ええ、特にあのチルノという子。ああいうものこそ、真に穢れがないと言うのかしらね」
「あれは穢れを知らないって言うんだと思いますけどね」
「……なかなか上手い返しね」
「そうですか?」
「ええ。永琳採点なら五十点って所ね」
「赤点じゃないですかぁ……」
「ちなみに五百点満点よ」
「ええっ!?」
……ショックを受けるようなことを言ったかしら?
あの永琳に十分の一でも評価してもらえれば、私はそれで十分だと思うのだけど……。
未熟な兎はそれに気付かないのか、それともそれでは満足出来ないのか。どちらにしても、やれやれね。
しょげて歩くその後姿に目を細め、彼女の色彩豊かな頭部にようやく気付く。
「あら? まだそんなものをしていたのね」
「え?」
「やっぱり似合ってないわ」
「ああ、花冠のことですか? 折角姫様から頂いた物ですから」
「そんな調子のいいことを言って、存在を忘れていただけではないの?」
「いっ、いえいえそんなまさかっ! うちに持ち帰って宝物にしようと思ってましたとも!」
ちょっと意地悪を言ってみたつもりだったけど、あの調子では図星だったんだろう。戯れで作った物だから大事にして欲しいと思っていた訳ではないけれど、存在も忘れられていたとなるとそれはそれでなかなか悔しい気がする。
「そんなことをしても、そのままではすぐに枯れてしまうわ」
「じゃあ、ドライフラワーにして飾っておきます」
「……それなら、永琳に頼むといいわ。長持ちさせてくれるだろうから」
「はい」
私の永遠の術を掛ければずっとあのままの状態を保つことが出来ると、鈴仙も知っているでしょうに。
それとも、あの兎はそんなことも忘れてしまったのだろうか?
……まあ、それであの子が満足ならそれでいいか。
穢き地上に下りて来て、その理を否定するようなことをしても仕方ないものね。
とりあえず今日の暇は潰れたから私もそれで良しとしよう。うちに帰ったら、永琳にマッサージでもしてもらおうかしら?
別にそれで何か問題がある訳ではない。だからこそ問題なのだけれども。
私がこうして縁側に座ってお茶と共にひねもす過ごすという、どこかの紅白に勝るとも劣らない生活をしていても、うちのことは永琳が全部やり繰りしてくれる。姫というのは上にいることが仕事だと言うけれど、千年も引き篭もっていると暇潰しにも困ってしまう。永夜異変の後に永遠亭を外に開いてみたけど、それで劇的に何かが変わるということもなく、今日も世は全て事もなし……つまり、この退屈は神様が決めたということ? おのれ、忌々しい海の向こうの神め。全てが貴方の思い通りになると思わないことね? この蓬莱山輝夜の大好きなことは当たり前のように与えられた運命って奴にNoと言ってやることなのよ! やり過ぎて蓬莱の薬なんて飲んだのは若気の至りだ。
最近では幻想郷全土を巻き込んだ面白い異変が起きたりしないかなーとか期待しているんだけど、なかなかそういう都合のいい異変も起きなくてがっかりしている。でも、自分でそんな異変を起こしたりはしない。だって、痛いのキライだし。異変の解決者役というポジションも密かに狙っているけど、あれはなかなか競争率が高い。あと一席くらいは空いてそうな気がするけど、メイドも吸血鬼も魔女も庭師も亡霊もスキマもブン屋もあの席をただ一つ狙っている。うちのイナバも多分ライバルだ。そもそもこの退屈を紛らわすだけなら異変じゃなくてもいいし。
せめて何か動き出す切欠でもあればいいのに。この怠惰な日常を吹き飛ばすようなハードかつハートフルでバイオレンスなアンビバレンスにスペクタクルでサスペンスな事件でも起きないかしら?
