「霊夢さん、元旦なんですけど家の神社に働きに来ませんか?」
「あのね…家も神社なのよ、馬鹿にしているの早苗?」
「そ、そうですよね、今なら何時もの5倍のバイト料払うんですけど…」
「さあ!すぐに行きましょう早苗!」
「え、ええっ!?さっきと発言違いませんか」
「いいのよ!どうせ来るのはお金払わないで冷やかしに来る妖怪だけだから」
こうして、今年の博麗神社は巫女不在のまま
年末年始が始まったのだった
「まったく…神社が巫女不在でお正月なんて、世も末だよ」
そんな人が居ない博麗神社の中で一人愚痴を零しながら
神社の中で作業をしている影があった
「久しぶりに帰ってきて見れば、年明け前なのに
準備すら整ってないじゃないか…」
その人物は、愚痴を零しながらも慣れた手つきで御神籤を作っていく
「霊夢の奴、この神社の神の事完全に忘れてるんじゃないだろうね?」
幻想郷でも珍しくない緑の髪をした人物
博麗神社の祟り神こと魅魔その人であった
お正月が近いので、久しぶりに神社に戻ってみたら誰も居ない
その上、お正月の準備は殆ど出来て居ない博麗神社の姿があった
「まあ、幸い掃除は済んでいるみたいだけどさ…」
愚痴を零しながらも絵馬や御神籤等を淡々と作っていく魅魔
(いや、いくらなんでも年始の初詣の時間には帰ってくるだろう…)
普段は人が来ない博麗神社とはいえ、
年始にはお賽銭を入れに来る参拝客は居るはず
だから、その時までには帰って来ると思って
魅魔は御神籤や破魔矢等の準備をしているのだ
「やれやれ…霊夢の奴め…後で覚えておきな」
12月31日のお昼…魅魔は何とか全ての準備を整え終えて
後は、巫女である霊夢が帰るのを待つだけの状態になった
(それにしても遅いね…一体なにやってるんだいあの馬鹿巫女は…)
この一年の売り上げが、博麗神社の売り上げであり
尚且つ、その神社の信仰にも繋がるはずなのだ
その信仰を集めるのが、本来の巫女の務めでもあるのだが
「あのダラケ巫女め…こんな時間まで何やってるんだい」
居間で一眠りしていたら、来るだろうと思って眠っていたが
一向に霊夢が来る気配はない
気がつけば既に夜も暗くなってきていて
明日の朝…新年の初詣に来る参拝客のために
誰かが神社に待機しなければいけない時間になってきていた
(あの馬鹿巫女…忘れているんじゃないだろうね)
流石に魅魔も慌て始める、神社に巫女が居ないとなると
参拝する客もこなくなる可能性が高い
それだけじゃない、ただでさえ最近は別の神社が出来ているのだ
「このままじゃ、新しい神社に人取られるって言う時に…」
既に時間は夜9時を切っていた…
考えれる時間も、霊夢を待つ時間もほとんど無い
魅魔が腕を組んでしばしの間考え込んでから
「仕方が無い…」
魅魔が何通りものパターンを想像した上で
使いたくなかった最後の手段を使用する事を決めた
(ゴーン…ゴーン…)
除夜の鐘が鳴り響き終わり
里の中で無事に年を越す事が出来た人達が挨拶をし始める
今年も良い年であるようにという思いを込めて
年の始めに神社にお参りに行き祈願する初詣
特に今年の初詣は、何時もと違っていた
「新しく出来た神社に行ってみようか?」
「そうだな大きくて綺麗だし」
「博麗神社は…妖怪だらけだと聞いているしなあ」
「それに里から遠いしね」
『何より、早苗ちゃんに会える!』
新しく山に出来た神社で初詣をする人が里の中で増えていた
信仰を集める為に早苗が頑張った結果がこの日に如実に現われていた
殆どの里の人が守矢神社に向かっている中
一人の若い男が博麗神社に参拝に向かっていた
「…やっぱり俺は昔から来ている博麗神社だな」
数人の仲間からも守矢神社に参拝にいくのを誘われたが
その奇特な若者は一人で博麗神社に向かっていた
「ふぅ…やっぱりこの階段は辛いなぁ」
博麗神社に向かう為の石階段を上るのは若者でも少々汗を掻く
だがそうこうしているうちに神社の鳥居を超えて
人が居ない神社の境内に入る
「今年は本当に人が居ないな…」
若い男がそう言いながらお賽銭箱にお金を投げ入れる
(今年は巫女さんも居ないのか…こりゃあ来年から山の神社にした方が良いな)
