「よう繊維、起きてるか?」
「なんだ繊維?急に改まって」
「ああ、俺たちはもうそろそろ誰かに買われていくと思うんだが」
「そうだな。そろそろ頃合だな」
「……はあ」
「おいおいどうした?繊維らしくもない」
「悪いな」
「……不安、なのか?」
「……」
「…そうだよな。うん、わかるよ」
「繊維…」
「長い間絡まりあってきたんだ。それくらいわかるさ」
「……すまん」
「謝るなよ。俺たちは一心同体、だろ?」
「……すまん」
「…ま、それでこそ繊維だよ」
「はは、そうだな」
「それで、何が不安なんだよ」
「実はな…」
「ああいや、待て。わかる」
「うん?」
「簡単さ。俺だってそこは不安だ」
「……」
「うん、ドロワとしてやっていく以上、可愛い子に履いてもらいたいってのは当然のことさ」
「その通りだ。さすが繊維、全てお見通しか」
「まあ、しかし…こんなこと悩んだところで、俺たちが誰に履かれるかなんて決まらないぞ」
「天命を待つ…か。そうなんだよな。……それが心配を増すんだよ」
「しっかりしろよ。そんなこと、考えるだけで損だ。もっと楽しくいこうぜ」
「そうは言ってもな」
「……お前、誰に履かれたい?」
「え?」
「今出来ることと言ったら、こうして夢を語って、お祈りすることくらいだ。さあ、楽しくいこうぜ!な!」
「繊維……ああ、そうだな。ありがとう」
「俺はあの子がいいな。魔法の森の魔法使いの…」
「霧雨魔理沙か?確かに可愛いが、俺は粗暴な子は苦手だね」
「違う違う。もう一人いるだろ?アリス・マーガトロイドさ」
「おお、あの子もまた可愛いな」
「クールぶってるけど世話焼きで、俺の好みだ」
「でもな、それだけじゃドロワとしてどうかとも思うけどな。世話焼きって言ったって、俺たちドロワには関係ないじゃないか」
「そこなんだよ繊維。彼女はなんと、生き物以外にも世話を焼いてくれるんだ」
「人形だろ?そんなの常識だ」
「スイーツ(笑)」
「なんだと」
「彼女、手先が器用で裁縫も趣味らしい」
「裁縫?それがどうし……はっ!まさか!?」
「そう……。彼女は穴の開いたドロワも丁寧にちくちくと縫うことがあるんだ」
「す、すげえ……!そんな大事に扱ってくれるなんて、それはドロワ冥利に尽きるな!」
「だろう?だから俺はアリスに履いてもらいたい」
「だが待てよ。じゃあ俺は、式神のあの子がいいな」
「八雲 藍か?お前もまたドロワのイメージがないのを選ぶんだなあ」
「違うって。その式の式、猫の橙だよ」
「なんと!……お、お前にそんな趣味があったとは驚きだ」
「待て待て、そんな目で見るなよ」
「しかし……なあ?」
「いいから聞けよ。お前もすぐに橙に履いてもらいたくなる」
「むぅ」
「いいか?橙…あの子は小さくて可愛い。それはわかるだろ?」
「ま、まあな」
「だろう?可愛いのに歳だとか外見だとかは関係ないのさ」
「………」
「…だがな、さっきも言った通り、俺たちはドロワだ。見た目が可愛いだけじゃあ履いてほしいって理由にゃならない」
「あ、ああ、それは違いない。俺もアリスの物を大事にするところに惹かれた」
「俺が橙に惹かれたのはな………いいか、落ち着いて聞けよ?」
「お、おう」
「アリスとは全くの逆、橙はドロワを汚すんだ」
「……!?お、お前…さらにそんな趣味まで……」
「落ち着いて聞けって。まあたしかにこれだけじゃあわからんだろうな。…さあ、深呼吸しろ」
「………はぁあ。お、オーケーだ」
「…橙には、おねしょ癖があるんだ」
「!!」
「調べによると平均して週三回、やっちまうらしい」
「どこ調べかはともかく、そ、そうか……わ、悪くはない……か?」
「慌てるなよ。まだ先がある」
「先?」
「ああ、その度に橙は藍に叱られて、自分で洗うように言われる」
「なん……っ!じゃあ、まさか!?」