そう、たとえば目前を行くイナバが突然ばらばらになるとか――――
「あら、鈴仙。そんな支度をして、どこかに出かけるの?」
「ちょっと薬の材料が切れてきちゃったんで、湖の方に採取です」
「支度をしなさい」
「いや、支度はもうしてますけど……」
「貴方のじゃなくて、私の」
「姫様の?」
やりたいことが見つからなければ、それを見つけることをやりなさいってえーりんが言ってた。前にもそれでこの子達について行ったことがあるけど、あれはあれでなかなか退屈が紛れたように思う。
そういう訳で、今回も鈴仙にくっついて来た訳なのだけれども……。
だけど…………
「意外とイベントって起きないものね~……」
「そんなの期待していたんですか、姫様?」
「貴方と話すのなら、うちでも出来るじゃない」
「まあ、そうですけどね」
そう苦笑して、鈴仙はまた採取を再開してしまう。
この辺りがこの子の気の利かないところね。生真面目なのは結構なことだけど、こういう時にはウィットと諧謔と機知に富んだ無駄話をしてくれるのが優れた従者の在り方というものだ。永琳ならそこらの野花についての薀蓄だけでも優に一日二日は話してみせるだろう。……まあ、その前に多分私が飽きちゃうだろうけど。永琳の話は無駄に奥深くて難解で言葉の裏の裏の裏の裏の裏の裏にまで読み所があるものだから聞いていて疲れるのだ。天才というヤツはこれだからいけない。どうせ天才なら漫談とか落語とかその手のことにも精通してくれていればいいのに。
いや、暇潰しを従者任せにしているようではこれまでと変わらない。ここは一つ、自分の力で暇を潰してみるべきか。
まずは状況の確認。野原。花が咲いている。どこかで鳶が鳴いている。空が青い。……全き平和ね。なんだかうららかな陽気に眠くなりそう。暇潰しはどこからも現れそうにない。こんな時は教養人らしく短歌でも詠うと様になるかも知れない。でも、あれはもう飽きちゃったし……。
……少女らしく花冠でも作ろうかな?
「……おっかしいなぁ」
量はそこそこ見つかるけど、師匠の要求している品質を満たしている物がなかなか見つからない。この季節ならもっと見つかってもいいものなんだけど……やっぱりこれでは探索範囲が狭いんだろうか……?
だけど、姫様のことが見えない場所にまで行く訳にもいかないし……。
その姫様と言えば、さっきまで何かせっせとやっているようだったけど、もう飽きてしまったんだろうか? 私の方に向かってきている。『もう飽きたから帰るわよ』とか言い出したら波長を弄って寝かしつけてやる。
「どうしたんですか、姫様?」
「……耳が邪魔になりそうね。ちょっと取りなさい、イナバ」
「なかなか無茶苦茶言いますね……」
少なくとも私の耳は取れない。ボタンがついてる? それはただのデザインだ。大体ウサ耳のない月兎なんてただのウサギじゃないか。ウサウサ。ちなみに兎の鳴き声はウサウサじゃないっててゐが言ってた。
「暇潰しに花冠を作ってあげたのよ。だから、ありがたく頂戴しなさい」
「これはまた、随分と凝ってますね……」
「そうでもないわ」
いや、そうでもあると思う。パッと見ただけでも土台となるシロツメクサの編み込みは丁寧だし、色とりどりの花が悪趣味にならない程度に品良く織り交ぜられている。身内贔屓かも知れないけど、これはもはや芸術品と言っても過言じゃないと思う。基本的に輝夜様は器用なのだ。だからこそ飽き易いのかも知れないけど、細工物などをやらせれば職人顔負けの腕を見せたりする。そういうのは大抵暇に飽かせて覚えたと言うけど、どれだけ暇ならそこまでやり込めるんだろうか?
