冬。
外に出るとまだうすら寒い。たまに吹く冷たい風がマフラーをなびかせる。
それでも随分と暖かくなったと思う。
幻想郷は多くの雪を蓄えていたが、緩い日差しは凍えをゆっくりと奪っていく。
――そう、もうすぐ冬が終わるのだ。
ミスティア・ローレライはルーミア、リグル・ナイトバグを引き連れ、木々の開けた場所に来ていた。
ルーミアは冬眠から目覚めた熊だろうか、眠そうに目をこすり。
リグルは仲間たちの覚醒に心躍らせている。
生き物たちに渇望される季節が訪れるのだ。
ミスティアたちは待っている。
春を告げる妖精――リリーホワイトを待っている。
その妖精は毎年その広場の上空を通る。
ミスティアたちは春の訪れの瞬間をそこで待っているのだ。
そのとき、遠くで木々がざわめく。
一番の風が、生き物たちを揺らしている。
「……リリーだ!」
リグルが指で差した空に、白の影。
風が揺らす。
胸が騒ぐ。
――。
春が、来る――。
春一番は雪を飛ばし、葉を薙ぎ、地を削ぎ――幻想郷を征く。
桜の花びらが舞い上がる。芽吹きは荒々しい。
木の葉だけに留まらず枝も巻き上げる暴風の中では、まともに目を開けていることができないほどだ。
風に飛ばされないよう、お互い抱き合う。
目をつむり、通過を待つ。
だが、その中で、ミスティアは目を凝らす。
リリーホワイトは、彼女はどこから来て、どこへ行くのだろうか?
幻想郷の春を告げる彼女の役目を見届けたい――そう考え、見上げる。
そして、刮目する。
その光景に、
「えっ――?」
思わず、声を上げた。
「……どうしたの、ミスティア?」
空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
ミスティアの顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
リグルも彼女の異変に気がついたようだ。
視線の先を追っても、何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲う。
「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」
声に反応して、ミスティアは、ゆっくりと二人の顔を見る。
その間に溜まらず、ごく、と固唾を飲む。
「……見、た……」
ミスティアはゆっくりと指を差す。
その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。
「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」
溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。
「リ、リリーホワイトの……」
それを、言う――!
「――リリーホワイトの下着が紐パンだったんだよっ!!」
「な、なんだってーっ!?」
その事実は瞬く間に広がり、幻想郷を震撼させた。
幻想郷の少女の、下着のトレンドはドロワーズ。それはトレンド、定石、常識だ。
妖精も例に漏れず、ほとんどがドロワを愛用している。
だというのに、あろうことか、リリーホワイトは紐パンを履いていたのだ!
しかも幻想郷に春を伝えるその日に! 紐のパンティを! チョイスした! のだ!
春の訪れと共に、新しい下着の選択を告げられた妖怪たちはとてもそわそわした。
紅魔館では、
「咲夜ぁー! その"ひもぱん"ていうのを買ってきなさいっ!」
「レミィ、レミィ。落ち着きなさい。すでに咲夜は出ているわ。――そして、あなたはもう"履いている"わ」
「なんとぉ! すでにぴったりフィットでしたぁー!」
白玉楼では、
「ようむー、今日からこれを履きなさい」
「あー、ええ?」
「でもこれじゃあ動いてもあんまり見えないわー。スカートの裾も短くしないと」
「いや、あの、とりあえずハサミを置いてくれませんか」
永遠亭では、
「ほら、鈴仙。新しい下着よー!」
「いや、輝夜様、投げても履き変わりませんて」
「でもほら、前見たテレビではすぽーんて」
「その擬音だとなんだかいかがわしく聞こえますが、輝夜様の想像はきっとグロテスクなものなんでしょう」
地霊殿では、
「ほら、さとり様ー。紐パンですよー」
「えへへー」
「こら、お燐、おくう。スカートをたくしあげないの。はしたないわよ。あとほらここ、うまく結べてないわよ」
「お姉ちゃん、楽しい? にやにやしてるけど」
「それは、楽し……ねえ、こいしいつからいたの」
「いいよ、お姉ちゃんは。私がいない方がそういうこともっと出来るんじゃないかな」
「ま、待ちなさいこいし。こ、これは……そうっ! 地霊殿では当然のスキンシップなのよ! あなたも輪に入ればわかっ……」