「…そう!結局は風呂場で二人で、ドロワを手洗いしているのさ!!」
「な、なんだってー!!?」
「しかも、当然そのまま風呂にも入る!!」
「ぐっはぁああああああ!!!」
「ふふ…どうだ?おねしょ、手洗い、風呂のコンボだぜ」
「す、すまん……疑って悪かった。アリスも良いが、橙のお得感はもはや神懸かってるな……」
「はっは、あー橙のドロワになりてー」
「そうだ、あの巫女を忘れていた」
「巫女?馬鹿だな、博麗霊夢に俺たちを買う金はないぞ」
「そっちじゃなく、山の巫女の東風谷早苗さんだよ」
「ああ………いや待て、しかし早苗さんは外来人だろ?ドロワなんて履かないんじゃないのか」
「そう思うだろ?ところが、最近は幻想郷に慣れようと色々と試しているらしいぞ」
「その中にドロワがあると?」
「ああ」
「……しかしな。前の二人に比べるとどうも魅力不足じゃないか?何度も言うが、可愛いだけじゃ俺たちドロワの心は……」
「よくわかってるよ。だから、可愛いだけじゃないのさ」
「ほう?して、そのこころは?」
「……早苗さんはドロワの履き方をよく知らない筈だ。すると……どうなる?お前なら見えるだろう」
「………あ、み、見える!初めてのドロワに悪戦苦闘する早苗さんが見えるぞ!!」
「よしよし。……さあ履き終わったぞ。その後はどうだ?」
「おお……!『スースーします』と言いながら、恥ずかしそうに何度も股座を気にしている早苗さんが見える!!」
「そうだ。…それらを全てリセットして時を遡れ。履き方が全くわからない早苗さんは……」
「か、神様たちに履き方を教わっているだとおぉおおぐはぁあああ―――――!!!」
「上出来だ。どうだい、早苗さんも悪くないだろう」
「はあ…は、あ、ああ……悪くない…いや、実に良い」
「それは良かった」
「…しかし繊維よ。お前、なんだか冷めてないか?」
「わかるか?」
「ああ、なんと言うか……心ここにあらずって感じだ」
「……さっき思い出したんだが、あそこの神社には俺の先輩の繊維さんがいるんだ」
「へえ?初耳だ」
「ああ、で……先輩は、褌なんだ」
「褌………って、それってもしや!?」
「大きいほうの神様の、褌なんだ……」
「なんと…!」
「俺はあんまり好きな先輩じゃなかったからな。今思うと、やっぱ行きたくないな。色々言われそうで」
「何言ってんだ。その時は見返してやればいいじゃないか。『ああ、若い子って素晴らしいです先輩』ってな具合にさ」
「違う、そうじゃないんだ」
「何が?」
「……俺、綿の頃はずっと神奈子様の褌になりたかったんだ…」
「マジか……」
「それを先輩は知ってるからさ」
「……ま、まあ、褌になったらオッサンに履かれる可能性に毎日ガクガクと怯えて暮らさないといけなかったんだ。リスクを考えれば安いもんさ」
「……そうだな。圧倒的な確率でオッサンだもんな。先輩の運が相当なもんだったんだと諦めるよ」
「レミリア嬢のドロワならメイド長に頬ずりしてもらえるかもな」
「それならパチュリーので小悪魔の頬ずりだろ」
「三姉妹は時々履き間違えるって噂だぜ」
「妹紅はもんぺだから、空間独り占めだな」
「鬼は一度履いたら百年は同じものを使うらしいぞ」
「……夢は尽きないな」
「ああ、ドロワって素晴らしい」
「ドロワに生まれて、本当に良かったよ」
「ああ、来世でもドロワになりたいな」
「俺は褌になって微かな希望を追いかけてみたい」
「今だから言えるんだろ」
「……オッサンは死んでも嫌だしな」
「ははは、雑巾のほうがまだマシだな…」
いらっしゃいませー
「あ、あれは……!!」
ドロワに幸あれ
ドロワよ永遠に
「なんだ繊維?急に改まって」
「ああ、俺たちはもうそろそろ誰かに買われていくと思うんだが」
「そうだな。そろそろ頃合だな」
「……はあ」
