「あら」
珍しい。
と、幽々子はその光景を見てまず軽く驚きの声を発し、二の句を心の中で呟いた。
視線の先、春の人を堕落させる日差しの存分に当たる縁側で、妖忌が目を瞑ったまま座り込み、微動だにしていない。
一見して、座禅や、精神統一にも見えるその光景の実を、幽々子は見破った。
すなわち、
「妖忌が居眠りするなんて……」
まだ年若い、端正なそれでいてどことなく威厳を感じさせる普段の顔立ち。
今は若干その雰囲気を和らげ、無防備な姿を晒していた。
春の陽気にやられたか、普通なら絶対に己に許さないだろうその寝姿。
しかし、それでも船を漕がず、胡座をかき背筋が伸びたままなのは、さすが妖忌といったところか。
とはいえ、今の白玉楼、隙だらけだったところで幽々子と妖忌しかいないのだが……。
幽々子はしばらく、そんな珍しい妖忌の姿を、若干呆れながら眺めていた。
が、とにかく目の前にこんな面白いものがあるのだから、見ているだけでは勿体ない。
とりあえず、呼びかけてみる。
「ようきー?」
「……」
反応なし。
横にしゃがんで、頬をつついてみる。
「よーうきー?」
つんつん。
「……」
反応なし。
完全に寝入ってしまっているらしい。
もっと強く呼びかけたり、揺すったりすれば起きるかもしれないが……
「それじゃつまんないわよね」
折角、あの妖忌が。普段はずっと無表情で押し黙って隙の全くないあの妖忌が。
こんなに無防備な状態で目の前にいるのだ、何かしないと損だろう。
とりあえず、
「どうしようかしらね……」
顔に落書きでもしようかしら?
自然、妖忌の隣に座り込んで考える。
すぐ横を向けば、その寝顔。
そもそもこんなに妖忌に近づいてるのが、なんだか楽しい。
普段の妖忌は、幽々子とは常に一定の距離を保っていた。
こんなに、相手の息づかいを感じるくらい近づくことは、妖忌からは決してなかったし、幽々子がそうしようとしても、頑としてそうさせてはくれないのだ。
そう思ってみると、何だかこうして、妖忌のすぐ隣に座っているだけで、大胆ないたずらを実行しているように思えてきた。
「ふふ」
何となく、嬉しくなって、笑ってしまう。
すぐ横には、眠っている妖忌。
穏やかな、縁側の春。
すぅ、すぅ、と、かすかに隣から聞こえる吐息。
なんだか心が暖かい。
「ふぁ……」
とりとめもないことを考えていると、こっちまで眠くなってきた。
幽々子は軽いあくびを一つ。
そのままぼんやりしてくる思考で、あることを思いつく。
そして、笑顔のまま、隣の妖忌に体をもたれかけて、ゆっくり目を閉じた。
少し固い、でもあったかい、妖忌の体。
どっしり根を張ったみたいで、体重を全部預けても揺らいだりしない。
瞼の上から、かすかに届く陽光。
くっついた隣から聞こえる、鼓動の音。
どくん、どくん。
妖忌の音……。
ぴったりとくっついて、静かに眠る、青年と少女。
桜の海を、静かに舞いながら駆けていく春風が、
後ろで大ざっぱにまとめられた長い銀髪と、
肩で切りそろえられた桜色の髪を、
静かに揺らしていた。
珍しい。
と、幽々子はその光景を見てまず軽く驚きの声を発し、二の句を心の中で呟いた。
視線の先、春の人を堕落させる日差しの存分に当たる縁側で、妖忌が目を瞑ったまま座り込み、微動だにしていない。
一見して、座禅や、精神統一にも見えるその光景の実を、幽々子は見破った。
すなわち、
「妖忌が居眠りするなんて……」
まだ年若い、端正なそれでいてどことなく威厳を感じさせる普段の顔立ち。
今は若干その雰囲気を和らげ、無防備な姿を晒していた。
春の陽気にやられたか、普通なら絶対に己に許さないだろうその寝姿。
しかし、それでも船を漕がず、胡座をかき背筋が伸びたままなのは、さすが妖忌といったところか。
とはいえ、今の白玉楼、隙だらけだったところで幽々子と妖忌しかいないのだが……。
幽々子はしばらく、そんな珍しい妖忌の姿を、若干呆れながら眺めていた。
が、とにかく目の前にこんな面白いものがあるのだから、見ているだけでは勿体ない。
とりあえず、呼びかけてみる。
「ようきー?」
「……」
反応なし。
横にしゃがんで、頬をつついてみる。
「よーうきー?」
つんつん。
「……」
反応なし。
完全に寝入ってしまっているらしい。
もっと強く呼びかけたり、揺すったりすれば起きるかもしれないが……
「それじゃつまんないわよね」
折角、あの妖忌が。普段はずっと無表情で押し黙って隙の全くないあの妖忌が。
こんなに無防備な状態で目の前にいるのだ、何かしないと損だろう。
とりあえず、
「どうしようかしらね……」
顔に落書きでもしようかしら?
自然、妖忌の隣に座り込んで考える。
すぐ横を向けば、その寝顔。
そもそもこんなに妖忌に近づいてるのが、なんだか楽しい。
普段の妖忌は、幽々子とは常に一定の距離を保っていた。
こんなに、相手の息づかいを感じるくらい近づくことは、妖忌からは決してなかったし、幽々子がそうしようとしても、頑としてそうさせてはくれないのだ。
そう思ってみると、何だかこうして、妖忌のすぐ隣に座っているだけで、大胆ないたずらを実行しているように思えてきた。
「ふふ」
何となく、嬉しくなって、笑ってしまう。
すぐ横には、眠っている妖忌。
穏やかな、縁側の春。
すぅ、すぅ、と、かすかに隣から聞こえる吐息。
なんだか心が暖かい。
「ふぁ……」
とりとめもないことを考えていると、こっちまで眠くなってきた。
幽々子は軽いあくびを一つ。
そのままぼんやりしてくる思考で、あることを思いつく。
そして、笑顔のまま、隣の妖忌に体をもたれかけて、ゆっくり目を閉じた。
少し固い、でもあったかい、妖忌の体。
どっしり根を張ったみたいで、体重を全部預けても揺らいだりしない。
瞼の上から、かすかに届く陽光。
くっついた隣から聞こえる、鼓動の音。
どくん、どくん。
妖忌の音……。
ぴったりとくっついて、静かに眠る、青年と少女。
桜の海を、静かに舞いながら駆けていく春風が、
後ろで大ざっぱにまとめられた長い銀髪と、
肩で切りそろえられた桜色の髪を、
静かに揺らしていた。
>「妖忌生殺しの状況が日が落ちるまで続くと思われます」
日が昇ってもやっておられそうです。
ちょうもえる。
生前だとしたらこういう思い出も忘れてしまうのですね…暖かいけど切ない…
いや~やっぱ公式に妖忌登場希望
やばい、この二人凄く良い…