※ タイトルで分かる方もいらっしゃるとは思いますが、今話題の『アレ』とのクロスオーバーです。
「フロシャイム」・「ヴァンプさま」にピンとこない方にはあまりお勧めできません。ちなみに、レッドさんは出ません。
ここは幻想郷。いつも平和な幻想郷だが、不穏な空気の漂う場所があった…!
「フッフッフ…ここが幻想郷か。ここを我らフロシャイムの世界征服の足掛かりとしてくれるわ…」
「キーキー」
「我らが倒すべき敵はただ一人。博麗神社に住まうと言われている巫女、博麗 霊夢。
そいつを倒せばこの幻想郷は頂いたも同然……手始めにその女を抹殺してくれよう…フッフッフ…」
「キー!」
平和な幻想郷に何かが起ころうとしていた。果たして彼らの正体とは! そして博麗の巫女の運命や如何に!?
~ フロシャイム幻想郷に立つ!! ~
「この季節は落ち葉が多くて面倒ねぇ。境内の掃除も楽じゃないわ」
幻想郷も冬が近くなって寒さが一層厳しくなった。それは構わないのだけど、落ち葉が爆発的に増えてしまうのが難点だ。
「相変わらず参拝客は来ないし……ん?」
「はぁ…はぁ……あ~、ようやく着いたね~…みんな大丈夫?」
「大丈夫ですけど…凄く長い階段でしたね」
「そうだねぇ。長いっていうのは聞いてたけど、こんなに長いとは思わなかったよ~」
突如神社に現れたのは、槍と盾を持った紫服の兜男と黒ずくめに変な仮面の男が二人。
あれは…参拝客なのかしら…?
「でもヴァンプ様。なんかボロい神社ですね」
「むっ」
様子を眺めていると仮面の片割れが口を開いた。
正直聞き捨てならない発言だ。よりにもよっていきなりボロいとは何とも失礼な集団ではないか。
「こーら、そんなこと言ったら駄目でしょ。いい神社じゃない、風情があって」
…いや、なかなか見どころがあるじゃないか。訂正しよう。紫服の男はきっと話の分かる奴だと思う。
ふと、彼らがこちらに向かって歩いてきた。何だろうか?
不審に思っていると、その男がにこやかに声をかけてきた。
「あのー、ちょっとよろしいですか?」
「…何かしら? 素敵な賽銭箱はあっちよ」
「こちらに霊夢さんという方がいらっしゃると聞いてやって来たんですけれども~…」
「霊夢なら私だけど」
「えぇっ!? あなたが霊夢さんなんですか!?」
「私以外に霊夢はいないと思うわ」
私がそう言うと、三人は私に背中を向けて会話を始めた。
「ちょっとヴァンプ様、聞いてないですよ~」
「う~ん、そうだねぇ…女性っていうのは聞いてたけど、私もあんなにちっちゃな子だとは思わなかったよ~…」
「だったらどうします? あの子倒さないと、ここを征服できませんよ」
「でもねぇ…子供を抹殺するっていうのはちょっとね~…」
ヒソヒソ話しているつもりなのだろうが会話が駄々漏れだ。
それになんか不穏な内容だし…外見と相まって尚更怪しく感じられてきた。
「あんたたち、いったい何者なの? 私の命を狙うなんて、妖怪?」
「え? あ、私たち妖怪じゃないんですよ~。私たちは、怪人なんですよ」
「かいじん?」
「あ、申し遅れました。私、世界征服を企む悪の組織フロシャイムのヴァンプと申します。初めまして~」
「は…博麗 霊夢です、ご丁寧にどうも……世界征服?」
「えぇ、そうなんです。この度この幻想郷に支部が出来まして、それで私が派遣されたんですよ~」
「はぁ…」
「それでなんですけど、私たち幻想郷を支配するために霊夢さんを抹殺することにしまして、それで宿敵になる霊夢さんにご挨拶にと伺わせていただいたんです~。
あ、これ引っ越し蕎麦です。よろしかったら食べて下さい~」
「あ…ありがとうございます…」
私を抹殺する…? それで挨拶に来たと…?
丁寧に蕎麦まで用意して、礼儀正しいのだけれども…それはどうなんだろう?
「ちょっとヴァンプ様、本当にこんな女の子を抹殺するんですか?」
「う~ん…でもねぇ、我々フロシャイムにも目的があるからねぇ…
可哀そうだけど、霊夢さんには尊い犠牲になってもらうしかないんだよ~…」
「え~、マジッすかぁ…気乗りしないなぁ」
やっぱり彼らは私を殺すつもりらしい……のだが、どこかやる気が感じられない。
なんだろう、退治した方がいいのかな?