まあ、折角作っていただいたのだからありがたく頂戴しよう。ちょいちょいと手招きをする姫様の前で屈み込む。花冠を乗せるには確かに耳が邪魔になっちゃうだろうけど、そこは耳を通してやれば済む話だからね。だけど、もっと丁寧に扱って下さい。ウサ耳は敏感なのだ。そんな乱暴に扱われたら、悔しい、でも、ゾクゾクしちゃう……っ
「あんまり動くと耳を引っこ抜くわよ」
「う……っ」
姫様はもっと月兎への愛が必要だと思います。
ああ、でも、あんまり姫様に可愛がられると師匠に毒殺されそうな気がするから、出来れば適度な距離を取っていて欲しいです。これがハリネズミのジレンマか……。
しかし、この花冠。やけに頭の形にジャストフィットする辺り、さり気なく高度な技巧が使われている気がする。いや、花冠の技巧なんて知らないけど。
出来栄えを確認するように、姫様が何歩か下がって私の全体図を視界に収めて、じーっと見てくる。こんなのを乗せたのは初めてだから、ちょっと照れてしまう。
「えへへ、似合いますか?」
「……珍妙ね」
「言うに事欠いてそれですか……」
「やっぱりこの耳が邪魔よ」
「だから引っ張っても取れませんっ、痛い痛い痛い! ちぎれるっ! 耳がちぎれちゃいますからっ!」
これは意外と本気なのかも知れない。姫様はぐいぐいと両耳を引っ張ってくる。まるで私の耳を引っこ抜こうとしているような……ってそれが目的でしたよねー。放って置くのも地獄、引くのも地獄、だってどっちも耳が引っ張られる。だけどこのままだと私のアイデンティティが喪失してしまう。ウサ耳の取れた私なんてただの制服少女、そんな没個性少女が生き残っていけるほど幻想郷砂漠は甘くない。だから私は第三の道を切り開いてみせる!この黄金の右でっ!
「ぐふっ!」
「ああ、すみません輝夜様! うっかり振り回した手が偶然輝夜様へのリバーブローになってしまいましたっ!」
「や……やってくれるじゃない、イナバ……!」
いや、これは事故です事故。正当防衛のやむにやまれぬ偶発的な事故。だから、ウサギ、悪くない。だから師匠には告げ口しないで下さい。ここで守り抜いた尊厳が私の命ごとボッシュートされちゃいますから。そんな暗い顔をして睨みつけられても……暗い?
「姫様っ!」
咄嗟に姫様を抱き抱えて、影になっていない場所へと押し倒す。
「ど、どうしたの!? もしかしてついに鈴仙が反抗期に! いえ、ひょっとしてイナバが発情期っ!?
でもダメよ、こんな昼間の野外で行為に及べるほど私は退廃していないわ!」
「いや、違いますから!」
ドスンドスンと地面に何か重たい物が落ちてくる音がしているのにどうしてボケるんだろう、この姫様は。
「あら、晴れているのに雹が降って来たわ。こういう天気はお天気雹とでも言うのかしら?」
そんな凶悪な天気はゴメンこうむりたい。こんな大きさの雹が頭上にボロボロと降って来た日には死んでしまうではないか。いや、姫様は死なないだろうけど私が死んでしまう。よくよく考えるとまず守るべきは姫様じゃなくて自分の身だった気がする。私の命は一つしかないし。
そんな、師匠にイイ笑顔で殺られちゃいそうなことを考えていると、上からちょっと舌っ足らずな声が降って来た。
「やっぱりレーセンだったわね!」
「チルノ……。さっきの雹は貴方の仕業ね!」
「そのとーり! レーセンをびっくりさせてやろうかと思って」
「ああ、びっくりしたわよ! こんなの喰らったら死んじゃうわ!」
そう怒る私を見て、悪戯が成功した子供のようにチルノがケラケラと笑い出す。そんなチルノに怒気を挫かれてしまう辺り、私も甘い。くそぅ、見た目の役得をフルに活かしやがって……。これがあの巫女相手ならその日の夕食に氷精の活け造りが並んじゃうぞ……!
