※ タイトルでわかる方もいらっしゃるとは思いますが、『サンレッド』とのクロスです。
「フロシャイム」・「ヴァンプさま」にピンとこない方にはあまりお勧めできません。やっぱりレッドさんは出ません。
ここはフロシャイム幻想郷支部。世界征服を企む悪の組織であるこの場所に、不穏な影が忍び寄るのであった……ッ!
「フロシャイム……。悪の組織ということですが…、今日はこの私がその実態を暴いて差し上げます!」
はたしてヴァンプたちは平穏無事に世界征服を成し遂げることができるのかッ!?
~ フロシャイムに這い寄る影 ~
というわけで、皆さん馴染みの射命丸です。気軽にあややって呼んで下さい。
今日は最近幻想郷に引っ越してきたという、新顔の方々を取材してゆこうと思います。
悪の組織という話なので、離れたところから観察することにしましょう。万が一の場合でも逃げる自信はありますが、一応危険かも知れませんので。
「それじゃみんなー、今日も張り切って霊夢さんを抹殺しようねー」
「おー」
「「キー」」
彼らの本拠地を見張っていたらようやく出てきましたね。というか、悪の組織が本拠地を人里に構えるとかどうなんですか?
それはいいとして、噂通りの紫服男、ヴァンプと言うらしいですが、それと黒ずくめの仮面男が二人、そしてイカみたいなやつがいます。
彼らは幻想郷でも異例の、怪人という種族らしいです。妖怪と何が違うのでしょうね。
それにしても、霊夢さんを抹殺するとは穏やかではありません。やはり恐ろしい連中の様です。……ん、霊夢……、『さん』? なぜ敬語ですか?
「前回は飛べない子を連れて行っちゃったから霊夢さんに一方的にやられちゃったけど、今日は大丈夫だね、ゲイラスくん」
「はい、任せて下さい、ヴァンプさま」
やっぱり『さん』付けで呼んでますね。何か意味でもあるのでしょうか。まぁいいです、取材には関係ありません。
それにしても彼の言葉から察するに、霊夢さんは既に彼らを撃退しているようですね。それも一方的にだなんて……、流石の一言ですね。
しかし今日は対策を練っているみたいですね。もし霊夢さんに危険があるようでしたら、私も参戦を考えなくてはなりません。
そんな事を考えていると、一人の主婦らしき人が彼らに声をかけていました。何を話しているのでしょう。というか危険ですよ、奥さん。
「あら、ヴァンプさん。昨日はお裾分けどうもありがとうございました~」
「あ、お向かいの山田さん。どうでしたか、肉じゃがのお味は~?」
「すっごく美味しかったですよ~。私が作るよりもずっと美味しかったわ」
「そんな、言い過ぎですって~」
「そんなことありませんよ。今度作り方教えてもらおうかしらー?」
そう言って笑い合うヴァンプと、お向かいの山田さんなる人。奥さんに危害は加えませんでしたね。上手く正体を隠しているのでしょうか。
とりあえず御近所付き合いは良好…、っと。おや、移動するみたいですね。ついて行きましょう。
そうして彼らは着々と博麗神社への道を進んでゆくのですが、今度は里の子供たちが彼らの存在に気づき近寄っていきます。だから危険ですって。
「あー、ヴァンプさまだー」
「ホントだー。わーい、ヴァンプさまー」
「あそんであそんでー」
「あっはっは、みんな元気だねー。やっぱり子供は元気が一番だね~」
「そうですねー」
和やかに子供たちと触れ合う悪の組織。危険……?
