Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

大晦日と月と酒と

2008/12/31 20:54:08
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※俺設定が普通に混入しています。しいて言えばさとりと雛が親友です。それを理解した上で嫌悪感を抱かれないのでしたら、下へとお進みください。











 月が中天に輝く。
 私はいつだかに貢がれた神酒を飲みながら、それを素直に綺麗だと思った。
 誰も訪れない森の、誰も訪れない古の神社。誰も知らない。私と、私の知り合いや、親友しか知らない。ここを住処とし、ここに祀られている私は、長い時をここで過ごしてきた。
 ずっとずっと独りだった私は、また今日も独りだった。独りで酒を出し、独りで杯に注ぎ、独りでそれを飲む。いや、月が一緒か。
 私の大晦日は、今年もこうやって過ぎ去る。

「…………。……あら?」

 と、思った矢先、神社の鳥居の辺りに気配を感じた。私は今本殿裏(と、言ってもこの神社には本殿with拝殿と鳥居と石畳しかないけど)にいるので誰かは分からないが、敵意、殺意、参拝の意、厄払い依頼の意は感じられなかった。
 気配は近付く。私は変に邪魔されない限りはずっとちびちびと酒を飲んで年を越そうと考えているので、また酒を傾けた。私にとってここを誰が訪れようと、親友以外は全く興味の範囲外なのだ。ただ、大晦日にこんな辺鄙な場所を訪れるなんて変な奴もいたもんだ、とは思った。

「いますか? 雛」

 ぶっ。
 思わず大切な神酒を口から噴出した。
 そりゃあ、弱い妖怪か何かが迷い込んだと思ったら親友の声がしたんだから吹くに決まっている。いや、親友も妖怪だけど。
 私は咳き込みながら杯を置くと、立ち上がって本殿前に姿を出した。

「ちょ……さとり貴方、ペットや妹と大晦日は過ごすんじゃなかったの!?」

 親友──さとりは私の登場を見、声を聞くと、目を閉じて言った。

「生憎、ペットも妹も博麗神社の宴会に出席しています。私は宴会に貴方の姿が見えなかったのでこちらに来ました」

 さとりはまるで当然のように言ってのける。自分はペットや妹と宴会を楽しみたいと思っていたはずだろうに。

「あ、当たり前じゃない。宴会に災厄が来たら困るでしょう?」
「雛が災厄? 何を……。雛は災厄を集めているだけでしょう。行って困ると思われるのは筋違いというものです。むしろ感謝されて然るべきですよ。──え? 宴会の雰囲気を壊してしまうから? それでは今宴会に出ている地底の者たちは全員が全員、宴会の雰囲気を壊しているということになりますね」

 それでも、よ。遠慮すべきなのよ私は。

「…………そこは昔と変わっていませんね、雛。何でも自分一人で抱えたがる。何度も私を頼りなさいといったでしょう? あなたと私は親友同士なのですから……」

 …………。……仕方ないじゃない。私はそういう性格なんだから。
 私は溜息を吐きながら思った。

「さて、そういう訳で宴会に行きましょうか」
「いいえ、無理よ。“不幸にも”着いた時にはもう既に宴会は終わっているから」
「……なるほど。不幸にも、ですか」

 さとりは溜息を吐くと、私の方に一歩踏み出し、薄く片目を開けた。

「では、ここで代わりに宴をするとしますか」

 ニヤリ、と笑った。






「久しぶりですね。貴方と酒を酌み交わすのは」
「そりゃあ、さとりはずっと下にいたからねぇ」

 私は杯を傾けながら言った。
 月は先ほどと変わらずに輝きを放っている。私の周囲も、親友が近くにいる以外は何の変化も無い。酔いもまだまだ回ってきていない。
 さとりは恐れ多くも私の神酒を杯に注ぎ、口に運んでいる。まだあげるなんて言ってないのに。

「くれないのですか?」
「何の話かしら?」

 私はさとりが“読んだ”ということを知っていながらそう返した。酒瓶をそっとこちらに引き寄せながら。
 さとりはそれをちらりと見て、ふっと笑い、目を閉じた。

「それにしても懐かしいですね……。私がここに泊まった夜、雛が『寂しい……一緒に寝て』とすり寄ってきたのが」
「!?」
「それで一緒に寝ると、今度は私のことをぎゅっと抱き締めて……フフ、本当、イイ思い出ですよ」
「な……さ、さとりなんっ……何でおぼえ……」
「何故覚えているのかって? そりゃあ……雛のことが好きだからに決まっているじゃないですか」
「はぅ……! ……ぇと、はい……」

