神綺は夢を見た。
愛娘であるアリスが、凶刃にかかって死んでしまう夢を。
神綺は自らに課した禁忌を破り、アリスを不死身の体にした。
そんな、お話。
「うわ、すっごい私輝いてる!」
鏡に映った自らの肌は、なぜか金色に輝いていた。
とりあえず、すっごい気持ち悪い。
「なにこれ、金箔とか塗られた?」
金を塗られると、皮膚呼吸が出来なくなって死ぬらしい。
やばい、死ぬかもしれない。
そう思ったけれど、どうも体の中からこの光は発せられているらしく、皮膚呼吸ができずに死ぬということもなさそうだ。
一安心。
「アリスゥゥゥゥゥゥ、避けろおおおおおおおお」
何か声が聞こえたと思った次の瞬間、私の体は上空約100m付近まで打ち上げられていた。
そこまでの衝撃を食らっているのに冷静に頭が働いている辺り物凄い。
あ、
地面が、
近づいたきた。
ズドーンとアホみたいな音を立てて、勢いよく地面に突き刺さっても何も痛みは感じなかった。
あれ、これもしかして死んだ?
「うぉぉい大丈夫かアリス! ブレイジングスターで轢いて上空約100mまで打ち上げられたけど大丈夫か!」
「説明口調はいいわ。それにどうやら、怪我はないみたい」
「嘘だろ!? 殺す気だったのに!!」
あっさりと殺意を口にした魔理沙を、頭だけ出して埋める。
穴は自分が先程空けた穴を使用した。
リユーズの精神は大事。
しかし、ここまで輝いていると日常生活もしにくいけれど、全く思い当たる節がない。
大体不死身の奴は他に何人もいる。いまさら不死身になるだけじゃキャラが被るだろうから輝いているんだろうか。
だとしたら凄い迷惑なキャラ設定だと思う。
アリス・マーガトロイド。
人形遣いで都会派魔法使い。
不死身。
全身が輝いている。
少なくとも私は、そんな人とお近づきになりたくはなかった。
「アリスー、出してくれよぅ」
ナチュラルに人を殺そうとしてくる危険人物を出すほど私はお人よしではない。
頭の上から水滴がポタポタ落ちるようにでもしてやろうか。
「おっとっとっと!? 虐待の気配を聞いて飛んできましたよ」
「まためんどくさいのがきた・・・・・・」
「めんどくさいとは失礼ですね! それでどうしたんです?
なぜ魔理沙さんが土から生えてて、アリスさんはピカピカ輝いてるんですか」
「こっちが聞きたい。朝起きたらこうなってたの」
「魔理沙さんも!?」
「それは私が埋めただけ」
「ああびっくりした。最近は畑で魔理沙さんが取れるのかと思いましたよ」
秋にはたくさんの魔理沙が収穫されます。
なお、それに比例して図書館の被害総額が天文学的に膨らんでいく。
反比例して、レミリアのおやつが減っていく。
門番は魔理沙の猛攻に傷つき倒れ山篭り。
瀟洒なメイドは今では永遠亭を仕切っている。
月の兎は月へと帰って行った。
「それでアリスさんは不死身になってしまったと、そういうわけですか」
「ブレイジングスターで100m吹き飛ばされても無傷だったわ」
「それじゃあ、蓬莱山輝夜や藤原妹紅とは一線を画す不死身っぷりですね。
彼女らは一応痛みを感じますし。
それじゃあアレやりませんか? アリスさんに物投げて殺せるか試すゲーム」
「嫌よ、なんでそんな悪趣味な遊びをしなきゃいけないの」
「いいじゃないですか、どうせ不死身なんだし退屈ですしね。
それじゃあ招待状を配ってきます」
そういうと、文は風とともに去りぬ。
魔理沙は顔だけ出した状態で鼻ちょうちんを膨らませていた、器用すぎる。
◆
「というわけで始まりました。第一回アリスさん殺害コンテスト」
「趣味が悪い」
「えー集まっていただきましたのは、幻想郷でも殺しに特化したこの四名様です。
ご紹介致しましょう、まずは冥界のお姫さま、西行寺幽々子さん!
この方は触れただけで人間を死に至らしめる蝶を飛ばすマッドな方です」
「あらあら」
「幽々子さま、馬鹿にされてますよ!」
「次に、全てを破壊する破壊の申し子。潜在能力は姉をはるかに上回る!
