※ドロワ祭り参加し損ねてしまいました………orz
※しかし作風は続投させていただきました。
※読んでご機嫌を損ねる方がいたら、申し訳ございません。
「咲夜」
───はい、なんでしょうか。紅茶のおかわりですか?
「暇なのよ。私の話の相手になりなさい」
───は、はい。
「そうね、咲夜。あなた、自分の名前の由来を考えたことはあるかしら」
───ええ、ありますわ。お嬢様からいただいた名前ですもの。
「あら、あるの。それで、答えは見つかったのかしら?」
───はい。きっと、お嬢様がそういう名前をつけたかったからですわ。
「それを答えとは言わない」
───あら、そうですか?
「それは問題を読み返しているだけよ。部分点もあげられないわ」
───むむぅ
「ちょうどいい機会ね。この場で考えてみなさい。私も暇を殺せるわ」
───そ、そうですねぇ。私とお嬢様が初めて会ったときが、十六夜だったからでは?
「違うわ。あなたと会った夜は、新月の夜よ」
───そうでしたっけ?
「どうして吸血鬼を狩る者たちが、満月から魔力を補給した直後の吸血鬼に会いに来るかしら」
───私はいつでもお嬢様の都合を第一に考えていますわ。
「そうね。あなたは私の一番都合が悪いとき、朔の夜を狙って会いに来てくれたわ」
───そこらの記憶はあいまいでございます。
「だいたい、あなた、どうして私を狩ろうとしていたか覚えているの?」
───さっぱりですわ。
「忘れられるようなちんけな理由で狩られようとしてたのね、私」
───あ、分かりました。きっと剥製を作って、部屋に飾りたかったんですよ。
「愚かな行為ね。剥製なんかにされたところで、痛くも痒くもないわ」
───痒そうですわ。
「むしろ、ハンターを油断させ、寝首をかけるもの。いいこと尽くめじゃない」
───夜に徘徊されるのですか?学校に寄贈したらどんな惨事になることか………
「勝手に人体模型の話とすりかえるな」
───あれ?なんの話でしたっけ?
「あなたの名前の話よ」
───むむぅ
「苦戦しているようね。ヒントをあげるわ」
───どうせなら正解をください。
「いやよ。暇になっちゃうじゃない」
───むぅ
「さあ、ヒントよ。あなたが十六夜なら私は満月、ってところかしら。それも永遠のね」
───私は少し欠けているのですね。
「その解釈はあっているわ。しかし誤りでもある」
───どういう意味です?
「全てを他人に頼るのはよくないわ。もうヒントはあげない」
───むむむむぅ
「ふふ、分かるかしら」
───とりあえず、お嬢様は永遠に満月なのですね。
「ええ、まあ、そうよ。欠けること知らずね」
───そう詠って、後に滅びた一族の話を、この前、パチュリー様から教えていただきましたわ。そのもっと前に、そこのご先祖にも会いましたが。
「滅びたのは後継者がパーだったからよ。私が永遠に生きれば、月は欠けないわ」
───するといつまで経っても十六夜はやってきませんね。
「ええ。間違っても、私が人間になることはないわ。人間に少しの興味を持つ吸血鬼、それでいいの」
───人間はいいものですよ。どうです?
「お断りするわ。方法がないし、第一、月が欠けちゃうじゃない」
───大丈夫です。お嬢様の後継者がパーでなければ月は欠けません。
「そんな不確かなものを求めるつもりもないわ。私は私。私以外の何者でもないし、私以外の何者になるつもりもないわ」
───すると、私が長いときを経て、満月になるのですか?
「哀れ儚き人の世が、十六夜が満月になれるほど長いものかしらねぇ」
───ああ、そういうことですか。
「あら、分かっちゃったの?」
───ご安心ください。私はいつまでも人間として、お嬢様に仕えてまいりたいと思っています。
「分かってるようだけど、本当に分かってるのかしら?」
───難問でしたわ。
「勘違いされたら困るから言っておくけど、あなたが人間だから私は気に入っているの。そこを忘れると、どうなっても知らないわよ」
───承知しております。
「さて、続きだけど、どうする?」
───『咲夜』の部分については、後でパチュリー様に聞いてきますわ。哀れ儚き人の世の短さでは導けない答えかもしれませんし。
「パチェがあなたとの与太話につきあってくれるかしらね」
───大丈夫です。腕によりをかけて聞き出しますから。
「また紅茶に変なのを混ぜるつもり?」
───そんな、滅相もございません。変なのに紅茶を混ぜようとしているだけです。
「余計たちが悪い」
───冗談ですよ。
「あなたの冗談はときに実行性をもつから怖いのよ。それこそ油断していると剥製にされそうね」
───時を止めれば全てが剥製ですわ。
「能力を解除したら動き出すんでしょ?そういうのを剥製とは言わないわ」
───剥製に囲まれても楽しくありませんわ。動いてこそ楽しいのです。
「またそうやって話をずらす。まあ、いいわ。咲夜、紅茶、おかわり。余計なものを混ぜないでね」
───はい、かしこまりました。
「ありがとう、いいひと時だったわ。さあ、他の仕事に取り組んで頂戴」
───では、失礼します。
難解なところがまたお嬢様らしいとか、そんなことを思ったり。
話自体も会話文中心ながらテンポが良くて読みやすかったです。