おや…? 妙な手紙が落ちている。読んでみよう。
どなたかは存じ上げませんが、この手紙を託します。
恐らくこの手紙が読まれる頃には、私はこの世から姿を消していることでしょう。
それとの出会いはあまりにも突然でした。
そもそもの原因は、紫様が昼間に珍しく起きたこともあり、部屋の掃除をしようと考えたことです。
もしかしたら私の運命はその時点で確定していたのかもしれません。
事の次第はこうです。まず掃除の途中に、紫様の机の上にある書物が無造作に置かれていたのです。
それだけならば取り立てて驚くようなことでもないでしょう。しかし、こうして手紙に残すということは、それだけではなかったのです。
その本には、表紙に堂々と題字が書き込まれていました。それは、私の好奇心を刺激するのに十分な力を持っていたのです。
読んでしまえば私は確実に消される。それが分かっていながら、私には耐えられませんでした。
ですが、逆に聞きたいです。もしあなたが私なら、あなたは耐えられますか、と。
今から語るのは、その内容の一部に過ぎません。ですが、私がそれを語ろうとする意図を分かっていただきたい。
これは警告です。もしあなたが、まかり間違ってそれをどこかで見かけてしまった場合、それを手に取らぬよう、目を通してしまわぬようにするためなのです。
もしかしたら、私が語るその一部を目にした時点であなたも同じ運命をたどることになるかもしれません。
ですので、その覚悟をお持ちの方のみこの先にお進みください。
………来てしまいましたね? 本当によろしいのですか?
このような手紙を残した私の言うべきことではないかもしれませんが、後戻りができないかもしれないのですよ?
いえ…、ここまで来たということはそういうことなのでしょう。あなたの勇気が無謀でないことを祈るのみです。
それでは語ることにしましょう。
紫様の自室にて見つけてしまった、禁断の書物…『乙女キッスは蜜の味 ~秘密の花園編~ 著:羅武李威☆ゆかりん』を……。
「ふんふふ~ん。ああ、いいお天気。お花さんたちも嬉しそうに笑っているわ。みんなおはよう」
あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れてしまいましたね。
私の名前は玲霧っていいます。神社の巫女さんをやっていて、毎日がとっても充実しているの!
「ちんちん」
「小鳥さんもおはよう」
小鳥さんたちは私の肩にとまって囀っています。私がおはようって言うと、私の頬を優しく突ついてきました。
まるで私の挨拶に応えているみたい。今はまだ無理だけど、いつかは動物さんたちの言葉がわかるようになれればいいなっ。
「よし、今日も元気に頑張りましょう! まずは境内のお掃除から始めないとね!」
でも……、お掃除ってとっても大変なんです。毎朝落ち葉が一杯でちょっとへこたれそう…。
ううん、そんなこと言ってちゃダメよ玲霧! 一生懸命頑張らないと、天国のお母さんに顔向けできないわ!
「うん、元気出た! それじゃあ張り切って――」
「だ~れだっ!」
「きゃあっ!? 誰、誰なの!?」
突然目の前が真っ暗になったから本当にビックリ! 何が起こったの!?
