「さあ、いただきますしよう」
藍が言うと、橙は手を合わせて「いただきます」と言った。
向かい合う二人の間に置かれているのは、ハンバーグ、サラダ、味噌汁、ご飯、カボチャの煮物。
藍は尻尾を揺らした。
橙は勢いよく箸を取り、ハンバーグに手を付けた。
「美味しいか」
「美味しいです」
「そうか」
藍は尻尾を揺らした。
「私も食べよう」
藍は味噌汁の椀を手に取った。
そして、尻尾を揺らした。
「ハンバーグ美味しいです」
橙が言うと、藍は顔を曇らせた。
「サラダが残っているぞ」
橙のサラダ皿には露骨に人参とレタスが残っていた。
橙は身を震わせた。
「え、えっと。あの」
「食べなきゃ駄目だろ。人参」
橙がしどろもどろに言い訳を始めようとした時、二人の前に紫が現れた。
「あ、紫様」
「食べなきゃ駄目でしょう。橙」
橙は少し戸惑っていたが、「で、でも」と口を動かした。
「そうだ。食べなきゃ駄目だぞ。橙。紫様だって仰っている」
「で、でも。本当にお腹いっぱいで」
「好き嫌いすると、大きくなれないわよ」
と、その時、柱の陰から霊夢が現れた。
「え、ええっ」
橙は声を上げた。
藍は正座したままで、橙に非難の視線を送っている。
霊夢はサラダ皿を指さした。
「体に良いのよ。どんどん野菜を食べなさい」
と、その時、ガラス窓を突き破って藍の背後から、箒に跨った魔理沙が登場した。
橙は後ろに飛び退く。
藍は動かない。
「野菜は体に良いぜ」
「あ、ああ」
橙はカーテンの向こうで、穴の開いた窓を注視する。
「ら、藍様」
藍は尻尾を天に向けて立てた。
と、直後、階段からルーミアが小刻みに跳ねつつ降りてきた。
「野菜も時々食べると美味しいよ」
「ひ」
橙は震える。
藍は尻尾を揺らした。
そして、人参をかじった。
と、直後、レティとチルノと大妖精が登場した。
三人は橙の手前まで来ると、歌い始めた。
「ご飯を大切に」
「ああ、もったいない」
「心のこもった美味しいご飯」
藍はリズムに合わせて尻尾を揺らした。
「藍様」
と、その時、廊下を永琳が歩いてきた。
「よく噛み、よく食べる。健康にいいのよ」
「ひゃあ」
優曇華がその後を追いかけていった。
てゐと輝夜、因幡達も続き、「私たちも大好き」とステップを踏んだ。
藍はお茶を淹れている。
尻尾が揺れた。
すると、引きだしが開き、萃香率いる妖怪達が飛び出した。
「ビタミン」
「A」
「B」
「C」
「D」
「E」
「F」
「G」
「H」
「I」
「J」
「K」
「L」
「M」
「N」
「O」
「P」
「Q」
「R」
「S」
「T」
「U」
「V」
「W」
「X」
「Y」
「Z」
笑顔の萃香が振り返って、橙を指さした。
藍が尻尾を揺らす。
天井裏から小悪魔が現れた。
「カロチン」
続いて再び、永琳と優曇華が現れた。
「ミネラル」
「マグネシウム」
橙は釘付けになって、襖にもたれかかる。
「藍様。お家が、お家が」
襖が開き、プリズムリバー三姉妹が現れた。
「サイン」
「コサイン」
「タンジェント」
橙は襖から飛び退いて、テーブルに戻る。
藍は味噌汁を啜った。
次に橙の背後から幽香が現れた。
藍が尻尾を揺らす。
「お花も大好き、野菜スープ」
「ひっ」
すると、いつの間にか縁側に腰掛けていた文と椛が新聞を広げて歌い出した。
「天狗も大好き、野菜のジュース」
「一面記事にも書いてある」
椛が尻尾を振るテンポに合わせて、藍が尻尾を揺らす。
するとコタツの中から小悪魔と美鈴がはい出した。
橙は思わず、コタツの中から足を引き抜いた。
「悪魔も大好き、野菜サラダ」