妹より優れた姉などいない、フランドール・スカーレットさんです!」
「ねぇねぇ、好き勝手に壊していいの?」
「えーそれでは、我こそが毒殺テロリスト。自らも不老不死である八意永琳さんです!」
「どうも。たとえ蓬莱人だって、殺してみせるわ」
「最後に、我こそが単純な破壊力の頂点! 穏やかなフラワーマスター、風見幽香さんです!」
「消し炭一つ、残さないから」
なんでこう、幻想郷には後先考えない馬鹿どもが多いんだろう。
本当に私が死んだらどうする。
というかまだ不死身とも確定したわけじゃないのに、なぜ殺そうとする。
けれど、逃げようったってこのメンツ相手に逃げられるわけもない。
大人しく、死なないことだけを祈ろう。
「じゃあまずは幽々子さんから」
「・・・・・・パスッ!」
「ええはやああああああ!!!」
文が鼻水を吹き出した。
突っ込むのはいいけれど、もう少し女の子らしくしたほうがいい。
「その子は蓬莱人と同じ匂いを感じるもの・・・・・・。正直怖いわ」
「じゃあ参加辞退してくださいよめんどくさいなー! じゃあ次です次! フランドールさん!」
「キュって、してドカーンだよ!」
悪魔の妹の能力は知っている。
私もいよいよ終わりかと腹をくくったけれど、何も起こらない。
「え? あれ? 物質の目が見えないよ?」
「ああもう! フランドールさんもダメ! 失格です!」
早速二人が失格になった。
これは生き残れるかもしれない。
「それじゃあ次、八意さんです」
「えっとじゃあこの媚薬で精神的に殺しましょう・・・・・・」
「アウトアウトアウトー!! それは社会的にアウトですよ!!」
「だからいいんじゃない。その娘も社会的にアウトにしましょう?」
「誘わないでくださいそんな危ないことに!! 次です次!!」
「風見幽香さんならお花を見に行くって帰りました」
「ああもう使えないなー!!」
文が地団駄を踏むと同時に、集まっていた観客も帰りはじめたり酒を飲み始めたりとフリーダム。
もはや、私を殺すことなんてどうでもよくなったらしい。
「あーりーすー、そろそろ私を出してくれよー」
顔だけを出した魔理沙が何か言っているが、無視だ無視。
こうしてぼーっと立っているのも退屈なので、私も宴に混ざることにした。
そして、悲劇は起こった。
「うおおおおおお!!! アリスが死んだあああああああ!!!」
顔だけ出した、魔理沙の慟哭が響いた。
アリスの不死身は徹底的なもので、はじめは面白がってちょっかいを出していた人妖も、ただ輝いてるチートキャラだと思い始めた。
そのときである。
「ごべばーっ!」
アリスの首筋に五寸釘が刺さって、あっけなく死んだ。
そして、呆然とする西行寺幽々子。
「こ、小骨を吹いたらアリスが!」
「み、ミスティアさんまで死んでるー!」
既にツッコミ役とかした文が、役割通りに叫んだ。
いつのまにかミスティアの姿は見えず、帽子だけが厳かに置かれており。
魂魄妖夢が、涙を流しながらそれを拝んでいる。
「というかアリスさん死んじゃったじゃないですか! どうするんですかこれ!」
一番ノリノリで殺そうとしていた文が、何をいまさら。
文以外の全員が、そんな視線を向けた。
「うぐっ・・・・・・そういわれると辛いですね。
それにしてもなんでアリスさんは死んじゃったんでしょう?」
幽々子とフランドールの能力を無効化する、問答無用の不死身だったはずだ。
それがなぜ、ミスティアの小骨で死んでしまったのか。
しかも小骨がどうして、五寸釘に変わったのか。
「あ、わかった」
おろおろする幽々子を慰めていた紫が、訳知り顔で手を叩いた。
全員の視線が、今度は紫へと集まる。
「つまり、ミストルティンってことなのね」
◆
「はっ・・・・・・! ・・・・・・なぁんだぁ、夢かぁ、よかったぁ・・・・・・」
幻想郷に送り出した愛娘が、ロクでもないことで死んでしまう夢を見てしまった。
それも、バイキングたちの神話をもじった死に方を。
正夢になっても嫌なので、今日はひとまず、寝なおすことにした。
明日も、娘の様子を魔界から観察しよう。
おやすみなさい。
小枝とをかけてみました!なんてお父さんには通用しませんよ!
けどワロタ
でももっとやれwww
てことは、このあと幻想郷にはラグナロックが起こるわけですねwww
ちくしょう!
もっとメジャーなネタならよかったんでしょうが
まぁ殺害ネタはぐやもこも似たようなことしてる設定だし、いいんじゃないかしら?
でも、夢オチかぁ。いや解ってて読んではいたんですが。うーむ、、、
もっと激しく、もっと徹底的に
ちょっと真面目な感想を。
魔理沙が埋められた直後に出てきたのが誰だか分かりにくいのではないかと。
「こういう状況で1番にすっ飛んでくるキャラ」ということで何となくは分かるんですが、その後の展開をひっぱるキャラだけに、最後に名前が出てくるまで特定できないというのは少々きついのでは?
……いやまあ、「これで分からんお前は東方度が足りてない!」と言われてしまえばそれまでなのですが。