こうして幻想郷中に紐パンが広まることになる。
一大ムーブメントは、まさに"異変"と呼ぶに相応しかった。
しかし、同時に異変と呼ぶには相応しくないほど、受け入れられていた。
それは春と共にやってきたから、それは春そのものだったからだった。
そして、その季節は魔法の森にも訪れていた。
霧雨魔理沙はゆったりとしたドロワーズを脱ぎ捨て、しっかりとした紐パンに履き替えていた。
当然のように、魔理沙は博麗神社に向かう。それが魔理沙の日常だ。
その日常という枠の中に、紐パンを見せびらかしたいという、ほんの一握りの自己顕示欲を携えて、魔理沙は博麗神社に飛んだ。
霊夢は普段どおり、縁側でお茶をすすっていた。普段の博麗の巫女は境内を掃除しているか、お茶を飲んでいるかのどちらかだ。
霊夢は魔理沙が近づくと、つまらなそうな顔で問う。
「何しに来たの?」
対照的に、魔理沙は得意そうな顔でスカートを捲くる。
「……どうだ、紐パンだぜ!」
ふうん、と霊夢は一蹴。
「……恥ずかしくないの?」
「そう言われると、少し」
魔理沙はスカートを下げる。
霊夢はゆっくりと魔理沙に近づく。そして、魔理沙の腰に優しく手を添える。
そっと触れた。ただ、それだけ。
しかし、魔理沙は変化に気付き、咄嗟に後ろに飛ぶ。そして、自分の腰に手を添える。
――ない。
さっきまであったはずのものが、なくなっていた。
それは。
「ぱ、ぱんつがない!?」
「紐パンを結界のすきまに落とし込ませてもらったわ!」
魔理沙は舌打ちする。彼女の眼前で、巫女は微笑んだ。
「紐パンって横で結んでいるだけだからねぇ。脱がしやすさではダントツよ」
ない、とわかれば、異様にすーすーする。感触が気持ち悪い。
魔理沙は、すでに戦意を喪失していた。
「……お、憶えてろよ!」
「んー、出直して来なさい」
霊夢は魔理沙に目もくれず、縁側に戻っていった。
そして、この決着がまたしても幻想郷を震撼させた。
そう。紐パンはサイドからの攻撃に非常に脆かったのだ。
各勢力は、いかに紐パンの耐久力を上げるか研究を重ねた。
紐を接着剤で固定する者も現れた。
パンツをサスペンダーで吊る者も現れた。
履かずにボディペイントをする者も現れた。
しかし、博麗霊夢はその全てを脱がして見せた。
「もう嫌だ! もう、紐は見たくない!」
河童はついに愚痴を吐いた。
「上のわっかを引っ張ると固くなって、下の紐を引っ張ると緩くなるところなんて、もう見たくないんだ!」
幻想郷最先端の技術力を持つ河童は、泣いた。
だが、天狗は怒る。
「そんなこと言っても、巫女に脱がされてしまう! 貴方は……ノーパンで空を飛びたいの……?」
語尾は弱い。
研究者達は、弾幕撃ちは疲弊してしまった。新しい紐パンを開発することに疲れてしまった。
やがてドロワーズの良さを認めなおし、履き替える者も現れ始めた。
固持し続けた勢力と合わさり、総合ドロワ勢力は紐パン勢力を飲み込んだ。
――こうして、博麗の巫女を発端に紐パン異変は解決された。
やがて夏が来て、秋が来て、冬が来て――その冬も終わる頃。
幻想郷は、また一つ歳を取った。
ミスティアは例年通り、リグルとルーミアの二人と春の訪れを待ちわびていた。
幻想郷は、色づき始めている。
「……リリーだ!」
リグルが指で差した空に、白の影。
春が来る。
春一番は幻想郷を征く。
桜の花びらが舞い上げる。
ミスティアたちは風に飛ばされないように寄り添いあう。
目をつむり、風が通り過ぎるまで待つ。
だが、その中で、ミスティアは見上げた。
リリーホワイトが紐パンを履いているか、確かめたくなったのだ。
刮目する。
スカートの中が、視界に入る。
その光景に、
「えっ――?」
思わず、声を上げた。
「……どうしたの、ミスティア?」
空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
リグルも彼女の異変に気付き、声をかける。
視線の先を追っても、もう何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲った。
「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」
声に反応して、ミスティアはゆっくりと指を差す。
その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。
「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」
溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。
「リ、リリーホワイトの下着が……」
それを、言う――!
