「ねえ 、もこたん」
「なんだ?ていうか、もこたん言うな」
永遠亭の縁側に私たちはいた。いつもは血がはじけるくらいにやる弾幕ごっこもやる気がしないくらいに穏やかな日、私はその相手とお茶を飲んでいた。
「お願いがあるんだけど」
「お前が人に頼むなんて珍しいな。あの薬師のことか?」
「いいえ、永琳のことじゃなくてね」
永琳は優秀な従者だ。それは間違いない。だけど、変人だ。この間の異変の時には、鈴仙に変な薬を与えてた。『四本目は相手のそばで飲むのよ』と言っていたがどういう意味だったのか。
「私の個人的なお願いなんだけど…。聞いてくれる?」
「聞くだけなら…。まあ、いいさ」
「そう。じゃあ、ここに頭をのっけて」
ぽん、と叩いたのはふともものあたり。
「…ごめん。意味分からない」
妹紅が謝るなんて珍しいな。そんなことを考えた。
「だから、ここに頭を乗せて、えっと膝枕?をするから」
「誰がするか!」
そう言うと、妹紅は顔を赤くしてどなった。怒った顔もかわいい。
「なんで、お前と膝枕しないといけないんだ!」
「ねえ、妹紅。なんでふとももに乗せるのに膝枕なのかしら?」
「人の話を聞け!」
ああもう、と膝を抱えて顔をうずめるようにする妹紅。何がそんなに恥ずかしいのか。
まあいいか。
「えい」
「わっ、ちょ、輝夜!」
膝を抱えた妹紅を自分の方に引きよせ倒す。
言うことを聞かないときは強引にやれ。ってえーりんが言ってた。
「ばかっ、やめろって!」
「いいから、大人しくしなさい」
暴れようとする妹紅の体を押さえつけ、膝枕の態勢をとる。自然と私と視線が合い、赤い顔がよく見えた。
自分のふとももに乗せた妹紅の重みを感じながら、私は妹紅の頭をなでる。銀色の柔らかい髪は絹のように滑らかで心地よい。
すると、赤かった顔がさらに真っ赤になった。
「顔が真っ赤よ、もこたん」
「うるさいうるさい!離せこのてるよ!」
「もしかしてやだ?」
「さっきから言ってるだろ!人の話を聞け!」
「そう。おかしいわね」
「ああ?なにがおかしいんだよ」
「こうやれば誰でも素直になるのかと思ったのだけど」
あのひねくれた性格をした詐欺師の因幡も鈴仙にされたときは大人しくしていたのに。
一緒に見ていた永琳は『うどみょんもいいけど、やっぱりうどてゐかしら…』と意味の分からないことを言いながら写真を撮っていたっけ。
「私が素直じゃないって言うのか?私はあんたよりは素直だよ」
体を押さえつけている手を炎をまとった手で燃やしながら言う妹紅。
「それはどうかしらね。私にはあなたは自分に対して素直じゃないように見えるわ」
灼熱の苦痛をこらえながら私は言い返す。
「どういう意味だ」
「そのままの意味よ。あなたは今の生活を良しとしている。なのにそれを認めたがらない」
「…そんなことは」
「あるわね。認めれば今までの自分がわからなくなるから?それとも、結局全部なくなってしまうと思ってるから?」
「…だったら、なんだよ…」
暴れることをやめて、手を離す妹紅。握られていたところは火傷しているがこの程度の怪我
ならすぐに治る。
「笑わせる。なくならないものはなんてないわ。それが遅かれ早かれ。だからと言って、私は何かをあきらめたりしない。たとえなくなったとしてもそれが『あった』ことはなくならない。永遠にね」
私は妹紅のまっすぐ見る。その目は今までどれだけの別れを見てきたのか。
「それはあなたも同じよ」
私の言葉に対して妹紅は無言のままだった。
溜息をひとつついて彼女の体を起こす。
「陳腐な言葉だけど、生きていれば悲しいこともある。だけどそれ以上に喜びもあるの。喜びが永遠にあるってことは幸せなことじゃない?」