「おいおいどうした?繊維らしくもない」
「悪いな」
「……不安、なのか?」
「……」
「…そうだよな。うん、わかるよ」
「繊維…」
「長い間絡まりあってきたんだ。それくらいわかるさ」
「……すまん」
「謝るなよ。俺たちは一心同体、だろ?」
「……すまん」
「…ま、それでこそ繊維だよ」
「はは、そうだな」
「それで、何が不安なんだよ」
「実はな…」
「ああいや、待て。わかる」
「うん?」
「簡単さ。俺だってそこは不安だ」
「……」
「うん、ドロワとしてやっていく以上、可愛い子に履いてもらいたいってのは当然のことさ」
「その通りだ。さすが繊維、全てお見通しか」
「まあ、しかし…こんなこと悩んだところで、俺たちが誰に履かれるかなんて決まらないぞ」
「天命を待つ…か。そうなんだよな。……それが心配を増すんだよ」
「しっかりしろよ。そんなこと、考えるだけで損だ。もっと楽しくいこうぜ」
「そうは言ってもな」
「……お前、誰に履かれたい?」
「え?」
「今出来ることと言ったら、こうして夢を語って、お祈りすることくらいだ。さあ、楽しくいこうぜ!な!」
「繊維……ああ、そうだな。ありがとう」
「俺はあの子がいいな。魔法の森の魔法使いの…」
「霧雨魔理沙か?確かに可愛いが、俺は粗暴な子は苦手だね」
「違う違う。もう一人いるだろ?アリス・マーガトロイドさ」
「おお、あの子もまた可愛いな」
「クールぶってるけど世話焼きで、俺の好みだ」
「でもな、それだけじゃドロワとしてどうかとも思うけどな。世話焼きって言ったって、俺たちドロワには関係ないじゃないか」
「そこなんだよ繊維。彼女はなんと、生き物以外にも世話を焼いてくれるんだ」
「人形だろ?そんなの常識だ」
「スイーツ(笑)」
「なんだと」
「彼女、手先が器用で裁縫も趣味らしい」
「裁縫?それがどうし……はっ!まさか!?」
「そう……。彼女は穴の開いたドロワも丁寧にちくちくと縫うことがあるんだ」
「す、すげえ……!そんな大事に扱ってくれるなんて、それはドロワ冥利に尽きるな!」
「だろう?だから俺はアリスに履いてもらいたい」
「だが待てよ。じゃあ俺は、式神のあの子がいいな」
「八雲 藍か?お前もまたドロワのイメージがないのを選ぶんだなあ」
「違うって。その式の式、猫の橙だよ」
「なんと!……お、お前にそんな趣味があったとは驚きだ」
「待て待て、そんな目で見るなよ」
「しかし……なあ?」
「いいから聞けよ。お前もすぐに橙に履いてもらいたくなる」
「むぅ」
「いいか?橙…あの子は小さくて可愛い。それはわかるだろ?」
「ま、まあな」
「だろう?可愛いのに歳だとか外見だとかは関係ないのさ」
「………」
「…だがな、さっきも言った通り、俺たちはドロワだ。見た目が可愛いだけじゃあ履いてほしいって理由にゃならない」
「あ、ああ、それは違いない。俺もアリスの物を大事にするところに惹かれた」
「俺が橙に惹かれたのはな………いいか、落ち着いて聞けよ?」
「お、おう」
「アリスとは全くの逆、橙はドロワを汚すんだ」
「……!?お、お前…さらにそんな趣味まで……」
「落ち着いて聞けって。まあたしかにこれだけじゃあわからんだろうな。…さあ、深呼吸しろ」
「………はぁあ。お、オーケーだ」
「…橙には、おねしょ癖があるんだ」
「!!」
「調べによると平均して週三回、やっちまうらしい」
「どこ調べかはともかく、そ、そうか……わ、悪くはない……か?」
「慌てるなよ。まだ先がある」
「先?」
「ああ、その度に橙は藍に叱られて、自分で洗うように言われる」
「なん……っ!じゃあ、まさか!?」
「…そう!結局は風呂場で二人で、ドロワを手洗いしているのさ!!」
「な、なんだってー!!?」
「しかも、当然そのまま風呂にも入る!!」
「ぐっはぁああああああ!!!」
