「理想の世界って、何だったのでしょうね…」
「今日も霊夢は起きないのか」
「えぇ、起きる気配は無いわね」
幻想郷でも忘れられた、朽ちた神社、名前を覚えている者は数少ない。
人も妖怪も訪れなくなった寂しい神社で、場に合わない者が二人、片方はいかにも魔法使いといった風体をしている
名前は霧雨魔理沙、どこか疲れた顔をしている
そして片方は少女のような服を着ている、境界を操る妖怪八雲紫である。
「今日で約千年目かしらね…」
「そうか…もうそんなになるのか…」
約千年、妖怪にも短い時では無いのかもしれない、ましてや魔法使いには尚更だ。
千年前は、様々な妖怪や幻想郷の実力者達が、この神社を賑わせていた。今や見る影も無く、雑草や茂った木々が静かに見守っているだけだ。
「今でもあの時のことは、嫌でも夢にでるわ」
「夢に出ないほうがおかしいぜ…」
「私は間違っていたのかしら?他に方法があったんじゃないか?って今でも思うわ」
「あの時、ああするしか方法は無かったんじゃないか!」
「今更お前が後悔するなよ!私はそんな紫は見たくない!」
「…ごめんなさい魔理沙。」
「結界になった霊夢が、もし目覚めたら笑顔で迎えるんだろ?」
「そんな顔じゃ、霊夢喜ばないぞ」
結界になった霊夢、そう言い魔理沙は、当時の事を思い出す。結界の力が弱まり、外来の人間達が押し寄せた。
外来の人間達は、妖怪を兵器にするべくありとあらゆる武器を、科学を使い幻想郷を荒らした。
そして妖怪の賢者達と人間の愚かな争いが、更に幻想郷を蝕んだ。
妖怪達は、外の人間達を締め出し、二度と入って来れないよう結界の強化を提案した。
結界の強化、容易く妖怪達は言うが、強大で強力な結界を、更に強化する、それは妖怪や神々でも不可能な事だった
しかし妖怪の大賢者達の中に、歴代屈指の霊力を持つ霊夢を人柱に結界を数倍の強固な物にする理論を提案した
もちろん霊夢の親しい者達は大反対した、紫も魔理沙も当然含まれている。
だが先の争いで殺気立っている妖怪達は、無理やり里の人間達と結託して事を進めた。
皮肉な事に人間と妖怪が一丸となってだ。
渦中の霊夢は、死ぬ訳じゃないから別にいいわよ、と飄々としていた。
紫は別の方法を探したが、人柱以外の方法が無いという答えを確定するだけの結果に終わった。
そして妖怪達は、確定された後の行動が迅速だった。
霊夢は別れの言葉無く、人柱にされた、いや自らなった。
妖怪の大賢者達によれば、数百か数千年に一度、目覚める事が理論上可能と言った。
人間にとっては、今生の別れに等しい宣告だった。
霧雨魔理沙は、霊夢が目覚めた時、寂しい思いをさせたくない。その一心で手を付けることが無かった捨食の法に
手を出した。
霊夢が起きたら、いつものように縁側に座って、他愛の無いことを喋って…
昔の事を思い出していると、ぽつりと魔理沙は言った。
「そういえば、アリスにも愛想尽かされたっけなぁ…」
「懐かしい…話しよね、先の争いで、大半の知った顔は亡くなって、残された者達はばらばらになって…」
「おっとそこまでだぜ紫、歳のせいか湿っぽい話しになりがちだ」
「あなたももう仲間入りじゃないの」
魔理沙は、違いないと楽しそうに笑っているが、何処か寂しそうな雰囲気は隠せない
そして紫は、かつての威厳無く、幻想的な美しい金髪も今や白く、寂しさを惹き立てている
「博麗の巫女を知っている人も、今では一握りなのよね…。」
「ああ、勝手なもんだよな!人間は口伝せず、妖怪は知らん顔だ」
「ふふ…あなたがそう言うと違和感あるわね」
ちぇっと言って魔理沙は拗ねるが、いつもの事のやり取りになっている
「今日もお姫様は、起きないのね…」
「起きたら何してあげようかしらね…まずは髪のお手入れ?それともお茶にしようかしらね…」
「紫それもう何万回も聞いたぜ」