「あの子は貴方の知り合いなの?」
「ああ、はい。氷精のチルノです。いつもは霧の湖あたりにいるんですけど……」
「大ちゃん達と遊んでたのよ。おーい、大ちゃーん!」
あのヤロウ、人を殺しかけておいてまったく反省してないな……。
まあ、電車に撥ねられても平気な人間が跋扈している幻想郷では、50cm級の雹が当たるくらい大したことじゃないかも知れないけど……よく考えてみたら、全然大したことじゃない気がしてきた。ここの常識って狂ってるし、このくらいなら可愛い悪戯で済むことかも知れない……。
「大ちゃん?」
「大妖精ですね。あの緑髪の妖精で、この辺りの妖精のまとめ役みたいな感じの子ですよ」
「ふうん、妖精にもコミュニティがあるのね~」
そう姫様が感心しているけど、そこまで立派なものではないと思う。単にあの子が他の妖精に比べて思慮深くて苦労性でチルノを始めとする他の勝手気ままな妖精達の抑え役に回っているだけだ。……そういうのをコミュニティと言うのかも知れない。永遠亭におけるてゐみたいなものなんだろうか?
「もう、チルノちゃんってば。あんなことをしちゃ危ないじゃない。大丈夫でしたか、鈴仙さん?」
「うん、大丈夫よ」
「そうですか……? あの、そちらの方は初めてお会いしますよね?」
「ええ」
それでようやく姫様の存在に気付いたらしく、チルノも姫様に訝しげな視線を向ける。
「あれ、あんた誰?」
「私は輝夜よ。初めまして、氷精さん。貴方の噂はどこかで聞いたことがあるわ」
「つまりカグヤはサイキョーのあたいに会いに来たってワケね!」
「こらっ、貴方はさっきから姫様になんて口を聞くのよ!」
『どんなワケだ』とどっちを突っ込むべきか迷ったけど、一応立場上こっちにしておく。うん、今の私って従者らしい。
チルノ達はその言葉にキョトンとした顔を浮かべ
「ひめさま?」
「もしかして、偉い人なんですか?」
「そう、姫様は偉い人なのよ。どこが偉いかはちょっと説明してあげられないけど……」
「ふふっ面白いことを言うのね、鈴仙?」
やばい、失言(しくじ)った!
目を細めて薄い微笑みを浮かべている姫様に己の失態を悟る。
慌てて取り繕おうと言い訳を考えるが、それよりも早く、姫様の指は須臾の間に私の頬をぐいーっと抓りあげて
「そういう面白いことを言うのはこの口かしら? それともこっちの口かしら?」
どっちも私の口です。
「もうひふぁけひゃひまひぇん~……」
「あははははっ! レーセン、ヘンな顔~」
うっさいわ。
「まったく、失礼しちゃうわ。うちに帰ったら私の偉大さを永琳からとくと聞いておきなさい」
「師匠にそんなことを聞いても姫様がいかに可愛らしいかをとくと聞かされるだけかと……」
多分写真と動画つきで。それに二日や三日、下手をすれば一週間の徹夜は覚悟しないといけないだろう。師匠の姫様への愛情は海より深く山より高く、太陽系を大きく逸脱して、宇宙の真理へと到達せんばかりの勢いである。ぶっちゃけ常人にはよくわからない。いや、姫様は確かに可愛いですけどね。
「それは、私にはカリスマがないということ?」
「いえ、姫様のカリスマは月のように穏やかなもので一言でこれ!と言えるようなものではなくてですね?」
「……精進が足りないわね。一言で言い表せないものでも端的に表現出来るように知性を磨いておきなさい」
「が、頑張ります……」
とりあえず追及をかわすことは出来たらしい。姫様の魅力について百枚程度のレポートを書けとか言われたらどうしようかと思った。私は師匠じゃないからそんな偏執的に姫様の魅力について書き散らすことは出来ない。きっと『姫様は可愛いです』だけで埋まる、書き方練習帳になるだろう。赤インクで書いた日にはある意味ホラーだ。それはそれで喜んでくれそうだと思ってしまう辺り、私は姫様のことを何だと思っているんだろう?
