これは「鈴仙家出する」「鈴仙放浪する」の完結です。
読んでいないとわからない部分があるかもしれません。
寒さが身にしみる早朝、鈴仙は自分の家、永遠亭を目指していた。
道すがら、別れ際の美鈴の言葉を思い出す。
(鈴仙さん、あなたは私に言いましたね、「なぜあんなことされて平気なんですか」と、
私はですね、お嬢様や妹様達が住むこの紅魔館が大好きなんです。
確かにあれはやりすぎかもしれません、でもですね、それを差し引いても、私はここが好きなんです。
鈴仙さんも、なぜその人に就いて行こうと思ったのか思い出してみてください。
その人も、きっとわかってくれますから)
そう言い、笑って送ってくれた美鈴に感謝した。
「よし、今日は徹底的に師匠と話し合おう、それで、師匠に対する私の気持ちも言うんだ!」
鈴仙はさらに意気込むと、飛ぶスピードをさらに速め永遠亭に向かった。
竹林を奥に進み、行き慣れた道を進むとすぐに永遠亭は見えてきた。
扉の前に立ち、大きく深呼吸をして、扉を開ける。
「ただいま戻りましたー」
言うのだが何も返事が返ってこない、おかしいなと思いつつも、取り合えず着替えるために自分の部屋へと進んで行った。
居間を通り、奥に続く廊下を進み、自分の部屋が見える角を曲がると、そこには自分の部屋の前で座り込んでいる輝夜やてゐ、それに下っ端イナバたちがいた。
「姫様、てゐ、何してるんですか!」
「あっイナバ、帰ってきたのね、あなた、これを見なさい」
と輝夜は鈴仙の部屋を指さす。不思議に思いながらも鈴仙は自分の部屋を覗いた。そこには鈴仙の服を下に敷き、鈴仙の服を着て、さらに鈴仙の服を抱き、泣きながら「うどんげ~、どこ~?うどんげ~」と鈴仙の名前を呼ぶ永琳の姿があった。
「ちょっと姫様、師匠どうしちゃったんですか!?はっ、まさかあの時、私が殴ったから!」
「落ち着きなさいイナバ、あなたが殴ったからじゃないの、ああなったのはその後なの、いい?実は…」
鈴仙が出ていき、永琳が復活した後、輝夜が洩らした一言が始まりだった。
「…もうイナバ帰ってこないかもね」
ポツリと言った一言に、永琳は先ほどとは打って変わって慌てだした。
「ひ、姫様!そ、それは、どどどういうことですか!?」
「どういうこと、ってそれはそうでしょう、なにが嬉しくて自分の下着を弄ぶ人に就いてかなきゃならないのよ」
「で、でも、うどんげの家はここです!ほかに行くところなんか」
「わからないウサよ」
永琳の言葉を遮り現われたのはてゐだった。
「いたのてゐ」
「いたんです姫様、それよりも、鈴仙様は意外と人気が高いウサ、人当たりもいいし、かわいいし、それに、ここ幻想郷では医療関係の仕事は重宝されるウサ、頼めばどこだって受け入れてくれるウサ、それに「てゐ」…なんですか姫様」
「永琳、もういないわよ」
「へ?」
永琳の居た所はすでに誰もおらず、代わりに遠くの方で「うどんげー!」と叫ぶ声が聞こえた。
それから永琳が帰ってきたのは深夜になってからだった、帰って来てすぐ、風呂にも入らず鈴仙の部屋へと行ったのだ。
「そんなことがあったんですか…わかりました、師匠と話してきます」
「そう、お願いね、イナバ」
「はい、元々そのために帰ってきたんですから」
自分の部屋の襖に手をかけ、ゆっくりと音を立てずに入り、永琳に近づく。
「師匠起きて下さい、師匠」
「うっ、ぐすっ…うどんげ?うどんげの声がするわ?」
ゆっくりと起き上がり、キョロキョロと部屋を見渡すと、鈴仙と目が合う、次第に永琳の永琳の目は見開かれていく。
「うどんげ、ホントにうどんげなの?」
「はい、ここにいるのは一応、あなたの弟子、鈴仙・優曇華院・イナバです」
「帰って来てくれたのねうどんげー!」
