「いらっしゃーい、お客さん。って、え」
「こんばんわー」
「・・・・・・」
「うわ露骨に嫌そうな顔」
「本日は閉店致しました」
「いやのれん出てたし」
「つー訳で帰れ」
「嫌よ。折角来たのに」
「お前に出す酒なんてない」
「ちゃんとお金払うってばホラ」
「受け取れるか」
「受け取りなさいよ。あと梅酒ひとつ」
「さりげなく頼んでも何も出てこないわ」
「けちな店主ね。だから閑古鳥が鳴くのよ」
「大きなお世話だよ」
「あと場所が悪いし何より店主が無愛想」
「悪かったな仏頂面で」
「笑った顔とか可愛いのにー」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや、ナチュラルにそう言われるとなんつーか」
「照れる?」
「照れてねーよバカ!」
「照れてる照れてる」
「誰が照れるかよ!お前相手なんかに!死ね!」
「死なないけどね」
「死なないけど死ね!」
「言っていることが矛盾しているわよ」
「じゃあ死んで二度と蘇るな!てか私の前に姿を現すな!」
「えー、それいいの?やろうと思えばできるけど」
「・・・・・・」
「プッ、可愛い」
「やっぱり死ね!」
「いいじゃない、私も同じよ。妹紅」
「気色悪いんだよ!」
「貴方がいないと、何か淋しいもの」
「寒気がするわ、その発言!」
「そうそう。そういう憎まれ口を叩く所とかもーホント可愛くって」
「やっぱりもうお前帰れ!閉店だよ閉店!」
「嫌よ、客だし。怒っているもこたんとか可愛いし」
「もこたんとか言うな!」
「いいじゃん。これあげるから」
「いらねーよお前の物なんか!」
「そう言わないでよ。自信作なのに」
「どうせ毒でも入っているんだろ!」
「んな訳ないでしょ。ここで殺し合いする気はないもの」
「そんな台詞を前にも聞いたぞ」
「それは家で宴会やった時でしょ。あれは騙されるあんたがあんただった」
「うるさい」
「ここで私が殺したことあった?いつも客だったでしょ」
「客だと思ったことは一度もない」
「いいわよ。私が先に食べるから。もぐもぐ」
「・・・・・・」
「あーおいしい。って何物欲しそうに見ているのよ」
「んな訳ねーだろ!気のせいだバカ!」
「くくくっ可愛い」
「ああもう気色悪いなあ!」
「ここ置いておくから勝手に食べてね」
「いらねーって言ってるだろ!」
「毒なら入ってないから安心して」
「いらんものはいらん!」
「嘘つき。どうせそのうちお腹空くでしょ」
「地面の土でも喰っている方がマシだよ」
「そんなこと言って妹紅さ、5年ぐらい前だっけ。大晦日の日にボロボロの姿で家に来て、ご飯ねだって毒入りのリンゴを」
「ああああ聞こえない!聞こえない!」
「同じことを考えなかったの?」
「何がだよ」
「私がここに来た時に、酒に毒入れるとか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「案外抜けてるのね、もこたん」
「うっせーな!それともこたんはやめろ!」
「今だってできるでしょうに」
「店に毒は置かない主義なんだよ」
「じゃあずっとここに居ようかな。きっと殺されないし」
「なっ」
「冗談よ。だってここ設備悪いもん。お姫さま用ベッドとか無いし、隙間風が寒いし、何より店主が無愛想」
「悪かったな。こっちとしては好都合だよ」
「あーそう」
「そうだよ。もうとっとと帰ってくれないか。居心地悪いんだろ」
「でも殺されないしなー」
「どーせ家帰ってもあいつが守るから同じだろ」
「まあね。だからちょっと退屈」
「どっちだよ」
「どっちも。殺されるギリギリラインで相手を殺す時が一番生きている実感がするわね」
「あーそうですかっ」
「もこたんは違うの?」
「いつでも殺したいね」
「へー、今も」
「当たり前だろ。何?殺されたいの?お前は」
「嫌よ。そんなことが目的じゃ無いもの」
「私今すっごい殺したいんだけど。ここに血の痕さえ残さなきゃ」