「下着が――ふんどしだったんだよっ!!」
「な、なんだってーっ!?」
外に出るとまだうすら寒い。たまに吹く冷たい風がマフラーをなびかせる。
それでも随分と暖かくなったと思う。
幻想郷は多くの雪を蓄えていたが、緩い日差しは凍えをゆっくりと奪っていく。
――そう、もうすぐ冬が終わるのだ。
ミスティア・ローレライはルーミア、リグル・ナイトバグを引き連れ、木々の開けた場所に来ていた。
ルーミアは冬眠から目覚めた熊だろうか、眠そうに目をこすり。
リグルは仲間たちの覚醒に心躍らせている。
生き物たちに渇望される季節が訪れるのだ。
ミスティアたちは待っている。
春を告げる妖精――リリーホワイトを待っている。
その妖精は毎年その広場の上空を通る。
ミスティアたちは春の訪れの瞬間をそこで待っているのだ。
そのとき、遠くで木々がざわめく。
一番の風が、生き物たちを揺らしている。
「……リリーだ!」
リグルが指で差した空に、白の影。
風が揺らす。
胸が騒ぐ。
――。
春が、来る――。
春一番は雪を飛ばし、葉を薙ぎ、地を削ぎ――幻想郷を征く。
桜の花びらが舞い上がる。芽吹きは荒々しい。
木の葉だけに留まらず枝も巻き上げる暴風の中では、まともに目を開けていることができないほどだ。
風に飛ばされないよう、お互い抱き合う。
目をつむり、通過を待つ。
だが、その中で、ミスティアは目を凝らす。
リリーホワイトは、彼女はどこから来て、どこへ行くのだろうか?
幻想郷の春を告げる彼女の役目を見届けたい――そう考え、見上げる。
そして、刮目する。
その光景に、
「えっ――?」
思わず、声を上げた。
「……どうしたの、ミスティア?」
空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
ミスティアの顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
リグルも彼女の異変に気がついたようだ。
視線の先を追っても、何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲う。
「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」
声に反応して、ミスティアは、ゆっくりと二人の顔を見る。
その間に溜まらず、ごく、と固唾を飲む。
「……見、た……」
ミスティアはゆっくりと指を差す。
その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。
「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」
溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。
「リ、リリーホワイトの……」
それを、言う――!
「――リリーホワイトの下着が紐パンだったんだよっ!!」
「な、なんだってーっ!?」
その事実は瞬く間に広がり、幻想郷を震撼させた。
幻想郷の少女の、下着のトレンドはドロワーズ。それはトレンド、定石、常識だ。
妖精も例に漏れず、ほとんどがドロワを愛用している。
だというのに、あろうことか、リリーホワイトは紐パンを履いていたのだ!
しかも幻想郷に春を伝えるその日に! 紐のパンティを! チョイスした! のだ!
春の訪れと共に、新しい下着の選択を告げられた妖怪たちはとてもそわそわした。
紅魔館では、
「咲夜ぁー! その"ひもぱん"ていうのを買ってきなさいっ!」
「レミィ、レミィ。落ち着きなさい。すでに咲夜は出ているわ。――そして、あなたはもう"履いている"わ」
「なんとぉ! すでにぴったりフィットでしたぁー!」
白玉楼では、
「ようむー、今日からこれを履きなさい」
「あー、ええ?」
「でもこれじゃあ動いてもあんまり見えないわー。スカートの裾も短くしないと」
「いや、あの、とりあえずハサミを置いてくれませんか」
永遠亭では、
「ほら、鈴仙。新しい下着よー!」
「いや、輝夜様、投げても履き変わりませんて」
「でもほら、前見たテレビではすぽーんて」
「その擬音だとなんだかいかがわしく聞こえますが、輝夜様の想像はきっとグロテスクなものなんでしょう」
地霊殿では、
「ほら、さとり様ー。紐パンですよー」
「えへへー」
「こら、お燐、おくう。スカートをたくしあげないの。はしたないわよ。あとほらここ、うまく結べてないわよ」
「お姉ちゃん、楽しい? にやにやしてるけど」
「それは、楽し……ねえ、こいしいつからいたの」
「いいよ、お姉ちゃんは。私がいない方がそういうこともっと出来るんじゃないかな」
「ま、待ちなさいこいし。こ、これは……そうっ! 地霊殿では当然のスキンシップなのよ! あなたも輪に入ればわかっ……」
こうして幻想郷中に紐パンが広まることになる。
一大ムーブメントは、まさに"異変"と呼ぶに相応しかった。