男がそう思って来た道を帰ろうとした時
「おめでとう、お前さんが今年の参拝客第一号だ」
「だ、だれだ?」
唐突に声をかけられた
急いで声がした方を振り向くと
「とりあえずこの屠蘇はサービスだから良ければどうぞ」
そこにいたのは緑の髪をした大人の巫女さんの姿だった
神社に来た今年初めての参拝客に屠蘇を振る舞い
破魔矢と絵馬を無事に売って魅魔はため息をついた
「まさか、私が巫女装束を着る羽目になるとはね」
霊夢の代わりに巫女装束を着て神社で仕事をする
これが魅魔の取った最後の手段であった
「…恥ずかしいったらありゃしない」
頬を染めつつ、着ている巫女服の脇の部分を見つめる
「しかし、昔はこんな破廉恥な服じゃなかったはずなんだがねぇ」
昔の霊夢の着ていた服を思い出しながら
魅魔は誰か人が来るのを待っていた
(まあ、朝になる頃にはもう少し人が来るだろう)
魅魔がそう思いながら待機していたら
誰かがきょろきょろしながら神社に歩いてきた
「…おや?」
歩いてきた人物を見て、魅魔が首を傾げるが
次の瞬間には口をにやりと笑わせた
「よし、人材一人確保」
『なんで私も手伝わないといけないの~(涙)』
嬉しそうに喜ぶ魅魔の隣でスケブを持った女性が涙目になっていた
『大体、神社の巫女は何処に行ったの!』
「馬鹿巫女がいないから、仕方なく私が代理をしてるんだよ」
『…それにこの巫女服、腋がスースーしているし胸が苦しいの!』
「ひと段落したら、少し縫い直すから我慢しなサリエル」
『うわ~ん!魅魔の馬鹿!』
毎年、博麗神社にこっそりとお参りに来ているサリエルを見つけた魅魔が
霊夢が着ているあの巫女服を強引にサリエルに着せると
強制的に巫女に仕立て上げた
「お客が来たら屠蘇をプレゼントしてあげてくれ」
『…了解したなの』
サリエルが渋々納得するのを魅魔が見届ける
「さて、となると…やっぱりあいつも呼ぶか…」
まだ参拝客が来ない間に魅魔が更なる人材の強化を考える
頭に浮かぶのは、自分と同じ魔法使いである…
『残念だけど、神綺は来れないと思うの』
名前を呼ぶ前に、サリエルに止められた
「えっ?なんで」
『さっきまで幻想郷歌合戦で娘さん達と一緒にグループ組んで歌っていたから』「う、嘘だろ!?大体なんて名前のグループなんだい!」
驚く魅魔に対してサリエルがスケブを差し出した
『グループ名は【東方神綺】…年末限定復活なの』
「し、しまった…」
思わぬ誤算だった…
『教授達は苺ババロア豆腐売りに行っているし
小兎姫さんは守谷神社で警備員やってるの!
おまけに私はコンガラさんとデートの予定なの!』
「ぬぅ…あいつら…」
魅魔が腕を組んで考える
腋が開くので少々目のやりどころに困るが
今の魅魔は気にしていなかった
『…もうちょっと人手がほしいの』
「そうだねぇ、一回だけ神綺を呼んでみるかい」
『出来るの!?』
驚くサリエルを他所に、魅魔が口に手を沿えて呪文を唱える
「助けて魔界神~!」
『そんなんで来るはずが…』
サリエルが胡散臭そうに魅魔に見つめていると
「神と聞いて瞬間移動してきました!」
『来ちゃった!?』
本当に魔界神がやってきた
しかも結界が張られているはずの神社の境内に
「って、あらあら?魅魔じゃないどうしたの?」
現われた神綺が近くに立っていた
「神綺何もいわずに力を貸して欲しいんだよ」
「え~」
『魅魔…やっぱり無理なの…諦めるの』
魅魔の言葉に嫌な顔をする神綺
サリエルも神綺の顔を見て頷く
「報酬も出すから…」
「ん~…どんな報酬?」
乗り気じゃない神綺に魅魔が交渉をし始める
「お前さんも巫女服着ても構わないから」
(『こんな恥ずかしい巫女服、誰も好んで着たくないの…』)
「あら、悪くないわね…でも、ちょっとねぇ」
(『み、脈有なの!?』)
「わかったわかった…私とおそろいの服用意してやるから」
(『一般の人ならそんな服要らないの!』)
「え!本当!?…だけど今日はもう疲れてるし…」
(『なんで喜ぶの!?私が変なの!?』)
二人の会話に、サリエルが心で突っ込みを入れる中で
魅魔が真剣な顔で呟いた
