スキマ妖怪が言った。
外の世界では十二月二十五日には自分にとって特別な存在の人と一緒に夜を過ごすのだ・・・と。
その話はあっという間に幻想郷中へと広まった。
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十二月二十五日。クリスマス当日。
博麗神社。
霊夢は一人のんびりと炬燵でお茶を啜っていた。
「メリークリスマース♪」
そこへ唐突と現れた紫。何故かミニスカートのサンタクロース衣装を着ているが、そこに突っ込んだら負けだと思う。
「紫ぃ!なんで私がこんなきぐるみ着なきゃいけないんだよっ!」
後から入ってきたのは萃香、こちらはトナカイのきぐるみを着ている。
「何よあんた達、ちんどん屋でも始めたの?」
「違うわよ、これがクリスマスの正装なのよ?」
そんな事実は一切ない。
「で、一体なんの用よ?」
「うふふ、実は、霊夢にクリスマスプレゼントを持ってきたのよ」
「プレゼント?」
霊夢が顔を顰める、他の者にそう言われれば素直に何かと楽しみにもできるものだが、相手は紫、一体何を企んでいるか分からないから素直に喜べないのだ。
「えぇ、もうすぐ来ると思うわ」
丁度話をしているとレミリアが部屋に飛び込んできた。
「霊夢ー!!」
いきなり霊夢に抱きつく。
「ちょ、レミリア離れなさい!って、どさくさに紛れて血を吸うな!!」
バーンッ!
「うー・・・霊夢が殴ったぁ・・・」
「あたり前よ」
「あらあら、随分賑やかねぇ」
次にやってきたのは幽々子だった。
「いいじゃないの賑やかで」
「そうそう、折角の特別な夜、楽しい方がいいだろう」
さらにその後ろから入ってきたのは輝夜と神奈子、永琳と諏訪子も一緒に来ている。
「フフッ、皆さん集まったようですね」
そして最後に入ってきたのは映姫である。
「なんなのよ、揃いも揃って」
「これが私からのクリスマスプレゼントよ」
「言ってる意味がわからないわ」
すると紫は「仕方ないわねぇ」と説明を始めた。
「これから皆で弾幕ごっこをするのよ。霊夢対ここにいる皆でね」
「私は違うけどね、姫の付き添いとけが人が出た場合の治療目的」
「私も違うよー、ホントは家でのんびりしてたかったんだけどさぁ、神奈子に無理矢理連れて来られたんだよ」
「だって、あんた家に残してきたら早苗と二人っきりでケロケロするつもりだったでしょ!抜け駆けなんかさせないわよ」
そんな感じで説明は終了、しかし、聞いていた霊夢はとても不満そうだ。
「何が悲しくて弾幕勝負しなくちゃいけないのよ」
「もちろん景品があるのよ、もし霊夢に勝ったら今夜霊夢を好きにしていいし、さらに来年異変を起こす権利も与えられるのよ」
「ふざけんなっ!それ私に何もいいことないじゃない」
「まぁまぁ、もし全員に勝ったら皆、博麗神社を支援してくれることになってるわよ、金銭的な意味で」
それを聞いて渋々霊夢も納得した。
「しっかし・・・なんでよりにもよってこの面子なのよ、正直こんな面子と連戦なんてかなりきついわよ?」
「フフッ、ここにいる者は皆、かつて幻想郷の異変と大きく関わってきた者達。ここ最近、貴女が天上やら地下やらと行ってたから皆退屈してたのよ」
「そういうこと、天上だの地下だの、新しく出てきた奴らに霊夢が現を抜かさないように私達が目を覚ましてあげるわ」
と、レミリアが言った。
「あーら、あなた達はまだ例の地震の時に出番があったじゃない、うちは鈴仙がちょこっと絡んだだけでほとんど無いに等しかったのよ?」
そう不満そうに輝夜が言った。
「あの天人とか地霊殿の連中がいないのは最近の異変だったからってことかしら?まぁその分こっちは戦う回数減っていいんだけど」
「地下の件はどっちかっていうとそこの神様が原因だからねぇ、あと天人は―――私が気に食わないから呼ばなかったわ」
クスリと笑う紫、かなりあの時の異変のことを根に持っているようだ。
「・・・まぁいいわ、それで誰から来るのかしら?さっさとやってさっさと終わらせたいわ」
「最初の相手は私よ、霊夢」
そう言ってレミリアが前にでた。そして指をパチンッと鳴らすと、紅い霧が博麗神社周辺をうっすらと包み込んだ。
「また余計なことをする・・・」
「素敵な演出でしょう?」
「まぁいいわ・・・かかってきなさい、こんなに月も紅いから本気で倒すわよ!」
「フフッ、まさか貴女にそれを言われるとは思ってなかったわ・・・懐かしいわね、あの頃を思い出す・・・」
互いに上空に飛び上がる。
「「こんなに月も紅いのに・・・」」
「楽しい夜になりそうね!」「永い夜になりそうね!」
こうして、激しくぶつかり合う弾幕の音が聖夜に響いた。
~END~