「お待ちください師匠!」
飛びつこうとする永琳をぴしゃりと止める。永琳もその声に押され、動きを止めた。
「師匠、聞いてもいいですか、何故あのようなことをしたんですか」
鈴仙はまっすぐ永琳の目を見る、対する永琳は少しうつむきながら「あの…その…」と言いながらゆっくりと話しだした。
「その…寂しかったのよ、宴会のときも、すぐに私から離れて他の人と一緒に話に行ったり、ここにいる時はそうでもないけど、やっぱり他の人と一緒にいるときの方が長いから…」
「…それだけですか?寂しいからという理由だけで、あのような事をしたんですか?」
「そ、それは…その、違うのよ、違うんだけど…」
なかなか続きを言わない永琳に、鈴仙は自分が一番聞きたかった事を聞いた。
「師匠は…師匠は私のことが好きですか?」
「うどんげ…それは一体…」
「私は師匠の事が好きです、それこそ師弟関係の好きではなく、男女間で持つような意味です。
でも私と師匠は違い過ぎて、師匠は何でもこなすけど、私は失敗ばかりで、私と師匠とじゃ釣り合わない気がして、師匠といると、この気持ちをいつか言ってしまいそうで怖くて、
でももういいんです、我慢するのはやめました、師匠、私はあなたのことが好きです、愛してます。」
自分の本心をすべて言い、ふー、と息を吐き瞼を閉じる。
(言った、自分の言いたいことはすべて言い切った。これでもう思い残すことはない、破門だろうがなんだろうがすべて受け入れよう。その覚悟で来たんだから)
閉じていた瞼をゆっくりと開けると、目の前では永琳が泣いていた。
「師匠?」
「ごめんなさいねうどんげ、私のせいであなたにつらい思いをさせて、
私は怖かったの、あなたが私じゃない違う誰かの元に行くんじゃないかって思うとたまらなく嫌だった。だからどんな方法でもいいからあなたの気を引きたかった、それがこんな事になるなんて…
私もあなたのことが好きよ、誰よりも愛してる、ずっと、片時も離れたくないわ」
永琳は自分の手でそっと鈴仙の顔をつかむと、ゆっくりと引き寄せる、永琳も鈴仙も目をつむらない、見詰め合ったままキスをする。
どれだけの間したのか、一分か、それともそれ以上か、はたまたそれ以下か唇を離してほほ笑む。
「うどんげ」
「なんですか、師匠?」
「私はあなたに甘えてもいいの?」
「はい、私も師匠に甘えたいです」
「なら、今から一緒に寝ましょう、まだ寝足りなくて」
「はい、実は私もまだ寝足りないんですよ、昨日遅かったので」
「ふふ、決まりね」
それから数十分後、様子を見にきた輝夜が部屋を覗くと、そこには一つの布団で寄り添って眠る二人の姿があった。
鈴仙がたずねて行った所のその後の話
~冥界、鈴仙が去ってすぐ~
「退きなさい妖夢!あの鈴仙とか言う兎を捕まえるの!」
「いけません幽々子様!なにゆえ、そこまで鈴仙にこだわるのですか!?」
「あなたを渡したくないからよ!」
「ゆ、幽々子様、今なんて…」
「あんな兎に、違うわ、誰にもあなたを渡したくないのよ!私の大好きな妖夢を誰にも渡したくない!」
「落ち着いてください幽々子様、幽々子様は何か勘違いしてます!」
ようやく幽々子の動きが止まり、妖夢も手を離した。
「私と彼女は別にそのような関係ではありません、それに鈴仙も私も、それぞれ好きな人がいますから」
幽々子が腕をプルプルさせながら妖夢の肩をつかむ、よほど好きな人発言が効いたのだろう。
「だ、誰なの妖夢、あなたの好きな人は…」
「それはですね、あなたですよ幽々子様」
幽々子の顔は信じられないといった表情だった、それを見て妖夢は苦笑いを浮かべる。
「幽々子様に就き従ってから今まで、そしてこれからも私は幽々子様が大好きですよ」