それにしても……うぅ、ほっぺた痛い……。
「お話すんだー?」
「ええ、済んだわ」
「じゃあ、サイキョーのあたしがいっちょ遊んであげるわ!」
「残念、私は仕事中なの」
「じゃあ、ひめさまと遊ぶ!」
「姫様に馴れ馴れしくしない!」
「そう目くじらを立てなくてもいいわ、鈴仙」
「ですが……」
「折角だから、私はこの子達と遊んでいるわ。仕事が終わったら声を掛けてちょうだい」
言うだけ言って、姫様はさっさと妖精達の輪の中に入りに行ってしまった。……まあ、チルノ達とだったら大丈夫かな? 弾幕ごっこになっても姫様なら軽くあしらえるだろうし。私としても姫様のことを気にしなくてよければ探索範囲も広げられるし、採取もサクサク進むことだろう……やっぱり、ほっぺたが痛い……。
遊ぶと言ったチルノは、だけど、湖の周りをさっきからずっとうろうろしているだけ。何をするつもりなのかと訊いても『見てのお楽しみ』とはぐらかして教えてくれないし……。あのまま鈴仙の所でボンヤリしているよりはマシかと思ったけど、これは外れだったかしら?
「うーん、見つからないなー」
「あら、何か必要なものがあるの?」
「そーゆーこと!」
「ふうん。それなら、それが見つかるまで待ちましょうか」
しばらく手持ち無沙汰になりそうなので手頃な葉を摘み取り、口元に当てて吹いてみる。草笛なんて久しぶりにやったけど、それなりに体が覚えていたようね。我ながらなかなかいい音が出たわ。今度の暇潰しにイナバにでも教えてみましょうか? てゐはあっさりと吹いてみせたのに自分はなかなか吹けなくて悔しがる鈴仙の姿が目に浮かぶわね。そんな想像から立ち返ると、なんだかキラキラした目で妖精達に見られていた。
「スゴイスゴイ!何それ!それ何!?どうやったの!?魔法ね!?」
「そう一度に質問されても答えてあげられないわね~」
「今の、草笛ですよね?」
「あら、貴方は知っているのね」
「はい」
さすがまとめ役の大妖精。こんな所でも他の妖精とは一線を画すようだ。いや、そういう訳でもないんでしょうけど……。
「でも、そんな綺麗な音は……」
「これくらいなら、コツさえ掴んでいれば誰にでも出来るわ」
それを示すようにもう一度吹いてやると、どうやら上手く興味を引けたらしい。妖精達は我先にと草の葉を千切って、私の真似をし始めた。草笛に向いている葉と向いていない葉があるのだけど……まあ、それはおいおい教えていけばいいか。
「……鳴らない」
「そんな思い切り吹いても鳴らないわよ」
「むぅ……じゃあ、どうしろって言うのさ!」
「口頭で説明するのもなかなか難しいのよねぇ……」
「こうだよ、チルノちゃん。口の中で舌を丸めて――――」
輝夜証券場大妖精株はただいま右肩上がり。
音色こそ私のものに比べれば拙いけど、他の妖精の有様からすればまさに次元が違うと言っても過言ではない。どうやら一概に妖精と括れてしまうほど、妖精も単純ではないようね。そう言えばイナバ達も花の異変の時に氷精が意外と強かったとか言っていたような……。
「うー……サイキョーのあたしはこんなこと出来なくてもいいの!」
それでもやっぱり妖精は妖精だったらしい。私と大妖精とで指導していたけど、次から次へと放り出して勝手なことを始めてしまう。この集団の中で特に力を持っているらしいチルノが放り出したことで、完全に諦められてしまった。なるべく親切に教えていたのに輝夜ショック。まあ、飽きっぽい妖精ならこれでも持った方なんでしょうけど……。
「す、すみません。折角教えて頂いていたのに、みんな飽きっぽくて……」
「いいえ、気にしなくていいわ。元々時間潰しの戯れとして教えていたのだし……」
むしろその気遣いが逆に心に痛いわ……。
よくこんな子が妖精の集団の中で生きていけるものだ。胃が痛くならないんだろうか?
