”無意識”の部分を人形の制御に利用したらどうだろう。
いわば見掛け上の自律型人形だ。
本人に操作を行っている意識は無いから、その分ほかの事に集中できる。
実際には操作を行っている以上、あらかじめ組み込んだ式による限られた行動以上の事も可能だろう。
そして認識できない意識というものは、本人の思惑を超えた結果を生み出すに違いない。
本来の意味での自律とは程遠いが、何らかのきっかけにもなるだろう。
その仮説を基に組み上げた理論を人形に施した。
今の私に出来る技術の全てを込めた。
後は実地での試験を行うのみだが……。
「で、私とやりたいってわけか」
全く思ったとおりの受け答えをする白と黒の魔法使い。
まぁ、仕方ないけどね、そういう反応するのは。
「別にいいでしょ。誰に迷惑かけるわけでもなし。むしろ普段は私が迷惑被ってるんだから」
「ま、いいけどな。だけどやるからには加減はしないぜ」
にやりと笑う白と黒。
ああ、そうだ。
あいつはいつもこういう風に笑う。
人を挑発する、それでいて憎みきれない笑顔。
わかっているはずなのに、血が上る、テンションが上がる。
「そうでないと困るわね。こちらも実地での性能測定を行わなければならないから」
「なんだ、私は実験台か?なんてひどい奴だお前は」
「盗賊まがいの行為を繰り返すあんたがどの口でそんなこと言うか!」
「おお、それはもちろんこの口だぜ。私は人間だから手や頭に口があるわけじゃないしな」
全く口が減らない!
こんな事もわかりきってるのに、思わず受け答えてしまう。
そして、それが楽しいと感じてしまう自分に嫌気が差す。
流されるままではダメ。
それでは試験になんてならない。
無言で人形たちに意識を送る。
私の魔力が不可視の糸を伝わっていくのを感じる。
それに呼応するかのように白と黒が動き出す。
「ははは。やる気満々じゃないか。こりゃ楽しめそうだな」
「あんたはそうかもしれないけどね!私は真剣なのよ!」
白と黒は再びにやりと笑うと一気に天へ飛翔する。
私も人形を従え飛び上がる。
空中での対峙。
互いに睨みを効かせるのも束の間。
「準備はいいか?根暗な引きこもり!」
「いつでもどうぞ。先制権はあげるわよ、単細胞!」
にぃ、と笑みを深める白と黒。
懐から札を取り出すと嬉しそうに突きつけてきた。
合わせ、私も札を右手に掲げる。
いいテンションだ。
何だかんだ言っても、私もこの状況を楽しんでいるのだろう。
「なら、遠慮はしないぜ!It's a show timeだ!」
札が輝く。
戦闘開始だ。
「……納得いかねーぜ」
「それはこっちの台詞よ」
「なんだよ。ここまで一方的にやっておいて何が不満なんだよ」
地に寝転がりながら不満をたれる白と黒。
そう、勝負は一方的だった。
最初に白と黒が切ったのはスターダストレヴァリエ。
派手な流星郡が天を翔る。
その膨大な量の弾は確実に敵の動きを制限していく。
そうやって相手を追い込んだ上でレーザーで狙い撃ち、が基本的な戦い方だった。
だが、あまりにも美しく規則正しい流星は、僅かにその動きを乱してやるだけで
星同士が相殺しあい、大きな隙が生まれる。
攻撃にも防御にも意味を成さなくなったスペルなど足枷にしかならない。
半自律の理論で性能が大幅に上昇した人形もあってか、あっさりと被弾させる事に成功。
これで白星ひとつ。
二番目はノンディレクショナルレーザー。
ビットによるレーザー、星型弾の複合型全包囲攻撃。
ビットは自動的に相手を捕捉し攻撃を加えるため、本体は回避に専念できるという攻防一体のスペル。
弱点はまさにそこにあり、それなりの魔力を込めた人形を展開させる事でビットに誤認をさせ攻撃を集中させる。