「正解は、私でした~」
「あ…、あなたは一人ぼっちの私の世話をよく焼いてくれる少し年上の綺麗なお姉さん設定の由香利じゃない!」
私は由香利に目隠しをされていたみたいです。この人は事あるごとに私の世話を焼いてくれるとっても優しい人。
私と一緒にご飯を作ってくれたり、私が寂しいときには一緒に寝てくれたり…。
私はそんな優しい由香利のことが……、いいえ、そんなこと言ったらダメだわ。私と由香利は女の子同士だもの。
「玲霧ったら、きゃあっ、なんて驚いちゃって。可愛かったわ~」
「突然あんなことされたら驚くにきまってるわ!」
「それはごめんなさいね」
「ぷんっ!」
「…怒っちゃったの、玲霧?」
「由香利なんてもう知らない!」
「ご…、ごめんね? そんなに怒っちゃうなんて思っていなかったの…」
「………」
「ご……、ごめんなさ………い…。玲霧……、許してよぉ……。ぐすっ…」
「わーっ! 怒ってないから、泣かないで!」
「うん……。ぐすっ…」
あ~よかった。お姉さんぶる癖にすぐ泣いちゃうんだからぁ。でも由香利って、そんなか弱い一面がすごく可愛いの。
いつもは強くてカッコいいお姉さんだけど、たまに見せる女の子らしさが胸にキュンときちゃうわ。
あ……、今もキュンって…。やっぱり私は由香利のことが…。
「うふふ……、ねぇ玲霧?」
「なあに、由香利」
「えいっ!」
「きゃあっ!」
私はまた由香利にビックリさせられちゃったわ。
由香利は突然、私を押し倒して馬乗りになって、それで由香利の顔がすごく近くなって…。
いけない……、すごくドキドキしちゃう……。
「玲霧、顔真っ赤よ」
「由香利…、離れて…」
「どうして? 私のことが嫌い?」
「そんなことない! 私は紫が大好きよ! 好きで好きでどうにかなっちゃいそう!」
「霊夢…」
いけないっ! 言っちゃった!
どうしよう…、女の子同士でなんて絶対変だもの…。紫に嫌われちゃうよぉ…。
「私も…」
「えっ?」
「私も霊夢が大好き! 愛してるわ!」
「本当に…?」
「本当よ!」
紫が私を愛してくれている…?
あぁ…、嬉しい…。両想いだったなんて、嬉しすぎて天にも昇る思いだわ……。
「ありがとう…、紫」
「霊夢…」
「それはダメよ…」
突然紫がさらに顔を近づけてきたの。たぶんキスをしようとしたのね。
晴れて恋人同士になったんだから大歓迎なんだけど、今はダメ…。
「どうして、霊夢…?」
「だって…、見られてるもの…」
「ここには私たち以外に誰もいないわよ…?」
「ダメなの…」
だって……、
「テントウ虫さんが見てるから…、ダメ…」
お分かりいただけましたか? もう後悔しても遅いのですよ?
今語りましたのは、物語の冒頭の極々一部です。この先延々と似たような展開が続きます。
玲霧の告白あたりからどちらとも本名になっているあたり、紫様がいかに先走っていたかが窺えます。
さっさとキスシーンを書きたかったのでしょうか、この場面からキスをするまでの字体がとても乱れています。妄想を抑えきれなかったのでしょう。
さて、突然ですが私はあなたに嘘を吐きました。それは、この手紙を警告と言っていたことです。
もうお分かりの通り、ごく一部とはいえその内容を知ってしまえば手遅れなのです。
そう、あなたも既に紫様のターゲットに認定されております。もはや逃げ道はございません。
なぜこのような事をしたか、疑問に思われるでしょう。理由は簡単、死なば諸共というやつです。
それでも私は警告と言いました。前もって逃げ道を用意したのですが、あなたはそれを無視したのでしょう? それはあなたの覚悟であり、責任なのです。
警告、危険。申し訳ありませんが、そう言われると見たくなってしまうその心理を利用させていただきました。
あわよくばあなたを犠牲にして私は逃げ延びる算段でしたが、私の背後の空間が開く気配があります。無念です。
それではスキマでお会いしま
…手紙はここで終わっている。何があっ
藍さまひでえwww
たしかにそれ読んだら身の危険感じるわなぁ
いや全部読んでみたくて堪らない。
え、だm(スキマ送りにされた後、紫奥義『無限の超魅力的な四重黒死虫ネスト~真・ぶらり泡影八雲橙の境界~』
だが藍に会いに行くために連れて行ってくればb(スキマ送りにされました)
いざ藍様を救k(スキマ送r(さらにスキマ送りにされました)
スキマ送りになんざにされる訳g(スキマ送りにされました
藍様ぁぁぁぁぁ(スキマ送りにされました)
これはひどいw
年齢を考えて自重すべk(スキマ送りにされました)