Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

落とし物

2008/12/01 23:15:25
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「どうして私が……ッ!」

落とし物のドロワーズを地上に持って行くことになった。
起承転結など無い。事態はまさに一瞬だった。
地上から冷たいドロワーズが降ってきた。
そう、ただそれだけだ。

妙ではあるし、地上から、というのがここの妖怪達には気になるのも理解できる。
だが何故私なんだ。
私は全然地上になんか興味はない。

忌々しいドロワーズを摘んで溜息を吐く。
これを拾ってしまった瞬間から運命は決まっていたのだろう。
鬼も地霊殿の主もこぞって私に行けと言う。
しかもニヤニヤ笑いながら、だ。

外に出たいよね、出たいよな。
そんな事を言うのだ。
地底の妖怪は良い奴が多いと思っていた私が間違いだった。
きっと私の荒んだ心を見て嘲笑っているのだ。
違いない。そうに違いない。

外に出てどうなる。決まってる、退治されるだけだ。
誰の物とも分からないドロワーズなんぞ放っておけばいいのだ。
下着だぞ、下着。正気の沙汰とは思えない。

ふざけろという。
土蜘蛛と釣瓶落としが慰めてくれたのがせめてもの救いか。
あいつらは本当に良い奴だ。
そんな事を思いながらぶらぶらと地上を歩く。

眩しいことこの上ない。
久方ぶりの陽光だが嬉しくも何ともなかった。
馬鹿馬鹿しい。
外に出たくらいで何が楽しいんだ。

そう思って周りを見渡すと、遠巻きに色々な妖怪達が私を見ているのが分かった。
しかも皆私を指さし、こそこそと何かを言っている。
仕方のない話だ。ドロワーズ片手に地下から妖怪が沸いて出たとなれば妖しいどころの話ではない。
きっと狂ったと思われるに違いない。

ほらやっぱり地底の妖怪達は自分たちとは違うのだと、そう話しているに違いない。
ニヤニヤと好奇心も隠さないその態度が腹立たしくて腹立たしくて仕方がない。
挙げ句の果てに妖怪の一人がこっちに飛んできた。そいつはペンと手帖を片手に私に尋ねる。

「あなた、地底の妖怪……確か水橋パルスィですよね!」

形式的と分かる敬語の裏に隠れる蔑みが腹立たしい。

「それがどうかしたの?」

こっちが必死に苛立ちと気恥ずかしさを隠しているのにこの妖怪はそれが面白くてたまらないという風に話を続ける。

「あなたが外に出てくるなんて驚天動地だったものですから。 
何か理由でも……」

そう言って、ちらりと右手に握ったドロワーズに視線を送られる。
明らかに私が穿くには小さすぎる子供用のそれを見て、妖怪(思い出した。こいつは天狗だ)は小さく笑った。

「人里に買い物ですか? もしかして、ドロワーズを買い物袋と間違えて……さすがは地底の妖怪ですねえ。
考え方が少しばかり私たちとはズレているようです」

「ち、違っ……!」

誤解を解こうと手を伸ばしたのだが、

「良いネタが入ったわ! 早速記事に起こさないと……!」

その妖怪は目にも留まらぬ速度で視界から消えていった。
残されたのはひそひそと話し合う妖怪達と、ドロワーズを握りしめて呆然と立ちつくす私だけだ。
そんなに可笑しいか。笑いたければ笑えばいい。

もう知ったことか。こうなれば自棄だ。
片っ端からそれっぽい奴を見つけて声をかけていってやる。
そしてさっさとこんな冷酷な地上とはおさらばだ。
ジメジメとした地底が私には性に合っている。

だが……、とそこでふと思い返す。

何故今日に限って地底の妖怪達は冷たかったのだろう。
外になど出たがる訳がないこの私をわざと外に行くようにし向けたのだ。
もともとああいう連中だったのだろうか。
それとも地上の空気が地底の妖怪を狂わせたのだろうか。
分からない。分かりたくもない。
ただ一つ分かるのは未だ私は正常で、しかし端から見れば明らかに異常だということだけだ。
こんな事ではいつまでたっても地底には帰れないではないか。

はぁあ、と息を吐いた。
ふわふわと白い息が塊になって上り、そして消える。
綺麗だと思った。
だがそれだけだ。
地上は寒すぎる。
体にも、心にも、これは毒だ。

指先は最早冷たさではなく痛みを感じ始めていた。
本当に、凍えてどうにかなってしまいそうだ。
まったく、だいたいどうかしてるんだ。
ドロワーズを地上に持って行け、などと。
その時点で変ではないか。
おかしいじゃないか。

