あの物体に貴方がインタビュー

　　※オリ解釈っぽいの有







・貴方の名前はなんですか？

私は主の体の一部に過ぎないのでね、名前は無いんだ。
―確かにそういう呼ばれ方はよくされるが、それは部位としての名称であって…
例えば耳や鼻に“耳”や“鼻”という名前はあっても、それらに“ポチ”とか“タマ”のような名前は付けないだろ？それと同じだ。

…私の名前がポチか。もしそうだったなら主はもっと私を可愛がってくれたかも、なんてな。



・貴方は普段は何をされていますか？

言わずともある程度予想は付くと思うが念のため。
私は主を危険から守る為、相手の考えている事、意識している事を主に伝えている。
誤解している人が多いが、主の“心を読む程度の能力”というのは主自身がそういう能力を持っているわけではなく、
主は私が相手から読んだ情報を受信しているに過ぎないんだ。まぁ主はそこまで意識していないと思うがな。

そもそも主は私がこうして意識を持っている事も知らないはずだ。
……あ、これは一応主には内緒だぞ。

ちなみに、相手のトラウマを弾幕にして放つのは主自身の能力だ。まぁトラウマを読むのは私なんだが。
これは妖怪覚としての能力というより、主自身のセンスみたいなものだな。


言い忘れたが、私はただ単純に相手の心を読んで主に伝えているわけではないぞ。
伝えるべき事と伝えるべきでない事をちゃんと分別して情報を伝えている。言うなればフィルターみたいな物だな。
例を挙げて言えば、つい最近ホウキに乗った魔法使い―『魔理沙』とかいったかな。あの娘の心を読む事になったんだが…

《魔理沙の心の中身》
この娘のハートをしっぽり頂く方法：７２％
　　　　　　　泥棒　　　　　　　：１５％
　　　　　　　弾幕　　　　　　　：１０％
　　　　　　　その他　　　　　　：　３％

弾幕ごっこの最中にこんな内容を伝えようものなら、百合とやらに耐性がない主はきっとパニックを起こしてしまうだろう。だから残りの少ない情報だけを伝えるしかなかった。
主の弾幕が４ボスのわりに難易度が高いとか言われるのも、情報そのものが少ないからトラウマな部分を強調して補った結果なんだ。



・ちなみに、仮に私が貴方を身に着ければ相手の心を読むことが出来るようになりますか？

残念ながらそれは無理だな。
元々この能力は、センサーとしての私を妖怪覚が受信機として身に着けて初めて使える能力なんだ。
貴方に覚としての素質が無い以上、私を身につけたところで頭の中が文字まみれになってパニックを起こすだけだろうな。
例えば貴方が霊烏路 空の持っている制御棒を奪ったところで核融合エネルギーは制御できないだろう？それと同じだ。

―例えがおかしい？　私の言っていることが信用できないと。そこまで言うなら私を身に着けて試してみるといい。
別に難しいことじゃない。私から伸びている線を主から外して自分に繋ぐだけでいい。
ただし、主は今お昼寝中だからな、外すのはそっと静かにやるんだぞ。


まずはヘアバンドのハートに繋いである線だな。ハートがクリップになっているから簡単に外れるはずだ。
…そう、それでいい。
次は背中に伸びている線だが…これは難しいな。背中の結び目を解いて少しずつ引っ張るしかないな。
線をたどっていけば見つけられるはずだ。起こさないように慎重にな。

お、出来たか。あとは線を…　ん？まだつながったままだぞ？ちゃんと見てみるんだ。
―ちゃんと外しただと？いや、しかし…
……お前が外したのはブラのホックだ。何をたどればそんなところに行き着くんだ。もっとよく見るんだ。
――ブラをじゃない！線をよく見るんだ！

あったか？　そうそれだ！それを解けば……硬く結んであって解けない？いつもは蝶結びのはずなんだがな。
そういえばお前が来る１時間位前にこいし様が何かイタズラをしていたな。そんな所を弄っていたか。
まぁ、そうなっていては仕方ないな、下手をしたら主が起きてしまう。それは諦める事にしよう。
私本体は主に着けたままだから、少し線が短くて不便だが何とかなるだろう。

何？――ああ、せっかく外したんだ。それは外したままで構わない。


ではさっき外したハートのクリップを髪に着けるんだ。それで私からの情報を受信できるはずだ。…ほぉ、地味に似合うじゃないか。
…嬉しくないと？そうかそうか、まぁ気にするな。

