冬の風と、上をみるのも嫌になるような長い階段が私を苦しめる。
一段ずつゆっくり登っていくけれど、それがまるでうそのよう。
少しのぼって上を見る。そして後悔する。
さっきからこの繰り返しだ。でも、こうしないとくじけてしまいだから、仕方がない。
辛くなったらうしろを見る。結構のぼったような気がわたしを安心させてくれる。
しかしまだまだ。このままダッシュすると、一分もかからずに降りられるだろう。
でもそうするわけにはいかない。そうすれば、すべてが水の泡になってしまうから。
「っ……!」
右足がひっぱられる。ああ、躓いたんだ、と思う間もなく、私は左足を出して危険を回避した。……危なかった。
やはりロングスカートを履いたままこっちにきたのは失敗だった。動きやすい服をさっきの人里で買えばよかった。ミニスカートとか。……寒いか。
ああ辛い。こうなったら、気を紛らわそう。
そうおもって昔のことを思い出す。目標にたどりつく前に、くじけないように。
私は昔から、みんなに気持ち悪がられていた。むかしから友達なんてほとんどいなかったし、そんな友達、いらなかった。
そのころの私は孤独で、いわゆる『友達』という存在の意味をまちがえていた。
自分の周りにいる、私を気持ち悪がる人。それが友達だと、心のそこから信じていた。
だから、心のどこかでは欲しかったのかもしれない。私を受け入れてくれる、だれかを。友達をこえた、だれかを。
私は研究し、ある方法を知った。
――幻想郷へ。
だれをも受け入れてくれるステキな世界。そうだと書いてあった。
うそか本当か。正直うそだと思っていたけど、すがるものはそれしかなかった。
その日から私は、寝る間も惜しんで研究をした。
自分の住んでいた世界に、未練はなかった。いや、ない。
何度もあきらめそうになり、それでも必死に、方法を探した。
そして、みつけた。
初めに私がたどり着いたのは、広い広い草原だった。
観光気分だったのに、いきなり妖怪に襲われたのをよく覚えている。
『妖怪』がこの世界に暮らしているということは知っていたが、まさかこんなに身近にいるなんて、と思った。本当にどうしようもなくて、たどりついてすぐなのに死を覚悟した。
でも妖怪は私を見た瞬間おどろいたようなそぶりをみせ、背をむけて逃げていった。なぜだかわからなかったけれど、助かったのだ。
次に私は、人里をさがした。意外にもすぐに見つかったけれど、人はみな、私を妖怪かなにかのようにおそれ、ほとんど取りあってくれなかった。
でもひとりだけ、私に助言をくれた人がいた。
『先生』と子どもたちによばれていた彼女は、私を『ハクレイジンジャ』というところに行けばなんとかなるかもしれない、と教えてくれた。
私は『ハクレイジンジャ』への地図までくれた『先生』に感動し、お礼をいって別れた。
すぐにたどり着くなんて思わなかったのに、すぐにたどりついたのには、感動した。まるで私をうけいれる準備ができているかのようで。
そしていま、私は『博麗神社』へとたどりつき、おそろしく長い石段をのぼっている。
「はあ……はあ……」
永遠をかけてもたどりつきそうにない石段も、ついに終わりがみえる。空が近付いたようだった。
あと三段。二段。一段。
そして……。
「やった!」
大きく声と息をはいたせいで力が抜け、たおれそうになる。でもなんとか足に力をいれ、それを防いだ。
「あら?」
私に気がついたのか、巫女さんと思われる人がこちらを向いた。
……女神と見間違えるような女性が、そこにいた。直感的に感じた。私では、絶対勝てない、と。
一瞬でわかってしまうような、反則的な美しさ。風になびく黒髪がさらに美しさをてつだう。
次からは『美人』といえばこの人がすぐに浮かんでくるに違いない。
全ての女が嫉妬するような美しさが、そこにあった。
何も言えない私に近付いた彼女は、今までのみんながそうしたように、私を見てぎょっとおどろく。でもすぐに笑顔を作る。すこしつくったように見えるけど、なれたことだ。
「こんにちは。何かようかしら?」
「えっと、その……」
ここにくれば助けてくれると聞いてきました。
そう言えばいい。しかし、あまりにも無責任ではないか。私はここに来たいと思って、自分の意思できたのだ。
だというのに、こういうときだけ人の助けをえるなど、許されることなのだろうか。
いまごろになって、ためらう。そんな必要はないのに。巫女は人を助ける人だから、と聞いたのに。
それなのに――!
「おーい、霊夢ー! およっ?」
霊夢とよばれたとたん、巫女さんがむこうをむいた。どうやらそれが彼女の名前らしい。
名前をよんだほうの彼女は、小さな女の子だ。角が生えており、ただの人間ではないことがはっきりとわかる。
鬼、という種族だろうか。
しかしイメージとはちがう。鬼といったらもっとこう……怖いイメージがあった。
しかし目の前にいる、たぶん鬼の彼女は、まったくそれに当てはまらない。
顔立ちは整っている。ただ、きれいという表現が似合うのは、もうすこし先のことだと思う。今はまだ、可愛いといったところだ。
「なに? いま取り込み中なんだけど」
「いや、ひょうたんをどこにやったか聞こうと思ったんだけどさ、どうでもいいや。
ところでその女ものの服を着たおっさんはだれ?」
遭遇した妖怪、里の人、霊夢の反応を見るに
幻想郷とて感性は一緒なんじゃないかと思うんだwww
俺のドキワクを返せよw