かなり強引な解釈やオリジナル設定ありますのでご注意ください。
いつか言おうと思っていた。
今日こそ言おう。
そう決めた。
お嬢様の紅茶の時間に話を切り出す。
「お嬢様、私達の事でお話があります」
「紅茶の時間に話す様な素敵なお話かしら?」
いえ。
違います。
そんな話ではありません。
「お嬢様、この関係は終わりにしましょう。妖怪と人間では結ばれません」
これは私なりに考えて出した結論。
私はお嬢様に主従以上の想いを抱いている。
恋慕と言っても良い。
お嬢様も私を従者以上として大切にしてくれている。
そう自負している。
でもお嬢様は吸血鬼、私は人間。
私がどんなに長生きしても、いつか別れの日は来る。
自惚れかもしれないが私が死んだ後、お嬢様が悲しむ姿は想像したくない。
だから距離を置こうと考えた。
今日からは出会った時のようにただの主従に戻るのだ。
そうすれば私が死んでも、すぐに代わりが見付かるはずだ。
「独善的ね。恐らく自分が死んだ後の事を考えての発言でしょうけど」
「そうです」
「でもね、咲夜。貴女勘違いしているわ。貴女が死んでも私は悲しくない」
「え…」
そうだったのか。
やはり自惚れだったのか。
お嬢様が私を大切にしているように思えたのは私の勘違いに過ぎなかったのだ。
でも正直辛い言葉だ。
聞きたくなかった。
頭の横を殴られた様な感じがする。
「同じ理由で別れを切り出されるのも三回目ね」
お嬢様が苦笑しながら言う。
どういう事だろう。
私は初めてお嬢様に話したはずだけど。
現実感の無い頭で必死に考える。
…あぁ。
そういう事か。
私の他にも同じようにお嬢様を慕った人間が居たんだ。
自分から別れ話を持ち出しながらその事に動揺してしまった。
そして見も知らないその人間に嫉妬を感じる。
私が死んだ後の代わりの事も考えたはずなのに。
我ながら未練がましい。
死んでも悲しくないなんて言われても、まだ心の何処かではお嬢様を諦めきれていない。
思わず口から言葉が出る。
「その方はどのような方だったのですか?」
「あら、別れるつもりなのに気になるの?」
お嬢様が笑いながら答える。
「その子の名前は咲夜。十六夜 咲夜って名前だったわ」
それは私がお嬢様から与えられた名前と同じ…
お嬢様はその人間の代わりとして私を大事にしていたのだろうか。
私はお嬢様を想っているのに。
いや違う。
これは良い機会なのだ。
お嬢様が私を誰かの代わりとして見ているのに過ぎないのなら、私がお嬢様を吹っ切る切っ掛けになるはず。
現にお嬢様は私の事なんて何とも思ってない事が分かったのだし、躊躇う必要は無い。
「貴女から三回も聞くなんて。また今度も聞くのかしらね」
私から三回?
今度?
どういう事だろう。
私と前の人間たちは別人のはずなのに。
「まだ気付かない?私にとって大事な人間はただ一人。十六夜 咲夜だけよ」
それはつまり。
「ホント鈍いわね。何回生まれ変わってもその辺変わってないんだから」
「生まれ、変わり…?」
「そう。貴女を従者にしたのはこれが初めてじゃないの」
「生まれ変わりを見つけ出したのですか?そんな事が可能なのですか?」
「私の能力忘れた?貴女が何処に生まれ変わろうと私は見つけた。運命の糸を手繰り寄せてね。私にはその力があるわ」
「じゃあ私が死んで生まれ変わるたびに」
「もう何回もね。永遠の愛って意味で、一生ではなく『七生の愛』なんて言葉があるそうだけど生温いわね。私なら十生でも二十生でも貴女を想える。妖怪と人間は結ばれない?違うわ。私が吸血鬼だから貴女を待てるの」
お嬢様が力強い口調で断言する。
「お嬢様…」
私が死んでも悲しまない。
お嬢様にとってそれは少しの間の別れに過ぎないのだから。
どうでも良い人間だなんて思ってない。
私の事を誰よりも想ってくれているのだから。
「死んでしまっても私は必ずまた見つけ出すから。地球の裏側でも別の世界でもね。貴女を手放すつもりなんて欠片も無いわ。そして誰かに渡すつもりも無い」
お嬢様が口を開く度にショックは消えてゆく。
そして別の感情と決意が生まれる。
ずっと私を見ていてくれたんだ。
そして私をずっと待ってくれるんだ。
ずっと一緒に居たい。
この命が尽きても。
生まれ変わっても。
「咲夜、貴女は悪魔に気に入られたの。逃げられないわよ」
「はい!」
「紅茶、冷めちゃったわね。新しいのくれる?」
「はい!」
「じゃあフラン、パチェ、しばらく館の事は任せたわよ」
「行ってらっしゃい、お姉様」
「気を付けてね。美鈴もレミィを頼むわね」
「任せてください。必ず咲夜さん連れて戻ってきますから」
「そしたら皆でまた暮らせるんだね」
「そうよ。私たちはずっと一緒。一人も欠けさせない。絶対に」
「特に咲夜さんはお嬢様の特別…痛い、照れ隠しに叩かないで下さいよ」
『あんたってさぁ、何で髪型変えないの?昔から同じだよね?』
『私知ってるよ。三つ編みにしておけば運命の人が見つかるって願掛けなんだよね?』
『うわー。恐ろしく乙女ちっくな子だわ…』
周りは誰も信じないけど私は覚えている。
顔も名前も知らないけど、ずっと私を探している人が居る事を。
私はその人と一緒に生きる為に生まれた事を。
『ねぇ、あそこに居るの誰かな。何かお金持ちっぽいけど。モデルとか?』
『凄く綺麗な子ね。側に居る人も背高くてカッコイイ』
「…お嬢様」
『へ?』
『それ何処の言葉?』
お嬢様?
自分で呟いた聞き慣れない言葉に驚く。
同時に知らない記憶が炎のように燃えて蘇る。
あの人だ。
あの人が私を待ってくれている人だ。
また会えたんだ。
見つけてくれたんだ。
私は駆け出す。
あちらも気付いて走り出した。
「お嬢様ぁー!」
「咲夜!咲夜ー!」
二人抱きしめあう。
凄く強い力。
私を離さない為の。
私も離さない。
また、一緒に生きましょう。
ナクトさんの文章に惚れましたわ
だってディスティニーだからね!
咲夜さんは輪廻重ねる毎に記憶が残っていきそうですな。
いいなぁ、こういうの。いいなぁ
と細かいツッコミを入れてみる
ありがとうございます。作者冥利に尽きます。
>2. 謳魚様
少しづつ想いが残ればとても良い事だと私も思います。
>3.様
妖怪と人間ならこんな関係も可能かと思いました。
>4. 様
世の中の無限ループも悪いものばかりではありませんしね。
>5.様
あーゆーメイドさんが理想です。
>6.様
分かりづらかったようなので少し修正しました。
素敵なレミ咲をありがとうございます
とても素敵でした