では早速心を――こらこら、気持ちは分かるがあまり近くで主の寝顔を見るんじゃない。私だって見たいのを我慢しているんだから。
―そこからじゃ元々見れないだと？気にしている事をさらりと言うなお前は。本当は羨ましくてたまらないんだぞまったく。



『ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる』
『ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる』



ほらみろ、６６６階のパルシステムが作動してしまったじゃないか。うるさいから早く寝顔ウォッチを止めるんだ。
――ああ、あれは橋姫様の無駄な増殖を防ぐために、この地下内の嫉妬値が一定値を上回るのを防ぐための警報装置なんだ。


・パルスィは増殖するのですか？

久々にインタビューらしい質問をしてきたな。まぁそんな事を聞きに来たんじゃないんだろうが…。
『嫉妬はさらなる嫉妬を生む』という言葉を聞いたことはないかな。
この言葉通り嫉妬値が増えるたびに橋姫様はエクステンドするんだ。
実際この地下には今現在２５２人の橋姫様がいる。このままでは地下が嫉妬心の塊になってしまうからな、それを防ぐための警報装置なんだ。

警報も止まったようだ。かなり脱線してしまったが、心を読む実験を再開するとしよう。
そうだな、あそこで大の字になって昼寝してる空の心を読んでみるか。

《おんさとりさせんたまかくゆーごうまないよーやまのかごみさまりんおえねるりんまぎー》

どうだ、全くわけがわからないだろう。生き物というのは意外と多くの事を意識して考えているからな、
こんな多くの情報を頭で処理して理解できるのは覚だけなんだ。詳しく説明すると長くなるから省くがな。
これでわかったかな。――そうか、それならクリップを元に戻すんだ。



・最近あった失敗談か何かあれば教えてください。

先日主がカレーを作った時に、ペットの中の１匹が《私にはこのカレーは辛すぎます》と主に伝えたかったみたいなんだが、
寝起きぎみで半目だった私が間違えて《つらすぎます》と読んでしまい、カレーを作った主が泣き出してしまってな…
――何？そういうのじゃなく？　……わかったわかった、違う話をしよう。正直話して良い内容かどうか悩むが…


ひと月程前にな、主が前の異変の時の責任を感じてか管理不測だったペット達を可愛がろうと皆を集めたんだ。
その場にはざっと４、５０匹ほどいたんだが、全員が主を大好きなものだから主に伝えたい言葉や意思の量が半端じゃなかったんだ。
私が読もうとする前に意思の方からどんどん流れ込んでくるものだから、私は主に常に大量の情報を伝えなければならなかった。
ペットが寝静まって落ち着いたのが１０時間ぐらい経った後でな、久々の労働（？）に私は疲れ果てていたんだ。ドライアイ中のドライアイだ。
だからその日の夜はとても深い眠りについたんだ。


……ここから先は翌日に主の心を読んで知ったことを話す。
残念ながらその時私は爆睡していたから一部始終を見ていたわけではないんだ。
主より先に寝るなんてあってはいけない事なんだがな。失敗といえば失敗になる。

私が眠りについた頃、まだ主は起きていたみたいなんだ。何でも久々にペット達とじゃれあった嬉しさで眠れなかったらしい。
その時静かに寝室のドアが開いて、ペットの燐がそーっと主の元に歩いてきてな。


『お燐？どうしたのですか』

『…………………さとり様』


後から知った事なんだが、ちょうどその頃燐が…その…発情期とやらだったらしくてな。
主と…えーと…違う意味でじゃれあう形になったんだ。
燐の行動が読めない主はされるがままにされて……。

すまない、ここから先を読もうとしたんだが、ピンク色の世界に入ってしまったみたいで何も読み取れなかったんだ。
思えばこの時私は無理にでも目覚めるべきだったんだろうな…。
そうすれば一緒に…もとい、主を守れたかもしれないというのに。
実に惜し…違う、残念…ではなく、反省している。



・多くの人妖の心を読んでいて、思ったことはありますか？

当然皆性格もバラバラだから考えていることは様々なんだが、９割近くの人妖が共通して

　《こっち見んな》

と考えている事が分かった。

まぁ、お前達がそう考えるのも無理はないと思うが、私に言わせればそのセリフはこっちが言いたい。
大体そっちの方から視線を合わせてきたのに　《こっち見んな》　は無いだろ。

