静かに、ただ静かに。
夜が降りてくる。
ふわりと、そう、それは音もなくふわりと僕の前に降り立った。
それは結構長い間掃除をしていなかった棚に指をつつつ、と走らせ、埃で灰色に汚れた指先を僕の目の前に突き出しながら言った。
「掃除は?」
「残念だが、していないよ」
「最後ぐらい清潔にすべきではありませんこと?」
「最後だからこのままでいいのさ」
彼女はどこか寂しげな表情を見せながら指先の埃をふう、と吹いて飛ばした。
ふと窓の外を見れば既に橙色の空は山際の上を幽かに走るだけで、残りはほぼ藍色に染まっている。
「聞いてるかしら?」
「生憎、扉から入って来ない奴は客とは認めないんでね。いまの君は客じゃない。ただの不法侵入者さ」
「幻想に法も何もあると思っているの?」
「滅び行く上でなら、最後に法ぐらい守ったほうがいいんじゃないかい?」
「そうかしらね」
彼女はまた寂しげな表情で周りを見渡して一つの古ぼけたカメラを手にした。
それは天狗の、あの騒がしい新聞記者が遺していった物だ。
ここなら最後まで残せる、と言って。
「彼女は?」
「どの、彼女だい?」
「これの持ち主の」
「そのカメラの、かい?」
「彼女はどこに?」
「闇の中さ」
その言葉を聞いた彼女はどこかやるせないような表情を浮かべて窓の外を見た。
その目の端に涙が見えたのは気のせいか。
窓の外には、夜が降りていた。
「ここも、消えるのかしらね」
「まあ、そうだろうね。真ん中だから一番最後かもしれないが、いつかは消えるさ」
「貴方は、消えてもいいの?」
「嫌だけど、それしかないよ。それに、彼女達のいない幻想はつまらない」
彼女はくるりと僕に背を向けて少し歩き、おんぼろの扉に手をかけた。
「さよなら」
「ああ、さよなら」
扉の向こうから見えた彼女の笑顔は、降りてきた紫色の闇に溶けて、消えた。
開けっ放しの扉から、夜の冷たい空気と闇が店の中を侵食してゆく。
僕の体も彼女と同じ色に溶けて、消えた。
闇の中に、幻想の詰まったカメラがひとつ。
夜が降りてくる。
ふわりと、そう、それは音もなくふわりと僕の前に降り立った。
それは結構長い間掃除をしていなかった棚に指をつつつ、と走らせ、埃で灰色に汚れた指先を僕の目の前に突き出しながら言った。
「掃除は?」
「残念だが、していないよ」
「最後ぐらい清潔にすべきではありませんこと?」
「最後だからこのままでいいのさ」
彼女はどこか寂しげな表情を見せながら指先の埃をふう、と吹いて飛ばした。
ふと窓の外を見れば既に橙色の空は山際の上を幽かに走るだけで、残りはほぼ藍色に染まっている。
「聞いてるかしら?」
「生憎、扉から入って来ない奴は客とは認めないんでね。いまの君は客じゃない。ただの不法侵入者さ」
「幻想に法も何もあると思っているの?」
「滅び行く上でなら、最後に法ぐらい守ったほうがいいんじゃないかい?」
「そうかしらね」
彼女はまた寂しげな表情で周りを見渡して一つの古ぼけたカメラを手にした。
それは天狗の、あの騒がしい新聞記者が遺していった物だ。
ここなら最後まで残せる、と言って。
「彼女は?」
「どの、彼女だい?」
「これの持ち主の」
「そのカメラの、かい?」
「彼女はどこに?」
「闇の中さ」
その言葉を聞いた彼女はどこかやるせないような表情を浮かべて窓の外を見た。
その目の端に涙が見えたのは気のせいか。
窓の外には、夜が降りていた。
「ここも、消えるのかしらね」
「まあ、そうだろうね。真ん中だから一番最後かもしれないが、いつかは消えるさ」
「貴方は、消えてもいいの?」
「嫌だけど、それしかないよ。それに、彼女達のいない幻想はつまらない」
彼女はくるりと僕に背を向けて少し歩き、おんぼろの扉に手をかけた。
「さよなら」
「ああ、さよなら」
扉の向こうから見えた彼女の笑顔は、降りてきた紫色の闇に溶けて、消えた。
開けっ放しの扉から、夜の冷たい空気と闇が店の中を侵食してゆく。
僕の体も彼女と同じ色に溶けて、消えた。
闇の中に、幻想の詰まったカメラがひとつ。
それと、この場合では文しか書かれていないので、他の面子がどうなってしまったのかも書いて欲しかった。
幻想郷の中心が香霖堂っていうのもどうなんでしょう?公式設定では位置までは無かったはず。オリジナルにせよ、これはどうかと。
けれど、衝動的に書くというのは大事だと思いますよ。
何かがフッと降臨したのを書き貯めておくことも良いことだと思います。
ただ、それをそのまま投稿するのではなく、ある程度話として完成させるように推敲なさっては?
