「とりゃー!」
魔理沙は神社の境内にいた霊夢を見つける頃、辺りは薄暗くなっていた。
「おーい、霊夢ー」
「とりゃー!」
「あら、魔理沙じゃない。こんな時間に何しに来たの?」
「とりゃー!」
「ああ、ちょいとばかり気になったことがあってこのままでは昼寝すらできなそうだったから来たんだ」
「とりゃー!」
「ふーん。」
「とりゃー!」
「ところでこの掛け声とも気合いともとれる奇妙な声はどこから聞こえてくるんだ?」
「とりゃー!」
「声?」
思わず首をかしげる霊夢。
「聞こえないのか?」
「なにも聞こえないわよ」
「ちぇすとー!」
「お、今掛け声変わったぞ? ちぇすとーって」
「幻聴じゃないの? また悪いキノコでも食べたんでしょ?」
「そんなわけ……うーむ」
「もしかして図星?」
「とりゃー!」
「あぁー。そう言えば昨日の夜変な形のキノコを食べたぜ」
「やっぱりそうなんじゃない」
「言われてみればな。でもあれはキノコと言うには少し違う気がしたんだが」
「とりゃー!」
「ふーん?」
霊夢は特に興味もなさそうだ。
「ああ、何しろカサがない。先っぽがまるく膨らんでてな。しかも全身イボイボだらけで、おまけにぬるぬるしてて……」
霊夢は身振り手振りを交えながら熱く語る魔理沙の様子に思わずため息をつく。
「とりゃー!」
「しかし面倒だ。何が面倒かと言うとな……その怪しいキノコを調理する際になんだが……」
「とるあー!」
思わず魔理沙は辺りを見回す。
「どうしたの? 今度は狢でもいたの?」
「いや、なんかおかしいぞ。うーむ。」
「あんたがおかしいのは毎度のことでしょ」
「それはさすがに失礼な言い方だな」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
その時、急に霊夢が辺りを見回す。
「ちょっと!? 今の何?」
「ん、どうした?」
「今、とりゃーって聞こえたんだけど」
「そうか? 私は何も聞こえなかったぜ」
「そんなわけないわよ。あんなに大きな声だったのに」
「とりゃー! とりゃー! とりゃー!」
「また聞こえた!」
「私には何も聞こえてないぞ。幻聴なんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょ。別にあんたと違って疲れてるわけもないし」
「とりゃー!」
「それより私の話を聞いてくれ霊夢。昨日の夜のことなんだが私の家にこーりんの奴がやってきてな……」
「ごめん、今はそれどこじゃないわ。きっとこれは異変なのよ! 異変は解決しないと!」
「とりゃー!」
「おいおい、こんな朝っぱらから陰陽玉なんか取り出して何をやってるんだ」
「これは勘なんだけど異変の原因はあんたよ! あんたが来てからおかしくなったんだから。っていうわけで大人しくやられなさい!」
「とりゃー」
「おいおい。いくらなんでもそりゃないだろう」
「そうも言ってらんないわ! もうすぐ日が暮れちゃうし」
「なんだ、とうとう気違えたのか? 今はまだ日も上がらないじゃないか」
「何を言ってるのよ。空を見上げなさいよ。西の方に日が沈むのが見えないの?」
魔理沙が上を見上げると確かに辺りは薄暮の様相に見えなくもない。
「そんなばかな!! ついさっきまで朝だったはずだろ!?」
「いつまで寝ぼけてるのよ」
「とりゃー」
「ほら、また聞こえた!! 流石に今度はあんたも聞こえたでしょ?」
「おかしいぞ……何かがおかしい」
「何がおかしいのよ」
「確かにだ。私がこの場に来たときは朝だったんだ。それとも今日は朝から夜だったのか?」
「とりゃー!」
「なんなのよもう!」
「それは私の台詞だ!」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「ああ、もう一体なんなんだ!? この声は」
「耳なんかふさいじゃってどうかしたの? それより晩御飯考えないと」
「晩御飯? まだ朝じゃないのか」
「とりゃー!」
「ああ、もう! 何なのよこの声は!」
「どうしたんだ。頭なんか抱えておかしいやつだな」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「うーむ、とりあえず今日の晩御飯は、にとりの即席釜めしだな」
「私は、はらぺこ西行寺カレーにしようっと」
「ごりゃー」
「むっ!」
「魔理沙にも聞こえた? 今確かにごりゃーって……」
「ああ、聞こえたぜ。確かに聞こえた」
「でしょ!?」
