(オリキャラ注意・作中の行為を絶対に真似しないでください)
さて、男は電話を取った。
「もしもし。ええ、はい。そうです」
<注文出来るかしら。ええ、4つ。場所は幻想郷の博霊神社>
「ええ。分かりました。結界の切れ目の位置は」
<前と同じ。もう、スタートよ。いいわね?>
「くっ。いいでしょう。砂時計でも用意して待っててください」
男は電話を勢いよく切って、隣の女に聞いた。
「出来てるかい? 例の物」
「ええ。バッチリよ。きっかり4つ。またどこかへ行くのね?」
男は頷いた。
数瞬、二人の間にアイコンタクトが交わされる。
「分かってるわ。あなたなら失敗しないって。気をつけてね」
男は女の渡した「例の物」を防護ケースに押し込むと、すぐさま改造バイクに飛び乗った。
ド派手なペイントがほどこされた一品である。
男は腕時計を見て舌打ち一つすると、勢いよくバイクを発進させた。
男のバイクは週末の大通りを駆け抜けていく。
プロフェッショナルたる彼に休日はないのだ。
行く人行く人が、みな彼を見て指さした。
彼は有名人であった。
彼のバイクを見た者はトラックだろうと、外車だろうと道を空けた。
この一帯の人間は、彼の仕事を邪魔するのがどれほど恐ろしいことか知っていたのだ。
そして、誰も知らぬことだが、彼こそは唯一「幻想郷に出入り出来る」人間であった。
男は時速150キロ超でバイクを吹っ飛ばしつつ、また腕時計を見た。
いつもに比べて遅い。
もはや、一刻の猶予もない。
後ろからはパトカーのものらしいサイレンが聞こえてきた。
何、いつものことだ。
「すぐに、駐まりなさい。駐まりなさい」
男がスイッチを捻ると、ナンバープレートがスロットリールのようにひっくり返って別のものへと変わった。
「繰り返す。すぐさま停車しなさい」
黙っていろ。今はそれどころではないのだ。
応援の機動隊も必死に追いかけてくるが、男には追いつかない。
男は信号を2、3度無視して突っ走った。
そして、間もなく目的地の廃デパートが見えてきた。
男はろくに減速もせずに廃デパートの横の立体駐車場に入っていく。
「馬鹿め。袋のネズミだ。観念しろ」
流石に立体駐車場を上るにあたっては減速しなければなるまい。
男は迫るサイレンを聞きながら、一心不乱に屋上を目指した。
プロにはプロの意地があるのだ。
男は屋上に上がると、その隅っこに設置されたジャンプ台に目を遣った。
加速する時間がないか。いや、行ける。
男がまた別のスイッチを捻ると、ブースターに点火した。
途端に加速されるバイク。
男を乗せたバイクはジャンプ台にひた走る。
バイクはジャンプ台の上を一直線に駆け抜け、立体駐車場の屋上から空中に飛び出し、そして消えた。
警官隊はついに駐車場内に彼を発見できなかった。
男が飛び降りたのはいつもの畦道だった。
ああ、何度やってもこの幻想入りの瞬間だけは尻が痛い。
しかし、駐まるわけにも行かず、男はさらに走った。
目的地はもう目と鼻の先だ。
と、その時上空から声が聞こえた。
「あなたは食べてもいい人類?」
これは面倒なことになった。
男のバイクから途端に煙幕が噴き出した。
「今回は貰いじゃないかね」
こたつに足を突っ込みながら、魔理沙が言った。
霊夢は砂時計を見る。
最早、巨大な砂時計の中の砂はわずかになり、後3分も経たずに全てこぼれ落ちるだろう。
紫は険しい顔をしている。
「いや、いつも後ちょっとのところで来るのよ」
アリスは訝しげに目を細めた。
「本当にそんな人間が来るの? 何だかみんなで私のことを騙してない?」
「本当だってば。お前は疑り深いね。それはもうとんでもない奴が」
と、その時、耳をつんざくバイクの音が聞こえた。
全員の肩が跳ねる。
霊夢が障子を開けると、丁度バイクがパラシュートを開いて停車したところだった。
赤と緑の制服を着た小太りの中年が汗だくになりながら、ヘルメットを外してバイクから降りてきた。
ヘルメットを外すと分かるのだが、大分頭髪が薄く、頭皮が透けて見えている。
「お待たせしました。丁度29分きっかりです」
砂時計にもあと一掴みの砂が残っていた。
紫は舌打ちしながら、財布を取り出す。
「お幾ら?」
「シーフードとオリジナルと和風とポテトのLサイズが4つで、6000円です」
紫は男の汗ばんだ手に6000円を叩きつけた。
「ご苦労様。いつもの所から帰ってね」
「それでは、またよろしくお願いします」
男はそれぞれにお辞儀をしてから、またバイクに乗って博霊神社の裏手に走っていった。
すぐにエンジン音が聞こえなくなった。
「な。言ったろ。アリス。あれがピザ屋さ」
「う、うん。すごくかっこいい人だったね」
「いや、それはないよ」
4人?でLサイズ4枚ってよく食うなwしかも安いw
少し前にピザ頼んだら、サンタルックのピザ屋が来たよ。
つーかそのピザ屋は捕まるて。
配達のおっちゃんカッコよすぎだろう・・・これは惚れるわ・・・
さすがプロフェッショナル