「…よし、わかった…取っておきの報酬を用意しよう」
「なによ…つまらないものだったら歩いて帰るからね?」
神綺が帰るそぶりを見せている中
魅魔が何かを懐から取り出すと神綺に一枚手渡した
「昔私の所で修行していた時のアリスのメイド姿の写真だ!」
「OK!どんな仕事でも私に任せておきなさい魅魔!」
手渡すと同時に交渉が即座にケリがついた
「それじゃあ、サリエルは屠蘇を配ってくれ」
『了解したなの』
魅魔の言葉にサリエルが頷く
「神綺は御神籤とかの会計を任せた」
「ええ!報酬分にはキッチリと働くわ」
神綺が笑顔で頷く
「私は二人の内で人手が足りなさそうな所に向かう」
魅魔も二人に頷きかける
「では!各員戦闘配置につけ」
『了解!』
「了解!」
こうして、巫女が居ない博麗神社での戦いが始まった
『参拝してくれてありがとうなの、御屠蘇どうぞ』
サリエルが参拝しにきたお客に屠蘇や甘酒等を振舞って
「破魔矢2つに絵馬ですね…はい、確かに丁度頂きました」
神綺が参拝客が購入していく物を売っていき
『魅魔、屠蘇切れそうなの!』
「よしきたすぐに持ってくるよ」
魅魔が二人の仕事が円滑に進むように裏方に回るという
見事なコンビネーションが出来上がっていた
お昼頃になると更に人が増えてきて
『御屠蘇…あわわわっ?頭撫でないでなの~』
「あらあら、確かに【東方神綺】の神綺ですけど…えっ、ファン?」
「はいはい!カメラで巫女を撮るんじゃないよ」
ドサクサまぎれてサリエルの頭を撫でる者が出てきたり
神綺に握手を求めてくる者が出てきたり
三人をカメラで撮ろうとする者が出てきて魅魔が叱ったりしたが
「お疲れ様…」
『お、終った…なの…』
「はぁ…疲れた…」
三人とも何とか無事に乗り切る事が出来た
最後の参拝客を見送ってホッと一息ついた
「二人ともお疲れ…今何か作るから」
魅魔が疲れている二人にそう声をかけて起き上がると
『魅魔も疲れてるの…』
「三人で作りましょうね」
神綺もサリエルも一緒に立ち上がる
「…助かるよ」
『お互い様なの…』
「何があるか調べないといけないわね」
三人一緒に神社の台所に向かうと
早速何があるのかを探し始める
『お米発見なの!』
「あっ、お味噌もあるわね」
「そういえば奉納品が少し送られて来てたねぇ」
見つけた材料で三人が料理を作り始め
「はいよ、味噌雑炊お待ちどうさま」
『わーい!』
「はい、これが魅魔の分のお皿ね」
あっと言う間に暖かそうな雑炊が作られた
何時もなら霊夢が居座っている炬燵の上に
雑炊が入った土鍋をドンと置くと
「それじゃあ早速、頂きます!」
『頂きます!』
「頂きます」
三人とも手を合わせて、神社の中で神の食事が行なわれる
「やっぱり寒い季節に暖かい物はありがたいねぇ」
『魅魔、御代わりいるの?』
「うふふ、昔はアリスちゃんにも良く作ってあげたっけ」
思い思いの感想を述べながら食事を終える
「『「ご馳走様でした」』」
三人が合掌して食事を終えたが
雑炊はまだかなり余っていた
「それにしても、今回の料理も余ったねぇ」
「本当ね…なんでかしら?」
『頑張ったの!』
魅魔と神綺が不思議そうに思っていると
その隣でサリエルが堂々と胸を張って答えた
「…サリエルのせいか…」
「サリエルのお蔭ね…」
その事に魅魔がため息をついて神綺が苦笑した
だが、これがこの三人の普通なのだ
「さて、そろそろお暇するわね」
『…うん、そろそろ帰るの…』
しばらくの間、談笑してから神綺とサリエルが炬燵から立ち上がった
「おや?もう帰るのかい」
二人ともこの場で眠っていくと思っていたので
魅魔が少々拍子抜けするが
「いい加減に帰らないと、夢子ちゃんに怒られちゃうしね」
『コンガラさんにお年玉貰いに行って来るの』
「そうかい…あんた等には待ってる奴が居るからねぇ」
魅魔が少々羨ましそうにそう呟く
「それじゃあ、今年もよろしくね魅魔」
『今年もよろしくなの!』
神綺とサリエルがそう言って手を振ると
魔界に向かって帰っていった
「さて…私はどうしようかねぇ」
二人を見送った魅魔が炬燵の中に入ってそう呟いていると
(くしゅん!)