しかし、同時に異変と呼ぶには相応しくないほど、受け入れられていた。
それは春と共にやってきたから、それは春そのものだったからだった。
そして、その季節は魔法の森にも訪れていた。
霧雨魔理沙はゆったりとしたドロワーズを脱ぎ捨て、しっかりとした紐パンに履き替えていた。
当然のように、魔理沙は博麗神社に向かう。それが魔理沙の日常だ。
その日常という枠の中に、紐パンを見せびらかしたいという、ほんの一握りの自己顕示欲を携えて、魔理沙は博麗神社に飛んだ。
霊夢は普段どおり、縁側でお茶をすすっていた。普段の博麗の巫女は境内を掃除しているか、お茶を飲んでいるかのどちらかだ。
霊夢は魔理沙が近づくと、つまらなそうな顔で問う。
「何しに来たの?」
対照的に、魔理沙は得意そうな顔でスカートを捲くる。
「……どうだ、紐パンだぜ!」
ふうん、と霊夢は一蹴。
「……恥ずかしくないの?」
「そう言われると、少し」
魔理沙はスカートを下げる。
霊夢はゆっくりと魔理沙に近づく。そして、魔理沙の腰に優しく手を添える。
そっと触れた。ただ、それだけ。
しかし、魔理沙は変化に気付き、咄嗟に後ろに飛ぶ。そして、自分の腰に手を添える。
――ない。
さっきまであったはずのものが、なくなっていた。
それは。
「ぱ、ぱんつがない!?」
「紐パンを結界のすきまに落とし込ませてもらったわ!」
魔理沙は舌打ちする。彼女の眼前で、巫女は微笑んだ。
「紐パンって横で結んでいるだけだからねぇ。脱がしやすさではダントツよ」
ない、とわかれば、異様にすーすーする。感触が気持ち悪い。
魔理沙は、すでに戦意を喪失していた。
「……お、憶えてろよ!」
「んー、出直して来なさい」
霊夢は魔理沙に目もくれず、縁側に戻っていった。
そして、この決着がまたしても幻想郷を震撼させた。
そう。紐パンはサイドからの攻撃に非常に脆かったのだ。
各勢力は、いかに紐パンの耐久力を上げるか研究を重ねた。
紐を接着剤で固定する者も現れた。
パンツをサスペンダーで吊る者も現れた。
履かずにボディペイントをする者も現れた。
しかし、博麗霊夢はその全てを脱がして見せた。
「もう嫌だ! もう、紐は見たくない!」
河童はついに愚痴を吐いた。
「上のわっかを引っ張ると固くなって、下の紐を引っ張ると緩くなるところなんて、もう見たくないんだ!」
幻想郷最先端の技術力を持つ河童は、泣いた。
だが、天狗は怒る。
「そんなこと言っても、巫女に脱がされてしまう! 貴方は……ノーパンで空を飛びたいの……?」
語尾は弱い。
研究者達は、弾幕撃ちは疲弊してしまった。新しい紐パンを開発することに疲れてしまった。
やがてドロワーズの良さを認めなおし、履き替える者も現れ始めた。
固持し続けた勢力と合わさり、総合ドロワ勢力は紐パン勢力を飲み込んだ。
――こうして、博麗の巫女を発端に紐パン異変は解決された。
やがて夏が来て、秋が来て、冬が来て――その冬も終わる頃。
幻想郷は、また一つ歳を取った。
ミスティアは例年通り、リグルとルーミアの二人と春の訪れを待ちわびていた。
幻想郷は、色づき始めている。
「……リリーだ!」
リグルが指で差した空に、白の影。
春が来る。
春一番は幻想郷を征く。
桜の花びらが舞い上げる。
ミスティアたちは風に飛ばされないように寄り添いあう。
目をつむり、風が通り過ぎるまで待つ。
だが、その中で、ミスティアは見上げた。
リリーホワイトが紐パンを履いているか、確かめたくなったのだ。
刮目する。
スカートの中が、視界に入る。
その光景に、
「えっ――?」
思わず、声を上げた。
「……どうしたの、ミスティア?」
空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
リグルも彼女の異変に気付き、声をかける。
視線の先を追っても、もう何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲った。
「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」
声に反応して、ミスティアはゆっくりと指を差す。
その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。
「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」
溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。
「リ、リリーホワイトの下着が……」
それを、言う――!
「下着が――ふんどしだったんだよっ!!」
「な、なんだってーっ!?」
はは、まさかな。俺の神奈子様は元から紐だから興味無し、出番無しって
…嘘…だろ……?
神奈子様は……フンドシ…なんだろ……?
まあ、見てる分にはおもしろくて良いですけどw