いやいや、油断させておいて人質にとるつもりかも知れません。やはり恐ろしい連中の様ですね。
今の私の使命は彼らの正体を暴き、それを幻想郷中に知らしめることです。私は騙されませんよ。
「ヴァンプさまの槍だー。かっこいいなー」
「ホントだー。ねぇヴァンプさまー、みせてー」
「コラ、ダメだよー。これは危険なんだから、子供がこんな物に興味持ったらいけないよ?」
「えー」
「ほらほら、そんな顔しないで~。アメあげるから、今日はこれで我慢してね。ね?」
「わぁ。ありがとう、ヴァンプさま!」
「どういたしまして。ほら、みんなで遊んでおいで」
「はーい!」
「転んで怪我しないようにねー」
ふむふむ……、甘やかすだけじゃなくきちんと叱れる厳しさも持っている、と。
飴と鞭を上手く使いこなすことが出来るようですね。やはり油断ならない人物みたいです。
おや、また移動するみたいですね。見失わないようにしなければ。
そんなわけで、彼らは今博麗神社に続く階段を上っています。
見た感じ息切れしていますね。まぁこの階段は長いですから疲れるのも無理はないでしょう。
「ヴァンプさま~、毎回この階段登るのしんどくないっすかぁ~?」
「そうなんだけどねぇー…。以前霊夢さんを決闘に呼び出したら、あの人結局来なかったじゃない? だから、私たちが行くしかないんだよ~」
「それはそうですけど……、大丈夫ですか、ゲイラスさん?」
「はぁ…、はぁ……。だいじょう…、ぶ……」
「ちょ、ちょっとゲイラスくん。しんどかったら休憩しようか?」
「ぼ…、僕のことはお気になさらず…」
「でも苦しそうだよ? 何ならゲイラスくんだけ先に飛んで行ってもいいんだよ?」
「そんな…、ヴァンプ様を置いて先に行くなんて……、できませんよ…」
「そう…? じゃあもう少しだから頑張って。本当に苦しかったら遠慮せず私に言ってね?」
「はいぃ~…。お心遣い、感謝します~…」
成程、部下を労わることのできる優しい上司、と言ったところでしょうか。部下の方も別にヴァンプに遠慮しているわけではなさそうです。
しかしこうして結束力を強めていくとは……。敵に回したら厄介な事になりそうですね。恐らく尋常ではないコンビネーションを見せることでしょう。
そんなこんなで彼らは博麗神社に辿り着きました。
今彼らは境内で霊夢さんと向かい合っています。相手は既に息も絶え絶えとは言え、霊夢さんは果たして大丈夫でしょうか?
なんだか心配するのがだんだん馬鹿らしくなってきましたが、一応最後まで見届けることにしましょう。
「ふっふっふっ……、博麗…、霊夢よ……。お前の、命運も…、これまで、だ…」
「また来たの。あんたたちも懲りないわね。というか毎回息切れするの何とかならないの?」
「ぜ…、善処します~…」
「キー…」
「…まぁいいわ。やるならさっさとやりましょう。私も暇じゃないのよ」
「は…、はい、すいません! お時間は取らせませんので!」
妙に腰が低い悪の将軍ですね。完全に霊夢さんに圧倒されています。私はもう心配していないどころか、彼らが哀れにさえ見えてきましたよ。
「ふふふ…、前回は上空に逃げられてしまったが今回はそうはいかない。こちらにも空を飛べる怪人がいるのだ。行け、ゲイラスよ!」
「はぁ…、は……、はいぃ~…」
「げ…、ゲイラスくん大丈夫!?」
「大丈夫です~…。ご心配なさらずに~…」
「どう見ても大丈夫じゃないって~! いいから、ちょっと休んで!
あ、すみません霊夢さん。ちょっと休憩時間頂いてもよろしいですか~?」
「…好きにしなさい。私もそこまで鬼じゃないわ」
対決に休憩時間って…。何と言いますか、呆れてものも言えないとはこのことですね。
霊夢さんもどこからどうみても見ても呆れ顔です。今の霊夢さんの気持ち、私すごい分かりますよ。
「ありがとうございます~……、って、どうしたんですか霊夢さん、その手?」
「あぁ…、さっき油使ってたらちょっと、ね」
「えぇッ!? それで、ちゃんと冷やしたりしたんですか!?」
「こんなの放っておけば勝手に治るでしょ」
「だめですって、火傷を甘く見たら。1号、このハンカチ濡らして来てくれる?」
「あ、はい。あじゃなくて、キー!」
「お願いね。あ、霊夢さん、水道お借りしますね。あと救急箱はどこですか?」
「あぁ、それなら確か――」
霊夢さんから救急箱の場所を聞いたみたいで、ヴァンプが家の中に入っていきます。
もしかしなくても霊夢さんを手当てするつもりなのでしょう。というか霊夢さんも平気で彼らの侵入を見ていますね。いいんですか、それ?
