Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

すごく季節外れな話

2009/01/17 22:58:18
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春霞なにかくすらん さくら花ちるまをだにも見るべきものを … 幻の号外が消えた顛末




 身の凍える冬となり、ミスティアの屋台は客がめっきり減った。寒いからしかたないが、少ない客を相手にしていると面白くなく、一応の集客として、雪中博打大会なるものを開いた。里でも妖怪の内でも博打が流行っていると客から聞き、やり方を教えてもらって開いたのだった。
 しかし当日は折悪しく夕方から吹雪きはじめ、チルノだけがそれにかまわず飛んで来て、客席にいた。
「花札って、三人以上いないとできないらしいのよねぇ」
 と、ミスティアはため息をつき、博打をやりたがってせがむチルノから目をそむけた。
 チルノは博打がどんなものかなんて知らない。ただ、悪人ふうのイメージがなんとなくカッコよさそうだから来たのだった。それにチルノは吹雪いているとむしろ気分が良くなるのだ。
 今日はもう店じまいをしようかとミスティアが思っていた時、暖簾をくぐって入って来た客があった。客は二人、ともに雪まみれになっている。雪を払い、上着のかぶりを脱いだ客は藤原妹紅と上白沢慧音だった。
「あら、いらっしゃい。こんな天気なのによく来たね」
「来る途中で吹雪いてきた。だいぶ近くまで来てたし、どうせだから来たんだよ」と、妹紅。
「ねー、博打やろうよー」
 とチルノが言うのを聞いて、妹紅と慧音は顔を見合わせた。
 チルノが博打だって?
 二人は博打大会を知らない。道で偶然会い、話をするついでに夕食に来たのだった。
 チルノがあまりにせがんできて、うるさくも哀れにもなったミスティアは博打大会の事を話し、花札に加わってくれないかと頼んだ。
 慧音が「それも一興だ」と乗り気を示したから、妹紅も加わる事にしたが、あまり気は進まなかった。
 外の荒れた風が足元に吹き込んでくるなか、酒が出され、数杯飲んで各々顔を赤らめた頃、花札が置かれた。
「なにこれ、博打ってこれのことなの?薄っぺらいじゃない。なんだ、簡単そうねっ」
 と、チルノは札を手に弄んで言った。他の三人はようやく、チルノが花札のルールを知らないと気づいた。しかたなく、教えながら花札をはじめた。
 慧音とミスティアは丁寧に教えながら、チルノはどうせ上手くいかないだろうと密かに思っていた。だから普段はなかなか起こさないような親切心でもってチルノに対していたのであるが、チルノの形勢は、しかし良くなっていく。
 チルノが、派手な絵柄の札が出る度に歓声をあげている。一番調子が良い。慧音とミスティアはそこそこで、妹紅は調子が悪い。
勝負事が苦手だから、はじめから気の進まなかった妹紅は、始終しかめ面で酒を啜っている。ミスティアはチルノに負けるのが嫌で躍起になり、慧音は、いずれにせよ自分がビリにはならない、と開き直り、のうのうとしている。だが全員、チルノのビギナーズラックに内心舌を巻いていた。
 勝負が終わった。結果は、一番がチルノ、二番が慧音、三番がミスティア、で、妹紅がビリになった。
「やった!あたい一番よ!やっぱり博打なんて、あたいにしたら簡単ね!」
 ちっ、とミスティアが舌打ちする。
「…まぁ、はじめだから運が良いのよ。でも次はそうはいかないわよ」
 二回目をしようとして札をまぜる。妹紅は嫌がって拗ね、その杯に慧音は酒を注いで慰めた。
「初心者がはじめだけ良い結果を出す事はよくあるよ」
「でも、また負けるだろうし…」
 ひときわ強い風が吹きつけ、ぎしりと屋台が揺れた。一同が驚いた時、また雪まみれの客が、今度は一人入ってきた。ごわごわの毛皮の外套を脱ぐと、射命丸文である。
「こんばんは。雪中博打大会に物好きな客が来たというので、取材に来たのですが。もうはじまってましたか」
「一回終わったところだよ。あなたもやる?」
 ぜひ、と言い文も花札に加わった。これにまぎれて妹紅も二回目をさせられることとなった。ずっと嫌な顔をしたままでいる。
 花札の最中、文は写真を撮ったり、一回目の結果を質問しノートにメモしている。チルノが一番と聞いて、驚き呆れると、チルノはますます増長して元気になる。
 初心者の運はまだ続いていたようだ。二回目もチルノが一番、二番は慧音、それから文、ミスティア、妹紅となった。
「やっぱりあたいったら最強ね!」
「ほら、やっぱり負けた!」
 一番とビリが隣り合って、哀楽の差をあらわに呈している図を文が写真におさめた。
「チルノさん、おめでとうございます」
「すごいでしょ!新聞に書いてよね、あたいが二回もみんなに買ったってさ!」
「ミスティアさん、一番になったら何かあるんですか?」
「んー。お金賭けてなかったし、考えてなかったなぁ」
「慧音さん、どうしてあなたたちが負けたんですか?」
「知らんよそんな事」
「妹紅さん、残念でしたね。そんなに落ち込む気持ちもわかります。もしかして負けたら罰ゲームでもあるんですか?」
「負けるって、はじめからわかってたよ。…罰ゲーム?」
 誰も何も言わない。罰ゲームは無いようだった。一方チルノは罰ゲームと聞いてひらめいた。
 二度も一番になってチルノは調子にのっている。一番とは、つまり王様だし、ビリは“あたい”の下だから言うことを聞かないといけない。“あたい”が一番だから、言うことをなんでも聞かせられるってワケ。
(あたい頭良い!)
