Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

乙女達の休日

2009/01/06 23:05:24
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「私はね、ずっと蛇は「へびへび」って鳴くと思ってました」

 早苗が言った。
魔理沙と霊夢はコタツを叩いて爆笑した。

「いや、それはないよ」

「流石にね」

 早苗は顔を真っ赤にした。

「だ、だって、神奈子様が言ったんです。本当だと思うじゃないですか?」

 早苗は一気にまくし立てた。
魔理沙は、早苗をいなすように手を振った。

「分かった。そういうことにしてやるよ。家庭環境柄だろ? 蛇はあれだが、ペンギンが「ペンペン」と鳴くと思いこんでいた、なんて話しはよく聞くぜ」

「他に何かある?」

 霊夢が煎餅をかじりながら聞くと早苗は頷いた。

「ガマの油って知ってますか?」

「うん。知ってる」

「ああ」

 魔理沙と霊夢が答えた。

「あれは諏訪子様の油だって、思いこんでました」

 魔理沙は茶を吹きだし、霊夢は煎餅を噴き出した。
早苗は顔を真っ赤にして伏せ、足をばたつかせた。

「いや。だってガマですよ、ガマ。神社で売ってるし、普通そう思うでしょう。ああ恥ずかしい」

「本気で?」

「はい。あれは、諏訪子様の体から絞り出すんだとばかり」

 ひとしきり笑うと魔理沙が咳払いした。

「じゃあ、私の番だな」

 霊夢と早苗の視線が集中した。
 魔理沙は決まり悪そうにもう一度咳払いした。
その顔が赤いのはコタツのせいではない。

「小さい頃の話しなんだ」

 魔理沙は一旦区切った。
魔理沙はコタツの上辺りを手で示す。

「本当に、これぐらい小さい頃」

それきり、沈黙が起きた。

「何よ。さっさと言いなさいよ」

「言ってください」

 魔理沙はぼそぼそと口を開いた。

「風ってあるだろ。実はさ、木が揺れるから風が吹くんだと思ってた」

 二人は一瞬呆然としたが、やがて笑いだし、大爆笑した。
魔理沙は項垂れた。

「か、可愛らしいじゃん」

 霊夢が魔理沙の肩を叩くと、魔理沙は座布団に顔を埋めて転がった。

「うわああ。今まで、人に言ったこと無かったのに」

「き、木が揺れるから風が吹くって、あんた、よく魔法使いになれたわね」

「もう止めてっ」

 ひとしきり呼吸を整えた三人は茶を啜った。
今度は霊夢に視線が集中した。
霊夢は先手を切って口を開いた。

「私は別に、そういうのないかなあ。ほら、二人みたいに面白い話しが出揃ったところだし、私の話しをわざわざする事も無いかなって」

 魔理沙と早苗は霊夢を睨み付けた。

「言えよ」

「無いわけがないじゃないですか。嘘吐かないでください。みんな、必ず抱えてるんです。例えば、クレヨンとクーピーを取り違えてる、ネコは20歳になると卵を産むと信じてる、コーラで骨が溶けると信じてる、下と上を取り違えてる、とか。しかも、これ全部同じ人ですよ」

