ここは妖怪の山。その渓谷の下流で、一匹の白狼天狗が涙を流していました
「ああ、警備詰所就任祝いに文さんから貰ったブレスレットが……」
白狼天狗"犬走椛"が、渓谷の傍で力無く座り込んでいました
どうやら大事なアクセサリが、激しい渓流に飲まれてしまったようです
「どうしよう、とても大事にしていたのに……。うぅ……」
こんな激しい渓流の中から小さなアクセサリを見つけることは難しく、椛は遂に目に涙を浮かべ始めました
そんな時、遥か上空から五つの影が正義の味方の様に、高らかに何かを叫びながら降りてきました
「幻想郷の彼方から!」
「聞こえてくるのは悲痛の叫び!」
「その叫び声、もっと聞かせてくれえ!」
椛は何事かと、目の前に降り立つ五人に視線を向けます
そこには、背中に色彩豊かな装飾が施された羽を生やし、狂戦士の面を被った"フランドール・スカーレット"
「冷静さを失ってしまえ! 暴れ、狂い、周りの人間を幻滅させろ! ネガティブ・バサーク!」
その隣には、ポニーテールで膨らんだスカートが印象的な何処ぞのバイバイキンよろしくの面を被った"黒谷ヤマメ"
「病に苦しみ倒れてしまえ! のたうち回って絶望しろ! ネガティブ・シンドローム!」
更にその隣には、小さな妖精の様な人形と共にガスマスクを被った"メディスン・メランコリー"
「瘴気を吸って目眩を起こせ! お前も毒人形にしてやろうか! ネガティブ・ポイズン!」
その後ろに、緑の眼をした陰気なオーラを放つ嫉妬深そうな女神の面を被った"水橋パルスィ"
「妬みと嫉みで我を忘れろ! 人の不幸が私の幸せ! ネガティブ・ソネミー!」
そして一番後方に、ヴァイオリンを片手に「('A`)」←こんな顔の面を被った"ルナサ・プリズムリバー"
「どうせ幻想郷も顔が命! ただしイケメンに限るが合言葉! ネガティブ・ユウツー!」
五人が揃い、各々の台詞を満足げに言い終えた後、リーダーらしきフランドールが号令をかける
「我ら、五人揃って!」
「ネガティブ・ファイブ!」
それと同時に決めポーズ。決めポーズと一括りにしても、体育座りや爪を噛みながら貧乏揺すりしたりとポーズとは言い難いのが突っ込みどころ
「な、何なんですか! あなた達は!」
どうやら、椛も戸惑っている様子。すると後方のルナサがぶつぶつと何かを呟き始める
「ほら、やっぱり聞いてなかった……。鬱だ、死のう……」
後ろを向き、しゃがみ込みながら指で地面に「の」の字をイジイジと書き続ける
それに続いて、フランドールも頭をグシャグシャと掻き乱す
「ああ、もう! 今ちゃんと言ったでしょ! 何で聞いてないのよ、もう!」
その様子はヒステリーを起こしたかの様。それに連鎖して、パルスィが「そんな叫ぶ元気があるなら身内と仲良く遊んでなさいよ、喧しい上に遊び相手がいることが妬ましい」と呟き、メディスンが「口を開くなり妬ましい妬ましい……。ただの人気取りね」と毒づき、ヤマメが「人気を取るなら、お涙頂戴な展開がベストさね」と青酸カリを小瓶に入れて提供する始末
~ ~ ~ ~ ~
『ドクターヤゴコロの豆知識~青酸カリとは?』
青酸カリは別名シアン化カリウムと呼ばれる、非常に有害な毒物だ!
少量でも人体に悪影響を及ぼすので、どこかの名探偵みたいにペロペロ舐めてはいけないぞ!
_,...,_
(ヽ_ !"〈╋〉`! /)
((⊂ iつゝ-─-イ⊂ i つ))
ノ / |(・)。(・)| ゝ.ヽ
(_└─ ヾ三ヲ└―' ノ 先生との約束だ!