「血を流さなきゃ殺せないの?何回私を殺しているのよ」
「うっせーな!派手に殺したほうが殺した気になるんだよ!」
「そうかしら。私的に死体は綺麗なほうがいいんだけど」
「お前の趣味なんぞ聞いてないわ、帰れ」
「やだー」
「帰れ」
「やだー」
「かーえーれ!!」
「ねー妹紅、なんかこの店寒くない?」
「屋台だから仕方ないだろ!文句言うなら帰れ!」
「嫌よ」
「なんでっ!」
「もこたんとおしゃべりしたいもん」
「寒気がするわ!」
「いいじゃない今日ぐらい」
「絶対嫌」
「ねえそういやさ」
「・・・・・・」
「最近この店人が居ないよね」
「・・・・・・」
「どうしちゃったの?」
「・・・・・・」
「もこたーん」
「・・・・・・・」
「愛してる」
「うわああああやめろおおお!」
「やっと反応してくれた」
「うるせーよ!気持ち悪いこと言うんじゃねええ!」
「本当の事なのにー」
「やめろ!やめろよ鳥肌が立つ!!」
「でもそんな所も大好き」
「ぎゃああああああ」
「冗談よ。耳塞がないでよ」
「・・・・・・」
「冗談じゃないけど」
「否定しろ!頼むから!」
「だって反応がさー、くくくっ」
「笑うな!」
「で、最近人居ないけど、どうしたの?」
「・・・・・・」
「まあ元々居なかったけれど」
「うっさいな」
「本当に誰も見ないのよね」
「・・・・・・」
「飽きられたのかしらね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「妖怪なら」
「は?」
「妖怪なら来るよ」
「そうなの」
「・・・・・」
「それにしたって昔よりも大分少なくなったんじゃない?」
「本当に何も知らないんだな、お前は」
「何が」
「ずっと家に篭りきって寝ていたんだろう」
「家事ぐらいはするわよ。失礼ね。現にコレ私が漬けたやつだし」
「え、嘘。これを?お前が?」
「その反応なんかムカつくわね」
「どーせ変な味なんだろ」
「食べもしないくせにそう言わないでくれる?」
「だってお前だし」
「一口食べてみなさいよ」
「いらね」
「はいあーん」
「・・・・・・」
「あーん」
「何のマネだよ」
「え?おままごと?」
「するかっ」
「いいじゃない、一口ぐらい。はいお口開けましょーね、もこちゃん」
「もこちゃんとか言うなああああ!」
「ちなみに今のは永琳のマネね」
「嘘っ」
「本当」
「・・・・・・」
「よく緊急手術で意識が無いときに言っているけど。あと歯の治療の時とか」
「うああああきめえ!きめえよ!」
「って訳であーん」
「するかっ」
「私をえーりんだと思って」
「思えるかあ!余計嫌だわ!」
「じゃあ慧音」
「ぶっ殺すぞ本気で」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「冗談よ」
「うん」
「でもこれは置いていくから。なんならあのハクタクにでもあげて」
「渡せるか。お前のものなんて」
「じゃあ今度里経由で渡してもらうわ。永琳に」
「うわ慧音、逃げて逃げて!歩く爆弾が」
「しっつれいね!おいしいんだから本当に!」
「アイスクリームに醤油をかけるような奴だぞ!」
「うるさいわね!しょっぱいものが食べたかったのよその時!あと冷たいもの!」
「せめてカキ氷にしとけよ」
「嫌よカキ氷の方が安っぽいじゃない水っぽくて!」
「出たよ姫様。うっぜー」
「あんたの方が姫でしょう」
「何年前の話だよ」
「何年前だっけ」
「忘れたのかよ」
「忘れるわねえ」
「私は一日たりとも忘れたことはないけどな」
「そうなの?」
「すごい腹立つなその反応」
「すぐに忘れちゃうのよ」
「痴呆症かよ。これだから万年寝太郎は」
「寝てないわよそんなに。スキマじゃあるまいし」
「同じようなもんだろ。働かない辺り」
「働いてるわよ。ほらこの」
「爆弾作ったりとか」