その間無防備になった本体を狙い撃てばそれで終わる。
人形自体もここの細かい状況に勝手に対応をしてくれるため非常に楽だった。
白星ふたつ。
まさしく切り札のマスタースパーク。
威力もさることながらその範囲もまた桁違いに広い。
撃ったら動くなどでは到底回避できない、まさしく必殺の一撃。
長らくどうしようもなかったこのスペルも研究の末ようやく突破口が見つかる。
あいつは八卦炉を利用してあのスペルを撃ち出す。
そこがまさに狙い目だった。
炉の8つの基点を攻撃する事で出力を激減させ、魔力を拡散させる。
強力な魔法ほど、僅かな揺らぎでその効果が失われるわけだ。
人形が失われるのは痛いものの、あのスペルの相殺と引き換えなら仕方ない。
不発に終わった隙を突いて白星みっつ。
いつものあいつならこうも無様にやられる事は無いだろう。
私が取った対応は全て理論上は上手く行くはず、というものばかりだったのだから。
完全に今の自分の技量を測り間違えていた。
急速に頭と心が冷えていく。
戦闘前の、あの浮ついた気分はもう欠片も存在しない。
「不満よ。当然でしょ。勝ちすぎなどという結果は私のポリシーに反するのだから。ついでに言うとあんたのその反応にもね」
「おーおー、言ってくれるじゃないか。アリス様のご期待に添える事が出来ず悪かったな!」
「ええ、全くその通り。計算違いもいいとこだったわ。あんたはもっともっと強いし面白い奴と思っていたんだけどね」
「お前……っ!言わせておけば図に乗りやがって!」
「全く以って期待通りの反応ありがとう。ただ、こんなやり取りも茶番以外の何物でもない。どういう形でも所詮自分の枠を超えることは出来ないってことね」
白と黒が激怒する。
だが、私にはもう何も感じられない。
全てが虚しく響くだけだった。
「実験そのものはある程度の成功はみたといっていいけど」
それは事実。
だが、そんなことは今の私には瑣末な事だった。
熱が引いた私の心は、現状を正しく認識し言いようの無い不快感を発生させている。
パチンと指を鳴らす。
なおもわめき続ける白と黒を横目に、私は不可視の糸を断ち切った。
「自分で意識していない部分が相手とはいえ、結局はただの一人相撲ってわけね……」
白と黒は動く事をやめた。
いわば見掛け上の自律型人形だ。
本人に操作を行っている意識は無いから、その分ほかの事に集中できる。
実際には操作を行っている以上、あらかじめ組み込んだ式による限られた行動以上の事も可能だろう。
そして認識できない意識というものは、本人の思惑を超えた結果を生み出すに違いない。
本来の意味での自律とは程遠いが、何らかのきっかけにもなるだろう。
その仮説を基に組み上げた理論を人形に施した。
今の私に出来る技術の全てを込めた。
後は実地での試験を行うのみだが……。
「で、私とやりたいってわけか」
全く思ったとおりの受け答えをする白と黒の魔法使い。
まぁ、仕方ないけどね、そういう反応するのは。
「別にいいでしょ。誰に迷惑かけるわけでもなし。むしろ普段は私が迷惑被ってるんだから」
「ま、いいけどな。だけどやるからには加減はしないぜ」
にやりと笑う白と黒。
ああ、そうだ。
あいつはいつもこういう風に笑う。
人を挑発する、それでいて憎みきれない笑顔。
わかっているはずなのに、血が上る、テンションが上がる。
「そうでないと困るわね。こちらも実地での性能測定を行わなければならないから」
「なんだ、私は実験台か?なんてひどい奴だお前は」
「盗賊まがいの行為を繰り返すあんたがどの口でそんなこと言うか!」
「おお、それはもちろんこの口だぜ。私は人間だから手や頭に口があるわけじゃないしな」
全く口が減らない!
