※ネタがわからないと意味の通じないかもしれないところがあります
暇をもてあましたレミリアが親友であるパチュリーに相手してもらおうと図書館に足を向けることはよく見られる光景だ。
今日もまたレミリアは、常人ならば眠ろうかと考える時間帯に図書館へと向かう。
迷惑? なにそれおいしいの? これを地で行くレミリアの足取りは軽い。
迷惑をかけられる側のパチュリーも本を読んでの夜更かしはよくあることなので、時間帯に関しては迷惑などと思うことは少ない。さすがに深夜の三時あたりだと辛いものがあったりするが。
レミリアの後ろにはいつ休んでいるのかわからない咲夜も付き従う。
図書館ではパチュリーが魔法の明かりのしたで当然の如く本を読んでいる。小悪魔は休憩中なのか姿が見当たらない。
大抵は静かな図書館に話し声が響く。話しているのはレミリアがほとんどで、パチュリーは本を読みながら返事をしている。本を読みながらレミリアの話が理解できているのか怪しいが、できていた。これは的確な返事をしていることからよくわかる。
咲夜も返答を求められると話すことはするが、基本静かに立っていた。
「人生観を変える言葉や本があるっていうじゃない?
運命を操る私が言うのもちょっとおかしなことかもしれないけど。
パチェはそんな本に出会ったことある?」
「さあ? たくさん本を読んできたから覚えていないわ。
読んだ本すべて私になんらかの影響を及ぼしているだろうから、今まで読んだ本すべてがそういう本なのかもね」
「そういうのではなく特別な一冊っていうのが知りたかったのだけど。
咲夜はどう?」
「あります。
今の私となるきっかけの一冊が」
「どんな本なのかしら?」
主に問われて答えない咲夜ではない。少し思い出す仕草をして口を開く。
パチュリーも興味があるのか、本から視線を外して咲夜を見ている。
今から何年前のことだろうか、当時咲夜はまだ普通のメイドだった。
変わってることといえば、里で働いておらず紅魔館という人外の屋敷で働いていたことくらいだ。あとは吸血鬼な主を怖がらず敬愛しているということか。
普通のメイドだから妖怪顔負けの戦闘力を持っていないし、異能もなかった。本当にごく普通の働き者のメイドだった。
そんな普通のメイドがなぜ紅魔館にいるかは、また別の話になるので語るのは止めておく。
妖精メイドに混ざって仕事に励んでいたある日のことだ。
先輩に図書館の掃除を命じられた。
脚立を使い埃を棚上から落として、箒で集める。体の弱いパチュリーが咳き込まないように、小悪魔に頼み埃避けの結界を張ってもらっていたので、そこは気にせず掃除ができた。
ぱたぱたと埃をはたくこと二時間。腕が疲れてきた咲夜は休憩することに。
椅子に座り休憩していると、目の前の何冊も積まれた本が目に入る。
少し前に小悪魔が香霖堂から入手してきた本だ。ただで拾ったものに値段をつけて売っているのであこぎな商売だ。
その一番上に置かれていた文庫本を手にとり、ぱらぱらと流し見る。
そしてふと一文が目に止まった。
それは奇跡の言葉。
困難なはずのことを、己の信念のみでなしとげた素晴らしい姿。
職種はわずかに違うが、主に仕えるという点では同じ。
実在などしない、ただの小説の中の出来事だということも忘れて、咲夜はその言葉を受け入れ、心に刻み、言葉を放った人物を師匠と敬った。
咲夜は動く。疲れがなんだっ主のためならば己の疲れなど吹き飛ばせて見せようっ。
そう考え椅子から立つ。そして図書館を見渡す。広かったとても広かった。
このまま急いで掃除しても時間がかかる。
そうするとレミリアの世話ができるかもしれない時間がなくなる。
どうすればいいか!? 時間が流れるのがいけないのだ! ならば止めてしまえばいい。
こんな普通では考えないことを連想し、そして時間を止めることを覚えた。
こうなると咲夜は止まらない。
レミリアに美味しいものを! 料理の腕を上げ、レパートリーを急激に増やした。
レミリアにもっと近づく! メイドとしての腕を上げ、メイド長に上り詰めた。
レミリアを守る! ナイフの扱いを覚え、戦闘技能を取得した。
レミリアともっと一緒に行動する! 空を飛ぶことを覚えた。
レミリアに快適に過ごしてほしい! メイド教育に力をいれ、自身もさらに精進した。
主のためならできないことはないと日々、咲夜は自己改革を起こしていった。
こうして今の咲夜が出来上がっていったのだ。
「あのとき出会った一冊、あの言葉。
あれがあったからこそ今の私があるのです」
胸をはり誇るように言った。
「どんな言葉なのかしら? あなたをそこまで作り上げた言葉というのは」
「はい。
『主のためなら、魔術くらい使えんでか!」
というものでございます。
本のタイトルは『魔術師オーフェン無謀編お前はいったいなんなんだ!?』
師匠の名はキース・ロイヤルです」
感心するレミリアと違い、パチュリーの反応は呆れ。
それはそうだろう。その本を読んで、キースというキャラクターの破天荒さを知っているのだから。
心のどこかで納得もしていた。時折見せるとっぴな行動や言動はそこから来ていたのねと。
いずれ謎の巨大生物を連れてきたり、摩訶不思議な過去ができたりしないことを祈ってパチュリーは読書に戻る。
被害を受けるとしたらレミィで、それはそれで暇つぶしになるだろうからいいかもしれないわね、と考えつつ。
暇をもてあましたレミリアが親友であるパチュリーに相手してもらおうと図書館に足を向けることはよく見られる光景だ。
今日もまたレミリアは、常人ならば眠ろうかと考える時間帯に図書館へと向かう。
迷惑? なにそれおいしいの? これを地で行くレミリアの足取りは軽い。
迷惑をかけられる側のパチュリーも本を読んでの夜更かしはよくあることなので、時間帯に関しては迷惑などと思うことは少ない。さすがに深夜の三時あたりだと辛いものがあったりするが。
レミリアの後ろにはいつ休んでいるのかわからない咲夜も付き従う。
図書館ではパチュリーが魔法の明かりのしたで当然の如く本を読んでいる。小悪魔は休憩中なのか姿が見当たらない。
大抵は静かな図書館に話し声が響く。話しているのはレミリアがほとんどで、パチュリーは本を読みながら返事をしている。本を読みながらレミリアの話が理解できているのか怪しいが、できていた。これは的確な返事をしていることからよくわかる。
咲夜も返答を求められると話すことはするが、基本静かに立っていた。
「人生観を変える言葉や本があるっていうじゃない?