 私は顔を下のほうに向けながら酒瓶をさとりに差し出した。酔いは回ってきてなはずなのに、すごく、熱い。

「どうも」

 それを受け取り、自らの杯に酒を注ぐさとり。私はそれをちらりと見る。

「何か?」
「な、にゃんでも!?」

 目が合って、ニコリと笑われた。思い切りそっぽを向いた私は案の定台詞を噛む。……恥ずかしい。

「千年経っても変わらない可愛さを内に秘めているなんて……素敵ですよ。雛」

 正面切ってすごく恥ずかしい台詞を言われ、私は思わず叫ぶ。言った当人は涼しげな顔で酒に口をつけていた。

「だ、だだだだからさっきから何!?」
「覚えていますよ。雛は、真っ赤にさせればさせるほど可愛いということを。故に私は雛に恥ずかしい台詞を言うのです」
「ぅなっ!?」

 ななな何をっ……! さとりのこういう癖は本当、昔から変わってないわ!

「変わらないところに良さがある、とは思いません?」
「……時と場合にもよるわ」

 私はある程度落ち着いてきたところで酒を杯に注ぎ、それを口に含んだ。
 
「想像も出来ませんでしたね」
「んぅ?」

 さとりがぽつりと漏らした。私は何の話かと聞き返す。

「とっても奇妙なことから、貴方と私の間にあった空白が千年で終わるなんて」

 思わず、もう一度傾けようとしていた杯を止めた。

「あなたとこの場所で初めて出会って、そして他愛も無い時間を過ごして、別れて……。地底にいたときはずっとあなたのことを考えていました。最後、別れた時に、もうあなたに会うことは出来ないと知っていた私は、知っていながらも再会を望んでいた。そして今、とても奇妙なことに私はここにいる」

 私は杯を自分の横にそっと置いた。そして目を閉じる。

「本当、不思議ですよ、あの人間たちは。決して開かれないと思われていた地底と地上の境界をいとも容易く壊してしまったのですから。そして、笑顔で地底の者たちを地上に招き入れた。不自然なことに、私はそれに対して何の感動も覚えませんでした。ただ、少しの間遠くて行けなかった場所に、普通に行けるようになった。そんな感じの感情しか抱きませんでした。まるで、こうなることが決定的だったかのように」
「…………それは、奇妙ね」
「あなたはどうでしたか?」
「……………………」
「雛は、こういう結果になってどうでしたか?」

 薄く目を開けて月を見る。まぶしい。
 私は少し考えようとしてやめた。考えてしまうと知られてしまうから。だからそっと、考えたい気持ちを奥に追いやって、心を台詞だけしか考えられないようにした。

「少し、残念だったかしら?」
「はい?」
「地上と地下。そこの境界が壊れて少し残念だったわ」
「…………雛?」
「だって私が望んだ形ではなかったんだもの」
「それは……どういう?」
「ではあなたは、本当にこんな結果になって良かったと思っているの?」
「…………な、何を考えているのですか?」

 ふふ、と私は心の中で笑う。一瞬。そう一瞬彼女が心を読むタイミングに頭の中を真っ白にすればいい。心を読む者を騙すにはそれだけでいい。何故なら心を読む者は完全に自分を信じきっているが故に、ふと、考えが読めないことがあるとすぐに焦りを見せてしまうから。自分の能力を使うことすら忘れるほどに。特に、覚と呼ばれる種族は。……まぁただちょっとしかえしがしたかっただけなのだけど。

「わからないかしら? さとり」
「ぬ……いえ。わかっていますよ。要はあなた自身で私と会う道を作りたかった、ということですね?」
「ブブー」
「なっ!」
「本当、昔から少しでも思考が読めないとダメになるわよね、さとりは」