あ、出てきました。
「ヴァンプ様、ハンカチ濡らしてきましたよ」
「あ、ありがとう。それじゃあこれを患部に当てて、と…。そんなに酷い火傷じゃないみたいですね~」
「だから言ったじゃない。大袈裟なのよ、あんたたち」
「何言ってるんですか~。痕でも残ったら大変ですよ? 女の子なんですから、そういうところはちゃんとしないとー」
「むぅ…」
それは確かに賛同できます。霊夢さんは妙に豪快なところがありますから、もっと自分の事に気を遣ってほしいですね。
それにしても悪の組織の方が正しいことを言っているこの現実は何なんでしょう?
あれですかね、気にしたら負けというやつですかね?
「うん、後は軟膏を塗って……、これでよし。念のために包帯も巻いておきましょうね」
「いいわよ…、そこまでしなくても」
「いいからいいから~」
「………」
無言でヴァンプ…、いえヴァンプさんの手当てを受ける霊夢さん。あそこまで大人しい彼女を見るのは初めての様な気がします。
それにしてもヴァンプさんは随分手慣れていますね。怪我した部下の手当てとかも日常的にやってそうですよ。
「はい、お終い。痛みが引かないようなら軟膏を塗り直してくださいね」
「…わかったわよ。それで、やるの?」
「えぇ!? もう~、怪我してるのに対決なんてやったら大変じゃないですかー。今日は大人しくしといてください」
「…毎度のことだけど、本当にやる気あるの?」
「ありますあります~。ね、みんな?」
「もちろんです。マジでぶっ潰したいっす、霊夢さん!」
「あ、僕も僕も!」
それでは間違いなく伝わりませんね。霊夢さんも頭を抱えています。今の霊夢さんの気持ち分かります。
怪我している今だからこそチャンス、という発想は彼らには無さそうです。悪って、何でしょうね?
「それじゃあ今日の所はこれで。あ、これ昨日家で作った肉じゃがです。よかったら食べて下さい」
「あ、ありがとう…」
「いいんですよ~。じゃあみんな、今日のお参りは『霊夢さんが早く良くなりますように』ってお願いしようか」
「はーい」
今日のお参り…? もしかして、神社に来る度にやっているのでしょうか。
いや、確かに正しい神社の在り方だとは思いますが、忘れるなかれ。彼らは悪の組織なのですよ。
それもその内容が、仮にも敵である霊夢さんの健康を祈るようなものって…。
「それじゃあ霊夢さん、お体には気をつけて下さい。それではまた今度~」
「今度こそ抹殺しますねー」
「……帰っちゃった。毎回何しに来てるんだか……」
私もそれは疑問に思わざるを得ませんね。
そんな霊夢さん、しげしげと包帯を巻かれた手を眺めつつ、肉じゃがをつまんでの一言。
「肉じゃが………、おいしい……。これが…、おふくろの味…?」
んなアホな。
そして、私は今自宅で今日の取材内容を編集しています。
とりあえずアレですね。『怪人は妖怪と違い、基本的に無害』の一言に尽きますね。
まぁこんなものでしょう。これで明日も無事に新聞を発行できそうです。
それにしてもなんでしょう、改めて内容を読み返してみると、彼らの布教活動に手を貸しているようにしか思えません。ま、いっか。なんかもうお腹一杯です。
かくして、フロシャイムは幻想郷において絶大なる支持を集めることとなるのであったッ!
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「うわ~…、幻想郷ってこんな所もあるんだぁ。結構広いけど、だいたい東京ドーム何個分なんだろ?
それにしても不気味な森だな~…。何か出てきそうだよ」
「……ぬいぐるみが、一人で歩いてる…?」
~ 怪人ウサの危機一髪!? ~
「はい、お茶とお菓子よ。召し上がれ」
「あ、ありがとう…」
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私はアリス。アリス・マーガトロイド。あなたのお名前は?」
「あ、ウサコッツっていいます」
「そう。かわいい名前ね」
「か…、かわいくなんてないやい」
そう言ってモジモジし始めるウサちゃんだけど、余計に可愛く見えてしまうわね。
あまりの可愛さについ家まで招いてしまったのだけれども、この子は一体どうやって動いているのかしら? 興味が尽きないわ。
それにしてもこの子は妖怪なのかしら? その割には見たことも聞いたこともないわ。
「ねぇウサちゃん、あなたは新手の妖怪なの?」
「ボクは妖怪じゃなくて、世界征服の野望に燃えたぎる怪人だよ」
怪人…? あぁ、そういえば天狗の新聞に、幻想郷に最近住み着いた連中とかなんとかあった気がするわね。
確かフロ…、なんとかっていう組織だったはず。ウサちゃんもその一員みたいね。
「ウサちゃんはぬいぐるみ、で合ってるわよね?」
「そうだよ。ボクはぬいぐるみ型の凶悪怪人なんだ」
その割に紅茶は飲むしクッキーは食べるし…、どこに入っているの?