「そうよ、罰ゲーム!あたいの言うとおりにするのよ!」
「なんでだよ。罰ゲームなんて無いんでしょ」
 妹紅はつんと言い放ってミスティアを見た。口調が怖くて、ミスティアは一瞬なにも言えなかった。
(これはネタになりそうだ)と文は考え、ミスティアが黙っているうちに話した。
「罰ゲームは無かったようですけど、一番に賞品やなにかが用意されてもいないなら、ビリに言うことを聞かせるので、かわりにしてもいいんじゃないですか?」
「嫌だよ!」
 がんと杯を机に打ちつけ、席を立って行こうとする妹紅の袖を慧音が掴んだ。
「行くなよ。チルノから逃げたなんていう不名誉が、幻想郷中に広がる」
 顎をしゃくって文を示した。
「つまらないね、そんな事。でも…なんで笑ってるの」
「酔いがまわってきたかな」
 妹紅が慧音を睨んでいる間に、文はチルノに罰ゲームを考えるよう促した。
(面白そうなのを考えてください)
 小さく耳打ちする。頭の中では、この事を書く新聞の見出しを、どういう文にしようか考え始める。
 だがチルノは三秒で、考えるのに厭きた。
 罰といえば…以前、チルノがふざけすぎた時、紅魔館のメイド長に攻撃され、湖から追い出された事があったのを思い出した。あれはひどかった。
「えーっと、えーっと、追い出す、追い出す」
「追放ですか。どこからです?」
「えーっと。家からよ。家から追い出すの。あ、それからここからも」
「はぁ」
 もっと過激そうな罰を予想していた文は、期待がはずれてがっかりした。この頃、事件や突飛な出来事も無く、ネタに飢えているのだった。
「どこで寝ればいいのよ?雪降ってるのに」と、妹紅。
「えー。適当にどっかで野宿すればいいじゃない。山とか」
「あ、そうだ!雪山で野宿という事で、酷寒のサバイバル講座でもしていただけます?」と、文。
 とうとう妹紅の苛立ちが我慢の限度を超えた。
「うるさいな。こんなところにいるくらいなら、雪山にこもったほうがマシだよ」
 慧音はふと心配になり、妹紅を引っ張って言った。
「雪山で寝るなんて危ないぞ。凍えでもしたら…」
「死なないんだよ。まったく、私はあんたたちがうるさいから出て行くんだからね」
 にやにやしている文とチルノに言い、椅子の背にかけていた上着を取り席を立つ。取材のためついて来ようとした文を、腕を振って追い払った。
「話は明日でもいいでしょ。ついてくるな!」
 暖簾の外に出ると、まだ吹雪いていた。酒と怒りで火照った頬に、雪と風がぶちあたったが、嫌なものから逃げるように飛んでいった。




 山…妖怪の山へと真っ直ぐに飛んでいくが、風にあおられ、そのうえ雪のせいで視界も悪く、飛ぶ方向はどんどんずれていく。だが何とか山の姿を見出し、近づいて木々の枝をかいくぐり森の中へ下りた。苛々する。まったくばかばかしい。腹立ちまぎれに、スペルカードを発動し、前方の木を消し炭にしてしまった。
 それから雪を蹴りたくっていると、ようやく落ち着いた。
 チルノだろうがなんだろうが、妹紅はこんなつまらないことを後悔しない。ただ今晩さっさと寝て、目が覚めれば面倒は終わっているのだ。
 しかしどこで寝たものか。あたりを見回しても、岩陰や穴なんてものは見当たらない。雪と木しかない。
 どの木も風に吹かれてざわざわ揺れている。もっと頼りがいのある、頑丈な木を見つけ、その下に穴を掘る事にした。そういう木を探して歩き出す。
 かぶりを目深に下ろし、首をちぢめて顎を上着の襟に埋めながら歩いて行くと、しばらく行ったところで木々がとぎれ、目の前に大きな木があった。
 雪のためよく見えないが、近寄って見ると他の木よりも幹がずっと太い。風にびくともしていない。頭上で枝同士ぶつかりあう音が繁く聞こえるのは、木が大きく、枝も多いのだろうと思われた。
 根元へ雪を掘ると、洞を見つけた。運の良い事に、洞は入り口が狭く中は広い。妹紅一人なら問題なく入り込めた。
 中で膝を抱えるとちょうどよかった。上着を引き寄せると、若干吹き込む風も気にならない。安堵し、徐々に体が温まってくると、妹紅は眠ってしまった。
 目を覚まし、ふと顔を上げて横を向いた時、外から差す光に目が眩んだ。
 野宿をしていた事を思い出した。細く目を開けて明るさに慣らしながら洞を這い出ると、吹雪はすっかり止み、雲も消えよく晴れた朝だった。
 寒さに震えながらも、快活な気持ちで背を伸ばした。不自由な姿勢で寝ていたから、背骨が悲鳴をあげる。