こんな事もわかりきってるのに、思わず受け答えてしまう。
そして、それが楽しいと感じてしまう自分に嫌気が差す。
流されるままではダメ。
それでは試験になんてならない。
無言で人形たちに意識を送る。
私の魔力が不可視の糸を伝わっていくのを感じる。
それに呼応するかのように白と黒が動き出す。
「ははは。やる気満々じゃないか。こりゃ楽しめそうだな」
「あんたはそうかもしれないけどね!私は真剣なのよ!」
白と黒は再びにやりと笑うと一気に天へ飛翔する。
私も人形を従え飛び上がる。
空中での対峙。
互いに睨みを効かせるのも束の間。
「準備はいいか?根暗な引きこもり!」
「いつでもどうぞ。先制権はあげるわよ、単細胞!」
にぃ、と笑みを深める白と黒。
懐から札を取り出すと嬉しそうに突きつけてきた。
合わせ、私も札を右手に掲げる。
いいテンションだ。
何だかんだ言っても、私もこの状況を楽しんでいるのだろう。
「なら、遠慮はしないぜ!It's a show timeだ!」
札が輝く。
戦闘開始だ。
「……納得いかねーぜ」
「それはこっちの台詞よ」
「なんだよ。ここまで一方的にやっておいて何が不満なんだよ」
地に寝転がりながら不満をたれる白と黒。
そう、勝負は一方的だった。
最初に白と黒が切ったのはスターダストレヴァリエ。
派手な流星郡が天を翔る。
その膨大な量の弾は確実に敵の動きを制限していく。
そうやって相手を追い込んだ上でレーザーで狙い撃ち、が基本的な戦い方だった。
だが、あまりにも美しく規則正しい流星は、僅かにその動きを乱してやるだけで
星同士が相殺しあい、大きな隙が生まれる。
攻撃にも防御にも意味を成さなくなったスペルなど足枷にしかならない。
半自律の理論で性能が大幅に上昇した人形もあってか、あっさりと被弾させる事に成功。
これで白星ひとつ。
二番目はノンディレクショナルレーザー。
ビットによるレーザー、星型弾の複合型全包囲攻撃。
ビットは自動的に相手を捕捉し攻撃を加えるため、本体は回避に専念できるという攻防一体のスペル。
弱点はまさにそこにあり、それなりの魔力を込めた人形を展開させる事でビットに誤認をさせ攻撃を集中させる。
その間無防備になった本体を狙い撃てばそれで終わる。
人形自体もここの細かい状況に勝手に対応をしてくれるため非常に楽だった。
白星ふたつ。
まさしく切り札のマスタースパーク。
威力もさることながらその範囲もまた桁違いに広い。
撃ったら動くなどでは到底回避できない、まさしく必殺の一撃。
長らくどうしようもなかったこのスペルも研究の末ようやく突破口が見つかる。
あいつは八卦炉を利用してあのスペルを撃ち出す。
そこがまさに狙い目だった。
炉の8つの基点を攻撃する事で出力を激減させ、魔力を拡散させる。
強力な魔法ほど、僅かな揺らぎでその効果が失われるわけだ。
人形が失われるのは痛いものの、あのスペルの相殺と引き換えなら仕方ない。
不発に終わった隙を突いて白星みっつ。
いつものあいつならこうも無様にやられる事は無いだろう。
私が取った対応は全て理論上は上手く行くはず、というものばかりだったのだから。
完全に今の自分の技量を測り間違えていた。
急速に頭と心が冷えていく。
戦闘前の、あの浮ついた気分はもう欠片も存在しない。
「不満よ。当然でしょ。勝ちすぎなどという結果は私のポリシーに反するのだから。ついでに言うとあんたのその反応にもね」
「おーおー、言ってくれるじゃないか。アリス様のご期待に添える事が出来ず悪かったな!」
「ええ、全くその通り。計算違いもいいとこだったわ。あんたはもっともっと強いし面白い奴と思っていたんだけどね」
「お前……っ!言わせておけば図に乗りやがって!」
「全く以って期待通りの反応ありがとう。ただ、こんなやり取りも茶番以外の何物でもない。どういう形でも所詮自分の枠を超えることは出来ないってことね」
白と黒が激怒する。
だが、私にはもう何も感じられない。
全てが虚しく響くだけだった。
「実験そのものはある程度の成功はみたといっていいけど」
それは事実。
だが、そんなことは今の私には瑣末な事だった。
熱が引いた私の心は、現状を正しく認識し言いようの無い不快感を発生させている。
パチンと指を鳴らす。
なおもわめき続ける白と黒を横目に、私は不可視の糸を断ち切った。
「自分で意識していない部分が相手とはいえ、結局はただの一人相撲ってわけね……」
白と黒は動く事をやめた。
なるほど独り相撲。対応できるよね。
>完全に今の自分の技量を測り間違えていた。
この一文の技量が何を指しているのかわからんとです。
額面通り無意識で人形制御してるのかと思ったら魔理沙の方が人形だったのか。
ナイスどんでん返しw