次に期待しています。
すごくこう、怖かったです。怖い、それしか出てこなくて。すみません。
しかし、と言いますか。なんだか初めて読んだのにグワッと何か目の前に広がるんですよ。同じSS書きとしてすごくかっこいいなと思いました。
端的には察することができても、「ここは中心部だから~」という発言や、「闇の中」等、過去への伏線を回収できてないので、「幻想郷がどうなってしまったのか」という前提が理解できません。いきなりラストシーンから入って、回想に入らずに人類が滅亡してしまったような映画みたいですよ。
とりあえず、真面目な予想だと何パターンもあるので大穴予想だけしときます。
EXルーミアの恐怖!~さようなら射命丸~
「まさか・・・暴走!?」
「幻想郷を食べている・・・」
「中央基地(香霖堂)も時間の問題か」
肝心のストーリーが見えてこないのが残念だった。
もうちっと背景なり設定だとかをSSに盛り込んでたらと思うと勿体ない。
次回作に期待します。
読み手に想像の余地を与えるのは賛否両論あるにしても、ある程度人物に関する知識が無いと登場人物の把握が困難である、というのは問題な気もします。
ある程度自分なりの予測をつけた上で読んでみると、良い感じの余韻を残す面白い作品だと思います。
これで本編があれば尚良しなんですが。
これは予告なんでしょ?
書きあがった物がどどーんと投下されるんでしょw?
>7さん
一晩経ってから冷静に読み返してみてこれでは誰が何を言っているかまったくと言っていい程分からないということに気付きました。何かを衝動的に書いてもそれをそのまま投稿せず、ちゃんと一つの話として完成させてから投稿したいと思います。
>#さん
なんかあまり褒められ慣れてないのでちょっと照れますね。でも貴方のコメントを読んでまた書く気力が湧いてきました。
>3さん
香霖堂が中心という記述は多分何かのSSでこういう設定があったのを覚えていて、それが公式の設定とごっちゃになっていたようでした。これも投稿する前に確認すべきでした。
>4さん
確かにそうかもしれません。久々に筆が乗ってどこか調子に乗っていました。もう少し冷静に書いてみようと思います。
>6さん
書き始めた時は「幻想郷が滅ぶ時の会話を書こう!」と思っていたので背景とかはまったく考えてませんでした。もう少し中身のあるSSを書けるようになりたいです。
>8さん
>9さん
この先本編(続編?)を書けるかはちょっとわかりません。まだSSを書き始めてあまり経っていないのであまり長いのは書けないと思います。ですが、できればかいてみようと思います。
位置的な中心ではなく人間と妖怪の境界線の中心って意味っぽいですが
プロローグでこれだったらかなり引き込まれてたかもしれません
先の構成が欲しいですね