 種族柄仕方ないんでしょうけど。

「……雛のそういうところは好きではありませんね」
「私もさとりのからかい癖は嫌いよ」
「……お互い様、と言うことですか」

 さとりは言って溜息を吐いた。

「それで、答えを教えてくれますか?」
「ええ、いいわ。でもヒントだけ」
「むぅ……」

 私がこう言った時は押しても引いても教えてくれないということを知っているさとりは、正直に黙った。私は続ける。決して表象に答えを出さぬように。

「そうねぇ……結果より過程が大事だから、かしらねぇ」
「は…………?」
「真実は厄神様の深い深い思考の中に。あとは考えるのね~」

 言って私は杯に口をつける。普通の手段では決して騙すことの出来ない親友を騙したあとの酒は、比較的美味だった。

「むぅ……」
「さて、さとり」
「はい?」
「もうすぐ、新年よ」
「あぁ……」

 月は中天。
 そしてそろそろそこからずれようとしていた。

「あ、でもこういう結果になって一つだけ良かったことがあるわね」
「?」
「有り得ないと思っていたことが有り得たという、驚きと幸せの巧みに入り混じった気分を感じることが出来たからよ」
「…………なるほど」

 嬉しかった。だけど残念だった。
 とても変わっているとは思っている。だけどそれはそれでいい。他人とは違うことが私の特徴なのだから。

「……………………ずっと、一緒にいたかったのに……………………」

 千年間も、一緒に居られなかった時間が出来てしまった。それが残念だった。
 さとりは私と再会できて嬉しいと言った。だけど私は違う。ずっとずっとさとりと居たかった。再会が出来たのは確かに嬉しい。だけど、私は、欲深い私は、別れるという事象すら訪れずに、ずっとずっとさとりと一緒に過ごしていたかった。
 ……だから、私は残念でならない。

「何か?」
「……何でもないわ」

 言うとからかわれるから言わない。考えてもからかわれるから考えない。ずっとずっと、心の底に。

「あぁ……いい月ね」
「……ええ。ああ、雛」
「?」
「来年も、よろしくお願いします」

 そう言ってさとりは私に頭を下げた。私はそれを見てふっと笑う。
 変なところで堅苦しいのは以前と変わらず、ね。

「ええ……。こちらこそよろしく、さとり」

 また“私たち”が一から始まり出す。
 空白を、埋めるために。
どうも、今年も今日で終わり。というわけでプチ三作目なメガネとパーマです。

今回は決してわが東方ナンバーワンキャラクターから落ちることの無い鍵山雛様と、最近ぐんぐんと株が上昇しつつある古明地さとり嬢を書かせていただきました。
……ええと、まずは何故この二人が親友か、ということですね。……なんとおうか、こう、雰囲気というか、イメージカラーというか、何か通じるものがあると思いません?(同意を求めてどうする)まぁ、なんと言うかこの二人を書いたら面白い気がして、書いたら案の定面白かったです。……なんとなくシリアスっぽい気がするシーンが多かった所為でそこまで面白い部分は書けませんでしたが。……まぁ、次にこの二人で書くことがあったら果汁百パーセントギャグで書くことにしましょう。

ちなみに私の中ではこの二人の過去の話、再会の時の話などは比較的出来上がってます。


と、いうわけでクリスマスSSの投稿が出来なかったどころかプロットすらまとまらなかったことを考えないようにしているわけですが、最後に一つ、ヘタレな私から言わせてください。

創想話の皆様。良いお年を。
メガネとパーマ
http://gandp.web.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
さとひな、だと・・・・!?



けしからんいいぞもっとやれ、
なんてけしからんよすぎるかなりやるがよい!
2.名前が無い程度の能力削除
よろしい。
来年は存分にちゅっちゅするがよい。
3.メガネとパーマ削除
あけましておめでとうございます。自室でひっそり、新年を祝うメガネとパーマです。

>1さん
もっとやればいいんですね。わかりました。もっとやります。

>2さん
わかりました。ではさっそく、年が変わったのでちゅっちゅさせてみます。
4.削除
さとひなに全俺がパルスィ
5.メガネとパーマ削除
就寝前にコメント返信に来ました。メガネとパーマです。

>ぬさん
親友、と強調して書いてますが、半分くらい恋仲です。さとひな。
6.名前が無い程度の能力削除
ひょっとして前の作品(こいしが地上に来たやつ)でフラグのようなのだしてましたか?
しかしいいですなぁもっとやれ、やるのだあああ!
7.メガネとパーマ削除
初日の出見てきました。現在ストーブで身体解凍中のメガネとパーマです。

>6さん
おお、分かりましたか。ええ、フラグです。あの後再会したりっていう話がありました。
やれ、と言われたらやるしかない気がします。さて、プロットを早速練り始めましょうか。