 早苗は白熱した。

「それ、誰の話し? そんな人いるの?」

「誰だっていいんですっ」

 早苗は虚空を睨んだ。
霊夢は溜息を吐いた。

「分かった。言うよ、言いますよ」

「ほら。やっぱりあるんじゃん」

「隠してたぜ」

 言わないと責めるくせに、つまらないことを言うと怒る気でいる。
この雰囲気が嫌なのだ。
 霊夢は二人の険しい顔を覗き見た。
言うしかないようだ。

「何て言うか、あんた達の話しとはちょっと違うけど」

「いいよ。とりあえず話して」

「私には親の記憶がないわけ。気がついた時には巫女だったみたいな」

 魔理沙と早苗は聴き入った。
恥ずかしい過ちを語るには、過去の説明が不可欠であることが多い。

「ふむ」

「母親の顔は知らないし、誰かに聞いても必ず、はぐらかされたし」

 霊夢は溜息を吐いた。

「で、最近、紫と会ったのよ。紫は私の母のことを知っているわけ。だから、根掘り葉掘り聞いたのよ。でも、私の記憶にないことばかり。写真の一枚も残っていないしね」

「おい。ちょっと待て。いつ本題になる」

 魔理沙が横槍を入れると、早苗が止めた。

「もうそろそろ本題よ。私は小さい頃から疑問があったのよ。何で私だけ特別な力があるのかって。魔理沙は魔法使いだからいいとしても、私はただの人間よ。どう考えてもおかしいじゃない」

 魔理沙は考え込んだ。

「紫は母のことを知っていて、私は母のことを知らない。だから、こう思ったのよ。私の本当のお母さんは紫なんじゃないかって」

 魔理沙と早苗の表情が凍った。
霊夢は一人笑っている。

「ね、おかしいでしょ。そんな訳ないのにね」

 魔理沙と早苗は下を向いたまま、顔を上げようとしない。

「それ、紫に確認したのか?」

 魔理沙が聞くと霊夢は笑いながら、手を振った。

「聞くわけないじゃない。あの時はどうかしてたんだって。全くバカバカしい。勘違いもいい所」

 魔理沙が黙っていると、早苗が口を開いた。

「私この前、紫さんが霊夢さんに膝枕して子守歌唄ってるの見ました」

 魔理沙はぽつりと「洒落にならん」と漏らした。
霊夢は二人の顔を見た。
 二人は顔を強張らせたきり、下を向いている。

「ど、どうしたの。面白かったでしょ? 笑わないの?」

 霊夢が魔理沙の肩を揺するが、反応はない。
早苗も同様であった。
 魔理沙は茶を一杯飲むと、コタツの端を打った。

「お開き」
ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。
yuz
http://bachiatari777.blog64.fc2.com/
コメント



1.喉飴削除
諏訪子様の油は何処にあるのですか!? 諏訪子様の油を下さい!
2.名前が無い程度の能力削除
想像したら意外と合ってしまったからフリーズしたのですね。わかります。

>「それ、誰の話し? そんな人いるの?」
いつか聞いたような。
3.名前が無い程度の能力削除
>「あれは諏訪子様の油だって、思いこんでました」
早苗さんが幼少の記憶を取り戻さない事を願うばかりです。
4.名前が無い程度の能力削除
・・・在り得ない、在り得ない・・・よ・・・な?
一瞬ホントにピシっっとなってしまった。霊夢恐ろしい子。
ケロちゃんの油・・・だと・・・!?
5.名前が無い程度の能力削除
ケッ、ケロちゃんの油汗だって・・・?
つまり、諏訪子汁ってことなのか・・・?
6.名前が無い程度の能力削除
なかなか面白い…冗談…か?
霊夢の勘は冗談ですむレベルだろうか…?
それにしても…八坂様、洩矢様、悪戯が過ぎますよ。ですから、もっとお願いします。

追伸、私はトウモロコシをトウモゴロシと呼んでいました。
7.名前が無い程度の能力削除
まあまず霊夢は旧作のころ飛べなかったから玄爺という名の亀にのってたんですけどね
8.yuz削除
コメントに失礼します。
>7様
すみません。完全に頭から抜けていました。修正しておきます。
9.名前が無い程度の能力削除
もし本当に紫が霊夢の母親だったら……
はっ!そういしたら殆どのれいゆかがきんしんそ(ピチューン
10.名前が無い程度の能力削除
まてまて皆、これが事実なら、ゆかりんに旦那が居る(居た)ってことになる……!
11.名前が無い程度の能力削除
其処は其れ、旦那は神n
12.名前が無い程度の能力削除
霊夢…次紫に会った時は肩でも揉んであげな……