神社を確認。
高空から角度を付けて急降下、八卦炉の弱噴射を用いて減速を行い――その時、魔法で慣性の法則を潰すのは忘れない――着地。
魔理沙は眼球を保護する魔法と、呼吸器周りの気流を操作する魔法を解除して、辺りを見渡す。
冬風に枯れ葉が舞う、侘びしい境内。
相変わらず何もない神社だと思いながら、構わず突っ切って、建物の中に入る。
「いるかー?」
居るだろうと思いながら、魔理沙は遠慮無く障子を開ける。居た。
彼女が訪ねた巫女は、炬燵で暖まりながら茶を楽しんでいた。服装を含めていつも通りである。
くつろぐ巫女は茶を一啜り、魔理沙の方を向いた。
「何?」
「メリークリスマスだぜ霊夢。そういうわけだからお祝いのプレゼントをくれ」
箒を立てかけ、笑顔で魔理沙は言った。言い放った。傲然と。遠慮無く。
断れば何かしらの物を死ぬまで借りていくぶん、お年玉を祖父母にねだる餓鬼よりよほどタチが悪い。
霊夢は啜っていた湯飲みをゆっくりと置いて、さも面倒くさげに言う。
「……色々おかしいと思わない? それ」
ここは神社だ。神社なのだ。神社とはそれ即ち神道信仰の場である。当然、そこの巫女がクリスマスを祝おう筈もない。
というのは建前に過ぎず、この巫女は大層面倒くさがりであるため、祝い事の準備をしたがらないのだった。
幻想郷においてクリスマスを祝わないのは、根っから糞真面目な山の上の風祝だけだ。――そこに祭られている二柱は祝う。根っからのちゃらんぽらんなのだ。しかし、悲しいかなそれが幻想郷の普通。
魔理沙はどっかと座り込んで炬燵に入り、
「ん、どの辺がだ?」
さらりと言ってのけた。
「自分からプレゼントを求めることと、巫女がクリスマスを祝うと思ってること」
霊夢の言葉を聞いた魔理沙は、やれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「急いては事をし損じるぜ」
全く持って意味不明である。使いたかっただけなのだろう。
「それとな、サンタクロースって知ってるか、霊夢」
当たり前の発言。
かちんと来たらしく、霊夢はぶしつけに返す。
「十二月二十四日にどっかから飛んできて、出所もよく分からないような金で買い集めたプレゼントを一晩で世界中の子供に配って回る、髭の生えた怪しいおっさんでしょ?」
「惜しいな霊夢、怪しい術で子供の欲しがる物を探り当て、プロ級の尾行術で良い子なのか悪い子なのか判断し、そして良い子の家にルパン三世もかくやの技術で入り込む、が抜けてるぜ」
つくづく酷い二人組である。
「で、そのサンタクロースが何だって言うのよ?」
「いや、衣装が紅白だからな」
「ほほう、そんなにスペルカードを喰らいたいのかね」
胸元から取り出されるスペルカード。服の内側にポケットがあるだけだ。決して挟んでいたわけではない。
挟んでいたわけではないというか、挟めるほどないのである。
「すいませんっした」
「よろしい」
低頭。
「で、まあ、プレゼントを貰いに来たわけだよ。いいだろ? どうせお前巫女らしい事なんて何一つしないんだから」
「巫女服着てるじゃない」
巫女服を着ただけで巫女になれるのならば、どこかの国のいかがわしい店だの電気街から大量の巫女が生まれているだろう。
「巫女の証明としては弱すぎるぜ」
いつの間にやら準備されていた湯飲みで茶を啜りながら、魔理沙は返す。
霊夢は溜息を吐き、
「……まあ、クリスマスの準備をしてないって訳じゃないのよ」
魔理沙の眼が輝いた。
わくわくした感情を隠そうともせず表情に表すその様は、まるで子犬。
霊夢は眼でそれを落ち着かせる。
「といっても、プレゼントじゃなくて料理なんだけどね。あんたは来ると思ってたから二人分有るのよ」
巫女の勘は良く当たる。レミリアも紫も萃香も来ないだろうと彼女は予測していた。前の二人は各々の家で各々の従者と過ごし、萃香は地底に遊びに行っていた。
魔理沙は和食派であり、霊夢も和食派である。――そして、霊夢の作る食事は魔理沙のそれより遙かに味が良かった。
魔理沙は右親指を立てて言う。
「大歓迎だぜ」
「はいはい、じゃあちょっと待ってなさいな」
そして並ぶ大量の栗料理。
「……霊夢、これは」
「秋姉妹の家に夢想封印したら手にはいるわよ」
まさに外道である。
「そうか、そりゃあよかった。で、何で栗なんだ?」
「クリスマスは栗で」
「あー、言わせん!言わせんぞ!」
それはともかく、魔理沙のクリスマスがハロウィンと大差ない件について。
強襲された秋姉妹の安否が気にな……りません。
>挟んでいたわけではないというか、挟めるほどないのである。
おかしいな、ここのくだりを読んでから狂人氏の後ろに紅白の巫女の姿が見えるんだが……。
>出所もよく分からないような金で買い集めた
昔読んだ絵本では、サンタは100人以上いて、自前の工場で作っていることになっていた。
>挟んでいたわけではないというか、挟めるほどないのである。
作者さん、今すぐ謝らないと霊夢の服と胸の間のスペースに入るありったけのスペルカードが
飛んでくると思いますよ。
>後書き
ああ、作者が言っちゃった。
…………でも秋姉妹をあんまりドロップ強奪しないで。
「やめろ霊夢、もう秋姉妹の蓄えは零だぜ!」
「何言ってるのよ、まだ二人残ってるわ『嫁と義妹』が!」
静葉姉さんは色んな方々の嫁。
盛り上がってる方が幻想入りしたのかもしれない。
まぁともかく、二人ともなんだかんだで楽しそうw
色々と済ませましたww
魔理沙「気にしたら消されるぜ?」
>名前を表示しない程度の能力様
気にしてあげてwwww
へんじがない、ただのしかばねのようだ。
>3様
誤字報告サンクス
しかし、その工場の維持費はどっから来るのさって話になりません?
霊夢の絹素肌に触れたスペルカードならこの身果てようとも受け止めきって見せますとも
・・・
へんじがない、ただのしかばねのようだ
>謳魚様
よいのです。
「速攻スペルカード発動!」とかですかね多分。
とりあえず厄神様は俺の嫁です。
>欠片の屑
政治経済の話を俺に振るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ
楽しければそれでいいのです。幻想郷ですから。