それを聞いた冥界の姫は顔を真っ赤にして「私もよ」と言うのだった。
~魔法の森、愛の営みが終わった後~
行為が終わった後、二人は結婚の許しをもらうため神綺に会いに魔界へ行く。
いきなり「結婚します」と言われ「はい、そうですか」といくわけもなく、魔理沙と神綺の弾幕勝負が…
魔理沙が勝つ、と思われていたが子を思う母の気持なのか、どんどん魔理沙が追い詰められていく、そして、特大の弾幕が魔理沙に襲いかかるが、それをアリスが人形で防ぐ、アリスの激励が魔理沙を奮い立たせ、最後は魔理沙とアリスのマリス砲で魔理沙たちの勝ちとなった。
ルール的には反則だが、神綺は
「ルールを破ってまでその子といたいのね、ならしかたないわね」
と最後は笑って送ってくれた。
~紅魔館、美鈴怒る~
鈴仙が帰った後、美鈴は一度自分の部屋へと戻った。しかしそこで見たものは、レミリア達が自分の下着を口に入れて「美味い美味い」とほおばる姿、流石にこれには美鈴マジギレ、「紅魔館辞めます!」
と言ったところ、レミリア達の泣きの土下座、8901回やってやっと許してもらった。
「添い寝くらいはしますから、今度からそういった行為はやめて下さいね」
それに感激の涙を流すレミリア達、それから一日一日交替で添い寝をするようになった。
ここから下は「おまけ」です、結構長いかもしれません。
鈴仙が永遠亭に戻ってから数日後、博霊神社でいつもの宴会が催された。
「え~と、あっ妖夢ー!」
「あっ、鈴仙!」
妖夢の姿を見つけ声をかける、妖夢もそれに応える。
「妖夢、あれからどうなったの?」
「あっ、うん実は、いきなりだったけど、ちゃんと言えたよ、幽々子様に私の気持ち、鈴仙は?」
「よかったね妖夢、私も色々あったけど言ったよ、師匠にちゃんと自分の本音を」
二人はお互いの近況を喜び合っていた、
「じゃあそろそろ行くね、幽々子様が待ってるから」
「うん、また後で」
妖夢と別れ、また宴会場をうろうろする鈴仙、しかし目当ての人はいない、
「来てないのかな、お礼言いたかったのに」
「すみません、まだ大丈夫ですか!?」
諦めていた矢先、探していた人物の声がした、鈴仙はその声のする方へと向かう。
「美鈴さん!」
「鈴仙さん」
「あの、この前はどうもありがとうございました」
「いえ、それで、ちゃんと話し合いましたか?」
「はい、仲直りできました、どうもありがとうございます」
「いえいえ、そんな」
頭を下げる鈴仙に、申し訳ないな、と笑う美鈴、ひとしきりお礼を言って二人は別れた。
美鈴と別れ、永琳のところへと戻った鈴仙、
「どこいってたのうどんげ?」
「はい、少し用事が、あっ、そろそろ始りますね」
前では霊夢が酒の入ったコップを高らかと揚げ、「かんぱーい!」と叫んだ。
宴会も進み、一発芸を披露し、次の参加者を決めているとき
「レティ~」
と少し弱弱しい声が、何事かと全員が声のしたほうを見ると、チルノが冬の妖怪、レティ・ホワイトロックの元へと向かっていた。レティは美鈴と飲んでいた。
「どうしたのチルノ」
「ふみゅ~、眠い~」
「仕方ないわね、ほら」
レティがチルノを抱き寄せる、抱き寄せられたチルノはレティの胸を枕に、すぐ寝入ってしまった。
「ふふ、チルノちゃんすごく安心してますね」
「そう?」
「ええ、私と一緒でもこんな表情しませんよ」
「あら、嬉しいわね」
チルノがレティに甘える、それに感化されたのか、周りで見ていた者も、甘えられる者の所へと向かった。
「あの、師匠」
「なに、うどんげ」
「膝枕、してほしいです」
「ふふ、任せなさい」
鈴仙は自分の頭を永琳の膝の上に乗せ、永琳は鈴仙の頭をやさしく撫でていた。
「アリスー!」
「ちょ、ちょっと魔理沙、いきなりなにするのよ!」