「ふふ…どうだ?おねしょ、手洗い、風呂のコンボだぜ」
「す、すまん……疑って悪かった。アリスも良いが、橙のお得感はもはや神懸かってるな……」
「はっは、あー橙のドロワになりてー」
「そうだ、あの巫女を忘れていた」
「巫女?馬鹿だな、博麗霊夢に俺たちを買う金はないぞ」
「そっちじゃなく、山の巫女の東風谷早苗さんだよ」
「ああ………いや待て、しかし早苗さんは外来人だろ?ドロワなんて履かないんじゃないのか」
「そう思うだろ?ところが、最近は幻想郷に慣れようと色々と試しているらしいぞ」
「その中にドロワがあると?」
「ああ」
「……しかしな。前の二人に比べるとどうも魅力不足じゃないか?何度も言うが、可愛いだけじゃ俺たちドロワの心は……」
「よくわかってるよ。だから、可愛いだけじゃないのさ」
「ほう?して、そのこころは?」
「……早苗さんはドロワの履き方をよく知らない筈だ。すると……どうなる?お前なら見えるだろう」
「………あ、み、見える!初めてのドロワに悪戦苦闘する早苗さんが見えるぞ!!」
「よしよし。……さあ履き終わったぞ。その後はどうだ?」
「おお……!『スースーします』と言いながら、恥ずかしそうに何度も股座を気にしている早苗さんが見える!!」
「そうだ。…それらを全てリセットして時を遡れ。履き方が全くわからない早苗さんは……」
「か、神様たちに履き方を教わっているだとおぉおおぐはぁあああ―――――!!!」
「上出来だ。どうだい、早苗さんも悪くないだろう」
「はあ…は、あ、ああ……悪くない…いや、実に良い」
「それは良かった」
「…しかし繊維よ。お前、なんだか冷めてないか?」
「わかるか?」
「ああ、なんと言うか……心ここにあらずって感じだ」
「……さっき思い出したんだが、あそこの神社には俺の先輩の繊維さんがいるんだ」
「へえ?初耳だ」
「ああ、で……先輩は、褌なんだ」
「褌………って、それってもしや!?」
「大きいほうの神様の、褌なんだ……」
「なんと…!」
「俺はあんまり好きな先輩じゃなかったからな。今思うと、やっぱ行きたくないな。色々言われそうで」
「何言ってんだ。その時は見返してやればいいじゃないか。『ああ、若い子って素晴らしいです先輩』ってな具合にさ」
「違う、そうじゃないんだ」
「何が?」
「……俺、綿の頃はずっと神奈子様の褌になりたかったんだ…」
「マジか……」
「それを先輩は知ってるからさ」
「……ま、まあ、褌になったらオッサンに履かれる可能性に毎日ガクガクと怯えて暮らさないといけなかったんだ。リスクを考えれば安いもんさ」
「……そうだな。圧倒的な確率でオッサンだもんな。先輩の運が相当なもんだったんだと諦めるよ」
「レミリア嬢のドロワならメイド長に頬ずりしてもらえるかもな」
「それならパチュリーので小悪魔の頬ずりだろ」
「三姉妹は時々履き間違えるって噂だぜ」
「妹紅はもんぺだから、空間独り占めだな」
「鬼は一度履いたら百年は同じものを使うらしいぞ」
「……夢は尽きないな」
「ああ、ドロワって素晴らしい」
「ドロワに生まれて、本当に良かったよ」
「ああ、来世でもドロワになりたいな」
「俺は褌になって微かな希望を追いかけてみたい」
「今だから言えるんだろ」
「……オッサンは死んでも嫌だしな」
「ははは、雑巾のほうがまだマシだな…」
いらっしゃいませー
「あ、あれは……!!」
ドロワに幸あれ
ドロワよ永遠に
夢の広がる終わり方ですね(^q^)
素晴らしい思想の作者様に感動せざるを得ない。
私は神奈子様のさらしになりたい。
落ちをつけない終わり方が秀逸でした。
神奈子様の褌か、なら俺は諏訪子様のドロワーズかな
これは確かに夢が広がる。
だがな繊維たちよ……雑巾になってメイド達に使われることを想像してみろ……
……きっと雑巾の可能性が分かるはずだ!