「ん?」
外から誰かのくしゃみが聞こえて来た
(こんな寒い日に誰が…)
数瞬の思考の末に魅魔が炬燵から飛び出す
そして襖を盛大にあけると
「くしゅん!」
其処には縁側の端の方で寒そうにしている
赤い脇巫女の姿を見つける事が出来た
「やあ、あけましておめでとう…馬鹿巫女」
「…うん」
その姿を見た魅魔が盛大な皮肉を込めて声をかける
本来ならば一番忙しい元旦の初詣の際に
巫女である霊夢は居なければいけないのだ
「一番忙しい時に何処ほっつき歩いていた!」
「………」
魅魔が普段見せないような険しい表情で霊夢を叱りつけた
叱られた霊夢は何も言わずに俯く
「…とりあえず今はこっちにきな」
その様子を見ていた魅魔がため息をつくと
座っている霊夢の真正面に立ちその手を掴んだ
掴まれた霊夢が少し肩を震わせたが、
抵抗をしないで魅魔に連れられて神社の中に入っていった
「雑炊が余っていて良かったよ」
魅魔が炬燵に足を入れている霊夢に
再び暖めなおした味噌雑炊を用意した
「さあ、食べちまいな暖まるから」
「…頂きます」
魅魔に言われるままに、雑炊が入った茶碗を霊夢が手に取る
「暖かい…美味しい…」
霊夢が雑炊を一口食べてそう呟いた
「そうかい…なら良かった」
その様子を見て魅魔はそれ以上何も言わずに
ただ見つめるだけにした
「ご馳走様でした」
「はい、ご馳走様」
雑炊を平らげた霊夢が俯きながら魅魔の方を見つめる
「どうした、まだ御代わりするのかい?」
不思議に思った魅魔がそう言うと、
霊夢が首を横に振って小さく答える
「…聞かないの?私が何処に居たのか」
おどおどしながら喋る霊夢に対して
魅魔が優しく笑みを浮かべて答える
「言いたくないのなら言わなくてもいいさ…
それよりも明日からはきちんとお客捌いてもらうよ」
魅魔の言葉に霊夢が再び俯く
(やれやれ…何時に無く凹んでいるねぇ)
魅魔が心でそう思いながら台所を片付けようと
炬燵から立ち上がろうとした時だった
「…ごめんなさい!」
霊夢が声を出して魅魔抱きついてきた
「ま…毎年…いづも何時も神社に殆ど参拝客来ないし…
さ、早苗の神社の方が…人一杯来るからって…」
驚く魅魔に対して、霊夢が目に涙を浮かべながら
何があったのかを喋っていく
こんな偏狭で妖怪に襲われる可能性がある小さな神社に
里の人達も殆ど来ない
初詣の参拝客も毎年殆ど来ないような時もある
その上、今年は新しくて大きな神社が出来たから
そっちの方に手伝いに行ったほうが良いと思ってしまった事
「なるほどねぇ…」
原因は多少霊夢にあるとはいえないが
神社に殆ど居ない自分にも確かに問題はある
魅魔は抱きついて泣いている霊夢の頭を撫でながら
話を続けるように言った
「ざ、早苗のところで…働いて居たんだけど…
わ、私のせいで…早苗にも迷惑かかっちゃって…」
「迷惑をかけた?」
「…レミリアとか…紫とか…」
「よしよし、霊夢は悪くない」
霊夢がこっちの神社に居ないと知った霊夢の知り合いの
大妖怪達が、今こそ他の奴らを出し抜くチャンスと思ったのか
大挙して守矢神社に向かって行ったのだ
「それで…弾幕張って山の神社の中で大混乱が起こっちまったと」
「…うん」
結局、八坂神奈子と洩矢諏訪子の二人が一緒に弾幕をはって
山の神の盛大な年始の挨拶という事になり
混乱は無事に終えたのだが
霊夢からすれば、自分のせいで迷惑をかけてしまったので
早苗に謝ってからそのまま仕事をやめて
レミリアや紫を筆頭にした妖怪達を引き連れて
迷惑がかからない場所で一人一人お仕置きをして
博麗神社に戻ってきたのだった
「…帰ったら…神社に入るのが怖くなって」
「巫女が神社に入るのが怖いってどういうことだい」
「だ、だって…参拝客の人に売る破魔矢とか…全く準備してなかったし
み、巫女が居ない神社にもう誰も人なんか来なくなるもん!」
「馬鹿だねぇ…霊夢は」
「御免なさい…御免なさい!」
泣きながら御免なさいと言う霊夢の頭を
魅魔が優しく撫でる
「安心しな、今日一日で大量の参拝客が来て行ったから」
「…ひっぐ…うぞ…そんな事あるわけ…」
「泣くぐらいなら初めから此処に居れば良かったんだよ
お蔭で私が巫女をやる羽目になっちまったよ」
その言葉を聞いて霊夢は
今日無事に神社で初詣が出来ていた事を納得した
「魅魔が…巫女したの?」
「ああ、恥ずかしかったから明日からは霊夢がやりな」