「おまえの腹の音が」
「なっ……」
「とりゃー」
「仕方ないでしょ。減るもんは減るんだし」
そう言いながら霊夢は思わず顔を赤くする。
「大丈夫だ。実は私も腹が減った」
「とりゃー!」
「何が大丈夫なのよ……」
「さあ?」
「とりゃー」
「さてと……私はそろそろ戻って朝飯……じゃなかった晩飯の準備をしないとな」
「またどうせ変なキノコでも食べるんでしょ」
「とりゃー」
「まあな。よかったら霊夢にもおすそ分けしようか?」
「結構よ!」
「とりゃー!」
「しかしいつになったら朝が来るのやら」
「とりゃー!」
「ああ、もう、とりゃーとりゃーってうるさいわ。さっきから」
「それは、きっと寝た方がいいんだぜ。寝ればきっと治るはずだ。保証はしないが」
「とりゃー」
「うーん、そうしようかしら……なんか頭痛くなってきたし……」
「とりゃー! とりゃー!」
「なんかもういろいろとつまらなくなってきたな。今日のところは私も帰って寝るか」
そう言うなり魔理沙は箒にまたがり自分の家へ帰っていく。
霊夢も大きく欠伸をすると寝床へと帰っていった。
「……とりゃー! とりゃー!」
「はい、もういいわよ」
「……しかしスキマ妖怪さん。これで本当に、二人の脳裏へ私の記憶を刷り込ませることができたのかい?」
「ええ、一定時間ごとにあなたの声を二人の脳に直接響かせることによって、深層意識に植えつけることができたはずだわ」
「ふむ、ところで途中で色々とおかしくなっていたんだけどあれも故意にやったのかい?」
「ええ、そうよ。ああやって少しだけ異変を起こすことで、より一層二人の中に印象付けることができる。これで効果倍増が期待できるってわけ」
「へえ、本当かい?」
「ええ、あとは二人の夢にあなたを出せばパーペキね」
「よし、私が表舞台に復活できる日も、これで一歩近づいたんだね」
「千里の道も一歩から。あせらず慌てず、それでいてまったりとしてコクがあって少しほろ苦いみたいな」
「……なんか途中からおかしくなってないかい? それ」
「気のせいよ」
そう言いながら二人はその場を後にした。
ちなみに霊夢と魔理沙が、この日見た夢は花畑でムキムキのこーりんに追いかけられる夢だったそうな。
『彼女』の復活までの道のりはまだ遠い……。
魔理沙は神社の境内にいた霊夢を見つける頃、辺りは薄暗くなっていた。
「おーい、霊夢ー」
「とりゃー!」
「あら、魔理沙じゃない。こんな時間に何しに来たの?」
「とりゃー!」
「ああ、ちょいとばかり気になったことがあってこのままでは昼寝すらできなそうだったから来たんだ」
「とりゃー!」
「ふーん。」
「とりゃー!」
「ところでこの掛け声とも気合いともとれる奇妙な声はどこから聞こえてくるんだ?」
「とりゃー!」
「声?」
思わず首をかしげる霊夢。
「聞こえないのか?」
「なにも聞こえないわよ」
「ちぇすとー!」
「お、今掛け声変わったぞ? ちぇすとーって」
「幻聴じゃないの? また悪いキノコでも食べたんでしょ?」
「そんなわけ……うーむ」
「もしかして図星?」
「とりゃー!」
「あぁー。そう言えば昨日の夜変な形のキノコを食べたぜ」
「やっぱりそうなんじゃない」
「言われてみればな。でもあれはキノコと言うには少し違う気がしたんだが」
「とりゃー!」
「ふーん?」
霊夢は特に興味もなさそうだ。
「ああ、何しろカサがない。先っぽがまるく膨らんでてな。しかも全身イボイボだらけで、おまけにぬるぬるしてて……」
霊夢は身振り手振りを交えながら熱く語る魔理沙の様子に思わずため息をつく。
「とりゃー!」
「しかし面倒だ。何が面倒かと言うとな……その怪しいキノコを調理する際になんだが……」
「とるあー!」
思わず魔理沙は辺りを見回す。
「どうしたの? 今度は狢でもいたの?」
「いや、なんかおかしいぞ。うーむ。」
「あんたがおかしいのは毎度のことでしょ」
「それはさすがに失礼な言い方だな」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
その時、急に霊夢が辺りを見回す。
「ちょっと!? 今の何?」
「ん、どうした?」
「今、とりゃーって聞こえたんだけど」
「そうか? 私は何も聞こえなかったぜ」
「そんなわけないわよ。あんなに大きな声だったのに」
「とりゃー! とりゃー! とりゃー!」
「また聞こえた!」
「私には何も聞こえてないぞ。幻聴なんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょ。別にあんたと違って疲れてるわけもないし」
