――夏。
とりわけ猛暑。
うだるような暑さ。
ギラギラと強い日差しに、人間もそれ以外の者もひどく参っていた。
熱気がむんむんとていて、肌にじわりと汗をかく。
「あーぁついーよぉー」
だらしなく草むらに座り込んだ夜雀は、歌ではなく非難の声を上げ、
「そうだね……」
宵闇の妖怪は時刻的にもまったく調子が出なかった。
「もうやぁーだー」
いくら文句を訴えても、涼しくなるわけがない。ミスティア本人もわかっている。
だが、そうだとわかっていても、声を上げるしかできないのである。
「チルノちゃんは……来ないだろうね……」
この暑さなら、皆が冷房に彼女を欲する。行きつくところ、考えることは皆同じ。
例年行方不明になっているので、二人はもう期待しないようになっていた。
――何か涼しくなるものはないだろうか?
ルーミアは頭を捻る。
……団扇、はダメだ。屋台に備え付けてあるあれは非常に鰻臭い。
背に腹は代えられない、なんて取り出したるが最後。食べてもいない鰻の臭いを、熱気の中嗅ぎ続けるなんて拷問だ。去年はその受難に耐えきることはできなかった。
「あっ! 団扇があるよ!」
「……」
「……ごめん」
ルーミアの無言の訴えに、ミスティアは去年のことを思い出したらしい。
落胆したミスティアは、反回転して地べたにうつ伏せになった。
「あー」
声を上げながら、背中の羽をぱたぱたと動かす。
かかさずルーミアは風を受けるポジションに移動する。馬乗りだ。
が、
「そうはさせるかぁっ!」
エビ反りになって、羽でルーミアの顔を軽くはたく。まさにつばさでうつ。
彼女は他人だけ涼しくなるのは許せなかった。
そんな風にじゃれていると、苦しいながらも暑さを我慢することができた。
だが、やがて思考がうまくいかなくなるもので。
そのとき人は、もちろん人じゃないものも、何を言い出すのかわかったものではない。
「――ようし! もう脱ぐっ!」
ミスティアがそう叫んだのは、きっと彼女も思考の歯車が噛み合わなくなったからだろう。
ルーミアはただ、そそくさと服を脱いでいる彼女をぼうっと眺めていただけだ。
誰も止めない。
――夜雀がドロワーズ一枚になるのに一分も要しなかった。
「涼しい……っ!」
何が彼女をそこまで狂わせるのか。
もちろん暑さだ。
ルーミアは咎めるべきなのか判断が付かない。
ミスティアが苦痛の表情から爽快な表情に様変わりしたため、服を脱ぐことがとても魅力的に思えたからだ。
「ルーミアも脱ぐといいよっ!」
「え……」
だが、最後の良心がルーミアを踏み留めさせていた。
野外で脱ぐなんて露出狂だ。が、この暑さなら仕方がないことだろうか。
二つの考えが均衡し、結論が出せずにいた。
向こうを向いて伸びをするミスティア。読んで字のごとく、羽を伸ばす、といった感じだ。
背中には一筋の汗が。
ルーミアは、そっと手を伸ばし、触れてみた。
「ひっ!」
ミスティアが短く叫ぶ。
が、ルーミアの指は止まらない。そのままゆっくりと背筋をなぞる。
「あ、あっ……やぁ、い……っ」
それは制止の声なのだろうか。
「ああぅ……んっ」
指はドロワの縁までたどり着き、最後に、はねる。
「はぁっ……!」
ルーミア指揮による、ミスティアの独唱終わり。
ミスティアはそのまま、力なく前に倒れた。たまに、ぴくっ、と痙攣する。
ルーミアには、彼女が力なく横たわっている理由がわからなかったので、
「砂が体に付くよ?」
と言葉をかけた。
「……」
顔を真っ赤にして、わなわなと震えているミスティア。
「ルーミアも脱げ―っ!!」
それから、暑い日に小径を通った者は、
「ふ~く~を~、ぬぅ~げぇ~」
という声を聞いたとか、聞かなかったとか。
みすちーかと思いました。
「くしくし」とか言うミスティアが見れるのかと思ったら
今日は蒸すちーだった。
みすちー は えろい な。
ところどころエロくて良かったです。