「…うん…御免なさい」
魅魔の言葉を聞いて、霊夢が頷いた
「…すぅ…すぅ…」
「…眠っちまったかい…」
泣くという事は、想像以上に体力を使う
普段から殆ど泣く事が無い霊夢がこんなに泣いたのだ
魅魔に胸に抱きつきながら、霊夢は静かな寝息を立てて
幸せそうに眠ってしまっていた
「やれやれ…幸せそうに眠っちまって…」
寝ている霊夢を優しそうに見つめる魅魔
(さて、こりゃ明日も大忙しになりそうだね)
もう一回、巫女服を着る羽目になりそうだとか
守谷神社に一度頭下げに行く事だとか
やらないといけない仕事は一杯ある
「…年始で霊夢の寝顔が見れるか…今年も良い年になりそうだね」
だけど、今は自分に抱きついて
無防備に寝ている霊夢の頬を突付く魅魔であった
「あのね…家も神社なのよ、馬鹿にしているの早苗?」
「そ、そうですよね、今なら何時もの5倍のバイト料払うんですけど…」
「さあ!すぐに行きましょう早苗!」
「え、ええっ!?さっきと発言違いませんか」
「いいのよ!どうせ来るのはお金払わないで冷やかしに来る妖怪だけだから」
こうして、今年の博麗神社は巫女不在のまま
年末年始が始まったのだった
「まったく…神社が巫女不在でお正月なんて、世も末だよ」
そんな人が居ない博麗神社の中で一人愚痴を零しながら
神社の中で作業をしている影があった
「久しぶりに帰ってきて見れば、年明け前なのに
準備すら整ってないじゃないか…」
その人物は、愚痴を零しながらも慣れた手つきで御神籤を作っていく
「霊夢の奴、この神社の神の事完全に忘れてるんじゃないだろうね?」
幻想郷でも珍しくない緑の髪をした人物
博麗神社の祟り神こと魅魔その人であった
お正月が近いので、久しぶりに神社に戻ってみたら誰も居ない
その上、お正月の準備は殆ど出来て居ない博麗神社の姿があった
「まあ、幸い掃除は済んでいるみたいだけどさ…」
愚痴を零しながらも絵馬や御神籤等を淡々と作っていく魅魔
(いや、いくらなんでも年始の初詣の時間には帰ってくるだろう…)
普段は人が来ない博麗神社とはいえ、
年始にはお賽銭を入れに来る参拝客は居るはず
だから、その時までには帰って来ると思って
魅魔は御神籤や破魔矢等の準備をしているのだ
「やれやれ…霊夢の奴め…後で覚えておきな」
12月31日のお昼…魅魔は何とか全ての準備を整え終えて
後は、巫女である霊夢が帰るのを待つだけの状態になった
(それにしても遅いね…一体なにやってるんだいあの馬鹿巫女は…)
この一年の売り上げが、博麗神社の売り上げであり
尚且つ、その神社の信仰にも繋がるはずなのだ
その信仰を集めるのが、本来の巫女の務めでもあるのだが
「あのダラケ巫女め…こんな時間まで何やってるんだい」
居間で一眠りしていたら、来るだろうと思って眠っていたが
一向に霊夢が来る気配はない
気がつけば既に夜も暗くなってきていて
明日の朝…新年の初詣に来る参拝客のために
誰かが神社に待機しなければいけない時間になってきていた
(あの馬鹿巫女…忘れているんじゃないだろうね)
流石に魅魔も慌て始める、神社に巫女が居ないとなると
参拝する客もこなくなる可能性が高い
それだけじゃない、ただでさえ最近は別の神社が出来ているのだ
「このままじゃ、新しい神社に人取られるって言う時に…」
既に時間は夜9時を切っていた…
考えれる時間も、霊夢を待つ時間もほとんど無い
魅魔が腕を組んでしばしの間考え込んでから
「仕方が無い…」
魅魔が何通りものパターンを想像した上で
使いたくなかった最後の手段を使用する事を決めた
(ゴーン…ゴーン…)
除夜の鐘が鳴り響き終わり
里の中で無事に年を越す事が出来た人達が挨拶をし始める
今年も良い年であるようにという思いを込めて
年の始めに神社にお参りに行き祈願する初詣
特に今年の初詣は、何時もと違っていた
「新しく出来た神社に行ってみようか?」
「そうだな大きくて綺麗だし」
「博麗神社は…妖怪だらけだと聞いているしなあ」
「それに里から遠いしね」
『何より、早苗ちゃんに会える!』
新しく山に出来た神社で初詣をする人が里の中で増えていた
信仰を集める為に早苗が頑張った結果がこの日に如実に現われていた
殆どの里の人が守矢神社に向かっている中
一人の若い男が博麗神社に参拝に向かっていた
「…やっぱり俺は昔から来ている博麗神社だな」