あの時それを本気にした私が馬鹿馬鹿しくて仕方ない。
いつもの精神状況だったら鼻で笑ったことだろう。
だとしたら、私はあの時いつも通りの私ではなかったということだろうか。

……本当は地上に出たくて、その口実が欲しかっただけ。

失笑が漏れる。
あるいは、その通りだったのかも知れない。
まだ地上に対する未練があったのかも知れない。
だが、それもこれで霧散した。
地上なんて面白くも何ともない。

地底に潜って他者を妬む生活の方がまだマシだ。
もうこんな汚らしい下着など捨ててしまおう。
地上との決別がドロワーズだなんて、こんな滑稽があるだろうか。
まあ、私が馬鹿だったというだけだ。
むしゃくしゃとしたまとまらない思考のままに、右手を振り上げて

「どうしたんですか?」

静かで落ち着いた声を聞いて振り返った。
そこには、心配そうに眉をハの字にして私を見上げている妖精が居た。
髪は緑で、少し昆虫めいた羽をしている大人しそうな子だ。
私はドロワーズを握りしめたまま、あっけにとられてその子を見つめる。

「あ、いや……」

妖精ごときに呆然とさせられる自分に嫌気がさす。
こいつも私を笑いにきたに違いないのだ。
だけど、妖精は表情を少し柔らかいものに変えてから言った。

「地底の妖怪さんなんですよね。さっきの聞いてました」

「そう」

ねちっこい子だ。そういう風に遠回しに馬鹿にされるのが一番腹が立つ。
妖精はまた口を開いた。

「ここには何の用事でいらっしゃったんですか?
冬だし、今日は特に冷え込むのに……」

正直に答えるのも馬鹿馬鹿しいが、
かといってもっともな理由を他にでっち上げるほど私は機転がきかない。
信じて貰える筈はないと思いながらも説明してみる。

「地下にこのドロワーズが降ってきたから落とし主を捜してこいと言われて来たんだ。
まあ、いろいろと間違いだったよ。
地上は最低だったし、私の評判はがた落ちだし、
第一よく考えたら、
落とし主だってドロワーズを届けてもらいたい、なんて思っているはずがない。
恥ずかしいじゃないか。無視して貰った方がよっぽどマシだ」

くすり、と妖精は笑った。

「お節介な人なんですね」

盛大に溜息を吐いて頷いた。

「本当に。
まったく……地底に居る間に気遣いの方法、優しさの使い方も忘れてしまったらしいよ」

まだまだ日は高い。いや、それどころかこれからどんどん明るくなってくるのだろう。
今は明け方である。忌々しいことだ。妖精は一歩踏み出した。

「でも……優しくない人よりはちょっとお節介な人の方が好感持てると思います。
人里にもあなたによく似た人が居るんですよ。
本当にきまじめな人で……寺子屋を開いてるんだそうです」

妖精の言葉は穏やかだったけれど、その伝聞調の語り口に違和感を覚えて聞き返した。

「会ったことは?」

いいえ、と妖精は首を横に振った。

「あんまり湖の側から離れられなくて。
実は人里に行った事はないんです。
今のは友達に聞いた話です」

かつんっ、と石を蹴飛ばす。

「へえ。難儀な話ね、それも」

こくりと妖精は頷いた。

「色んな所を旅してみたいなあって思うんですけどなかなか難しくて。
妖精は普通ならそんな事は考えないらしいんですけど」

変ですか、と聞いてくるので、いいや、と首を振った。

「良いと思うわ。
妖精っていえば馬鹿のイメージしか無かったけど、あんたのおかげで少し変わったよ」

ありがとうございます。でもそんなに賢くないですけど、と妖精は少し頬を赤くして、頭を下げた。
本当に礼儀正しい子だ。
会話も一段落ついたので、私は軽く手を挙げて挨拶する。