「霊夢早く起きないからしら…」
「そうだなぁ…」
久しく聞いてない霊夢の声は、どんな声だったのかも思い出すことが出来ない。
時間は無常で、あらゆるものを奪っていった。
大事な思いでも、今は色あせて薄らとしか思い出せない。
魔理沙は思った。記憶が全て無くなったら寿命なのだろう、と
もし紫も私も霊夢が起きる前に、朽ちて滅びたら…今までの日々は知られることも無く消える。
霊夢にすら知られること無く
「本当・・・早く起きてくれよ姫様」
「というのが早苗さんちが、引っ越してこない場合の数ある未来のひとつの予想です。」
「そういう紫さん、想像つかないですよ~」
「あら、失礼ね。私は霊夢を溺愛してるのよ、だから藍の予想は結構合ってるわ!そうよね?霊夢?」
「私が皆を悲しませるような事しないわよ…面倒だし。」
「そうだそうだ!霊夢がそんな善人なはず…がっ!?」
「魔理沙…この善人が腋出して歩いてる巫女に失礼じゃない。」
「藍、その予想は根本的な間違いもあるけどね」
「え?どの辺りですか?」
「ここにいる全員が簡単に死ぬたまじゃないわ」
「たかだか千年や二千年位、どうってこと無いのにねぇ」
「いやいやえーりんと一緒にされてもねぇ」
「私は?吸血鬼で高貴な私が死ぬはず無いわよね?」
「多分真っ先に死ぬんじゃないかなぁ…弱点多いし」
「えー!咲夜なんとか言ってよー!」
「無理です、お嬢様。」
「まぁ藍は、予想の計算は元々出来ないから気にしないでよ。」
「ん?アリス?何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「私が魔理沙を見放す訳無いじゃない…ブツブツ」
「アリス怖いぜ・・・」
「試しに疑似体験出来る薬でも作ってみる?」
「勘弁して欲しいぜ…」
今日も博麗の神社はお祭り騒ぎ、幻想郷は平和です。
「今日も霊夢は起きないのか」
「えぇ、起きる気配は無いわね」
幻想郷でも忘れられた、朽ちた神社、名前を覚えている者は数少ない。
人も妖怪も訪れなくなった寂しい神社で、場に合わない者が二人、片方はいかにも魔法使いといった風体をしている
名前は霧雨魔理沙、どこか疲れた顔をしている
そして片方は少女のような服を着ている、境界を操る妖怪八雲紫である。
「今日で約千年目かしらね…」
「そうか…もうそんなになるのか…」
約千年、妖怪にも短い時では無いのかもしれない、ましてや魔法使いには尚更だ。
千年前は、様々な妖怪や幻想郷の実力者達が、この神社を賑わせていた。今や見る影も無く、雑草や茂った木々が静かに見守っているだけだ。
「今でもあの時のことは、嫌でも夢にでるわ」
「夢に出ないほうがおかしいぜ…」
「私は間違っていたのかしら?他に方法があったんじゃないか?って今でも思うわ」
「あの時、ああするしか方法は無かったんじゃないか!」
「今更お前が後悔するなよ!私はそんな紫は見たくない!」
「…ごめんなさい魔理沙。」
「結界になった霊夢が、もし目覚めたら笑顔で迎えるんだろ?」
「そんな顔じゃ、霊夢喜ばないぞ」
結界になった霊夢、そう言い魔理沙は、当時の事を思い出す。結界の力が弱まり、外来の人間達が押し寄せた。
外来の人間達は、妖怪を兵器にするべくありとあらゆる武器を、科学を使い幻想郷を荒らした。
そして妖怪の賢者達と人間の愚かな争いが、更に幻想郷を蝕んだ。
妖怪達は、外の人間達を締め出し、二度と入って来れないよう結界の強化を提案した。
結界の強化、容易く妖怪達は言うが、強大で強力な結界を、更に強化する、それは妖怪や神々でも不可能な事だった
しかし妖怪の大賢者達の中に、歴代屈指の霊力を持つ霊夢を人柱に結界を数倍の強固な物にする理論を提案した
もちろん霊夢の親しい者達は大反対した、紫も魔理沙も当然含まれている。
だが先の争いで殺気立っている妖怪達は、無理やり里の人間達と結託して事を進めた。