数人の仲間からも守矢神社に参拝にいくのを誘われたが
その奇特な若者は一人で博麗神社に向かっていた
「ふぅ…やっぱりこの階段は辛いなぁ」
博麗神社に向かう為の石階段を上るのは若者でも少々汗を掻く
だがそうこうしているうちに神社の鳥居を超えて
人が居ない神社の境内に入る
「今年は本当に人が居ないな…」
若い男がそう言いながらお賽銭箱にお金を投げ入れる
(今年は巫女さんも居ないのか…こりゃあ来年から山の神社にした方が良いな)
男がそう思って来た道を帰ろうとした時
「おめでとう、お前さんが今年の参拝客第一号だ」
「だ、だれだ?」
唐突に声をかけられた
急いで声がした方を振り向くと
「とりあえずこの屠蘇はサービスだから良ければどうぞ」
そこにいたのは緑の髪をした大人の巫女さんの姿だった
神社に来た今年初めての参拝客に屠蘇を振る舞い
破魔矢と絵馬を無事に売って魅魔はため息をついた
「まさか、私が巫女装束を着る羽目になるとはね」
霊夢の代わりに巫女装束を着て神社で仕事をする
これが魅魔の取った最後の手段であった
「…恥ずかしいったらありゃしない」
頬を染めつつ、着ている巫女服の脇の部分を見つめる
「しかし、昔はこんな破廉恥な服じゃなかったはずなんだがねぇ」
昔の霊夢の着ていた服を思い出しながら
魅魔は誰か人が来るのを待っていた
(まあ、朝になる頃にはもう少し人が来るだろう)
魅魔がそう思いながら待機していたら
誰かがきょろきょろしながら神社に歩いてきた
「…おや?」
歩いてきた人物を見て、魅魔が首を傾げるが
次の瞬間には口をにやりと笑わせた
「よし、人材一人確保」
『なんで私も手伝わないといけないの~(涙)』
嬉しそうに喜ぶ魅魔の隣でスケブを持った女性が涙目になっていた
『大体、神社の巫女は何処に行ったの!』
「馬鹿巫女がいないから、仕方なく私が代理をしてるんだよ」
『…それにこの巫女服、腋がスースーしているし胸が苦しいの!』
「ひと段落したら、少し縫い直すから我慢しなサリエル」
『うわ~ん!魅魔の馬鹿!』
毎年、博麗神社にこっそりとお参りに来ているサリエルを見つけた魅魔が
霊夢が着ているあの巫女服を強引にサリエルに着せると
強制的に巫女に仕立て上げた
「お客が来たら屠蘇をプレゼントしてあげてくれ」
『…了解したなの』
サリエルが渋々納得するのを魅魔が見届ける
「さて、となると…やっぱりあいつも呼ぶか…」
まだ参拝客が来ない間に魅魔が更なる人材の強化を考える
頭に浮かぶのは、自分と同じ魔法使いである…
『残念だけど、神綺は来れないと思うの』
名前を呼ぶ前に、サリエルに止められた
「えっ?なんで」
『さっきまで幻想郷歌合戦で娘さん達と一緒にグループ組んで歌っていたから』「う、嘘だろ!?大体なんて名前のグループなんだい!」
驚く魅魔に対してサリエルがスケブを差し出した
『グループ名は【東方神綺】…年末限定復活なの』
「し、しまった…」
思わぬ誤算だった…
『教授達は苺ババロア豆腐売りに行っているし
小兎姫さんは守谷神社で警備員やってるの!
おまけに私はコンガラさんとデートの予定なの!』
「ぬぅ…あいつら…」
魅魔が腕を組んで考える
腋が開くので少々目のやりどころに困るが
今の魅魔は気にしていなかった
『…もうちょっと人手がほしいの』
「そうだねぇ、一回だけ神綺を呼んでみるかい」
『出来るの!?』
驚くサリエルを他所に、魅魔が口に手を沿えて呪文を唱える
「助けて魔界神~!」
『そんなんで来るはずが…』
サリエルが胡散臭そうに魅魔に見つめていると
「神と聞いて瞬間移動してきました!」
『来ちゃった!?』
本当に魔界神がやってきた
しかも結界が張られているはずの神社の境内に
「って、あらあら?魅魔じゃないどうしたの?」
現われた神綺が近くに立っていた
「神綺何もいわずに力を貸して欲しいんだよ」
「え~」
『魅魔…やっぱり無理なの…諦めるの』
魅魔の言葉に嫌な顔をする神綺
サリエルも神綺の顔を見て頷く
「報酬も出すから…」
「ん~…どんな報酬?」
乗り気じゃない神綺に魅魔が交渉をし始める
「お前さんも巫女服着ても構わないから」
(『こんな恥ずかしい巫女服、誰も好んで着たくないの…』)
「あら、悪くないわね…でも、ちょっとねぇ」
(『み、脈有なの!?』)
「わかったわかった…私とおそろいの服用意してやるから」