 ̄ ̄| .l ̄ ̄´
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「す、すいません……。もういいです……」
すっかり意気消沈した椛は、背中を丸くしてトボトボと山の奥へと歩いて帰っていってしまった
そして、標的がいなくなったのを確認する五人。キョロキョロと辺りを見回し、次に目をつけたのは上流で何かを解体する河童の"河城にとり"だった
「そこのリアルが充実している暢気な河童! お前の笑顔、苦渋の表情に変えてくれるわ!」
フランドールが発狂しながら、にとりの解体していた物のパーツを暴れ散らしていく
「う、うわ! 何するのさ! や、やめてよう!」
その傍らでメディスンが、散っていくパーツを眺めながらスッと立ち上がる
「待て、これ以上やったら可哀想だ! もっとやれ」
泣きっ面にスズメバチの如く追い打ちをかけ、流石のにとりも涙を浮かべる
「待て! これ以上、人を陰気なオーラで襲うのは止めてもらおう!」
見れば、大岩の頂点に鉄仮面を被った厄神"鍵山雛"が仁王立ちしていたではないか
「周囲に厄を振りまく悪しき者よ! 私、仮面ヤクイワーが成敗してくれるわ!」
大岩から華麗に飛び、瀟酒に着地失敗する雛
「くっ……。こいつは、厄いぜ……」
痛みに耐えながらも、何とか雛は立ち上がり人差し指をビシッと突き付ける
「さあ、来いネガティブ・ファイブ! お前達の厄、全て私が吸収してくれるわ!」
「小癪な! この水を飲み干すがいい!」
ヤマメが、傍の渓流の水を掬って雛に浴びせかける
「ぐぅっ!」
咄嗟に口を塞ぐも、少量の水を雛は飲んでしまった
「ウェルカム・トゥ・エキノコックス・ワールド!」
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『ドクターヤゴコロの豆知識~エキノコックスとは?』
エキノコックスとは、寄生虫から引き起こされる感染症の一つだ!
狐や犬、猫の糞に混じったエキノコックスの卵を水や食物から経口感染する事で起こるんだ!
ちなみに放置していると、とっても大変な事になるから直ぐに病院へ行こう!
喉が渇いたからといって間違っても川の水を飲んではいけないぞ!
ちなみに作者は山で遭難した時、実際に川の水を飲んでしまって大変なことになってしまったそうだぞ!
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(ヽ_ !"〈╋〉`! /)
((⊂ iつゝ-─-イ⊂ i つ))
ノ / |(・)。(・)| ゝ.ヽ
(_└─ ヾ三ヲ└―' ノ 良い子の皆は真似しないでね!
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「くっ、何て奴だ! 台本に、こんな展開は書いていなかったぞ!」
雛は、ヤマメの不意打ちに怯んでしまった。そこへ、ルナサがビデオテープを雛に投げ付ける
「去年のクリスマスパーティーのビデオを喰らえ! 妹二人は性の六時間を男と過ごしている中、私が一人寂しくケーキとボジョレーヌーヴォーを自棄飲みしている素晴らしい映像だ!」
余りの不憫さに雛は強烈なダメージを受けてしまった
「まさか、ここまで陰気なパワーが強いとは……! だが、これまでだ! 私が吸収し、溜め込んだ陰気パワーをまとめて返上してくれる!」
両手に力を集め、雛は波動拳コマンドを繰り出す。手中からドス黒い塊が、あらゆる不幸を纏って五人へと突き進む
「こ、これは! グハッ、インドメタシン!」
次々と吹き飛ぶネガティブ・ファイブ。動けなくなった五人に雛が歩み寄り、その場でグルグルと回転を始める
「さあ、浄化の時間だ! 私がお前達の厄を集めてくれよう!」
陰気なオーラが目に見えるくらいに、雛へと集まっていく
「うわあああああ! め、目の前に希望の光が見える……!」
「い、嫌だ! 現実を受け入れろというのかあああああ!」
「どうだ、これ以上悪さはしないと改めてここに誓うことができるか!」
雛が五人に問いかける。すると、どうだろうか。五人はスッと立ち上がり、背筋をピッと伸ばして前を見据えているではないか
「勿論ですとも! もう私、部屋に引き蘢るのやめます! これからは妹と同じ様にリア充目指して頑張ります!」
「もう毒には手を出さないわ! お酒とも煙草とも縁を切ります!」
「やっぱり健康が一番さね! これからは永遠亭で予防接種もきちんと受けます!」
「わ、私も! もうヒステリーを起こさないようにして、地下室から出てお姉様達と一緒に遊ぶわ!」
「もう妬ましいなんて言いません! これからは相手の幸せを共に祝福できるように心がけます!」
五人は見事に改心し、ネガティブ・ファイブからポジティブ・ファイブに生まれ変わったのでした
仮面ヤクイワー雛の今後の活躍にご期待下さい
第三部 完!
テメェ等にとりんに何しやがるこの女郎共。
でも何故かルナ姉だけは祝福しないとイケない気がする……っ!
はさておき、ヤクイワーにやられた5人の豹変ぶりがすげえw
>仮面ヤクイワー雛の今後の期待にご期待下さい
→活躍にご期待ください?
決めポーズとか着地失敗で吹いたww
>エキノコックス
北海道行くとキタキツネには絶対触っちゃいけないんですよね…