「じゃ、そろそろ地上に帰るわ。こういうガヤガヤした世界はあんまり性に合わない。
まあ地底も地底でやかましいけどね」

少女もそれに返答しようとしたのだが、ちょっと待って下さい、と慌てて私を引き留めた。

「どうしたの?」

首を傾げると、凄く真剣な表情で妖精は言った。

「あの、そのドロワーズですけど……」

私は、はてなと首を傾げる。
妖精は難しい顔をしてうんうんと唸る。

「どこかで、見たことがあるような気がするんです。その、よく思い出せないんですけど」

どこかでって、と苦笑する。

「他人のドロワーズなんて見たことあるの?」

妖精は恥ずかしそうに頬を掻いた。

「その……私たちって泳ぎたいときとか、結構簡単に服脱いじゃいますから」

「あんたも?」

「いえ、私はちょっとそういうのは……」

ふうん、と息を吐いてドロワーズを見やる。そういえば確かに随分とサイズが小さい。
子供用だろうかと思っていたが、妖精用という可能性もなきにしもあらずだ。
私は苦笑する。

「もし本当に妖精だったら、自分の下着が無くなったくらいでも大騒ぎだろうねえ」

はい、と少女は頷いた。

「ですから、もし良ければ私が持って行きますけど」

少し考えてみる。
まあここでこの子に渡せば万事うまくいくだろう。
何の問題もありはしない。
私は地底に帰るだけ、だ。

しかしである。
相手は妖精だ。
自分の下着を他の妖精が持っているのに気がついたら、何と思うだろう。
盗まれた、と。
そう考えるに違いない。
なら、

「いや。折角だから仕事くらい完遂するよ」

私が恨まれ役になった方が良いだろう。
妖精は嬉しそうに微笑んだ。

「はいっ。絶対に喜んで貰えると思います!」

うん、と頷いて答える。

「そうだといいねえ」

本当に、そうだと良いんだけどねえ。
ますます気が重くなりながら、深々と溜息を吐いた。


















「済みませーんっ! このドロワーズ落とした人居ませんかーっ!」

この妖精は妖精でもただの妖精ではなく大妖精というちょっとばかし力のある妖精だったらしく、
自分勝手な他の妖精達も少しは耳を傾けてくれるようだった。
私も、

「おーい……その、なんだ」

と呼びかけはするのだが、あんなに大きな声はとてもじゃないが恥ずかしくて出せない。
おまけにドロワーズ、だ。
絶対無理だ。

大妖精に手伝って貰って本当に助かった。
一人一人確かめていき、その皆が自分のではないと口を揃えてそう言った。
自分の下着を見せびらかして、ほら、ちがうでしょ、などと言う奴まで居て、辟易する限りだ。
それでも大妖精は諦めていないようだった。

「済みませーんっ! 済みませんーっ!!」

必死で声を掛け続けている。
どこかに絶対に困ってる子がいるんだ。
そう確信している様子だった。
その誰かを見つけるまで、もうこの子は止まりそうにない。
湖の全ての妖精に聞き終えるまで、作業を続けるつもりなのだろう。
正直はじめは乗り気ではなかったのだが、今ではなんとなく持ち主が見つかるといいな、くらいには思う事が出来る。
これだけ大妖精が頑張っているのだ、報われてもいいじゃないか。
他の妖精達も一時遊ぶのを中断して皆で声を掛け合ってくれた。

「本当に……ドロワーズが無くなっただけでまるで大異変が起きたみたいな大騒ぎね」

大妖精も苦笑して頷いた。

「こういうお祭り騒ぎ、みんな大好きですから」

それが不快な事とは思えなかった。
地上に来てはじめて微笑ましい気分になった。


「ドロワーズがなくなったんだって!」
「拾ってきてくれたんだって!」
「誰が誰が!?」
「地底の妖怪のおねーさん!」
「すごい、すごい!」


きゃいきゃいと黄色い声を上げている彼女達を見ていると思わず心が和んだ。
しかし、と気を引き締める。こうなれば絶対に持ち主を見つけたくなってきた。
せめてこの湖に持ち主が居るのかどうかを確かめるまで、私は帰れない。

この湖の妖精達と変な連帯感が生まれてしまったのだ。
まるで私をリーダーにして妖精達が動いているような気分だ。
異変の際には妖精がとても活発になると言うが、
それならこの異変の主は私ということで良いのだろうか。

ドロワーズ異変。

……それは少し勘弁願いたい。

そんなこんなで騒ぎ続けること数時間。
みなげっそりと疲れ果てるものの持ち主は一向に見つからない。
そして、皆もう動かない。
だけれどやる気だけは何故か失ってはいないようだった。