そして、ちょっとだけ反省する。私もよく飽きっぽい娘だと言われてきたのよね……。
ごめんなさい、えーりん。私が投げ出すたび、貴方はこんな気分だったのね……。
「あ、いた!」
チルノの鋭い声に回顧を打ち切る。
ごめんなさい、えーりん。反省はしても改めないわ、私は過去を振り返らない主義だから!
「ひめさま! ひめさま! こっちこっち!」
「何を見つけたの、チルノ?」
「そいつ!」
そう告げたチルノの示す先にいたのは――
「……蛙?」
紛うことなく蛙です、本当にありがとうございました。でも、そんなに喜色満面の顔をされても私はあんまり蛙は好きじゃないのよねぇ。梅雨時にゲコゲコ鳴くアマガエルに風情を覚えても、目の前のトノサマガエルに喜べるほど私は永琳じゃないし。さて、どうしたものかしら……。
「見てなさいよ、ひめさま!」
チルノがえいやっと突き出した手から、冷気が噴き出す。そういえば氷精だったわね。
冷気を向けられた先にいた蛙の身体が凍りついていき――――ついには砕け散る。
命の煌きが封じられた、赤い氷片が宙を舞う。それはもしかしたら、綺麗な光景なのかも知れない。
「あれ、失敗しちゃった」
そうキョトンとしたチルノの顔に悪びれた様子は見受けられない。きっと彼女は自分が罪を犯したという認識も持っていないに違いない。
「あ、あの……怒ってますか?」
「え? どうしてそう思うの?」
「いえ、なんだか……その……輝夜さんが、怖い顔をしていたから……」
……表情を変えたつもりはなかったのだけど、なかなか鋭い子ね。こんな子だから気ままな妖精達のまとめ役をしていられるのかも知れない。怖い顔、なんて言われるのはちょっと心外ではあるけど……。
「怒るようなことじゃないわ。生ある者はやがて滅ぶことが必定。ならば、それを戯れに散らすこともまた生の在り方よ」
蛙を凍らせて遊ぶこともさっきまで私がやっていた花冠作りも、大差がない。対象が動くか動かないか、それだけの差でしかない。それに事の善悪など文句をつけられた時にでも考えればいいのだ。どうせ私達は穢れを犯さなければ生きていけないのだから。
「でも、私が戯れにそういうことをすると鈴仙達に怒られちゃうのよ。だから、別の遊びをしましょうね」
「別の遊び?」
「そうねぇ。謎掛けなんて、いかがかしら?」
「ナゾナゾ? そんなのやっても面白くないわ」
「あら、自信がないのかしら?」
「サイキョーのあたいに解けないナゾなんてないわ!」
「ふふ、自信家ね」
こういう子に謎を掛けると思いもよらない答えが返って来て面白いかも知れない。杓子定規に答えを導くことだけが常に正しいとは限らない、この辺りを鈴仙にはちゃんと学んで欲しいものね。
「さて――――この輝夜姫の難題、貴方達にいくつ解けるかしら?」
ようやく採集作業が終わった頃にはもう日が傾き始めていた。想像していた以上に時間が掛かってしまった。
どうもこの辺りで薬草をダメにしていった奴がいるらしく、いつもよりも捗らなかったのだ。
希少な薬草も雑草も一緒くたに凍らせて砕いて遊ぶ、チルノとかチルノとかチルノとか。
いや、チルノだけの所為にするのはよくない。
薬草の価値を知っていて確信犯的に採集していく競合相手の魔理沙とかアリスとか魔理沙とかアリスとかマリスとか。
ここら辺はあいつらのテリトリーに近いからなぁ。今度時間が出来た時にでも別の採取地を探してみようか?