そもそも目を向けるべき対象が違うだろう？　確かにこんな所に目があるのは珍しいだろうし、私を見たくなる気持ちも分かる。
しかしお前達は私よりも主の可愛すぎるジト目を見るべきだろう！？　私なんか位置的に滅多に主のジト目は見れないんだぞ！
それだというのにお前達は主を見ないで私を見た挙句　《こっち見んな》　と思うのはどういうことだ！

………すまない、少し感情が入ってしまった。許してほしい。

お詫びといっては何だが、もし主のジト目を見たい時にはこっそり私に目配せをするといい。
もし心の中で　《ジト目萌え》　等と考えていても、主には伝えないであげよう。
そのかわり　《こっち見んな》　は禁止だぞ？　もしそんなこと考えたら…私が主に何を伝えるか…分かるな？



・話は変わりますが、お風呂も一緒に入るのですか？

随分ストレートな質問だな……。
まぁ質問されたからには答えるが、あまり嫉妬心を抱くなよ？何かがエクステンドしちゃうかもしれないからな。

風呂へは一緒に入るときもあれば、私を外して主一人で入ることもある。
理由は私にも分からない。おそらく無意識下の行動なのだろう。

それとペット達と一緒に入るときは当然私を着けて入る。
燐のように人型になって喋れるペットは極僅かだからな。


そういえばたまに人型の燐と一緒に入ることがある。
主は普段は一人風呂が好きなんだが、気分が良い時は一緒に入ることもあるみたいだ。

――そうだな。湯船の中でも極力目は開けるようにしている。
――いや、そういう下心じゃなくてだな、ほら、ペットの心を読む必要もあるだろ。
あと私も目に潤いが欲しいしな。……物理的な意味でだぞ？

――燐か？いや、まぁ…ああ見えて主に負けず劣らず中々の……
普段死体運びをしているからか、結構引き締まっｔ……待て待て想像するんじゃないぞ！



『ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱ―――おめでとうございます！２名の水橋パルスィが誕生しました！』



あー遅かったか……まぁ増えてしまったものは仕方ない。幸い主も目を覚まさなかったしな。
次のエクステンドまで残り６５００Ｐ（パルスィ）か、当分は増えないだろう。
そうだ、良かったら１人持って帰らないか？　――いらない？　それは残念。



・他に至福の時のようなものはありますか？

あるにはあるが…これはチョット秘密だ。
でも少し想像力を働かせれば分かってしまうかもしれないな。
――ヒント？　そうだな、私だけの特権とだけ言っておこうか。
ああここで考えるな。増える増える。



・最後に何かありましたらどうぞ

ありきたりな言葉になってしまうが…実は主は自分が忌み嫌われる存在である事を気にしている所がある。
だからこれから先、主を相手にとる場合でも心から優しく接して欲しいんだ。

――確かに忌み嫌われる感情を私が伝えなければ済む話ではあるが……。
最初に“フィルター”という表現をしたが、私もできれば主を騙すような事はしたくないんだ。
全ての人妖が主を好きになってくれれば、それが一番いいんだ。

分かってくれるか。そうかありがとうありがとう！









…………ふぅ、行ったな。
ここから先は私の至福の時間だ。誰にも邪魔されたくない。

「――ん～…」

お、ちょうど主もお目覚めのようだ。

「……いけない、随分寝ちゃったわね。んっ―――」


うおお背伸びキターーー！！　それも仰け反るタイプー！！
しかもこいし様が線をキツめに縛ったおかげで密着感がハンパ無い！！
ああ主よ！とてもあたってます！　あたってますぞおぉぉお！


　《あててんのよ》

――ンな、なぬ！？！？


　《これからもよろしくね、ポチ》



私からは見えなかったが、きっとこの時主はトラウマ弾幕を放つ時の挑戦的な笑顔をしていたのだろう。

実はさとり単体でも相手の心は読めたというオチ。

はじめまして、黒骨といいます。初投稿ですがよろしくおねがいします。
ＳＳを書くこと自体初めてなので、多少読みにくいところがあるかも知れません。
誤字脱字矛盾点などありましたら、ご指摘をお願いします。

＜(_ _)＞

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