「とりゃー!」
「それより私の話を聞いてくれ霊夢。昨日の夜のことなんだが私の家にこーりんの奴がやってきてな……」
「ごめん、今はそれどこじゃないわ。きっとこれは異変なのよ! 異変は解決しないと!」
「とりゃー!」
「おいおい、こんな朝っぱらから陰陽玉なんか取り出して何をやってるんだ」
「これは勘なんだけど異変の原因はあんたよ! あんたが来てからおかしくなったんだから。っていうわけで大人しくやられなさい!」
「とりゃー」
「おいおい。いくらなんでもそりゃないだろう」
「そうも言ってらんないわ! もうすぐ日が暮れちゃうし」
「なんだ、とうとう気違えたのか? 今はまだ日も上がらないじゃないか」
「何を言ってるのよ。空を見上げなさいよ。西の方に日が沈むのが見えないの?」
魔理沙が上を見上げると確かに辺りは薄暮の様相に見えなくもない。
「そんなばかな!! ついさっきまで朝だったはずだろ!?」
「いつまで寝ぼけてるのよ」
「とりゃー」
「ほら、また聞こえた!! 流石に今度はあんたも聞こえたでしょ?」
「おかしいぞ……何かがおかしい」
「何がおかしいのよ」
「確かにだ。私がこの場に来たときは朝だったんだ。それとも今日は朝から夜だったのか?」
「とりゃー!」
「なんなのよもう!」
「それは私の台詞だ!」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「ああ、もう一体なんなんだ!? この声は」
「耳なんかふさいじゃってどうかしたの? それより晩御飯考えないと」
「晩御飯? まだ朝じゃないのか」
「とりゃー!」
「ああ、もう! 何なのよこの声は!」
「どうしたんだ。頭なんか抱えておかしいやつだな」
「とりゃー!」
「とりゃー!」
「うーむ、とりあえず今日の晩御飯は、にとりの即席釜めしだな」
「私は、はらぺこ西行寺カレーにしようっと」
「ごりゃー」
「むっ!」
「魔理沙にも聞こえた? 今確かにごりゃーって……」
「ああ、聞こえたぜ。確かに聞こえた」
「でしょ!?」
「おまえの腹の音が」
「なっ……」
「とりゃー」
「仕方ないでしょ。減るもんは減るんだし」
そう言いながら霊夢は思わず顔を赤くする。
「大丈夫だ。実は私も腹が減った」
「とりゃー!」
「何が大丈夫なのよ……」
「さあ?」
「とりゃー」
「さてと……私はそろそろ戻って朝飯……じゃなかった晩飯の準備をしないとな」
「またどうせ変なキノコでも食べるんでしょ」
「とりゃー」
「まあな。よかったら霊夢にもおすそ分けしようか?」
「結構よ!」
「とりゃー!」
「しかしいつになったら朝が来るのやら」
「とりゃー!」
「ああ、もう、とりゃーとりゃーってうるさいわ。さっきから」
「それは、きっと寝た方がいいんだぜ。寝ればきっと治るはずだ。保証はしないが」
「とりゃー」
「うーん、そうしようかしら……なんか頭痛くなってきたし……」
「とりゃー! とりゃー!」
「なんかもういろいろとつまらなくなってきたな。今日のところは私も帰って寝るか」
そう言うなり魔理沙は箒にまたがり自分の家へ帰っていく。
霊夢も大きく欠伸をすると寝床へと帰っていった。
「……とりゃー! とりゃー!」
「はい、もういいわよ」
「……しかしスキマ妖怪さん。これで本当に、二人の脳裏へ私の記憶を刷り込ませることができたのかい?」
「ええ、一定時間ごとにあなたの声を二人の脳に直接響かせることによって、深層意識に植えつけることができたはずだわ」
「ふむ、ところで途中で色々とおかしくなっていたんだけどあれも故意にやったのかい?」
「ええ、そうよ。ああやって少しだけ異変を起こすことで、より一層二人の中に印象付けることができる。これで効果倍増が期待できるってわけ」
「へえ、本当かい?」
「ええ、あとは二人の夢にあなたを出せばパーペキね」
「よし、私が表舞台に復活できる日も、これで一歩近づいたんだね」
「千里の道も一歩から。あせらず慌てず、それでいてまったりとしてコクがあって少しほろ苦いみたいな」
「……なんか途中からおかしくなってないかい? それ」
「気のせいよ」
そう言いながら二人はその場を後にした。
ちなみに霊夢と魔理沙が、この日見た夢は花畑でムキムキのこーりんに追いかけられる夢だったそうな。
『彼女』の復活までの道のりはまだ遠い……。
これはナイスwwwwwww
それにしても魅魔様愛されてるのか愛されてないのかw