(『一般の人ならそんな服要らないの!』)
「え!本当!?…だけど今日はもう疲れてるし…」
(『なんで喜ぶの!?私が変なの!?』)
二人の会話に、サリエルが心で突っ込みを入れる中で
魅魔が真剣な顔で呟いた
「…よし、わかった…取っておきの報酬を用意しよう」
「なによ…つまらないものだったら歩いて帰るからね?」
神綺が帰るそぶりを見せている中
魅魔が何かを懐から取り出すと神綺に一枚手渡した
「昔私の所で修行していた時のアリスのメイド姿の写真だ!」
「OK!どんな仕事でも私に任せておきなさい魅魔!」
手渡すと同時に交渉が即座にケリがついた
「それじゃあ、サリエルは屠蘇を配ってくれ」
『了解したなの』
魅魔の言葉にサリエルが頷く
「神綺は御神籤とかの会計を任せた」
「ええ!報酬分にはキッチリと働くわ」
神綺が笑顔で頷く
「私は二人の内で人手が足りなさそうな所に向かう」
魅魔も二人に頷きかける
「では!各員戦闘配置につけ」
『了解!』
「了解!」
こうして、巫女が居ない博麗神社での戦いが始まった
『参拝してくれてありがとうなの、御屠蘇どうぞ』
サリエルが参拝しにきたお客に屠蘇や甘酒等を振舞って
「破魔矢2つに絵馬ですね…はい、確かに丁度頂きました」
神綺が参拝客が購入していく物を売っていき
『魅魔、屠蘇切れそうなの!』
「よしきたすぐに持ってくるよ」
魅魔が二人の仕事が円滑に進むように裏方に回るという
見事なコンビネーションが出来上がっていた
お昼頃になると更に人が増えてきて
『御屠蘇…あわわわっ?頭撫でないでなの~』
「あらあら、確かに【東方神綺】の神綺ですけど…えっ、ファン?」
「はいはい!カメラで巫女を撮るんじゃないよ」
ドサクサまぎれてサリエルの頭を撫でる者が出てきたり
神綺に握手を求めてくる者が出てきたり
三人をカメラで撮ろうとする者が出てきて魅魔が叱ったりしたが
「お疲れ様…」
『お、終った…なの…』
「はぁ…疲れた…」
三人とも何とか無事に乗り切る事が出来た
最後の参拝客を見送ってホッと一息ついた
「二人ともお疲れ…今何か作るから」
魅魔が疲れている二人にそう声をかけて起き上がると
『魅魔も疲れてるの…』
「三人で作りましょうね」
神綺もサリエルも一緒に立ち上がる
「…助かるよ」
『お互い様なの…』
「何があるか調べないといけないわね」
三人一緒に神社の台所に向かうと
早速何があるのかを探し始める
『お米発見なの!』
「あっ、お味噌もあるわね」
「そういえば奉納品が少し送られて来てたねぇ」
見つけた材料で三人が料理を作り始め
「はいよ、味噌雑炊お待ちどうさま」
『わーい!』
「はい、これが魅魔の分のお皿ね」
あっと言う間に暖かそうな雑炊が作られた
何時もなら霊夢が居座っている炬燵の上に
雑炊が入った土鍋をドンと置くと
「それじゃあ早速、頂きます!」
『頂きます!』
「頂きます」
三人とも手を合わせて、神社の中で神の食事が行なわれる
「やっぱり寒い季節に暖かい物はありがたいねぇ」
『魅魔、御代わりいるの?』
「うふふ、昔はアリスちゃんにも良く作ってあげたっけ」
思い思いの感想を述べながら食事を終える
「『「ご馳走様でした」』」
三人が合掌して食事を終えたが
雑炊はまだかなり余っていた
「それにしても、今回の料理も余ったねぇ」
「本当ね…なんでかしら?」
『頑張ったの!』
魅魔と神綺が不思議そうに思っていると
その隣でサリエルが堂々と胸を張って答えた
「…サリエルのせいか…」
「サリエルのお蔭ね…」
その事に魅魔がため息をついて神綺が苦笑した
だが、これがこの三人の普通なのだ
「さて、そろそろお暇するわね」
『…うん、そろそろ帰るの…』
しばらくの間、談笑してから神綺とサリエルが炬燵から立ち上がった
「おや?もう帰るのかい」
二人ともこの場で眠っていくと思っていたので
魅魔が少々拍子抜けするが
「いい加減に帰らないと、夢子ちゃんに怒られちゃうしね」
『コンガラさんにお年玉貰いに行って来るの』
「そうかい…あんた等には待ってる奴が居るからねぇ」
魅魔が少々羨ましそうにそう呟く
「それじゃあ、今年もよろしくね魅魔」
『今年もよろしくなの!』
神綺とサリエルがそう言って手を振ると
魔界に向かって帰っていった
「さて…私はどうしようかねぇ」
二人を見送った魅魔が炬燵の中に入ってそう呟いていると
(くしゅん!)
