Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

手紙

2008/11/23 19:47:01
最終更新
サイズ
1.67KB
ページ数
1

分類タグ


 私に一通の手紙が届いた。神綺様からだった。
 神綺様からの手紙は初めてのことでは無かった。
 送られて来る手紙の大体の内容は、魔界での出来事や私の心配で綴られていた。
 今回もそんなとこだろうと、自室で手紙を開く。


『突然の手紙でごめんなさいね』
 いつものことだから気にしないです。

『本当に、今でもアリスちゃんが心配でなりません』
 心配かけてごめんなさい。でも、もう子供じゃありません。

『アリスちゃんは、子供じゃないんだから、と言うかもしれませんが、私にとってはいつまでも大切な娘です』
 正確には親子ではないけれど、そう言われると嬉しいです。

『辛くはありませんか?』
 大丈夫、上手くやっています。

『ちゃんと笑えてますか?』
 素直じゃない私には、少し難しいです。

『風邪はひいてないですか?』
 そんなに軟弱ではありませんので大丈夫です。

『たまには魔界に顔を見せて欲しいです』
 今はまだ、行けません。貴女に会う時は、もっと立派になっていたいから。

『私も夢子ちゃんも、いつでも待っていますからね』
 本当に、ありがとうございます。私は幸せ者です。

『でも、もし……今の生き方に、生活に疲れてどうしようもない時は、すぐに戻って来て下さい』
 こんなにも、心配してくれている。

『時間があれば、アリスちゃんからもお手紙をくれると嬉しいです』
 そうだ。私は一度も返事を書いたことがない。

『それでは、またね。アリスちゃんの母、神綺より』



 私は余ってる便箋を引き出しから取り出す。
 チラリとカレンダーを見ると、今日は11月23日、いいふみの日だ。
 今まで素直じゃないから返事の一つも書けなかった私だけれども、これを言い訳にして素直になれる。
 いいふみの日だから手紙を出すんだ。
 そう、いつも私を心配して、手紙を送ってくれる大好きな神綺様。いや、お母さんに。
 今まで素直になれなかった分を、全てこの一通の手紙に込めて、送ろう。

 大切な人へ、思いよ、届け。
今日、笑点で『いいふみの日』と言っていました。
だから作った作品です。
そして私の記念すべき10作品目でもあります。(だからなんだ)

現代ではメールがあるから、大切な人へ手紙を送る、というのはもう忘れ去られつつあるかもしれません。
でも、やっぱり手紙は嬉しいものです。
この作品で少しでも、その気持ちを思い出したり、楽しんで下さった方がいれば幸いです。

11月23日
一部表現や言葉を変更しました。
喉飴と嶺上開花
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
短いけどもとても心の温かくなり、軽く涙腺を刺激される良いお話でした。
今日は色々と嫌な事がありましたが、そんな時この作品を目にする事が出来たことを幸せに思います。
ありがとう。
2.名前が無い程度の能力削除
手紙って今ではそれだけで特別な意味がある感じがする。
単なる情報伝達の手段の一種と言っちゃえばそれまでなんだけどね。

>>『ちゃんと笑えてますか?』
この一文がぐっときた。
実際にこういう手紙で書いてあったら、泣くわ。
3.名前が無い程度の能力削除
短いけど上手く凝縮されたいい話ですね。

これはいい。
最近はテストやらなんやらで死にかけてますが、なんか心が洗われた気になります
4.喉飴と嶺上開花削除
>>1様
私の作品でそのように感じてくれて私も幸せです。

>>2様
笑顔は生きていく上で大切なものだと思ってます。笑えなくなったら生きていないと同じだと思ってます。

>>3様
私の作品でそのような大層なこと、とてもとても光栄です。
5.名前が無い程度の能力削除
短い文章中に純良なエッセンスが詰まっていて、非常に爽快な読後感です。
素直になるって自分の気持ちを包み隠さず相手に伝えることで、結構勇気がいるんじゃないかなぁと思ったり。
それを手軽にできるのが手紙の良いところなんでしょう。
いい作品をありがとう。
6.名前を表示しない程度の能力削除
今の御時世はパソコンや携帯電話が普及しているので、
文字にして伝えたいことは大抵メールで送ってしまうことのほうが多いですよね。
しかしだからこそ大切な人に手紙を送る・大切な人から手紙が来ることが嬉しさにつながるのかもしれません。
暖かみ(筆跡や用紙等の違い)がありますし、何より言葉に表しにくいことも素直に書けますしね。

と、いうことを改めて認識させていただきました。好い作品。
7.喉飴と嶺上開花削除
>>6様
こちらこそ、嬉しい感想ありがとうございます。
誰もが一握りの勇気を必要として生きていると私は思ってます。

>>名前を表示しない程度の能力様
絵文字や顔文字など使わなくても、筆跡や紙のしわ跡や種類などで感情が分かりますからね。
そう感じて下さりありがとうございます。