「それで、どうするの…? 今ここでやるの?」
「あ、いえいえ、今日は挨拶にお伺いしただけなんですよ~。長いお付き合いになると思いますので」
「そ…そうなの?」
「それでは霊夢さん、今日はこれくらいで失礼しますね。
あ、そうだみんな。せっかく神社に来たんだからお参りしてから帰ろうか」
「それいいですね~。あ、でも僕ら財布持って来てないですよ」
「小銭くらいなら私が出してあげるよ~」
和気あいあいと会話しながら賽銭箱に近づいてゆきお参りする、自称悪の組織。
チャリンッ、と小気味のいい音を響かせて小銭が賽銭箱に収まる。久しく耳にしていなかった音だ。
「ヴァンプ様は何お願いしたんですか?」
「ん? 私はね、みんなが健康でありますようにってお願いしたよ。
やっぱり元気が一番だからね。みんな大切な戦闘員なんだから」
「さすがヴァンプ様。お優しいですね」
「も~、おだてても何も出ないよ~?」
あははは、と楽しそうに笑いながら去ってゆく自称…悪の組織?
一応世界征服を企んでいるらしい。
「それじゃあ霊夢さん。今後ともよろしくお願いしますね~」
去り際にヴァンプさんが何度も会釈するので、思わず私も返してしまう。
まぁ…放っておいても害は無いでしょう……多分。
この日より、幻想郷にフロシャイム幻想郷支部が置かれることとなったのであった!
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「すっかり暗くなっちゃった。藍様に怒られちゃう…それになんだか雨も降りそう…」
その言葉と同時にぽつぽつと雨が降り始めた。
「わ、本当に降って来ちゃった! 早く帰らないと!」
どんどん強くなる雨足に、やむなく雨宿りをすることとなってしまった。
そんな彼女の前に一つの影が躍り出るのであった!
~ 凶兆の黒猫フロシャイムに囚わる! ~
「はい、これタオル。これでちゃんと水気をとるんだよ」
「ありがとうございます。えっと…」
「あ、私はヴァンプっていうの。君のお名前は?」
「私は橙です。困っているところを助けてくれて、本当にありがとうございました、ヴァンプさん!」
「そう~、橙ちゃんっていうの~。元気一杯だね~」
「はい!」
「ちょっと待っててね。今温かい飲み物用意してるからね」
そう言ってヴァンプさんは台所へ引っこんでしまう。
妖怪っぽい人に連れられたのが人里でビックリしたけど、悪い人じゃなさそうだったのでついつい付いて来てしまった。
藍様に怒られちゃうかな…?
「はい、できたよ~。熱いから火傷しないようにね?」
「ありがとうございます……熱ッ!」
「あ、ごめんね~…そんなに熱かった?」
「ち…違うんです。私はその…猫舌で…」
「そうなの~、気付かなくってごめんね。今、温いの淹れなおしてあげるからね」
「そ…そこまでして頂かなくても…」
「いいからいいから。遠慮しないでいいんだよ?」
ヴァンプさんはもう一度台所に引っこんでしまう。
第一印象通りとてもいい人みたいだ。藍様とは違った暖かさを感じるなぁ。
「はい橙ちゃん。さっきは気付かなくって本当にごめんね?」
「あ、いえ…こちらこそご迷惑をおかけしてしまって…」
「橙ちゃんが気にしなくっていいんだよ~。元はと言えば、私が無理に連れて来ちゃったみたいなものだしね」
「それでもごめんなさい。ありがとうございます」
「橙ちゃんは礼儀正しいね~。お母さんの教育がしっかりしてるのかな?」
「私にお母さんはいないですけど…でも、藍様っていう人が私にいろいろ教えてくれます」
「そっか~、いい人なんだね。それに、橙ちゃんもとってもいい子なんだね」
「そ…そんなことないですよ。私なんていつも迷惑かけてばっかりで…」
「子供は親に迷惑かけるものなんだよ? それに、謙遜しなくっても橙ちゃんはいい子だって、私分かるもの~」
「そうですか…?」
「そうだって~。私こう見えても人を見る目はあるんだから~」
なんでだろう。ヴァンプさんにそう言われると不思議とそんな気がしてきた。
口にした温めのお茶が、心地よい暖かさをくれる。
「ヴァンプさま~、その子の晩御飯どうしますか~?」
「あ、そうだったね。ねぇ橙ちゃん、晩御飯どうしようか。家で食べてく?」
「でも…そろそろ帰らないと藍様が心配してるかも…」
「そうだね~…でも、もう外暗いよ。それにまだ雨も降ってるし、しばらく家にいた方がいいんじゃない?」
「これ以上お世話になるわけには…」
「そんなこと気にしなくってもいいんだって~。それに私、困ってる人見たら放っておけない性質なの~」
ヴァンプさんはそう言ってくれるけど、やっぱり晩御飯までいただくのは気が引ける…
どうしようか悩んでいると、不意に玄関の戸口を叩く音が鳴り響いた。
「あ、お客さんかな。橙ちゃん、ちょっと待っててね」
「はい」
ヴァンプさんが玄関に向かうと、しばらくして何やら話し声が聞える。誰が来たんだろう?