 宿の木に目が止まり、はじめて木をはっきりと見て妹紅は驚いた。木の大きさに驚いたのだ。幹は、普通の体格の人間が八人くらいで腕を伸ばしあい、囲おうとしても囲いきれないだろう程太い。枝はあたりの木を退けるようにぐっと広がり、幾重にも重なっている。枝には雪がずっしりと積もり、朝日を反射してきらきら光っていた。
 幻想郷にも稀な大木だった。しばらく見上げていた後、幹に触れてはりついた雪を落とすと、苔むした表面があらわれ、その下の樹皮は真っ黒で堅かった。…やがて、これが桜の木であると妹紅は気づいた。
 気づいて、なお感心した。こんなに大きな桜が春に花咲けば、どんなに素晴らしいだろう。山の妖怪たちは、この桜を知っているだろうか?
 野宿はもう終わったし、桜について誰かに話したくなった。妹紅は上着のよごれを払い、帰るために飛び立った。




 妹紅が屋台から出て行ってから、残った四人はなお花札を続け、酒を飲み、文の他みんな酔いつぶれてしまった。
 ミスティアとチルノは眠りこけ、慧音はぼうっとし、文は記事の下書きを書いている。
 風の吹く音をぼんやりと聞きながら、慧音はあたたかい布団で寝たいと考えていた。だが風に吹かれながら帰るのは億劫だ。どうしようかと迷っていると、文の下書きが済み、ペンを机に置く音に驚いて、慧音は正気を取り戻した。
(なんてことだ。私は何をしているんだ、一体)
 ふらつきながら席を立ち、上着を着る。
「帰るんですか?夜中も近いですし、風が強いのでお気をつけて」
「その二人は?」
「放っておいていいでしょう。私ももう帰らないと」
 文は外套をかぶってさっさと出て行った。瞬く間も無く姿が空の果てに消える。慧音は文のようには飛べないし、風に抗いながら真っ直ぐ飛ぶ自信も無いから、とぼとぼ歩いて帰る。そうして日付が変わる前には家へ帰り着き、すぐ眠った。
 翌朝、妹紅が木の洞から出てきた頃には慧音は山の麓を飛んでいた。酔いがさめてから妹紅が心配になったのだった。片腕にマフラーを抱えている。
 しばし飛び回っていると、樹海の向こうから妹紅が飛んでくるのが見えた。妹紅も慧音に気づいたらしく、近づいてくる。
「無事だったか。寒くないか?」
「そりゃ寒いよ」
 と、息を吹くようにしてぼっと火を噴く。
「じゃ、これ使え」
 マフラーを差し出し、妹紅が受け取って首に巻くと、やや長すぎたが気にせず、暖かくなって嬉しそうな顔をした。
「ありがと」
「ん。昨日は悪かったな」
「いいよ。あいつらの言うとおりにしたほうがバカだった」
「まぁ、みんなバカだよ。あのあとロクな事にならなかったし。…取材が来る前に、さっさと行こう」
 二人は山に背を向けた。
 野宿をどうしたか慧音は知りたがり、妹紅は木の洞を見つけ、眠った事を話した。それからその木がとても大きい桜であって、どんなに驚いたかも話した。
「すごいな。山の妖怪はみんな知ってるんだろう」
「そうかもね。聞いたことはないけど…教えてくれるわけないか。でも、咲いたらきっときれいだよ。春になったら見に行かない?」
「んー。里の桜でいいだろう。山の桜はなぁ」
 慧音はあまり興味がないようだった。妹紅も興奮をそがれ、黙ってしまった。
 後ろから妙な風音がして、振り向くと、文が飛んでくるのだった。
 来たな、と慧音は舌打ちした。
「先に行ってて。適当に話して終わらせるから」
 慧音が頷いて飛んで行ってから、間もなく文が来た。
「おはようございます。山で野宿したんですね。雪山はどうでしたか?」
 苦労はなかったか、寒さはひどかったか、寝心地はどうだったか、感想は云々、云々と質問攻めに遭う。どう聞かれても、妹紅はいい加減に一言か二言で答える。そのわりに文はノートに忙しなくペンを走らせている。一体そんなに書くことがあるのだろうか、妹紅にはわからない。
 ある質問に木の洞で寝たと答えたところで、妹紅は桜の事を話す気になった。
 話すと、文は食いついてきた。
「そんな桜があったんですか!?」
「知らないの?」
「聞いた事がありません。私が知らなければ、他の妖怪が知っているとも思えません。…我々は花見が好きですからね。いい桜があればみんな喜んで宴をしに行きます。あぁ、その桜を新聞に書けば…」
 大きな反響を呼ぶだろう、と考えた。これはいいネタになる。
「で、その桜は山のどこにあるんです?」
「それがよくわからないんだよ。行く時も、さっき帰ってきた時も迷ってたから」
「そんな!でも、だいたいの場所はわかりますよね?探しに行きましょう」
「今?」
「今すぐに。桜の事を新聞に書くのです。新聞は早さが命なのですよ」
