Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

A water imp have known sin

2008/11/26 17:30:25
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 川と繋がった洞窟の中は、入り口から差し込む光が水面で跳ね返って、寒々く青白い。
 その洞窟の低い天井に、にとりの溜息が木霊した。

「はぁ……だめだめ、ぜんっぜんダメだこりゃ」

 失敗作である、と認めざるを得なかった。
 薄く軽い素材を採用したことは耐久力の低下を意味し、過剰に強化された光学迷彩機能は稼働時間を劇的に短縮させ、背部に装着した四連のびーるアームによる致命的な重量の増加が軽量素材とのマイナスシナジーを生み出し、お尻の右ほっぺにつけたスペルカードポケットは、微妙に浅くて小銭さえ入れておけそうにない。
 手の施しようがない。将棋に例えれば、詰みの状態だった。
 にとりは新しい光学迷彩スーツをばさりと放って、うっすらと苔むした岩に腰かけた。

「(どこで間違ったのかなぁ……?)」

 二ヶ月前のことだった。自慢の光学迷彩スーツを、人間にあっさり見破られた。
 それが悔しくて、すぐに新型の開発に取り掛かった。
 製作は順調だった。設計思想にも、間違いはなかったはずだ。

「(動きやすくて、攻撃力があって、あわよくば防御力も上げて、日常でも使えるような小回りの良さもある)」

 腕を組んで首を傾げる。
 んー、と息を吐くように唸ってから、

「……完璧だよねぇ?」

 確認するように、呟いた。
 見事な設計思想だと感心はするがどこもおかしくはない。攻防を兼ね備えた、完全無欠のバトルコスチュームができるはずだった。
 しかし、結果は正反対だった。なんか薄すぎて胸とか見えそうだし、起動したと思ったらすぐ止まるし、よく考えたらアーム四本は多すぎるし、カード入れる時お尻にひっかかるし。
 改善どころか、前より悪くなっている。一番たちの悪い失敗のしかただった。

「でも、もったいないなぁ、なんとか使えないかなぁ……」

 名残惜しそうにスーツを見つめながら、にとりは言った。
 どうやっても自分には扱えない。それでもせっかく作ったんだから、どうにかして使いたい。
 総合的にはどうしようもないじゃじゃ馬だが、帯に短しスペカに狭しなポケットを除いて、各部のスペックだけは高い。
 それらが持つ”くせ”を強引にリカバリーし、このまるでダメおちゃんなスーツを、にとりが夢見た無敵の光学迷彩服に変えられる者がいれば。
 性能に振り回されるようでは話にならない。だからと言って、道具なんて必要ないほど強くてもいけない。
 必要なのは、使えるものなら何でも使うという貪欲さと、クリエイターの予想を超えた用途を見つける発想力。
 そして何より、この馬鹿馬鹿しいスーツを活用してやろうと本気で考える”変人”でなければいけない。
 にとりは記憶の糸を手繰る。そばを流れる川の音が、はじめて耳に入ってきた。

「……そうだ。あいつならきっと!」

 膝を叩いて立ち上がる。
 うってつけの奴がいた。確実に自分より強く、そして確実に自分より変わっている奴が。
 にとりはスーツ二号機を担いで、洞窟を飛び出した。



 にとりの予想は正しかった。

「おお! これはいいな! なんか胸のあたりがスカスカするけど!」
「私にあわせて作ってあるからね。そこは我慢しとくれ」
「これ、本当にもらってもいいのか? 私はくれるってもんなら、病気以外は何でももらっちまう魔法使いなんだぜ?」
「正直ピーキー過ぎて持て余してたのさ。魔理沙が使ってくれれば、こいつも喜ぶさ」
「そうか! そういうことなら遠慮なく!」

 言うなり、魔理沙はドアを蹴破って空の彼方へと飛んでいってしまった。
 きっと巫女にでも見せびらかしにいくのだろう。
 遠ざかっていく背中を、手を庇にして見上げながら、にとりは目を細めた。

 ──霧雨魔理沙という、普通の変人。
 彼女は肌が透けそうな薄さを逆にあれこれ見せ付けることによる視覚破壊兵器として利用し、猛烈な瞬間最高飛行速度による一撃離脱戦法を取ることで稼働時間の短さをカバーし、重すぎるアームは敵にブレイジングスターをぶちかます際の運動エネルギー増強になると言ってのけた。こればかりはどうしようもないと思われたポケットの浅さも、宴会異変と天候異変の際に鍛えた尻の圧力によって華麗に解決した。

 夢は叶った。人間と友達でよかった。
 にとりはそっと嬉し涙を拭ってから、魔理沙の部屋を物色し始めるのであった。



 犬走椛が、将棋板を小脇に抱えてにとりを訪ねてきたのは、数日後のことだった。

「そういえばにとりさん、知ってますか?」

 駒を進めながら、椛が思い出したように言った。

「え? 何を?」
「幻想郷全域をものすごい速さで飛び回る姿の見えない露出狂の怪盗スケスケストレッチウーマン(仮称)のこと」
「やっちったァァァァァァ!」

 腰を滑らせて、にとりは川に落ちた。
 椛が打った一手は、王手になっていた。
邦題「河童はつみを知った」
下っぱ
http://www7a.biglobe.ne.jp/~snmh/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
オチwwwwwwそしてあとがきwwwwww
2.名前ガの兎削除
流れが素晴らしすぎるwww
3.名前が無い程度の能力削除
下っぱさん、全盛期に戻っている……
4.名前が無い程度の能力削除
す、すばらしいwwwwwwwwwwwwww

オチいいっすwwwwww
5.名前が無い程度の能力削除
清々しいなww 魔理沙乙w
にとり、物を大事にするのはいいが失敗品を体よく押し付けんなww
6.名前が無い程度の能力削除
タイトル、駄洒落かよwww
あと、にとりはさりげなく魔理沙の部屋を漁るなw
7.名前が無い程度の能力削除
Good Job。作者さまにも、にとりにも。
しかしポケットの深さくらい、ぱぱっと改善できないのか?
無理なら某☆王の様に腕にカードホルダーつけるとかw

>姿の見えない露出狂の
意味ないじゃんww
8.名前が無い程度の能力削除
略してマダ夫スーツ
9.謳魚削除
素晴らしいオチよりにとりんの胸がふくよかな所に
全己がスタンディングオベィション。
天は私を見捨てなかった……!
10.名前が無い程度の能力削除
オチで吹いたと同時に、今さらながらにタグの意味を理解した。これはいいティーエンジでミュータントな亀兄弟の発明担当ですね