とりあえず、それは後で師匠に相談してみるとして……仕事が終わったから姫様と合流しなくちゃ。
ウサ耳レーダーによると姫様は妖精達と湖上空で戯れているようだ。見上げれば確かにその姿が確認できる。元気よく飛び回る妖精達に姫様が翻弄されていて……。……何をしているんだろうか? 弾幕ごっこにしては、弾幕が飛び交っているようにも見えないし……。まあ、別にそれはいいか。
「姫様ー!」
もちろん湖岸からそこまで声が届く訳がないから、波長を弄って、姫様の所にまで声を飛ばす。我ながら便利な能力だ。
私の存在に気付き、姫様はよろよろとこちらに飛んで来て……よろよろと?
よく見ると御髪は乱れ、着衣も乱れて、その汗だくの姿には先刻までの気品が欠片も残っていない。よくよく見ると姫の目からハイライトが消えている。俗に言うレイプ目だ。私も師匠にお仕置きをされた後こういう目になっているらしい。
私が目を離している間に何があったんだろう? 厄介なことになっていて、管理責任を問われたらやだなぁ……。
「な、何があったんですか姫様?」
「タ、タッチ……」
「姫様?」
「もうギブよ……もう無理なの……」
「いや、今一よく分からないんですが……」
ぜーはー息を荒げている姫様の言葉は要領を得る以前によく聴こえない。師匠ならこの状況からでも的確に姫様の意図を悟るかも知れないけど、私には無理。姫様もそれを悟ったのか、深呼吸を一回……二回……三回……あ、咽た。
咳き込む姫様の背を擦る。とりあえず外傷はないらしい。うん、よかった。
「大丈夫ですか、姫様?」
「わたしのことはいいから……あなたは他の子にタッチしてきて……」
ふと見れば、妖精達が遠巻きにこちらの様子を伺っている。と言うか、姫様の様子を伺っているんだろう。そして、妖精に翻弄されていた姫様、タッチという行為から考えて連想されるものは……。
「……鬼ごっこですか?」
「ええ、そうよ……」
「あら、もう降参なの? ひめさまってばトロいわね!」
「チ、チルノちゃん!」
「うぅ……わたし、インドア派だもん……」
まあ、確かに姫様はインドア派だなぁ……。
最近は外に出掛けるようになったけど、それでも基本的にあまり運動しないから、そんなに体力もないだろうし。
……仕方ない。永遠亭の荒事担当を自任する身として、姫様の代役くらい見事に勤め上げてみせよう。ただあまり遅くなると師匠に怒られちゃうから、手っ取り早く片付けさせてもらうけど。
「とりあえず私が鬼ってことになったみたいだけど、それでいいの?」
「レーセンがオニね! あたいを捕まえられるもんなら、どっからでも来るといいわ!」
「じゃあ、タッチ」
「……え?」
チルノが狐に摘まれたような顔をしている。まあ、チルノには姫様の隣にいた筈の私がいきなり後ろに現れたように見えただろうから、それも当然だろう。あっけに取られていたチルノの表情が見る見るうちに驚愕に彩られて
「レーセンがメイドみたいなことした!?」
「いや、あいつとはまた全然違うけどね」
私のしたことはその場に分身を残して本体は波長を隠して行動しただけだ。あんな時を止めて動くメイドと一緒にしてもらっては困る。
「鈴仙は大人気ないわ。そんな能力まで使っちゃって……」
「そうだそうだ! レーセンのズルっこ!」
「ズルって……」
まあ、確かにズルかも知れないけど。でも、妖精は小回りが利くから、鬼ごっこで捕まえるとなるとちょっと面倒だ。姫様、捕まえられなかったみたいだし……。だから、そのくらいのハンデはもらったっていい筈だ。
「そろそろ帰りますよ、姫様」
「あら、もうそんな時間なの? じゃあ、そろそろお暇しましょうか」
「もう帰っちゃうんですか?」
「ええ。そろそろ鴉が鳴くから」
「勝ち逃げズルイ!」
「続きはまた今度ね」
「今度っていつさ!」
「今度この辺りに来た時よ」
「そっか! じゃあ、その時にはまたレーセンたちと遊んであげるよ!」
「ええ、期待しているわ」
「またね、ひめさまー!」
「ええ、またね」
勢いよく手を振るチルノに姫様も手を振り返す。どうなることやらとちょっと思っていたけど、意外と仲良くなったらしい。まあ、姫様は子イナバの世話とかも時々してるし子供の扱いには慣れているんだろう……多分。まさか自分のご主人様がチルノ相手にいい玩具だと思われたとは思いたくない。
時刻はもう逢魔ヶ刻に近いから永遠亭に着くまではまだまだ気を抜けないけど、とりあえず後はもう帰るだけ。私の仕事も無事完遂しているし、姫様もご満足しているようだから、だからこんなに時間が掛かったことは師匠も大目に見て……もらえるかなぁ……?