 知った事じゃない、と妹紅は嫌がった。だが無視して行こうとすると、文が案内しろとつきまとってくる。自分がまいた種であるから、仕方なく妹紅は文をつれて山へ引き返した。
 妹紅は桜のもとから空に上がり、しばらく迷い飛んでから滝を見つけ、川に沿って樹海を越えて来たのだった。滝を見つけた時、太陽が正面にあったことを思い出す。朝の昇りはじめの太陽が東にあったから、妹紅がもといた方向、桜のある方向は滝から西であろうか。
 二人はその方へ飛び、空から巨木を探した。しかし、山の木々はみんな雪をかぶって、上から見ていては大きさの違いの区別がつかないのだった。
「だめですね。これでは下を歩き回って探すのも大変だし」
「春に来れば、探しやすくなるんじゃない?」
「それまでに他の誰かが桜を見つけなければいいのですが…」
 先に記事にされては困る。新聞に執着して渋る文を妹紅はなだめ、リリーホワイトが現れた頃にまた探す、と話を決めた。




 後日、文々。新聞が配られ、一面に博打大会の記事があった。例の哀楽の図が大きく載っている。《チルノに負けた藤原氏は、「負けるのははじめからわかっていた」と………》輝夜がこの新聞を読んだらしく、妹紅は大いに笑われた。もう新聞には永遠に協力してやらない、と思った。 
 そして雪が溶け、春のうららかな日差しが世の中を暖めはじめたある日、妹紅が散歩をしていると、リリーに弾幕をばら撒かれた。
(あぁ…桜を探しにいくって、話してたな)
 思い出したけれど、輝夜に笑われて被った屈辱も思い出し、行くのはやめていずれ一人で探そうか、と考えた。しかし、そうしていると文が来て、余計面倒になるかもしれない。それで妹紅は山へ向かった。
 知らせはしないのに、滝のあたりで文が飛んできて合流した。二人は去年と同じあたりへ行き、飛び回った。
 雪がなくなり木々の枝葉はよく見えるようになったが、巨木らしいものは見つからない。
 山の裏側まで飛ぶと、山の一部に霞が濃くかっているのを妹紅は見つけた。遠くの景色はどこでも霞がかっているから、気に止めずにいたが、何度か振り返って見ていると妙になり、近づけば、その場所だけが霞に覆われていて、山がどうなっているのか見えないのだった。
 文が近くを飛んだ時、呼び止めてその場所を指差して言った。
「あれ、なに?」
「あぁ。毎年春になると見かけますけど。霧みたいで、あそこに行くと何も見えなくなるんです」
「すごく怪しいんだけど…」
「害がないし、我々の住んでいるところから遠くて、来る者もないから、誰も見たこともないんだと思います。それに気にならないし」
 しかしあんなものが発生している妙な理由があるのだろうし、それに桜はいつまで飛び回っていても見つからない。探していない場所は霞の中だけであるから、もしかしたらそこに桜はあるかもしれないのだ。
「あこに行くんですか?」
「躊躇うなんて意外ね。前はあんなに新聞を書きたがってたのに」
「もちろん、今でも書きたいですよ。ただ、本当に見えなくなるんです」
 空から霞の中へおりていった。中に入ると、文が言ったとおり、あたり全てがぼやけて見えない。妹紅の隣にいる文の姿すらわからない。
 なにか、独特な匂いがたちこめている。それは花の匂いか、新しく芽吹いた植物の匂い、土や水の匂い、あるいはそれらが混ざり合っているとも感じられた。この変な匂いを溶かしたガスを呼吸しているようで、快いとは決して言えない。
「文屋、いる?」
「いますよ。なんだか、息をしてると肺に花が咲きそうだわ」
「…まさかそうならないわよね」
「わかりませんよ。でも私は引き返しません」
 得体の知れないものの中で、もっと用心すべきはずなのに、今は好奇心が勝っている。おかしな霞を発見した、とするだけでも一応ネタにはなるし、もしこの中で桜を見つければなお面白い。
(春霞、なにかくすらん…ってね)
 大桜を隠す謎の霞、霞に隠された桜は世にも稀な…あるいは桜が見つからなくても、また他を探せばいい。
 新聞の事ばかり考えながら文は進む。文の足音が急速に遠ざかっていくのに驚いて、妹紅も強いて歩みを進めた。
 手探りしながら歩いて行く。山とて足場は歩く、木の根に何度も躓き、危うく幹にぶつかりかけもした。進むほど匂いは濃くなり、ますます胸が悪くなる。だがそれは、霞の源に近づいているからかもしれない。
 思いに反して、なにも見つけないまま霞の外に出てしまった。妹紅が出たところで文は待っていた。
「何もなかったけど」
「いや、必ずなにかありますよ。もっとよく探しましょう。見えないせいで、知らずに通り過ぎてきたのかもしれません」