「お前ってさ…」
背を向け無言のままだった妹紅が口を開く。
「勝手な奴だな。人のこと好き勝手言って。何様のつもりだ」
「残念。私はお姫様だからね」
「それじゃあ、仕方ないか」
やれやれだ。
その口調には呆れの念が込められていたがどこか楽しそうだった。
「じゃあ、こっちも好きにやらせてもらう」
突然私の体が引っ張られ、頭に何か柔らかいものの上にのった感触が伝わってきた。
視線の先には妹紅の赤面した顔が見える。
「も、妹紅…。ちょっと恥ずかしいんだけど…」
「うるさい。大人しくしろ。おまえが最初にしたんだろ」
さっきとはまるで逆だ。妹紅に膝枕されている。それを自覚するとさらに顔が熱くなってきた。
「顔が真っ赤だぜ、てるよ」
「うう、もこたんがいじめる」
「さっきの私の気持ちがわかったか」
「うん、恥ずかしい。けど…」
「けどなんだよ」
「すごくうれしいかな…」
「…!ああもう!なんでお前はそんな恥ずかしいこと言えるんだよ!」
「さっきの妹紅もこうだったのかしら」
「そんなわけないだろ!」
「ほらほら、たまには素直になりなさいって」
「うう…」
目をそらして、口を開けては閉じての繰り返しをしていた妹紅は、
「…悪くはなかったよ…」
小さな声で、だけどそれは私の胸に響き渡った。
「やっぱり妹紅はかわいいわね」
「触るなー!」
お互いに真っ赤な顔で怒鳴りあう。そんな滑稽とも見える光景だったけど、私は嬉しくて、楽しかった。
だから、わたしはこの幸せを共有できる素直じゃない友人と永遠にいよう。
喜びは今ここにある。
「なんだ?ていうか、もこたん言うな」
永遠亭の縁側に私たちはいた。いつもは血がはじけるくらいにやる弾幕ごっこもやる気がしないくらいに穏やかな日、私はその相手とお茶を飲んでいた。
「お願いがあるんだけど」
「お前が人に頼むなんて珍しいな。あの薬師のことか?」
「いいえ、永琳のことじゃなくてね」
永琳は優秀な従者だ。それは間違いない。だけど、変人だ。この間の異変の時には、鈴仙に変な薬を与えてた。『四本目は相手のそばで飲むのよ』と言っていたがどういう意味だったのか。
「私の個人的なお願いなんだけど…。聞いてくれる?」
「聞くだけなら…。まあ、いいさ」
「そう。じゃあ、ここに頭をのっけて」
ぽん、と叩いたのはふともものあたり。
「…ごめん。意味分からない」
妹紅が謝るなんて珍しいな。そんなことを考えた。
「だから、ここに頭を乗せて、えっと膝枕?をするから」
「誰がするか!」
そう言うと、妹紅は顔を赤くしてどなった。怒った顔もかわいい。
「なんで、お前と膝枕しないといけないんだ!」
「ねえ、妹紅。なんでふとももに乗せるのに膝枕なのかしら?」
「人の話を聞け!」
ああもう、と膝を抱えて顔をうずめるようにする妹紅。何がそんなに恥ずかしいのか。
まあいいか。
「えい」
「わっ、ちょ、輝夜!」
膝を抱えた妹紅を自分の方に引きよせ倒す。
言うことを聞かないときは強引にやれ。ってえーりんが言ってた。
「ばかっ、やめろって!」
「いいから、大人しくしなさい」
暴れようとする妹紅の体を押さえつけ、膝枕の態勢をとる。自然と私と視線が合い、赤い顔がよく見えた。
自分のふとももに乗せた妹紅の重みを感じながら、私は妹紅の頭をなでる。銀色の柔らかい髪は絹のように滑らかで心地よい。
すると、赤かった顔がさらに真っ赤になった。
「顔が真っ赤よ、もこたん」
「うるさいうるさい!離せこのてるよ!」
「もしかしてやだ?」
「さっきから言ってるだろ!人の話を聞け!」
「そう。おかしいわね」
「ああ?なにがおかしいんだよ」
「こうやれば誰でも素直になるのかと思ったのだけど」