「何って、膝枕だろ?」
「そうじゃなくて、他の人が見てるじゃない!」
「なら見せつけてやろうぜ、私とアリスの仲を!」
「も、もう、魔理沙ったら知らない!」
そう言うアリスの顔は真っ赤で、魔理沙の顔も上機嫌だった。
「どうしたの妖夢、さっきから氷精のほうばかり見て、羨ましいの?」
「い、いえ、そのなんと言いますか、その…はい」
「もう、言ってくれればいいのに、ほら」
幽々子は自分の膝の上に妖夢を座らせた。
「どう妖夢?」
「すごく温かいです、幽々子様」
「ふふ、私もよ」
やがて妖夢は幽々子の膝の上で寝てしまった、幽々子も壁に背を預け大好きな人の温もりを感じた。
霊夢はそれらの様子をただボーっと眺めていた、そこに誰かが近付いてきた。
「萃香じゃない、なに、どうしたの?」
「あ、あのさ霊夢、私も、その…」
「なに、あんたも膝枕してほしいの?」
「う、うん、ダメ?」
もじもじと言う萃香に、一つ溜息を吐き、自分の膝を叩く。
「全く、しょうがないわね」
「い、いいの?」
「構わないわよ、さっ、ほら」
「う、うん、エヘヘ」
霊夢の膝に頭を載せる萃香、萃香の髪をやさしく霊夢はなでる、その顔は満更でもない。
「そういや八雲のとこ、来てないな」
「あそこは気紛れだから」
「それもそうだな」
八雲家
「紫様、帰ってきませんね、藍様」
「うむ、紫さまのことだ、何もないとは思うが」
式とその式は主の帰りを待っていた、その格好のせいで帰ってこないと知らずに
香霖堂
店の縁側で、霖之助と紫が並んで酒を飲んでいた。
「こうして静かに飲むのもたまにはいいものですわね」
「そうだろう?あそこの連中は騒がしいからね」
月を見ながらクイッと酒をあおる。
「ところで、君はいつまでここにいるんだい?」
「私がここにいたら迷惑かしら?」
霖之助は考える、今まで紫がいて迷惑したかと、掃除もする、ご飯もできる、別に迷惑ではない。
「いや別に、好きなだけいるといい」
「ふふ、嬉しいわね」
ふいに、紫が自分の頭を霖之助の肩に乗せる。
「どうしたんだい?」
「少し、こうしていてもいいかしら」
「ああ、構わないよ」
そのまま二人は月を肴にちびちびと酒を飲み続けた。
霖之助の言葉通り、紫はそれからも香霖堂に居つくようになる、霖之助も邪魔にならないという理由で何も言わない、いつしか霖之助は紫がいることに安らぎを覚え、紫もまた霖之助といることに喜びを感じた。プロポーズのような言葉はなかったが、二人ともそれでもいいと思っていた。
……多少歪んでるけど。
甘過ぎる!だがそれが良い!
怒涛の甘えラッシュでどうでもよくなったぜ!
ただ一ヶ所だけ流すには(キャラとして)可愛そうな場所があったので。
魔界神は神「崎」でなく神「綺」です。
ラストの霖之助と紫に不覚にも萌えてしまった…
是非この二人の話を!
これからも応援してます!!
今度は歪んでない恋愛物を書こうと思います。
お待ちください
>>喚く狂人様
ニヤニヤしていただきありがとうございます。
これからもニヤニヤするSSを書いていこうと思います。
>>名前を表示しない程度の能力様
誤字の指摘ありがとうございます。やはり詰め込み過ぎ感がありましたか…
分けようかな、と思いましたが、どこで分けるかわからなかったもので…
>>名前が無い程度の能力2様
紫霖は自分も好きなのでこれからもちょくちょく書きたいと思います。
しかし、他の組み合わせも好きなので、他の組み合わせでも萌えさせれるよう頑張ります。
>>名前が無い程度の能力3様
励ましの言葉ありがとうございます。
その応援に応えれるよう、益々精進したいと思います。
わかってても摂っちゃうから糖尿病になるんです。
だからもっと甘々を!もっと甘々を!