 捜索にずいぶんな熱意を示す文を妹紅は訝しんだ。だが桜に興味があるのは妹紅も同じ、できるかぎり探して見つけ出したい。
 今度は二人でてんでに霞の中を歩いた。霞に包まれている範囲は広く、一緒に歩いていても時間の無駄のようである。
 じきにあたりが暗くなりはじめ、空では日が傾いていた。山は暗くなるのが早く、すぐ夜になる。
 しかし、昼間は霞のせいで目の前も物も見えなかったのが、今はあたりの木がすこしはよく見え、暗くなりつつある事がわかったのもそのためだと気づいた。息が詰まりそうだった匂いも薄れ、つまり霞が薄れてきているのだった。
 妹紅は文を呼ばわった。遠くから返事が聞こえ、二、三度呼ぶうちに文の姿が見えた。
「霞が薄くなってるよ」
「そうですね。夜だからでしょうか。見えやすくなったのはいいけど、暗いとまた見えないし…」
「あぁ、そうか」
 既に森には日が差さない。妹紅はため息をついた。文も落胆した。冬の間ずっと待ち続けたネタだから、気が急いて、また明日、などと考えられない。
 ふと思い出して言った。
「そういえば、今いたところ、木がなくて地面が真っ黒になってたんですよ。草も生えていなくて」
 はっとして、妹紅は思い出した。冬に山へ来た時、木を焼き払った事があった。
「そこに連れてって」
「え?あぁはい」
 文について行った先は、確かに木がそこだけ無く、地面がむき出しになっている。土を撫でると、焼け焦げている。
「ここだ、ここから歩いて行ったんだ…」
 説明ももどかしく、妹紅は駆け出した。妹紅の突拍子のない言動が文は理解できないが、希望かと見て興奮を取り戻しながら後を追った。
 夜になり、霞に包まれていた時のように、あたりの文目もわからない。それでも勇んで木を避けながら走っていると、突然ひらけた場所に出て立ち止まった。
 そこは妹紅が冬にたどり着いたのと同じ場所で、目の先には大きな木の陰がある。ようやく桜が見つかったのだ。
「なにこれ、すごい!」
 文が歓声をあげて走っていく。妹紅は、桜を見つけた事が信じられず、呆けて木を注視した。
 幾代の春を経たとも知れぬ大桜は宵闇よりも黒々と立ち、月光が枝の間から千々にこぼれ、枝の無数の蕾を照らしていた。
 文は幹に触れ、飛び上がって蕾に触れ、それからカメラを出した。フラッシュを光らせて何枚も撮っている。だが上手く撮れなかったようで、写真を撮るのを止めてしみじみと桜を見上げた。
「山にこんなものがあったなんて。冥界にも、これくらいの桜はあんまりないかも」
 妹紅は歩いてきて根元に膝をつき、洞を手で探った。急に懐かしくなったのだ。
たった一晩、偶然この洞で眠った、それがこの大桜であったとは、幸運なめぐり合わせだと今更ながら思う。咲けばとんなにきれいだろうと思った桜の蕾は今、膨らみ、じき咲こうとしている。
 指先に火を出して洞の中を照らした。狭いが居心地の良かった空間が浮かび上がる。
「そこが例の洞ですか。まぁ、ずいぶんと小さいんですね」
「狭いって言ってなかった?」
 かがんで中を覗くと、奥にさらに小さな穴がある。冬には中の様子を確かめる余裕がなかったから、気づかなかったのだ。
 一瞬そこになにかが見えた。驚いて照らそうとした時、甲高い悲鳴が耳をつんざいた。
「うわっ」
 飛びのくと、洞から小さいものが飛び出し妹紅にぶつかった。あわてて払いのけた瞬間、妖精の姿形が見え、間髪なく弾幕がばら撒かれる。
「なに、こいつ!」
「リリーホワイトですよ!」
 後ろから文が叫んだ。同時にカメラのシャッターが切られ、フラッシュが光って妹紅は目が眩んだ。そのため弾幕を避け損ね被弾してしまった。
 妹紅が倒れると、リリーは逃げていった。
「なんてこと!この桜はリリーの巣だったのね!」
 文は妹紅を気遣う気色もなく、妹紅の手をとってぶんぶん振り回した。
「花見の新名所を発見、そして今まで行方が謎とされていたリリーの居場所も見つけたなんて!」
「痛い…痛いってば」
「あの霞はリリーの巣を守っていたんですね。ということはリリーが出していたのかしら?そんなことが出来たのかな」
 立て板に水をぶちまけるように喋る。妹紅の手をはなし、ノートとペンを取り出して何か書きつけた。
「きっと反響がすごいわ!今の発行部数じゃ足りなくなるわね。どれだけ増やせばいいかな…あぁ、藤原さん!火を出してください」
「火?なんでよ」
「カメラのフラッシュじゃ明かりが足りないんです。桜を照らしてください、明日の号外に載せるので」
 明日だって?すこし早すぎはしないか?