運命を操る私が言うのもちょっとおかしなことかもしれないけど。
パチェはそんな本に出会ったことある?」
「さあ? たくさん本を読んできたから覚えていないわ。
読んだ本すべて私になんらかの影響を及ぼしているだろうから、今まで読んだ本すべてがそういう本なのかもね」
「そういうのではなく特別な一冊っていうのが知りたかったのだけど。
咲夜はどう?」
「あります。
今の私となるきっかけの一冊が」
「どんな本なのかしら?」
主に問われて答えない咲夜ではない。少し思い出す仕草をして口を開く。
パチュリーも興味があるのか、本から視線を外して咲夜を見ている。
今から何年前のことだろうか、当時咲夜はまだ普通のメイドだった。
変わってることといえば、里で働いておらず紅魔館という人外の屋敷で働いていたことくらいだ。あとは吸血鬼な主を怖がらず敬愛しているということか。
普通のメイドだから妖怪顔負けの戦闘力を持っていないし、異能もなかった。本当にごく普通の働き者のメイドだった。
そんな普通のメイドがなぜ紅魔館にいるかは、また別の話になるので語るのは止めておく。
妖精メイドに混ざって仕事に励んでいたある日のことだ。
先輩に図書館の掃除を命じられた。
脚立を使い埃を棚上から落として、箒で集める。体の弱いパチュリーが咳き込まないように、小悪魔に頼み埃避けの結界を張ってもらっていたので、そこは気にせず掃除ができた。
ぱたぱたと埃をはたくこと二時間。腕が疲れてきた咲夜は休憩することに。
椅子に座り休憩していると、目の前の何冊も積まれた本が目に入る。
少し前に小悪魔が香霖堂から入手してきた本だ。ただで拾ったものに値段をつけて売っているのであこぎな商売だ。
その一番上に置かれていた文庫本を手にとり、ぱらぱらと流し見る。
そしてふと一文が目に止まった。
それは奇跡の言葉。
困難なはずのことを、己の信念のみでなしとげた素晴らしい姿。
職種はわずかに違うが、主に仕えるという点では同じ。
実在などしない、ただの小説の中の出来事だということも忘れて、咲夜はその言葉を受け入れ、心に刻み、言葉を放った人物を師匠と敬った。
咲夜は動く。疲れがなんだっ主のためならば己の疲れなど吹き飛ばせて見せようっ。
そう考え椅子から立つ。そして図書館を見渡す。広かったとても広かった。
このまま急いで掃除しても時間がかかる。
そうするとレミリアの世話ができるかもしれない時間がなくなる。
どうすればいいか!? 時間が流れるのがいけないのだ! ならば止めてしまえばいい。
こんな普通では考えないことを連想し、そして時間を止めることを覚えた。
こうなると咲夜は止まらない。
レミリアに美味しいものを! 料理の腕を上げ、レパートリーを急激に増やした。
レミリアにもっと近づく! メイドとしての腕を上げ、メイド長に上り詰めた。
レミリアを守る! ナイフの扱いを覚え、戦闘技能を取得した。
レミリアともっと一緒に行動する! 空を飛ぶことを覚えた。
レミリアに快適に過ごしてほしい! メイド教育に力をいれ、自身もさらに精進した。
主のためならできないことはないと日々、咲夜は自己改革を起こしていった。
こうして今の咲夜が出来上がっていったのだ。
「あのとき出会った一冊、あの言葉。
あれがあったからこそ今の私があるのです」
胸をはり誇るように言った。
「どんな言葉なのかしら? あなたをそこまで作り上げた言葉というのは」
「はい。
『主のためなら、魔術くらい使えんでか!」
というものでございます。
本のタイトルは『魔術師オーフェン無謀編お前はいったいなんなんだ!?』
師匠の名はキース・ロイヤルです」
感心するレミリアと違い、パチュリーの反応は呆れ。
それはそうだろう。その本を読んで、キースというキャラクターの破天荒さを知っているのだから。
心のどこかで納得もしていた。時折見せるとっぴな行動や言動はそこから来ていたのねと。
いずれ謎の巨大生物を連れてきたり、摩訶不思議な過去ができたりしないことを祈ってパチュリーは読書に戻る。
被害を受けるとしたらレミィで、それはそれで暇つぶしになるだろうからいいかもしれないわね、と考えつつ。
確かにキースは従者としては万能すぎる程万能だ
でも、奴ほど変態紳士という言葉が似合う者はいないと思うよ