自立した人形を作ることが目標の私にとってウサちゃんほど興味を引く存在は無いわ。それにしても可愛いわね。
「ウサちゃん、抱きしめてもいいかしら?」
「え? ダメダメ! ボクはそんなにお安くないんだからね」
「あらそう?」
「や…、やめろよー。はなせよー」
あぁ…、いい手触り…。フカフカして気持ち良いわ…。
腕の中でジタバタするウサちゃんがもう可愛くて可愛くて……、あら?
「ねぇウサちゃん、腕の所、ほつれてるわよ」
「え? あ、ホントだ。いつの間に…」
「きっと森を歩いている時に枝か何かに引っ掛けちゃったんでしょ。
見せてごらんなさい。こう見えてもお姉さん、お裁縫は何よりも得意なんだから」
「お…、お願いします…」
さっきの態度からは一転して、しおらしくなるウサちゃん。
ちょっと反抗的でやんちゃな感じもいいけど、素直なウサちゃんも可愛いわね…。家の子にしたいくらいだわ。
そうだ、ただ縫い直すだけじゃ芸がないわね。ここはウサちゃんをうんと可愛くしてあげることにしましょう。ふふ…、どの布がいいかしら。
「ア…、アリスさん…? 顔が怖いよ? それにそのフリフリの布はなに?」
「直ぐ済むから大人しくしててね…? 大丈夫、痛くしないから…」
「ぼ……、ボクもう帰ります! ごちそうさまでした!」
「だーめ。逃がさないわよー」
「うわーん! 誰か助けてー!」
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「じゃあね~。また来てね、ウサちゃーん」
「もう二度と来ないよーだ!」
「…可愛かったなぁ。
ウサちゃんが世界征服したら、ぬいぐるみだらけの世界になるのかしら? …頑張ってね、ウサちゃん」
~ ~ ~
「ど…、どうしたのウサコッツ…? メイドさんのお仕着せみたいな恰好して…」
「ボクは可愛くなんてないやい!」
博麗戦士ミコレッド。これは、幻想郷を舞台に繰り広げられる、善と悪の壮絶なる戦いの物語であるッ!
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~ お説教 ~
「あ~、サボ…、休憩するのはいいけど、話し相手がいないと暇だねぇ……、おや」
「何か寂しい所にきちゃったな~…。ここどこなんだろ~…?」
「ちょうど良かった。あんたちょっとあたいの話し相手になってくれないかい? 酒でも飲みながらさ」
「え? な、なんですか、いきなり?」
「細かいことはいいから。ほら、グイッと一杯!」
「いや、ちょ、あ…、あぁ~~」
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「あははは! ヴァンプの話は面白いね~! 世界征服だなんて最高の冗談だよ!」
「あ、あの~……。冗談じゃなくて本気なんですけど…」
「またまた~、あたいを笑い殺す気かい?」
「こ~ま~ち~! あなたはまたこんな所で油を売って…!
今日という今日は許しません! そこに直りなさい!」
「ひぃッ! し…、四季様!?」
「本当にあなたは何度言っても改善が見られませんね。口で言って分からないようなら体に叩き込んで差し上げましょうか…?」
「そ、それだけはご勘弁を!」
「わ…、私お邪魔みたいですね…。これで失礼します~…」
「待ちなさい! よく見ればあなたはお酒を飲んでいるようですね。
こんな昼間からお酒を飲むなんて堕落している証拠です! あなたもまとめてお説教します!」
「えぇッ!?」
~ 1時間後 ~
「普段から言っていますが、そもそもあなたは生活態度からしてなっていません。私はあなたの上司として情けないですよ。
それにそこのあなた。大の大人がそんな見るからに怪しげな恰好をして、あまつさえなんですかその槍は!? 危ないとは思わないのですか! それに――」
「あの~…、小町さん? これ、いつまで続くんですか?」
「いやー、あと3,4時間は覚悟した方がいいよ」
「そんなぁ~…。私、完全なとばっちりじゃないですか~…」
「聞いているのですか、二人とも!?」
「「はいっ! 聞いてます!」」
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ニヤニヤしながらみてまっせww
続編希望w