あのひねくれた性格をした詐欺師の因幡も鈴仙にされたときは大人しくしていたのに。
一緒に見ていた永琳は『うどみょんもいいけど、やっぱりうどてゐかしら…』と意味の分からないことを言いながら写真を撮っていたっけ。
「私が素直じゃないって言うのか?私はあんたよりは素直だよ」
体を押さえつけている手を炎をまとった手で燃やしながら言う妹紅。
「それはどうかしらね。私にはあなたは自分に対して素直じゃないように見えるわ」
灼熱の苦痛をこらえながら私は言い返す。
「どういう意味だ」
「そのままの意味よ。あなたは今の生活を良しとしている。なのにそれを認めたがらない」
「…そんなことは」
「あるわね。認めれば今までの自分がわからなくなるから?それとも、結局全部なくなってしまうと思ってるから?」
「…だったら、なんだよ…」
暴れることをやめて、手を離す妹紅。握られていたところは火傷しているがこの程度の怪我
ならすぐに治る。
「笑わせる。なくならないものはなんてないわ。それが遅かれ早かれ。だからと言って、私は何かをあきらめたりしない。たとえなくなったとしてもそれが『あった』ことはなくならない。永遠にね」
私は妹紅のまっすぐ見る。その目は今までどれだけの別れを見てきたのか。
「それはあなたも同じよ」
私の言葉に対して妹紅は無言のままだった。
溜息をひとつついて彼女の体を起こす。
「陳腐な言葉だけど、生きていれば悲しいこともある。だけどそれ以上に喜びもあるの。喜びが永遠にあるってことは幸せなことじゃない?」
「お前ってさ…」
背を向け無言のままだった妹紅が口を開く。
「勝手な奴だな。人のこと好き勝手言って。何様のつもりだ」
「残念。私はお姫様だからね」
「それじゃあ、仕方ないか」
やれやれだ。
その口調には呆れの念が込められていたがどこか楽しそうだった。
「じゃあ、こっちも好きにやらせてもらう」
突然私の体が引っ張られ、頭に何か柔らかいものの上にのった感触が伝わってきた。
視線の先には妹紅の赤面した顔が見える。
「も、妹紅…。ちょっと恥ずかしいんだけど…」
「うるさい。大人しくしろ。おまえが最初にしたんだろ」
さっきとはまるで逆だ。妹紅に膝枕されている。それを自覚するとさらに顔が熱くなってきた。
「顔が真っ赤だぜ、てるよ」
「うう、もこたんがいじめる」
「さっきの私の気持ちがわかったか」
「うん、恥ずかしい。けど…」
「けどなんだよ」
「すごくうれしいかな…」
「…!ああもう!なんでお前はそんな恥ずかしいこと言えるんだよ!」
「さっきの妹紅もこうだったのかしら」
「そんなわけないだろ!」
「ほらほら、たまには素直になりなさいって」
「うう…」
目をそらして、口を開けては閉じての繰り返しをしていた妹紅は、
「…悪くはなかったよ…」
小さな声で、だけどそれは私の胸に響き渡った。
「やっぱり妹紅はかわいいわね」
「触るなー!」
お互いに真っ赤な顔で怒鳴りあう。そんな滑稽とも見える光景だったけど、私は嬉しくて、楽しかった。
だから、わたしはこの幸せを共有できる素直じゃない友人と永遠にいよう。
喜びは今ここにある。
いやいや読み辛いなんてことはありませんでしたよ。マジでご馳走さまでした。
ただ、大分鉱脈掘りつくされた感のある題材なので、少し新鮮味に欠けていたかもしれませんが…。
少なくとも私は大好物です。ありがとうございました。
仲の良い二人が見ていて微笑ましいなぁ。
あと永琳自重ww
永遠に続く喜びの連鎖。分かち合える友がいるのなら、それは尚更に。
人の心は、永遠の時間を地獄にも天国に変えられるというのがよくわかりました。
次は、さりげに示唆されてるうど&てゐの話に期待したいです。