皮肉な事に人間と妖怪が一丸となってだ。
渦中の霊夢は、死ぬ訳じゃないから別にいいわよ、と飄々としていた。
紫は別の方法を探したが、人柱以外の方法が無いという答えを確定するだけの結果に終わった。
そして妖怪達は、確定された後の行動が迅速だった。
霊夢は別れの言葉無く、人柱にされた、いや自らなった。
妖怪の大賢者達によれば、数百か数千年に一度、目覚める事が理論上可能と言った。
人間にとっては、今生の別れに等しい宣告だった。
霧雨魔理沙は、霊夢が目覚めた時、寂しい思いをさせたくない。その一心で手を付けることが無かった捨食の法に
手を出した。
霊夢が起きたら、いつものように縁側に座って、他愛の無いことを喋って…
昔の事を思い出していると、ぽつりと魔理沙は言った。
「そういえば、アリスにも愛想尽かされたっけなぁ…」
「懐かしい…話しよね、先の争いで、大半の知った顔は亡くなって、残された者達はばらばらになって…」
「おっとそこまでだぜ紫、歳のせいか湿っぽい話しになりがちだ」
「あなたももう仲間入りじゃないの」
魔理沙は、違いないと楽しそうに笑っているが、何処か寂しそうな雰囲気は隠せない
そして紫は、かつての威厳無く、幻想的な美しい金髪も今や白く、寂しさを惹き立てている
「博麗の巫女を知っている人も、今では一握りなのよね…。」
「ああ、勝手なもんだよな!人間は口伝せず、妖怪は知らん顔だ」
「ふふ…あなたがそう言うと違和感あるわね」
ちぇっと言って魔理沙は拗ねるが、いつもの事のやり取りになっている
「今日もお姫様は、起きないのね…」
「起きたら何してあげようかしらね…まずは髪のお手入れ?それともお茶にしようかしらね…」
「紫それもう何万回も聞いたぜ」
「霊夢早く起きないからしら…」
「そうだなぁ…」
久しく聞いてない霊夢の声は、どんな声だったのかも思い出すことが出来ない。
時間は無常で、あらゆるものを奪っていった。
大事な思いでも、今は色あせて薄らとしか思い出せない。
魔理沙は思った。記憶が全て無くなったら寿命なのだろう、と
もし紫も私も霊夢が起きる前に、朽ちて滅びたら…今までの日々は知られることも無く消える。
霊夢にすら知られること無く
「本当・・・早く起きてくれよ姫様」
「というのが早苗さんちが、引っ越してこない場合の数ある未来のひとつの予想です。」
「そういう紫さん、想像つかないですよ~」
「あら、失礼ね。私は霊夢を溺愛してるのよ、だから藍の予想は結構合ってるわ!そうよね?霊夢?」
「私が皆を悲しませるような事しないわよ…面倒だし。」
「そうだそうだ!霊夢がそんな善人なはず…がっ!?」
「魔理沙…この善人が腋出して歩いてる巫女に失礼じゃない。」
「藍、その予想は根本的な間違いもあるけどね」
「え?どの辺りですか?」
「ここにいる全員が簡単に死ぬたまじゃないわ」
「たかだか千年や二千年位、どうってこと無いのにねぇ」
「いやいやえーりんと一緒にされてもねぇ」
「私は?吸血鬼で高貴な私が死ぬはず無いわよね?」
「多分真っ先に死ぬんじゃないかなぁ…弱点多いし」
「えー!咲夜なんとか言ってよー!」
「無理です、お嬢様。」
「まぁ藍は、予想の計算は元々出来ないから気にしないでよ。」
「ん?アリス?何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「私が魔理沙を見放す訳無いじゃない…ブツブツ」
「アリス怖いぜ・・・」
「試しに疑似体験出来る薬でも作ってみる?」
「勘弁して欲しいぜ…」
今日も博麗の神社はお祭り騒ぎ、幻想郷は平和です。
いや、BADENDよりはこういうENDの方が私は好きですけどね。
レスありがとうございます。
本当は救いの無い構想もあったのですがやっぱり笑顔が良いかなと思いまして