「そうそ・・・・・爆弾じゃないわよ!」
「いかにも爆弾だろう。輝夜が作った物なんて」
「失礼な奴ねさっきから!明日は5回殺してやるわ!」
「そういや明日だっけ。満月」
「忘れたの?これだから老人は」
「お前に言われたくねえ。つーかパクリかよ」
「パクリよ。悪い?」
「しれっと流しやがってコイツ。絶対お前の方が年寄りだと思うんだけど。すぐ昔のこと忘れるし」
「過去は振り返らない女って言ってよ」
「綺麗にまとめんな」
「あんたは過去に拘りすぎよ」
「うっせーな」
「わかるけどね」
「わかられたくないわ。お前なんかに」
「でも5年前のリンゴの件はばっちり」
「あああああ言うんじゃねえ!」
「くくくっかわいい」
「うるせーバカ!」
「来週もここ来ていい?」
「来るんじゃねえよ二度と!」
「じゃあ来ちゃおっかなー」
「門前払いにしてやるわ!」
「そんなこと言って、本当は私に会うのが楽しみ」
「なわけあるか!とっとと消えろ!」
「嫌よまだ10時じゃない」
「嘘つけ」
「嘘じゃないもん」
「適当に言っただろ今」
「いいから早く梅酒頂戴よ」
「だからお前に出す酒なんてないって言ってるだろ!」
「仕方ないなあ。じゃあ自前ので」
「・・・・・・」
「いる?」
「いらん」
「欲しいんでしょ本当は」
「いらないったらいらない」
「もこたんってツンデレだよね」
「んな訳ねーだろ!死ね!」
「死なないけどね」
「死なないけど死ね!」
「さっきから会話がループしているわよ」
「相手がお前だからだよ!」
「私のことそんなに嫌い?」
「だいっきらい」
「でもそれは実はだいすきだという心の裏側を」
「んなわけねーだろおおおおお!!!」
「もこたん、さっきから忙しそうね」
「誰のせいだ!誰の!」
「声がちょっと枯れてるわね。永琳に診てもらったら?」
「絶対嫌」
「はーい、もこちゃんお口開けましょーねえ」
「本気でそれ言ってんの!?」
「うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なんなら明日、うちに来て」
「遠慮しておきます」
「それともこっちが行こうか?」
「遠慮させていただきます」
「それとも来週永琳連れて」
「来週には治っています」
「けちねえ」
「けちとかそういう問題じゃねえよ。何なんだよあの薬師!」
「でも永琳はいっつも私の味方だよ」
「どうでもいいわ!」
「でさ、妹紅」
「なんだよ」
「来週もまた来るからね」
「来るんじゃねーよ」
「今度は刺身とか持って」
「来るんじゃねーよ」
「多分一人だけど」
「来るんじゃねーよ」
「明日は5回殺してあげる」
「来るんじゃねーよ」
「あら、明日行かなくていいの?」
「・・・・・・」
「ぷっ可愛い」
「だああああああ!!!!!殺してえ!!今すぐ殺してえええ!!!」
「やっぱりツンデレじゃん」
「違げーよバカ!」
「かーわーいーいー」
「きーもーいー」
「あら、ノリいいのね」
「たまたま!偶然!それと言葉の意味を考えろ!」
「でもそれは全て愛情の裏返しであった」
「変なナレーションつけんな!」
「って訳で来週もここに来るから」
「来るな!」
「来るなって言われても来るから。ちゃんと運営していてよね」
「当たり前だろバーカ。年中無休だよ。ただし、てめーが来る日と満月の日以外はな」
「それ年中無休じゃないじゃん」
「うっせーな。だいたいやってるってことだよ!」
「ハイハイ」
「なんかむかつくわ!もー帰れ!顔も見たくない!」
「くくくっかわいいわあ」
「ああああ聞こえない!!聞こえないったら聞こえない!!」
「大好き」
「うわああああああ耳が腐るうううううう!!」
「失礼ねえ本当」
「てめーが悪い」
エアリード的な意味でw
萌え死んでコメントできませんでした。ごちそうさま。
けれど深く考えると辛い…
もこたんのいじられっぷりがなんともいい味出してます。
慧音「妬ましい…」