――――はい? あぁ、この服ですか。
外の世界では”たいそうふく”と”ぶるまぁ”と呼ばれるものらしいです。
まぁ、なんというか、破廉恥極まりないですね。特に下半身周り。これで外に出て
運動競技をするなんて、外の世界の連中は頭沸いてるとしか思えません。
えぇ、そうです。紫様がまた面白がって持ってきたものです。もちろん幽々子さまも
面白がってますよ。
はぁ、藍さんに何故着せなかったのだろう、と言いましたね?
……どうやら相当に抵抗されたようですよ。で、この始末です。
私思うに、藍さんは真面目過ぎるというか、応用が効かな過ぎるというか。これくらいの
お巫山戯を寛容できるようにならないと。
何より紫様は幻想郷の管理者です。幻想郷が好きだからあの仕事ができるわけです。
そうでなければあんな見返りの無いきついだけの仕事、誰がやるものですか。
そこを藍さんは分かってないんですよ。誇りがあっても好きであってもあの仕事は心が
ひずむほどしんどい事くらい想像できるでしょうに。
だからこそ、紫様の心の平穏のために、誰かがバカをやらなきゃいけないわけです。
そう、私がその為の供物って訳ですね。
幽々子さまにしたってそうです。
春雪異変のあとの幽々子さまは見ているこっちが病んでしまいそうなほど落ち込んで
いました。
おきらくごくらく能天気脳天気なぼけぼけ亡霊というイメージばかり先行しています
けれど、今でもその心の内にある悲しみは計り知れません。
そうです。先程貴女が見てしまった時のように、二度と満開にならないあの桜の樹を
眺めては寂しそうな溜息をついていらっしゃる。
……だからこそ、私は愚かな僕として幽々子さまを笑わせる必要があるんです。
あの時、守れなかった私にはそれくらいしか……。
……とはいえ、それにしても面白い話とは思いませんか?
幻想郷でも一、二を争う実力者のお二人は、同じように私を弄くりまわします。それも、
ご自身の心の均衡を保つために。
だとすれば、私がいなければお二人はどうなってしまうのでしょう?
確かに、藍さんや橙ちゃんのような存在もいるにはいますが、かと言ってこんな阿呆で
破廉恥な格好をさせることは……事実、できてませんし。
霊夢や魔理沙とかもいますけど、そもそもお二人の忠実な僕って訳じゃありませんよね。
となると、お二人は心の底からバカをできなくなって煩悶する毎日が続くでしょうねぇ。
だから、私が居ることでお二人は普通に暮らしていけている。
と考えれば、ふふ、私こそが幻想郷のバランスを担ってるっていっても過言じゃありません
よね。もちろんこんな事お二人の前では言うことも考えることもありませんが。
愚直でクソ真面目で薄慮な下僕を貫いてあげなきゃ、お二人の立つ瀬もないでしょう?
まぁそんなわけで、今話したことは全て忘れてください。
でないと貴女を今のまま、首だけ残して地面に埋めたままにしますし、何よりコレ。
幽々子さまの悲しいお姿を収めたこのキャメラを真っ二つにしなきゃいけなくなって
しまいます。コレ、貴女にしてみれば命と同じくらい大切なものでしょう?
中のフィルムだけを斬り刻めばいいんでしょうが、そんな腕も無いですし。やっぱり
真っ二つかなぁ。
え、はい? 喋らない、墓まで持っていく? うーん、墓に入ってからでも話すことは
できるしなぁ。
あはは、冗談、冗談です。他言無用、それとフィルムを処分していただけるならば問題は
ありません。代わりに私のこのバカな姿をネタとして使ってくださって結構ですよ。
盛大に馬鹿馬鹿しく書いてくださいね。そうすれば年甲斐もなく寂しがり屋なお二人だって、
大喜びされるはずですから。ふふふ。
一言でも人に漏らすとご飯抜き&紫様のばか!と可愛さ満点で怒ってくれたり。
でもあんまりやり過ぎると泣いちゃうからゆかりんは無理矢理出来ないんだよ!ってな藍しゃまだったら良いな。
小奇麗にまとまった、面白い二人称小説でした。
しかしあまり黒さがないような……
末恐ろしさを感じさせますね・・・
ありがとう!本当にありがとう!!