「もう世間に知らせる?もったいな…」
「新聞は早さが命なのです。こういう大きな発見はなおさらです。この速さと衝撃の記事こそ、文々。新聞の…」
「あー、わかったよ。わかったから、早く撮れって」
 木に火が燃え移らないよう適度な位置に立ち、腕を挙げて火を燃やす。
「もっと強くしてください、もっと明るく」
「…」
五回ほどシャッター音が聞こえ、文がカメラを下ろすと妹紅も腕を下ろした。被弾して傷ついた肩から血が流れる。もう、帰りたい。
「このニュースは文々。新聞が独占ですよ!明日は藤原さんに最初に配りに行きますね」
「あぁそう。私はもう帰る。痛いし」
「帰るですって?あ、発見者の一人としての感想は?」
「うるさいなぁ」
 桜、というより新聞に夢中になっている文を置いて妹紅は飛び上がった。
 空へ出るまえに、振り返って桜を見た。自分だけで見られるのが、二度目にしてこれで最後になるかもしれないと思ったのだ。
 花咲いた姿をこうして見たかったけれど、しかたない。




 去り際、妹紅が桜を振り向いた時、寂しそうな顔をしていたような気がした。月の明かりに一瞬照らされたのを文は見たのだった。なぜそんな表情をするのかも、せっかく見つけたというのに帰ってしまう理由もわからない。
 だが、文にはそんな事を考える暇は無い。ノートと桜を見比べながらペンを走らせ、書き終えると大急ぎでその場から飛んで行った。
 写真を現像し、記事を書く。興奮のため文章は整わず、記事の内容をしっかりと伝えられそうにない。紙をとりかえ、書き直す。しかしまた反故にする。また書く。
 桜とリリーが頭を駆け抜け、やがて文の頭の中には、新聞の反響、世の驚き、評判の予想しかなくなった。気がづくと机の上は書き損じの紙だらけで、今一枚の下書きを手にしている。
 書けた。三度も読み直し、空が白みはじめた頃、誰もが驚くであろう衝撃と発見が詰まったその下書きを印刷所へ持ち込んだ。
 一方、鈴仙の置き薬で傷を治した妹紅は、くたびれてぐっすり眠っていた。
 文が新聞を配りに来る夢を見て目を覚ました。さて新聞は来ているだろうか、起きて探したが、新聞はどこにもない。
 考えてみれば、あのあとすぐに号外を作って朝配るというのは、あまりに早い。これから配られるのかもしれない。
 桜が気がかりではあったが、その後新聞の事は忘れてその日は過ぎた。
 夕月が小暗い空に光りはじめた頃、里の川沿いを散歩した。春の夜の心地よさに誘われたのだ。
 飲んだくれた人間と、妖怪も中に混ざって、まだ花の咲かない桜の下で騒いでいる。風流を乱され嫌な気分になり、遠回りしていると、対岸を数人の子供と一緒に歩いている慧音が目にとまった。
 見ていると、慧音がこちら側へ顔を向けた時、目があった。表情はわからなかったが、一秒間だけ視線を合わせて、妹紅はゆっくり歩き出した。
 しばらく行く先に橋がある。慧音たちがさきにそこまで行き、橋を渡ると子供たちは慧音から離れてめいめいに歩いて行った。そこへ、妹紅がすこし遅れて来た。
「こんばんは。生徒と散歩?」
 小奇麗に頭を下げると、礼儀好きの慧音はにこりと微笑む。
「うん。みんなかわいいだろう。桜がいつ咲くか言い当てっこをして、言ったとおりの日に咲いたら褒美が欲しいんだって」
「いつ咲くかな。ご褒美はなにあげるの?」
「たぶん桜餅か駄菓子。甘い物が一番喜ぶんだ」
「当たらなくても、みんなにあげるんでしょう」
 話しながら、来たとは反対に歩いていく。
 並木の桜の合間に、枝垂桜が数本植えられていて、川面に枝を垂らしていた。花が咲くとなんともきれいだが、夜はお化け屋敷の装飾のように見えてすこし怖い。慧音は枝垂桜を見て言った。
「そうだ。化け桜はどうしたんだ?」
「化け桜?」
「冬に、山で言ってたじゃないか。ええと…」
「あぁ、化け桜なんて言ったことないよ。大きい桜だよ」
 あの桜の事を言っているのだとわかり、妹紅はふきだした。笑われて慧音は恥ずかしそうにしたが、化け桜などと言ってしまい申し開きもできない。