牛車が揺れる、ガタゴトと。疲れた身体にはこの振動がまるで子守唄のように思える。
あふぅ、と一つ欠伸をして。目蓋を落として思い返すのは今日のこと。意義があったような、なかったような……。
「無邪気よねぇ……」
「妖精のことですか?」
誰にともなく呟いた言葉だったが、鈴仙は食いついてきた。さすがウサ耳がついてるだけあって耳がいいわ。
まあ、この子とお喋りをしながら帰路を辿るのも一興かも知れない。
「ええ、特にあのチルノという子。ああいうものこそ、真に穢れがないと言うのかしらね」
「あれは穢れを知らないって言うんだと思いますけどね」
「……なかなか上手い返しね」
「そうですか?」
「ええ。永琳採点なら五十点って所ね」
「赤点じゃないですかぁ……」
「ちなみに五百点満点よ」
「ええっ!?」
……ショックを受けるようなことを言ったかしら?
あの永琳に十分の一でも評価してもらえれば、私はそれで十分だと思うのだけど……。
未熟な兎はそれに気付かないのか、それともそれでは満足出来ないのか。どちらにしても、やれやれね。
しょげて歩くその後姿に目を細め、彼女の色彩豊かな頭部にようやく気付く。
「あら? まだそんなものをしていたのね」
「え?」
「やっぱり似合ってないわ」
「ああ、花冠のことですか? 折角姫様から頂いた物ですから」
「そんな調子のいいことを言って、存在を忘れていただけではないの?」
「いっ、いえいえそんなまさかっ! うちに持ち帰って宝物にしようと思ってましたとも!」
ちょっと意地悪を言ってみたつもりだったけど、あの調子では図星だったんだろう。戯れで作った物だから大事にして欲しいと思っていた訳ではないけれど、存在も忘れられていたとなるとそれはそれでなかなか悔しい気がする。
「そんなことをしても、そのままではすぐに枯れてしまうわ」
「じゃあ、ドライフラワーにして飾っておきます」
「……それなら、永琳に頼むといいわ。長持ちさせてくれるだろうから」
「はい」
私の永遠の術を掛ければずっとあのままの状態を保つことが出来ると、鈴仙も知っているでしょうに。
それとも、あの兎はそんなことも忘れてしまったのだろうか?
……まあ、それであの子が満足ならそれでいいか。
穢き地上に下りて来て、その理を否定するようなことをしても仕方ないものね。
とりあえず今日の暇は潰れたから私もそれで良しとしよう。うちに帰ったら、永琳にマッサージでもしてもらおうかしら?
チーちゃん&大ちゃんと遊んでる場面は正に「近所のお姉さん」な感じ。
姫さまはもっと兎さん達を愛でるべき。
えーりんししょーが思わずパルパルしちゃう位に。
チルノは多分、輝夜の名前を「ひめさま」だと思ってるな。