「ん?」
外から誰かのくしゃみが聞こえて来た
(こんな寒い日に誰が…)
数瞬の思考の末に魅魔が炬燵から飛び出す
そして襖を盛大にあけると
「くしゅん!」
其処には縁側の端の方で寒そうにしている
赤い脇巫女の姿を見つける事が出来た
「やあ、あけましておめでとう…馬鹿巫女」
「…うん」
その姿を見た魅魔が盛大な皮肉を込めて声をかける
本来ならば一番忙しい元旦の初詣の際に
巫女である霊夢は居なければいけないのだ
「一番忙しい時に何処ほっつき歩いていた!」
「………」
魅魔が普段見せないような険しい表情で霊夢を叱りつけた
叱られた霊夢は何も言わずに俯く
「…とりあえず今はこっちにきな」
その様子を見ていた魅魔がため息をつくと
座っている霊夢の真正面に立ちその手を掴んだ
掴まれた霊夢が少し肩を震わせたが、
抵抗をしないで魅魔に連れられて神社の中に入っていった
「雑炊が余っていて良かったよ」
魅魔が炬燵に足を入れている霊夢に
再び暖めなおした味噌雑炊を用意した
「さあ、食べちまいな暖まるから」
「…頂きます」
魅魔に言われるままに、雑炊が入った茶碗を霊夢が手に取る
「暖かい…美味しい…」
霊夢が雑炊を一口食べてそう呟いた
「そうかい…なら良かった」
その様子を見て魅魔はそれ以上何も言わずに
ただ見つめるだけにした
「ご馳走様でした」
「はい、ご馳走様」
雑炊を平らげた霊夢が俯きながら魅魔の方を見つめる
「どうした、まだ御代わりするのかい?」
不思議に思った魅魔がそう言うと、
霊夢が首を横に振って小さく答える
「…聞かないの?私が何処に居たのか」
おどおどしながら喋る霊夢に対して
魅魔が優しく笑みを浮かべて答える
「言いたくないのなら言わなくてもいいさ…
それよりも明日からはきちんとお客捌いてもらうよ」
魅魔の言葉に霊夢が再び俯く
(やれやれ…何時に無く凹んでいるねぇ)
魅魔が心でそう思いながら台所を片付けようと
炬燵から立ち上がろうとした時だった
「…ごめんなさい!」
霊夢が声を出して魅魔抱きついてきた
「ま…毎年…いづも何時も神社に殆ど参拝客来ないし…
さ、早苗の神社の方が…人一杯来るからって…」
驚く魅魔に対して、霊夢が目に涙を浮かべながら
何があったのかを喋っていく
こんな偏狭で妖怪に襲われる可能性がある小さな神社に
里の人達も殆ど来ない
初詣の参拝客も毎年殆ど来ないような時もある
その上、今年は新しくて大きな神社が出来たから
そっちの方に手伝いに行ったほうが良いと思ってしまった事
「なるほどねぇ…」
原因は多少霊夢にあるとはいえないが
神社に殆ど居ない自分にも確かに問題はある
魅魔は抱きついて泣いている霊夢の頭を撫でながら
話を続けるように言った
「ざ、早苗のところで…働いて居たんだけど…
わ、私のせいで…早苗にも迷惑かかっちゃって…」
「迷惑をかけた?」
「…レミリアとか…紫とか…」
「よしよし、霊夢は悪くない」
霊夢がこっちの神社に居ないと知った霊夢の知り合いの
大妖怪達が、今こそ他の奴らを出し抜くチャンスと思ったのか
大挙して守矢神社に向かって行ったのだ
「それで…弾幕張って山の神社の中で大混乱が起こっちまったと」
「…うん」
結局、八坂神奈子と洩矢諏訪子の二人が一緒に弾幕をはって
山の神の盛大な年始の挨拶という事になり
混乱は無事に終えたのだが
霊夢からすれば、自分のせいで迷惑をかけてしまったので
早苗に謝ってからそのまま仕事をやめて
レミリアや紫を筆頭にした妖怪達を引き連れて
迷惑がかからない場所で一人一人お仕置きをして
博麗神社に戻ってきたのだった
「…帰ったら…神社に入るのが怖くなって」
「巫女が神社に入るのが怖いってどういうことだい」
「だ、だって…参拝客の人に売る破魔矢とか…全く準備してなかったし
み、巫女が居ない神社にもう誰も人なんか来なくなるもん!」
「馬鹿だねぇ…霊夢は」
「御免なさい…御免なさい!」
泣きながら御免なさいと言う霊夢の頭を
魅魔が優しく撫でる
「安心しな、今日一日で大量の参拝客が来て行ったから」
「…ひっぐ…うぞ…そんな事あるわけ…」
「泣くぐらいなら初めから此処に居れば良かったんだよ
お蔭で私が巫女をやる羽目になっちまったよ」
その言葉を聞いて霊夢は
今日無事に神社で初詣が出来ていた事を納得した
「魅魔が…巫女したの?」
「ああ、恥ずかしかったから明日からは霊夢がやりな」
「…うん…御免なさい」
魅魔の言葉を聞いて、霊夢が頷いた
「…すぅ…すぅ…」
「…眠っちまったかい…」
泣くという事は、想像以上に体力を使う
普段から殆ど泣く事が無い霊夢がこんなに泣いたのだ
魅魔に胸に抱きつきながら、霊夢は静かな寝息を立てて
幸せそうに眠ってしまっていた
「やれやれ…幸せそうに眠っちまって…」
寝ている霊夢を優しそうに見つめる魅魔
(さて、こりゃ明日も大忙しになりそうだね)
もう一回、巫女服を着る羽目になりそうだとか
守谷神社に一度頭下げに行く事だとか
やらないといけない仕事は一杯ある
「…年始で霊夢の寝顔が見れるか…今年も良い年になりそうだね」
だけど、今は自分に抱きついて
無防備に寝ている霊夢の頬を突付く魅魔であった
霊夢の行動理由が後付けっぽいのと、
妖怪の山の上の神社に一般人が行くのは難しいのに参拝客が多いのが気になりました。
後書き、それが山の神社に伝わったら二柱が余計な対抗心を燃やしかねないですね。もっとやれ。
霊夢さんと魅魔様のやりとり大好き。