「覚えてたんだ。興味なさそうだったのに」
「今思い出したんだ」
「昨日探しに行ったんだよ」
「へぇ。それで?」
 詳しく話すと長くなる。妹紅はしっかり話したかったから、夕食を一緒にしようと誘った。




 日が暮れ、月が昇った事にも文は気づいていなかった。滝壺の岸で岩に腰を下ろし、手元を見つめたまま動かない。先ほどからずっとそうしている。
 手元には写真がある。夜中に現像した、桜とリリーの写真だった。しかし、暗さのため、写真は見えていないだろうに。
犬走椛が、その様子を滝の裏から見つめていた。しばらくたっても文はまったく動かず、心配になって椛は滝の裏から出てきた。
「文様、さっきからどうしたんですか?」
 椛が近寄ってもわからなかったように、文は話しかけられてようやく振り向き、うん、と一言だけ口を開いた。
「何かあったんですか…その写真は?」
 椛が手元を見ようとすると、文は写真を裏返した。
「新聞に載せる写真。使わない事にしたけど」
「はぁ。そうなんですか」
 写真をしまい、気がなさそうにふっと息をつく。
「…そうだ。はじめから椛の眼で探せばよかったんだ」
「え、なにをですか?」
 急に言われた事がのみこめず、椛は戸惑う。それを見て文は笑みをこぼした。
「ううん。なんでもない。ま、今晩も頑張ってね」
 椛の肩をたたき、文は飛び去った。




 屋台には先客があるようだった。ミスティアの歌声が聞こえる。
 中に入ると、先客はチルノだった。妹紅は花札で派手に負かされたのを思い出して後退りした。けれど、チルノは冬にあった事は忘れているらしく、黙って座っている。よく見れば、ミスティアの歌にやられてべろべろになっているのだった。
 べろべろになっているのをいい事に、ミスティアは好きなだけチルノに歌を聞かせている。妹紅と慧音は酒を酌み交わし、桜の話をした。
 霧の中を迷い歩いた事、桜を見つけ、その桜の大きさ、たくさんの蕾の事を、冬に話した時に増して、いろいろな言葉で飾って慧音に聞かせた。言葉で飾ってみても、実際に桜を見て得た感慨はなかなか言い表せなかったが、慧音は頷きながら一言一言に驚いていた。
「なに。そんなに。ふむ」
「でも、洞の奥からリリーホワイトが出てきたんだよ。リリーの桜だったんだ」
「リリー?春告精が?ほうほう」
 一通り話し終えて妹紅が杯を仰ぐと、慧音は聞いた話を頭の中で繰り返した。
「すごいな。そんな桜は私も見てみたい」
 強い風が吹き、屋台が揺れた。妹紅はもしやと思い暖簾の外を見ると、案の定、文が来たのだった。
「みなさんこんばんは。清く正しい射命丸です」
「はいはい」と、妹紅。
「あ、新聞屋!この前の新聞のせいで、私みんなにバカにされたのよ、こいつに負けたって!」
 ミスティアが文を見て叫んだ。チルノはほとんど意識不明で、突然目の前で騒がれてもただ不思議そうに見ている。
「まぁ、おかげで冬の間のお客さんが増えたじゃないですか。私にもお酒をくださいな」
 ミスティアは言い返せず、黙って酒と杯を出した。それを手に取り、文は席に座らず立ったまま妹紅を見ていた。
「そういえば、新聞出さなかったの?」
「それがですね。事情があって…」
 言いかけて、酒を持ったまま暖簾を出た。
 屋台の席が足りなくなった時のための簡易の机と椅子が外にある。文はそこへ妹紅を手招いた。
「慧音も一緒じゃ?」
「かまいませんよ。どうぞどうぞ」
 妹紅と慧音は顔を見合わせ、怪訝そうな顔をしたが、酒と杯を持って外の席へ移った。
 二人の向かいに文は座り、自分の杯に酒を注いで飲んだ。それから話し始めた。
「写真は現像できていますし、記事も書けて、今朝には配れるはずだったのです」
 早いな、と妹紅がつぶやいた。文は二杯目の酒を飲み、話を続けた。
「ですが、号外は取りやめにしました。いい記事ではありますけど、この新聞は世に出さないことにしたのです。
 あの桜のことが知れ渡れば、みんな見に押しかけるでしょう。リリーに興味を持って行く者もあるかもしれません」
 三杯目を飲む。