「体を動かす原動力」
と、次の瞬間、部屋の隅に積まれた本の中からパチュリーが飛び出した。
藍が尻尾を揺らす。
「喘息にもいいのよ」
パチュリーが本を開くと、その中から咲夜が飛び出した。
「お嬢様も妹様も大喜び」
再び、コタツの中からレミリアとフランドールが飛び出した。
二人は手に持ったワイングラスになみなみと注がれた人参ジュースを一気に飲み干す。
「ああ、美味しい」
「地下でも手軽に栄養補給」
と、次の瞬間、部屋に置かれた犬のぬいぐるみとフランス人形が踊り出した。
「ワン、ワン、ワン」
フランス人形はドレスの裾を掴んでお辞儀する。
そして、間もなくアリスの声が、聞こえてきた。
藍は煮物を口に放り込んだ。
「人形も大好き、人参とレタス」
藍が尻尾を揺らす。
メディスンがアリスの胸元から飛び出した。
「本当に大好き」
藍が尻尾を揺らす。
と、その時、リグル率いる蝶の群れが花瓶の中から飛び出した。
「ちょうちょも大好きな野菜ジュース」
直後、猫の鳴き声が聞こえた。橙は青ざめる。
すると、キスメが畳を跳ね上げて登場した。
「地面の下でも大人気」
キスメが桶の縁を叩くと、まずはヤマメが飛び出した。
「病気の予防に」
次にパルスィが飛び出した。
「ストレス改善」
すると、隣の畳を跳ね上げて燐が顔を出した。
「死体もいいけど、栄養不足」
また、隣の畳が跳ね上がり勇儀が顔を出した。
「野菜の力で力持ち」
橙が怯えていると、突如、背後から声が聞こえた。
橙は悲鳴を上げて飛び上がる。
振り向くと、さとりとこいしが立っていた。
藍は尻尾を揺らした。
「ろくに光も差さないけれど、地底の野菜は」
「いい野菜」
藍は橙をじっと、見つめている。
と、次の瞬間、ミスティアが屋台を引きながら台所から現れた。
「二日酔いにもいい気持ち」
藍は尻尾を揺らした。
そして、屋台の中から慧音と妹紅が現れた。
「好き嫌いせず、みんなで食べよう」
「美味しいご飯」
藍は茶を啜った。
すると、湯気の中から幽々子と妖夢が現れた。
「霊になっても」
「食べるの大好き」
藍は尻尾を揺らした。
そして、紫が橙の隣に座った。
「さあ、食べましょう。いただきます」
「橙。みんなで食べるご飯は美味しいなあ。まるで、油揚げを食っているように美味しい。みんなで油揚げを食ったらさぞかし旨いんだろうなあ。いや、違うよ。油揚げが無いと駄目だなんて言ってるわけじゃないよ。でも油揚げがあったらもっと楽しいんだろうね。さ、好き嫌いなんかせずに美味しく食べよう。どうした。なんで泣いている。冷めるぞ。早く食ってしまえ。泣くな、ほら。泣くなったら。よく噛んで食え」
ご飯を残すのはいけませんよね。
そして尻尾を揺らす藍様
説法の閻魔様はご不在ですか
なにか新しいものを見た気分です。
それと虹川三姉妹、それは数学用語だ
あとビタミン多すぎるwwwそんなにねえよwwww
と思って検索してみたら全部ヒット(栄養以外も含む)したせいでビタミンがゲシュタルト崩壊を起こし(ry
迷い家だから何があってもおかしくない
それにしても夢に出てきそうだ
「世にも奇妙な物語」を思い出した
蓋を開けたらまさかのホラー。びっくりです。
夢オチだと、夢オチだと思ったのに・・・
すごい展開でした。
この言葉が似合うSSもそう現れないだろう。
椛は?
橙の精神が崩壊しないか心配ですw
怯える橙かわいいよ怯える橙
藍様なら一人(?)で9の合唱団に指揮が出来るw
橙のトラウマにならないといいんですが ww
今更ですが、儚月組とあっきゅんを…