「あと一人、居るんです」

大妖精は何かに賭けるようにそう言った。

「あと一人、この霧の湖には妖精が居るんです」

ではその妖精が持ち主では無いとすれば。
私がそう言うと、大妖精は小さく頷いた。

「確かに、その妖精が持ち主じゃなかったら、私の勘違いです。その時は……」

言葉を一旦切ってから、何かを決断したような表情で口を開こうとしたその時だった。
ただでさえ寒いこの空気を完全に凍り付かせるような冷気を伴って、

「あれ? 大ちゃん、これ何の騒ぎ?」

そいつは現れた。
薄い水色の髪の毛に、大きなリボン。清涼感漂う氷のような羽を持つその少女は勝ち気な顔を少し不思議そうに傾げて皆の前に降り立った。
もうこの時点で私は気がついていた。
ここの妖精達は、自分のドロワーズを持っている奴が居ても、攻撃的になったりなんかしないと。
だからここは大妖精に場を譲ろうと思ったのだが、彼女は小さく頭を下げて一歩下がった。

「チルノちゃん、それはこの地底から来た妖怪さんに聞いて」

むっ、と奇特なポーズを取ってチルノと呼ばれた妖精(妖精に名前なんてあっただろうか。さてはて)はこちらを指さす。

「何者さあんた!」

チルノちゃんっ、と戒めようとする大妖精をどうどうと制してとりあえず名乗っておく。

「水橋パルスィ。地底から来た妖怪よ。あんたは?」

尋ねられたら答える、その当然の礼儀はわきまえているようで、

「あたいはチルノ。氷の妖精さ」

ハキハキとしっかりした調子でそう答えた。
自己紹介が済んだところで、会話が止まってしまった。
気まずい沈黙が流れ、私は、うーん、と唸りながら頭を掻いた。
なんというか、やっぱり尋ねづらいものだ。

後ろから、ほら、頑張って下さい、と小さく大妖精達の応援の声が聞こえる。
ここは尋ねなければならないなのだろう。
でないと、妖怪に馬鹿にされ、苦しい思いをして、そしてここで妖精達と頑張ってきたことが全て水の泡だ。
大妖精の厚意も無駄にしたくはない。なので私は、右手に持ったそれを思い切り突き出した。

「こ、これ……もしかしてあんたのじゃないかと思って」

妖精風情に下手に出る自分もどうかと思うのだが、質問内容が質問内容である。
どうしても調子が狂ってしまうのだ。
相手の顔をまともに見ることが出来ない。

チルノはドロワーズを受け取って、その正面を見、後ろを見、そして肌触りを確かめた。
ごくり、と誰かが息を呑むのを感じる。
あるいは、それは私だったのかも知れない。
とても長く感じる一瞬の後、チルノはぽつりと口を開いた。

「これ……」

とても静かな声だった。
やっぱり駄目なのか。
私もそう思った。
大妖精は申し訳なさそうにしゅんと俯いた。
だが――。


「これ、あたいのだーっ!!!」


チルノの声に、私たちは皆はっとして顔を上げる。

「やった、凄いっ、あんたどうやって見つけたの!?」

ぶんぶんと右手を握られ振り回される。
チルノはとても喜んでいるようだった。
ぼーっとしたまま、もう一度尋ねる。

「こ、これ……あんたの?」

うんっ、とチルノは大きく頷いた。

「そうそう、気に入ってたんだけど、無くなっててさ!
温泉に行こうって思って服脱いで、そもそもあたい寒い方が好きなのに気がついた時には遅し!
北風に乗ってひゅーっと飛んでいったというわけさ!」

腰に手を当てて自慢げに言うチルノの声を聞いて、じわじわと達成感のようなものがわいてきた。
大妖精を見やると、本当に安心したように大きく息を吐いていた。

「チルノちゃん。この人が地底から拾って持ってきてくれたんだけど、
その間色んな妖怪の人達にバカにされるのにもめげずにずっと持ち主を捜してくれたんだよ?」

「あ、いや……その」

言い過ぎだ、と言おうとしたのだが、黙っててください、と目で語られては口を閉じるしかない。
チルノは大妖精の誇張した話を聞いて、本当に感心したような表情だった。

「あんたってすっごい優しいんだね!
あたいだったらそこまで出来ないだろうけどなあ……」

確かに普通の神経を持っている妖精妖怪人間には出来まい、ドロワーズ片手に幻想郷行脚など。
私だってそんな奴を見たら笑う。
だが、大妖精の巧みな話術によりそれは私の一大苦労譚のような形になっていた。
あながち間違いではないとはいえ、なんだか照れくさい。
チルノは、冷たい両手でぎゅっと私の右手を握りしめると、ぺこりと一回頭を下げた。
そして、