「それこそ大評判ですよ。でも考えてみれば、妖怪や人間がたくさん寄り付いてさわがしくしたら、リリーはそこにいられなくなってしまいます。障りでもあって、春に出てこなくなったら困るし。それに、ああいう桜は、そっとしておくべきものじゃないかと思いまして」
「そうだね」
 妹紅は文の話に納得し、どこか安心して頷いた。慧音も感心して、
「いい思慮と判断でしたな」と言った。
「当然の判断です。報じるべき事と、報じぬべき事とはわきまえています」
「ゴシップはばらまくくせにね」と、妹紅は酒を含んで笑った。
「身の危険はわきまえていないらしい」と慧音も言い、二人で笑う。
「どうとでもおっしゃいなさい。まぁ、そういうわけだから、この事は人に話さないようにしてくださいね」
 妹紅と慧音は頷き、この出来事は三人の記憶にのみ留まる事となった。
「お客さーん、串揚げできてるよー」
 屋台から呼びかけられる。妹紅が慧音の分も取りに行った。
 文は酒をどんどん飲む。瓶を飲み干しては次々ともらってきて、空の瓶を数本机に転がした頃、酔いが出てきた。寝不足のためか酔いのまわりが早い。
 疲れた眼が熱くなってくる。あれから文はまだ一睡もしていない。
 夢中になって記事を書いていた時の興奮を思い出す。今思えば、自分の願望、記者としての、非現実的な夢を目の当たりに見ていたような気すらする。
 少なくともこの号外で、天狗の社会や幻想郷の一部に騒ぎを起こせる。発行部数は確実に伸びる。これまでよりも…
 新聞大会のため、今までは自分の新聞を多くの人に知ってもらおうとしていた。そこへ転がり込んだ、このネタ。逃す手はない。
 しかしそれよりも大切なものを選んだ。
 霊樹の静穏を冒してはいけない、そこにいるべきもの、春の秩序であるリリーに害をなすようなことを起こしてはならない、手をつけるべきではないのだ。だから号外を諦めた。当然とは言えるが、新聞への執着を切り捨てた決断は我ながら潔い。
 葛藤はしたのだ。自分を褒めて悪いはずがない。…それほどに新聞を出したかったのは確かだ。しかしそれも当然の思い。
「そういえば、写真を持ってきたんですよ」
 文は写真を取り出し、机に並べて置いた。
 桜の写真が五枚、リリーと弾幕を撮った写真が二枚だった。慧音は桜の写真を屋台の明かりで照らして見た。
「あぁ、これは本当にすごい。妹紅の言ったとおり…」
 五枚の写真を次々と見て、嘆いて言う。
「羨ましいな。見に行きたいもんだ」
「ね、私たちがこっそり見に行くだけならいいかな?リリーの洞には近寄らないようにして」
 妹紅が文に話しかけると、文はにやりと笑った。
「いいでしょう。ただ、我々の仲間に見られないよう気をつけてください。特に、滝には眼の良い白狼天狗がいるので。…記者の中にも、思慮の足りない者はいるかもしれませんからね」
 文の野望が花咲く前に散ったおかげで、ゆっくり花見ができるというわけだ。
「うん。よかったね、慧音」
「いつ咲くかな。身頃になったら案内してくれよ」
 嬉しそうに慧音は酒を飲んだ。
 リリーの弾幕を避けている妹紅が写った写真を取ると、笑い出した。
「えらく必死だな」
「急だったからね。…そんなに笑うな」
 妹紅と慧音が花見に行く時に、文も一緒に行こうと言うと、二人はきっと嫌がるだろう、と酒を飲みながら文は思った。記念写真というものも知らないのだろう。
 まあこの二人はどうでもいいが。桜はいつ咲くだろうか。
「あー、乾杯しよう、今日はめでたい」
 慧音は酔ったらしい。妹紅が呆れている。
「もう飲んでるじゃない。まぁいいか」
 杯を取ると、文に言った。
「あんたも」
「あぁ、はいはい」
 三人、杯を打ち鳴らした。
駄文失礼しました、それから、ありがとうございました。
春が恋しくなって(略  冒頭の短歌は古今和歌集のです
煙巻く
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
淡々とした、雰囲気のある小説だと思いました。
こういう慧音と妹紅も、悪くないですね。