コタツがあれば、話しも弾む。
鍋があれば尚更だ。
霊夢が自宅にコタツを導入するが早いか、萃香と魔理沙とレミリアがやって来た。
やって来たはいいが、帰らない。
「霊夢。もう一杯酒を取ってくれよ。寒くて仕方ないぜ」
コタツに入っているにも関わらず、魔理沙は寒い、寒いと繰り返す。
要するに自分が動きたくないのだ。
他にも理由はある。博麗神社に伝わるコタツはそう大きくないのだ。そのため、足下では領土をめぐって頻繁にいざこざが繰り返されている。
「あんたね、人ん家に来ていい加減にしなさいよ」
霊夢は残り少なくなった鍋に具を探した。
「そうよ」
レミリアは遠くの酒瓶を指さした。
「飲みたい人が持ってきなさい」
「じゃ、じゃあお前らは私が取ってきた酒を飲むなよ」
「それは保証できません」
萃香は瓢箪を枕に横になった。
「飲み足りないなあ」
霊夢は顎で酒瓶を指さし、「取ってこい」と示した。
「分かったよ。取ってくればいいんだろ、取ってくればさあ」
魔理沙の足が引っこ抜かれた隙間を狙って、レミリアと萃香と霊夢の足が滑り込む。
三人の足は自己主張し合ったが、「三人で分割」ということで合意に至った。
魔理沙が二本の酒瓶を抱えて戻ってきた時には既に、魔理沙の入る隙は無かった。
「何だよ。取ってこさせといてさ」
魔理沙はレミリアの体を掴んで、コタツから引っこ抜いた。
「やだ、やだ、止めて。寒い」
「お前が動けばいいんだ」
霊夢はコタツの所持者であるためこのような醜い暴力沙汰には巻き込まれず、常にある程度の優位権を確保していた。
瓢箪枕にしてひっくり返っていた萃香がゆっくりと身を起こした。
「霊夢」
「何」
「おじや作ろう」
「うん」
霊夢と萃香がおじやを作り始めると、レミリアと魔理沙も鍋に近寄ってきた。
争いも一応決着したらしく、魔理沙はコタツの隅っこに足を突っ込んでいた。
霊夢は一番乗りで大盛りのおじやをかっ込み、残りの三人もおじやを次々に平らげた。
この際、またしても醜い争いが起こったのは言うまでもない。
霊夢は食後の酒を一杯飲むと、横になった。
酔っぱらって腹が一杯になると人間は眠くなるのだ。
霊夢が眠りに入る際に足をコタツの奥深くまで勢いよく突っ込むと、微かな悲鳴が起き、向かい側のレミリアが吹っ飛んだ。
「少し寝るぞ」
どれくらい寝ただろうか。
霊夢は朝まで眠る勢いだったが、突如、足に衝撃を感じて目を覚ました。
「いっ」
霊夢は起こされると同時に苛立った。
恐らくはコタツ内の領土を奪われた魔理沙辺りの仕業に違いない。
霊夢は寝転がったままでいたが、またもや自分の向かい側の足に押された。
レミリアか。なるほど、まだ吹っ飛ばされたことを根に持っているのだ。
霊夢は思い切り足を伸ばしたが、足の裏にぴたりと足の裏を密着させられ、力比べの状態になってしまった。
考えたものだ。力ではレミリアにかなうはずがない。
では、脇にずらしたらどうか。
霊夢が脇にずらすと、萃香の足にぶつかった。
それを契機に萃香も霊夢の足を押し始めた。
何と意地汚い奴らだろう。コタツ一つで。
霊夢が魔理沙の方に足を伸ばすと、今度は魔理沙も霊夢の足を押し返そうと力み始めた。
こいつにだけは負けられぬ。
霊夢は、迫る萃香の足を捌いた後、魔理沙の足をたたき出そうとするが、上手くいかない。
魔理沙の足は凍った蛇口のように動かない。
そうか、そんなにコタツが好きか。
霊夢は横になって汗を垂らしながら、警告した。
「ここが誰の家だか分かってんの? このコタツの領土権は」
その直後、三人の足は協力し合うように霊夢の足に絡み付きコタツの外に放り出した。
なるほど、よく分かった。
自分が寝入っている間に協力関係が結ばれてしまったらしい。
やるならやってやる。
「よろしい、ならば弾幕だ。三人がかりでかかってこい」
負ける要素など微塵もない。
霊夢は懐の札と針を確認し、酒の入った体を起こして立ち上がった。
しかし、テーブルの上は既に綺麗に片付けられた後で、コタツの周りには誰もいなかった。
ぞくりと来たw特別怖いってわけじゃないんだけどこういう話って頭に残ります。背中さすってくれwww
よいお年を
このオチは予想できんかった……普通になごんでたのに
ホラー的な話なの?
すいかが分身して炬燵に隠れてるんだろ?
そうだと言ってくれ•••