「ありがと」

とだけ言うと、こっちも照れたように鼻の頭を掻いた。

「やい、あたいがありがとうなんて言うのは本当にありがとうって思った時だけだから、
あんたもうれしく思いなよっ!」

それは照れ隠しの言葉だったのだろう。
だが、ほわほわと何だか分からない間に心があったかくなっていた私は

「うん。まあ、あんたのお礼はありがたく受け取っておこうかな」

と素直に頷いてしまっていた。
何年ぶりだろう、他人から礼を言われたのなんて。
少なくとも、こんなに達成感のあるものではなかったことを覚えている。

辺りを見渡すと、まるで強敵を倒した英雄ご一行のように、
ひゃっほう、と跳んだり跳ねたりと妖精達が大騒ぎしていた。
見れば、日は暮れかかっている。
結局このドロワーズ騒ぎに一日を潰されてしまったわけだ。
大妖精はぺこり、ともう見慣れてしまった綺麗な形のお辞儀を見せた。

「あの……パルスィさん、今日は本当にありがとうございました」

うんうん、格好良かったー、と周りの妖精達から声がかかって思わず頬が熱くなるのを感じる。

「落とし物拾っただけだし、そんな大した事はしてないわよ。第一物が物だし……」

照れ隠しに両手をぱたぱた振るけれど、この焦りはどうしようもない。
チルノはそんな私に向かって、ぐっ、と親指を突き立てた。

「今度あんたが遊びに来た時は、氷であんたそっくりのお人形を作ってあげるよ!」

その言葉を、私は小さく噛み締めた。

「今度、か……」

地上など二度と来るものか、と思っていたのが嘘のようだ。
たまには考えを変える事だって悪くはないものだ。
そろそろ帰る時である。
くるりと後ろを向いて、軽く私は手を挙げた。

「うん、それじゃあまた今度遊びに来ようかしらね」

その時はよろしく、とそう言って歩き始めと、背にした妖精達から歓声が上がった。
悪くないな。
うん、こういうのも、悪くない。
ドロワーズが結んだ縁なんてのがちょっと頂けないけれど、
そんなのも、たまには良いさ。

「今度は……その人里にいるっていうそっくりさんに会うのも、悪くないかもね」

ふふ、と小さく笑みを零して、私はまた地の底へと潜っていった。











所変わって地霊殿。彼女とチルノが出会ったのとちょうど同じ頃、
誰ともあまり親しげに接そうとしなかったパルスィの頑なな心が少し解けたのを知って、
皆がいやっほぅと歓声を上げたのは、また別のお話である……。
幻想郷のその下は、今日もほんのり暖かい。
ドロワーズ祭りが起こっているようなのでここは私も便乗しようと思い急遽新作を放り出して筆を執って三時間……。
まさに突貫作業(これはいつものことですが)。
しかし、見直しする事なんと三回、いつもの誤字脱字は皆無(だと信じたい)。
構成を練るのにこれほど苦労しなかった事も珍しいです。
楽しいお祭りに参加させて頂き、ありがとうございました。
ではまたどこかで……。
与吉
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いい話なのに主題はドロワーズwwwwww
2.名前が無い程度の能力削除
与吉さん貴方までwww
これはもはや祭りなどという言葉では片付けられない・・・
革命だ!ドロワーズの革命だ!!(←バカ
3.名前が無い程度の能力削除
いい話にじわりときそうなのにいちいちドロワーズが邪魔するwww
4.名前が無い程度の能力削除
途中でからかった新聞屋さんは、後で鬼から滅ッてされて、
記事は差し止めになってそうだ。
5.名前が無い程度の能力削除
↑>鬼から滅ッてされて

差し止めってレベルじゃない件www
6.名前が無い程度の能力削除
与吉さんがいたから見てみたら……
いい話なのにドロワのギャグ物wwwww
7.名前が無い程度の能力削除
与吉さんの作品はいいっすね!!
ドロワは隅に置いときましょう
誤字?
パルスィの、そろそろ地上に帰る→そろそろ地底に帰る、じゃないかと