会話が終わったのか、ヴァンプさんが居間に戻ってきた。その後ろにいるのは…紫様!?
「紫様! どうしてここにいるんですか!?」
「は~い、橙。こんな遅くまで帰ってこないから藍も心配してたわよ」
「あ…ごめんなさい」
「もう~、橙ちゃんってば紫さんと知り合いだったなら早く言ってくれればよかったのに~」
「え…お二人はお知り合いなのですか?」
「知りあいも何もお友達よね、ヴァンプ?」
「ねー、紫さん」
…驚きすぎて言葉も無い。まさかこの二人が友達だなんて想像もしてなかった。
「あら橙、何をそんなに驚いてるの?」
「私たちが友達だっていうことにじゃないですか?
ほら~、私たちって何の接点も無いように見えるじゃない?」
「あぁ、言われてみればそうかも。でも橙、彼らを幻想郷に招待したのは、実は私なのよ」
「ええっ!? そうなんですか!?」
「あの時は本当に驚きましたよ~。突然現れていきなり『こっちに来てみない?』ですもん。私驚きすぎて腰が抜けちゃうかと思いましたよ~」
「ヴァンプったら大袈裟よ~」
キャッキャと笑いながら肩をたたき合う姿は、長年付き合った友人のそれに近いものを感じる。
この二人って本当に友達なんだ…すごく意外だなぁ…
「ん~…それにしてもいい匂いがするわねぇ」
「今晩御飯の支度中なんですよ~。あ、よろしかったら食べていきません?」
「本当? いいのかしら?」
「もう、私と紫さんの仲じゃないですか~」
「それならそうさせてもらおうかしら。橙はどうする?」
二人の話についていけない中、突然私に声が掛かった。
あまりに咄嗟のことだったので私は言葉に詰まってしまう。
「そ…そんなことより、紫様はどうして私がここにいるってわかったんですか?」
詰まった私の口から出た言葉は、見当違いの質問だった。
「それは偶然よ。今日はヴァンプと話をしようと思ってここを覗いたらあなたがいるんだもの。私だって驚いたのよ?」
「そうだったんですか…」
「それで、どうするの? 藍には一応心配ないって伝えてあるけど」
「橙ちゃん、どうする?」
私がここで食べると藍様は一人の食卓…それを思うとやっぱり…
「私は…帰ります」
「そうなの…」
「ヴァンプさんのお気持ちはありがたいですけど、一刻も早く藍様を安心させてあげたいんです。だから、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいんだよ~。私は全然気にしてないからね。ほら、顔をあげて?」
「でも…ごめんなさい」
「話はまとまったかしら? それなら橙、マヨヒガに送ってあげるわね」
「はい、お願いします紫様」
紫様がすきまを開くと、そこは慣れ親しんだマヨヒガに通じていた。
私はすきまをくぐる前にヴァンプさんに向き直る。
「ヴァンプさん、今日は本当にお世話になりました。このご恩は忘れません」
「そんなご恩だなんて畏まらなくていいんだよ?
今日は残念だったけど、橙ちゃんさえよかったらいつでも遊びにいらっしゃい。その時は私の手料理を御馳走してあげるからね」
「はい、本当にありがとうございました! それでは失礼します」
すきまを潜って我が家へと帰る。
今日は藍様にお話しすることが沢山あるなぁ。
「ただいま、藍様!」
フロシャイム幻想郷支部。この組織は、世界征服を目論む悪の軍団である!
俺はこういうの大好きですぜw
|・ω・`)気が向いたら続きを描いてくれると俺が喜びますヨ?
まさかヴァンプ様が出てくるとは・・・
このままレッドさん出てこないでほのぼのと続きを書いていただきたいっすわ~w
ほんとレッドさんが来ないことを祈りたいw
続き待ってます
一度で良いからえーき様に説教されるヴァンプ様を見てみたいです!
あれ読んでると、GO GOプリン帝国を思い出すんだ・・・
レッドさんと違って霊夢はやさしめだからフロシャイムのみんなも幸せそうだねwww
きっとこれからミスティアとかるみゃあたりがフロシャイムにスカウトされるのだろうww